剣丞の親友に戦闘狂がいたなら 作:まくろ
そして翌日、俺は如何にも容易く城内に潜入したんだが、やはりというべきか主要人物と密約は取れたが、竹中半兵衛とは会えなかった。そうなると井之口組がなんらかの手がかりを掴んでいるとありがたいんだが。
何で斎藤義龍は取り戻せないんだろうな思うし、もはやこの程度の城はすぐに取り戻せないくらいに家臣団からの信用もないのか。そのくらいこの稲葉山城、いや斎藤家は既に落ちているのだ。
これが俺の戦とはいえ、流石に人の醜さを思い知る。こんな姿なんて彼奴等にはまだ見せられない。
崩壊というのは俺でも辛いものがある。滅亡寸前のこの家は既に忠誠も何もない。ただの今後の自分の家のことしかないのだ。
帰りの獣道で俺は少しだけ息を吐く。一応俺もそれを担っていることもあり、かなりの重圧であることには違いない。
それが久遠や家老衆、三若たちがそうなると信じたくはないけど、忠実な歴史を辿ることになれば、久遠は夢半ばで死ぬことになるのだ。
そして、ひよと任月は戦になったり、今後かなりの影響がある。
……なんでこんなにも思うことがあるのか。そんなの好きだからに決まっている。剣丞もひよも、ころも、南雲隊も織田家の皆のことも。
背負うものもこれからのすべきことも少しずつ分かってきた。一刀おじさん言っていたことだ。
未来は変えられる。変えてきたからこそ今があるんだと。
悪い手癖であることも分かっている。それでも大切だからこそ全て守りたい気持ちはあるのだ。
「……そっか。爺ちゃんたちももこんな気持ちだったんだろうな。」
今なら分かる失うことの恐怖に俺は苦笑してしまう。
親父たちが異世界に転移したとき、祖父が思っていたことが少しわかったような気がする。
あいつらに会いたいな。
多分俺よりももっと不安だっただろう爺ちゃんや婆ちゃんは改めて凄いと思いつつ俺は帰りの帰路にたった。
「おかえりなさい!!お頭!!」
「あぁ、ころたちは上手くいったのか。俺も一応潜入経路は決めた。」
「どうせ旭は城内に忍びこんでいたんだろ?」
「あれ?バレてた。」
「久遠と話していたときにどうせ仕事仕事預かっているんだろ?」
「まぁな。……あんまりいい気分にはならなかったけど。」
「…えっ?もしかして何か問題が。」
俺は首を横に振る。まぁ、丁度いいか。ある程度話してしまおう。
「斎藤家西美濃三人衆やその他主犯格の条件付きであるけど、寝返りを約束させたんだけど。」
「凄いじゃないですか!!大手柄ですよ!!」
「ありがとう。でも……なんというか、城内の雰囲気に殺られたというか。なんか凄くしんどかった。」
「お頭がですか?」
「まぁな。それとひよと犬子は?」
「ひよと犬子ちゃんは犬子ちゃんが徒士と喧嘩しちゃって。」
あぁ、なるほどな。抑える側に回ったということか。
忍びの訓練をしてないから仕方ないしなぁ。
「了解。それじゃあ風呂の用意はしてもらってるからそれが終わったら食事をしようか。明日は犬子と剣丞……いや、ころも尾張に戻そうか。」
「……ん?まだ旭は残るのか?」
「残ろうかなって思ってる。……井ノ口の商人と話したいことが少しあるからな。まぁ、翌日には経つだろうからそこまで長居はしないけど。それに、あの件を広めてくれたんだろ?」
「広めたけど……いいのか?お前はそんなふうに婚姻を扱われても。」
……やっぱりそこか。…多分剣丞だけではない、ひよは気づかないだろうけど、俺の婚約に関しては策略が入り乱れてる。
気にしてるのは多分久遠ところだろう。
「別に。それでひよや剣丞やころもそうだけど三若とかの織田家と居られるならそれでいいんじゃないか?」
「お頭……?」
