剣丞の親友に戦闘狂がいたなら 作:まくろ
「よっと。」
「あら。旭じゃない。」
「あれ?帰蝶じゃん。久しぶり。」
「えぇ。旭また大変なことになったわね。」
「結局雛も俺の隊に入ったからな。壬月や麦穂様と並ぶ三千の兵に家老衆の一人になったからな。」
稲葉山城攻略から数週間が経ちようやく詩乃を迎えに来たのだがどうやら帰蝶のところにお世話になっていたらしく、俺は久遠の屋敷に来ていた。
結局話し合いの末、家老に昇進。所謂織田家で麦穂様と壬月と同じ役職に半年で駆け上がったことになる。
「……そういえば剣丞は?」
「ん?今は人事移動で黒母衣が護衛でもあるから。」
「あ~。南雲隊から離れたんだったわよね。剣丞。」
「まぁ和奏のところなら大丈夫だろ。それに南雲隊じゃなくなったし。」
「旭衆ね。家紋も富士に日の丸に変わったんでしょ?」
「何が変わるかと答えたらそこまで変わらないけど。」
「変わらないんだ。」
「俺は忍び衆を見ているから兵の鍛錬はころと犬子の仕事だよ。内政はひよが今は何とかしてくれてる。犬子と雛のところの内政官かなり優秀だったから俺は全体の忍び衆を鍛えてる。」
「あれは鍛えてるっというよりも、調教に近いんじゃないかなぁって雛は思ったりして。」
ついでに今その雛を護衛として連れている。雛曰くやっているほうもおかしけりゃそれを受け入れている俺もおかしいとのこと。
「調教?どんな鍛錬しているのよ。」
「身内同士での殺し合い」
「えっ?」
雛の言葉に俺は苦笑する。確かにそうなんだけど、まぁ三若に教えたときドン引きされたのは記憶に新しい。
「当然刃は入ってないんですけど、うちの隊自体で何でもありの模擬戦をして最初10人殺せた奴は訓練免除できるから必死に殺し合いをしているんですよ。何なら俺を殺せた奴は最初から免除でいいって伝えてますし。」
「でも最近じゃ火縄銃もそうだけど鎖鎌や手裏剣を使って本気で殺し合いしてない?」
「なんか緊迫感が足りないとか言ってるから」
「……そんなの森衆でもしないわよ。てか怪我人はどうしているのよ。」
「それがですね。不思議なことに怪我人出てないんですよ。」
「…えぇ。」
「まぁ、その鍛錬できるのって本当に精鋭の精鋭だからな。新入りとかはさすがにやらないぞ。」
「でも最初の100人相手にとって旭君一人で殺し合いしてたって言っていたけど。」
「ん?それくらいなら新兵ごときにやられるつもりではなかったしな。」
「…普通は新兵100人相手なら即死じゃないかな?」
まぁ武に関しては誰にも負けたくないし、多少寝る間を惜しんでやっているのもある。
雛には指示役として忍びを仕切ってもらっている。雛は気づいてないかもしれないけど、すでに知将として頭角を現してきているんだよなぁ。
ついでに戦闘員が600、諜報隊と工作隊が400くらいで防衛護衛に戦闘員のうち200が入る。
情報を管理するのは俺と詩乃、雛、麦穂様になっている。
「って忘れてた。詩乃いるか?井ノ口の復興手伝ってほしくて。」
「えぇ。いますよ。」
「ただいま。詩乃。」
「……はい。お帰りなさいませ。旭様。」
すると少しうれしそうな詩乃に俺は軽く頭を撫でる。少し羨ましそうに見ている帰蝶は思い出したかのように俺に告げる。
「そういえば久遠は元気?」
「大丈夫。忙しそうだから帰蝶が言っていたとおり食事とらなさそうだったからうちの隊で片手でつまめるものを差し出してるくらいか?」
「本当に旭がいるとありがたいわ。料理仲間っていなかったわけだし。今度剣丞の好きなものも教えてくれる?」
「いいよ。こっちも詩乃を預けてもらったり剣丞をそっちに預けているわけだし当然だろ?」
「…それと旭。あなたも時々休みなさいよ。詩乃が言ってたわよ。ずっと仕事してるって。」
「大丈夫。雛のところと犬子のところの内政官が滅茶苦茶優秀で仕事激減したから。」
恩賞でもらった内政官と二人のところの内政官はかなり優秀で、ようやく軌道にのった。これでようやく俺も一息入れられるようになるだろう。
「まぁそれでも今日までは旭衆仕事漬けだったわけだけど。」
「……ちなみにどんな。」
「えっと。井之口から岐阜に変更した後に忍び衆の指示。滝川衆との合同訓練に井之口の町人の調略時の褒賞金と復興計画案を話してた。」
「……復興計画案?」
「ある程度な。工期とかあるから結局のところ半年をめどに復興していこうって思ってる。それに元の井ノ口よりも商業計画とかを剣丞に依頼している。」
「剣丞に?」
「あいつはあぁいう町人との調略には長けている。人の心を掴む技術と寄り添う技術は高い。」
「それを貴方様がいいますか。」
「俺以上にそういう技術は剣丞は上手いよ。交渉とかは俺は剣丞に任せるくらいにはね。」
実際井ノ口を円滑に調略できたのは剣丞の腕が大きい。
墨俣のときのころとの交渉も剣丞に任せていたし。
「とりあえず美濃へ戻りましょうか。旭様。」
「おう。帰蝶も詩乃のことありがとうございました。」
「いえ。私も美濃のこと話せる子がいて楽しかったから。」
「……そっか。」
そういえば帰蝶も美濃出身だったか。
