剣丞の親友に戦闘狂がいたなら 作:まくろ
「…ふんふん。」
醬油の香ばしい匂いが夜間の部屋に香る。
現在ひよやころが寝静まり、一人で焼きおにぎりを作っていた。
演習から暫くときがたち仕事も落ち着いてきたころ…いや、こんな時間まで仕事しているわけだから落ち着いてはいないか。一人でこっそり食べる夜食は本当においしいことに気づいたのだ。
…まぁたまに匂いに釣られて犬子が来るんだけど。いつもとは違いかなり香りの強いものを使っているのだが。
「ふにゅ?わふ?」
「あっ。犬子。」
「旭様名に作っているんですか?」
「焼きおにぎり。犬子の分もあるぞ。」
「わ~い。」
香ばしい醤油の匂いに誘われ犬子も座る。
こうやって二人で夜食を食べるのはいいコミュニケーションの場として二人きりになれるときだ。
お茶を煎れ、二人でこっそり食べる夜食もこれまた絶品である。
「おいし~。」
「まぁ今日は手抜きだけどな。」
「わふ?でも珍しいですね。いつもならお味噌汁とおにぎりじゃないですか?」
「ん。ん~そうすれば犬子も起きるかなって。」
「わふ?どういう意味ですか?」
「もうしばらくすれば分かるよ。ほら多めに作ってるしな。」
「……もしかしてそういうことですか?」
「そゆこと。だから腹ごなししているんだよ。どうせ陣貝の音で全員おきるだろうし、犬子も赤母衣呼び出さないといけないだろ。今のうち食べておけ。ついでにぬか漬けもあるけど食べるか?」
「わん!!」
そうしながら二人で焼きおにぎりを食べているとすると貝の音がなる。
「ん。来たか。犬子。」
「わん。行ってくるね旭様。」
「おう。また後でな。」
「旭様!?って何しているんですか?」
「腹ごしらえ。ひよも少しくっとけ。」
「はい?」
「いや出陣の準備もう終わってるぞ。てか出陣時期決めたの誰だと思ってるんだよ。」
「……えぇ!?」
忍びの報告で俺の兵はすでに出陣準備を終えている。
「旭。この音って。」
「出陣だよ。ほれ。剣丞の馬も用意してあるしどうせ急軍だろうから久遠と一緒に食べろ。俺も赤母衣と一緒に進軍するから。」
「なんかお前いつも通りだな。」
「変わる必要はないからな。それで剣丞どうする?」
「旭も行ったほうが確実だろ。どうせ手柄とかっていうくらいならば助けてもらったほうがありがたい。」
「了解。んじゃ先に行ってこい。その説明も久遠にしてこいよ。」
「おう。」
といい刀を持ち走っていく。
「俺たちも軽食後ここを経つ井ノ口にも使いは出したしな。詩乃いるか!?」
「はい。こちらに。」
「向かっている間留守を頼む。」
「はい。旭様、ひよ、ご武運を。」
「おう。まぁもう少ししてから向かうけどな。まったく。ころはいるか?」
「はい。お頭どうしました?」
「俺と剣丞は言っていたとおりに稲葉山城の潜入へ向かう。ひよ。お前南雲隊の指揮をしろ。」
「えっ?」
「兵剣丞隊含め1000。ひよに任せる。犬子の補助に回れ。」
「は。はい?私がですか?」
「おう。ころは俺と一緒に潜入任務にあたる。ころいけるか。」
「えっと私はいいんですけど。何でひよが兵を。」
「今後こういうことが増えるからだ。つーか伝えていただろ。ひよ。」
「それはそうなんですけど……」
「それに俺個人が本陣にいることなんてほとんどないだろうな。前線で剣を振うことのほうがむいてるし。それだけの実力はある」
「……あの我儘一つだけいいですか?」
「ん?」
「旭様と共に行きたいって言ったら怒りますか?」
「……」
その一言に俺は苦笑する。
正直ひよ目線からその一言が出てくるとは思いもしなかった。
「いや、別にそれはいいんだけどさ。相当危険な場ってこと分かってる。」
「でも、そんな危険な場にお頭も行くんですよね?」
「そうだな。だって危険じゃないし。」
「お頭。それ矛盾してませんか?」
「……あれ?ころには話してなかったか?俺って自分の危険なことに関しての予知能力あるから。」
「えっ?」
「……あ~ごめん。ひよにはあの日に話してたからころにも伝わってるもんだと思ってた。」
「えぇ~。お頭!?」
それに関しては本当に心の中で謝る。
いや。本当に忘れてた。話は進まないので少しだけ補足する。