「言っとくけど、皆が思っている以上にお前らのこと好きだぞ。久遠にも恩はあるし、元々久遠自身がそういうことが嫌なのも剣丞から聞いてる。でもさ、……そのせい大切な人たちを失うって俺は嫌なんだよ。剣丞やひよはもちろん、ころや犬子もな。」
その言葉に、皆が俺の方を見る。それはこの世界で始めて言葉に紡ぐ言葉だ。
「俺にとってはお前らと生きていく方がずっと大切なんだよ。」
「……」
お前はと何をいうのか恐らく分かっていたのか呆れたようにしている剣丞に呆気に取られているひよ達。
「稲葉山にきて改めて思うよ。織田家が拾われたことが幸運だったことを。俺を慕ってくれている南雲隊がどれだけ恵まれているのかも。……こうやって信頼できる仲間がいることがどれだけ幸せなんだってこともな。」
恵まれているから伝えたい。
それが例え恥ずかしいことだとしても。
「だから織田家南雲隊である限りは俺はどんな扱いだっていい。戦場で行っても、誰と婚約しようがな。だから唯一の希望としてひよと婚約したわけだし……それだけでも十分なんだよ。」
平和な国にいたからこそ、この世界でそのことができることの難しさは理解している。だからこそ、南雲隊くらいはその幸せを望みたい。
「剣丞も戻る手段って考えていないだろ?」
「まぁ。久遠がいるしな。」
「つまりはそういうことだよ。男の子っていうのは思っているより単純なもんだろ。」
「男の子って言う年齢ではないけどな。」
「あの?お頭?どういうことですか?」
「秘密だよ。な。剣丞。」
「…まぁな。」
少しばかり照れくさそうにしている剣丞に俺は少し微笑む。流石に、気になる可愛い女の子にかっこつけたいからなんて言えるわけないしな。
「とりあえず話は元に戻るけど、剣丞は久遠に報告。んで犬子は、……壬月に一つ文を頼めないか?」
「壬月さまに?」
「あぁ。多分犬子には必要になるだろうものだからな。」
「わふ?」
忍びから連絡があって、今犬子が無断で母衣衆をおいていったこともあり、壬月が怒っていると情報があったので前に助けてもらった恩は返しておこう。
「それところは今控えている忍び衆を全員美濃に派遣させる準備を頼めるか?。」
「えっ?全員ですか?」
「あぁ。ここからは詰めろに入ってくる。今回の戦は恐らく兵ではなくて忍びの質で落とせる戦だろうな。そのことを久遠は既に見切っていたんだろうから俺たちが派遣されたんだろうな。」
「久遠がか?」
「ある程度情報もあったんだろうけど、久遠も既に気付いているんだろ。出陣準備もある程度進めておかないとな。半年もかからないぞ。稲葉山城へ兵を進めるのは。ころ。頼めるか?」
「なるほど、わかりました。川並衆を集めておきますね。」
本当に頼りになるな。ころに関しては。何でもできる器用屋だからこそ、そろそろ経験を積ませる必要がある。
「頼む。……まぁ、今日の第一功将はころかな。何か褒美考えておけよ。ひよと犬子は反省するように。」
「「……は~い」」
「えっ?あの、お頭褒美だなんて。」
「そんな大したものじゃないって。昇給とかそんなことはできないけど、裏付けとかはできてるんだろ?どうせ剣丞は久遠にもらうだろうし些細なことでよければ別にいいぞ。」
「…そ、それなら一緒にお風呂とかでも?」
「いいなぁ!ころちゃん!」
「それ褒美になるのら、まぁいいけど。」
「……むぅ。」
ひよが少し膨れているけど、そこまで褒美になるのか?
「やた!ひよも一緒に入ろうよ。」
「…えっ?いいの?ころちゃん!!」
「それ以前に婚入り前の女性が入っていいのかよ。」
「…あっ!それはそうと旭様いつひよと婚姻したの?」
「そういや犬子ちゃんは知らなかったね。」
そしてわいわいと話し始めるひよたちに俺は苦笑してしまう。多分みんなが思っているよりも決意は重いんだけどな。
この笑顔を守るために、俺は何ができるのであろうか。それを考えるのが俺であり、これからの課題なのだから。