俺は正直政治のことや内政は最低限でしか触れられない。それが今後俺が織田家を支える基盤になるからだ。
それでも、昔の美濃を取り戻せるように少しでも頑張らないとな。
「おい。てめぇら!!早く木材持ってこい!!」
「了解。ここは取り壊しでいいんだよな。」
「えっと。ここはですね。」
「……旭様?これは。」
「うちの衆を出している。川並衆にも依頼して井之口の町をより良いものにするために区画整備や防災対策を練った街づくりをしているんだよ。」
「…」
詩乃は少し驚いたようにしている。
それもそのはず。井ノ口の町は既に次のステップへ歩み始めているのだから。
「ついでに略奪とかも麦穂様にお願いして防いでもらっていたんだ。今回ばかりは井ノ口の町の町人の協力がなければこんなに早急には落とせなかったしこれくらいするのは当然だよ」
「でもそれでもこの活気は。」
「それは久遠が発令した楽市楽座の復刻が大きい。それに警備活動に雛の部隊を使っているから。」
「治安もいいってことですか。」
「まだ全部が安全ってわけではないけどな。市内では盗難とかもまだあるらしいから忍び衆を使った警備隊も引くことになると思う」
少し詩乃が歩き始める。雛に目線を合わせると頷き少し離れたところに忍んだのを確認し元稲葉山城へ向かう。
稲葉山城から岐阜城へ名前を変えた城を回っていると三の丸方面に見知った4人が見える。
「あれ?珍しいなここでそろうなんて。」
「ん?旭と詩乃か。」
「そういえば昨日迎えに来たって言っておったな。」
「そうなんですか?」
剣丞と久遠、壬月と麦穂様という今の実権を担っているメンバーが勢揃いって本当に珍しい。
「搦手門の献策、大儀であった。」
「搦手門?」
「旭は知らなかったのか?」
「いや。詩乃から俺は門の開門後東美濃衆の平定の指示が出てたから。」
「旭様は結果がついた戦よりもそっちのほうが好きなのではと思いまして。」
「うん。正解。てか俺もそう思ってたし。」
「旭様って戦術理解かなり高いですよね?兵法は読まないとお聞きしてましたが。」
「ある程度人じゃないけど戦場に潜ってきたからな。俺は。」
俺の言葉に剣丞は苦笑する。
剣丞も俺の境遇は知っているのである程度は戦術を立てられるのは知っている。
「でも、それでいて旭さんや剣丞様の策は心臓に悪すぎます。」
「あの、そういえば剣丞様が三の丸を落とす策を考えたのですよね?どういったものなのですか?」
「5人で裏から忍び込んで、旭が陽動。俺たちが門を開けたんだよ。」
「5人でですか?」
「旭はそれでいて陽動ついでに300の兵を一人で斬り捨てているからな。」
「……旭様何しているんですか。」
「いや。それに関しては俺がお願いというよりも旭が少しだけ暴れられるようにしていたんだよ。」
「……えぇ。」
「子夜叉でさえ引いておったぞ。一人で潜入したあげく、三百人を撫で切りにし、それが終わったと思ったら東美濃の平定に向かったとなったら。」
そこまで無茶をした覚えはないんだけど。正直城攻めは初めてだったし、もう数百人は殺せたと思っているんだけど。
「それが俺ですから。」
「まぁ、旭ならそれくらいはするよな。」
「……本当におぬしらは」
呆れたようにする久遠たちに俺は苦笑する。俺はそれ以上に多くの修羅場を超えてきたのだ。対300とはいえど実質的には3~40人ほどの隊をつぶしていっただけだしそれくらいは簡単だ。
「まぁどうであれ南雲旭という名は天下に轟いたのは事実。今後は調略や降伏する兵も出てくるでしょう。」
「……えぇ。それはそうなんですが……剣丞様、旭様を止めることって。」
「無理だろうな。根っからの武人でこいつの場合、旭が先頭で武を振うことによって兵の士気や勢いがある部隊だからな。」
「それはそうなんですが。」
「てか俺ばっかり責められるけど、策練ったの剣丞だからな。」
「……うむ。確かにそうだ。まぁお互いに寿命が縮まる策をするのは違いない。」
「えっ?俺も?」
「お主種子島の弾丸を斬り落としたと聞いたぞ。」
「いや。たった一丁だったし。」
「……いや。それでも普通なら死ぬぞ。」
壬月様が呆れたようにする。でも俺は本当に30丁程度であれば死なない自信があるのだが。
「まぁ、雑談はこれくらいにして、今日は詩乃に付き合う予定だから現場のことはころに言ってくれ。ひよところの総指揮はどう?」
「うむ。上手く回っておる。井之口も思った以上に復興が早い。治安も滝川衆が常駐してくれているおかげで野党も防げています。」
「それはころの人脈を使っているし、川並衆は墨俣の件で築城とか建設に自信がついたんだろうな。」
「えぇ。そういう采配は旭様の方が得意なんでしょう。人の才を見抜くのがお上手なので。」
多分お互いにそういうところは信用しているのもあって策を決めるのは詩乃で人材を決めるのは俺という流れになっている。
「…なんか。そういうところは旭らしいよな。」
剣丞が笑っている。そんな中で詩乃を迎えに行った後は適当に復興の地を巡り、久しぶりにゆっくりとした街を散歩したのであった。