「まぁ、滅多にみる機会がないし、種子島の弾丸斬ったときも余裕あったのはそれが理由。」
「あの、それってお家流のひとつじゃ。」
「う~ん。そういう感じじゃないのだけどな。つーか母さんの家系はちょっと複雑何だよ。」
「……?」
「気にしなくていいよ。まぁひよがいきたいんなら別についてくるのは正直ありなんだよ。ひよ願いって武士として手柄を上げるってことだったし。」
「そうなんですか?」
「うん。でも、何でこっちに?」
「あの、個人的なことなんですけど。一人きりはさすがに。」
「ん。あ~そうか。了解。確かに補佐役も配慮が足りてなかった。」
「えぇ~。いいんですか?」
「いいよ。そうする余裕はあるから。」
そんなことを話していると見知った忍びが入ってくる。
「お頭。もうそろそろ。」
「おう。んじゃ出陣するぞ。ころ。ひよ。」
「「はい。」」
「んじゃ行ってくる。」
と俺たちは出陣する。さて、ここからは楽しい戦の時間だ。
暫く進み久遠に挨拶に向かった後麦穂様、壬月に母衣衆などに適度戦のことを話す。
そして全員揃ったところで剣丞の方から話す。
今回入る場所になるのは細かい裏道。人が数人しか通れない獣道を使って潜入し、そして三の丸の門を開けるための簡単なお仕事である。
「確かに剣丞殿の仰る通り事態は進めば稲葉山城は落ちたも当然でしょう。しかし私は賛同しかねます。幾ら旭殿がいれど危険すぎます。」
「ん?そうか?滅茶苦茶簡単な任務なんだけど。もう幾度も潜入しているから。」
「……」
絶句する麦穂様に、どうやら壬月も呆れたようにしている。
「お前。それちゃんと許可はとったのか。」
「久遠に確認してからしましたよ。てかそうでもないとここまでの陣容や兵数までわからんだろ。」
「本当は冗談のつもりだったのだがな。」
「そうなの?」
「……お前にとっては簡単なのかもしれないけどさ。この世界どころか元の世界でもお前は異質だったよな?」
「いや。普通に何なら剣丞だけでも忍び込めるだけならできると思うけど。」
忍びについて詳しくないのか俺は軽く答え合わせをする。
「結構知らない人は多いんだけど基本的にこういう山に囲まれた城に関してはかなり楽。反対に堀に囲まれた城だったり人の手によって作られたものは忍び込めないことが多い。こういう攻めにくいというのは警備も集中しやすいんだ。おそらくだけど、見張りは三十人程度くらいで油断していることが多い。視界に入りにくい分見つかりにさにつながるからな。闇夜ではあるし、正直忍び込むだけなら忍びを学んでいるなら誰にでもできる。」
「言っとくけどそれは旭君だから言えることで雛には無理だよ。普通なら三十人に忍びは囲まれたらやられるし。」
「それは俺も同意なんだけど。」
「いや、普通に程度が分かれば減らす方法は戦いじゃなくていいわけなんだから。」
「あ~。そういうこと?」
雛でもそれくらいならっていうけど、剣丞はジト目をむけてくる。
どうせ俺な美濃兵を全滅させることができると思っているんだろうし、実際事実なんだけど。
「そういえばだれをつれていくんだ?」
「俺、剣丞、ひよ、ころそれとうちの忍び衆5人程度かな。いまのところ。ひよは身軽ですばしっこいのを生かして門を開ける係、その他で陽動しようかなって。多分これが一番成功率が高いだろうしな。」
「おけぃ。織田軍忍び隊筆頭がいうのなら任せる。」
「忍び隊筆頭って明言するんだな。」
「阿呆。今更何を言っておる。」
「まぁ、いいけど。」
「剣丞を頼むぞ。」
その言葉に俺は苦笑してしまう。そんなもん当然に決まってる。そして大まかな配置が説明され軍議が終わると俺は声を上げる。
「犬子。」
「わん?何ですか?」
「場内で待ってるからな。それまではうちの隊のこと頼むぞ。」
「へ?」
「俺が合流するまで兵二千前田衆が率いろ。」
「……わん。旭様もご武運を。」
「おう。行ってくる。」
その言葉で犬子の目には明らかに炎が宿る。もとよりこういうことができるのが利点の一つだ。
多分大丈夫だ。あいつならうまくやる。
「んじゃ剣丞。ひよ、ころ最終打ち合わせするからこっちに来て。」
「了解。」
「「はい。」」
そうやってかけてくる二人に俺は小さく笑う。
最終盤面になったからもうあとは陥落までの一本道だと。