剣丞の親友に戦闘狂がいたなら   作:まくろ

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もう一度美濃へ

「…?待ったって俺たちをか?」

「そうよ。」

 

帰蝶姫は旅支度をしていることから恐らく予想通りになる。

 

「帰蝶?旅支度何かして、何処か行くのか?」

「私もついていくのよ」

「……は?」

 

剣丞が聞くとなんとなく予想していたような答えが聞こえてきた。

 

「…あなたたちと一緒に美濃に行くわ。」

「……勘弁してくれよ。俺たちは今から荒事に向かうんだ。そこに君を」

「……はぁ。まぁいいけど。」

「ちょ、旭!?」

「いや。別に今回荒事に向かうとしても斎藤家のことを知っておきたい。それに土地勘がある帰蝶が入るとしたら早期発見にも繋がるだろ?それに、口論している暇もないしな。」

「……何よ。私だって戦えるんだから。」

「いや、戦わず逃げるぞ今回。」

「「「えっ?」」」

 

驚く全員に俺はため息を吐く。

 

「一応作戦としたらこんな感じだな。歩きながらでいいか?」

 

俺は美濃へ向けて歩いている間に説明する。

 

「って感じだな。」

「……貴方その作戦いつから。」

「美濃の周辺を見回りして帰ってきたからな。ある程度抜け道とかも見つけてある。元より相手の土地勘があるし相手の情報も分かってないなかで争いなんて起こしたら厳しくなること間違いないだろ?」

「あの?剣丞?これが貴方のいた世界では普通なの?平和な世界にいたって聞いてるけど、旭はあまりにも戦闘慣れしすぎているんだけど。」

「旭と一緒にしないで。こいつは……いや、こいつの家族は俺のところより特殊だから。」

「……否定できないな。」

 

俺の家族は確かに異常だからこそ守れることができるのであればそれでもいいのだ。

 

「剣丞、護衛変更な。一応久遠の奥さんだし面倒はそっちが見たほうがいいだろ。」

「……了解。」

「後帰蝶姫、路銀は持ってきてるか?」

「……あっ。」

「了解。こっちで出す。ひよ。1人分追加で取りにいって。ついでにうちのもん何人か連れてきて。」

「……は、はい!!」

「ちょっと文書くから。」

 

戦闘面では期待できないとなると本格的に逃げるのが良さそうかな。

そうなると助けが必要だし俺は胸から書くために紙ととあるものを取り出す。

 

「なにそれ?」

「木炭を粉末にして粘土と混ぜて絹で巻いたもの。こうすると書きづらいけど文字を書くことができるんだよ。」

「……便利そうね。それ。」

「使えることは使えるけど、すぐに折れるからあまり実用的ではないぞ。」

「……」

 

剣丞は木炭鉛筆については知っているのでジト目で見られる。一応鉛筆自体は15世紀に出来たと言われているが日本に伝えられるまではまだまだ時期は後かのだ。ただこれ自体かなり便利ではあるので文字を書ける忍び隊には持たせている。

なんか本格的に一休みできそうになさそうだなと思いつつ俺は文をだし、予定通りのシナリオに少しだけ苦笑いをしてしまうのであった。

 

 

翌朝には井ノ口に入り聞き込みを行うとやはりというか逃げているらしい。

 

「さて、今までの情報を統括すると……竹中さんは斎藤家を辞して逃げたけど追っ手が掛かってる感じか?」

「らしいな。恐らく逃げ先は確か不破郡だろ?西方って言ってたからほぼ間違えないだろうな。」

「しっかし義龍って人はホントに嫌われてるんだなぁ。明らかに余所者でも教えてくれたし。」

「…庶民っていうのは得てそういうものよ。自分たちに直接被害がなければ、為政者のもめ事なんて格好な酒の肴でしかないさ。」

「……気持ちは分からんでもないけど、旭を見てるとなぁ。」

「お頭ほぼ何かしら仕事してますもんね。」

「……あんた少し休んだ方がいいんじゃないの?」

「人手が足りないんだから仕方ないだろ!!」

 

だからといって今でさえ時々休みでも働いてくれている、ひよたちに働かせるわけにはいかないしなぁ。

 

「ってよりも恐らく織田方って知ってるから話をしているんだと思うぞ。久遠の評判や尾張の街の様子は旅人や商人からも聞こえてくるだろうし、先々代の利政が久遠に美濃譲り状を渡したのが美濃では美談になっているんだろ?」

「……知ってたの?」

「調べたんだよ。一応美濃攻めって聞いた時に麦穂さんもそうだし、ころも美濃に傭兵として雇われたこともあったそうだから話聞いたりしてな。どんな些細なことでも情報は武器になることがあるから。」

「なんというか、抜け目ないよな。お前。」

「…普通ならこんだけ簡単にはいかないんだけど、正直今の美濃がそれだけ民から離れてるんだ。」

「えぇ。姉様の娘……龍興が家を継いでから、譲り状の噂は枯れ木に火が付くようにあっという間に広まったの。」

 

そういう帰蝶姫は悲しい顔をしている。言い辛いから言うつもりが帰蝶本人から説明するとは思いにもしてなかった。

 

「人望、実力、運。今の時代、その3つのない大将を担いでいたら、いつか自分たちも破滅に巻き込まれてしまう。旭みたいな人に流されるのは乱世を生き抜く者として当然の判断よ。」

「……なるほどな。帰蝶。辛いこと教えてくれてありがとう。……凄く助かったよ。」

 

さらっと少し嫌味を言われたのは少しだけ気持ちが分かる。

 

「とりあえず予定通り西に行くぞ。俺ところ、ひよの3人で南方から回る外道から行くぞ。ここから西に帰蝶姫と剣丞は移動できるか?」

「了解。それでなんだけど、和奏の玉薬を使った簡易の信号弾作ったんだけど。」

「……本当に気が利くな。」

「なんですかそれ?」

 

ひよやころが興味深そうにしている。

 

「連絡手段になる忍び用の狼煙みたいなもん。紐を引くと花火がでるんだ。音と煙で居場所が少し離れても分かる道具だよ。」

「……ふ~んそんな道具があるんだ。」

「一応火薬使っているから紐と反対側は持たないことくらいだから、ひよさんと帰蝶に持ってもらうか?」

「……だな。」

 

そうして2人に信号弾渡す剣丞。さて、剣丞は剣丞でここで運命が変わりそうな気がする。

 

「……さてとんじゃ行くか。2人ともお願いな。」

「「はい!!」」

 

多分終わりが近いことが分かっている。

できればなるべくいいふうに終わりたいもんだ。

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