剣丞の親友に戦闘狂がいたなら 作:まくろ
「おーい旭。」
「相変わらずエグい匂いをしておるのぉ。」
「ん?森一家か。」
「また鬼か?」
深夜日が回った直後。俺はいつも通り真夜中の山林を駆け巡っていた。周囲には鬼の亡骸が転がっており、その数およそ三十といったところか。
「……うへぇ。コイツも頸斬りされてる。」
「いや、殺すには頸か目をぐり抜くのかが楽だろ?」
「…いや、それをお主から話されるところが怖いのだが。」
「てかよく場所わかったな。」
「間者を放ってもほぼ捕まらなかったからのう。どうせこういうことだろうとは思ってはいたから若い奴に殲滅してない鬼の巣を張らせておったのじゃ。」
「……やっぱりバレてた?」
「まぁここは狩場だからな。若いものから儂らの他に鬼を駆逐する輩がいると聞いたらお主しか居ないだろう。」
「そりゃそうだ。」
俺の笑い声に森一家も笑う。俺と森一家はあの夜以来鬼の巣の殲滅に精を出している。まぁ、今日はもう一人付き人がいるんだけど。
「旭くん。やっぱり東に三里程離れたところにまたあったよ。って森衆?」
「…あっ?確かお前って殿の馬廻り衆の」
「今は俺の隊だよ。雛。」
「う、うん。やっぱり旭くんのいった通りだと思う。」
「………はぁ。了承。森一家今晩付き合えるか?……鬼退治といくけど。」
「言った通り?どういうことだ?」
「…相当鬼の巣が多い。明らかに自然発生したとは思えないくらいにはな。」
「……ほう。」
所謂人為的に出来たもの。そして美濃と尾張に同時発見している事により複数人が鬼を作れると示唆している。
「…何やら近畿も鬼が大量発生しているらしいし、ちょっと久遠と剣丞を巻き込んだ方が良さそうだな。」
「近畿か。狙いは京か?」
「分からん。……だけど正直相当ヤバそうな雰囲気がある。水面下でここまで鬼が広がっているということは。今後日の丸が鬼だらけになる可能性だってあるしな。」
その言葉に桐子さんも渋い顔をする。相当に戦闘狂であれどこの人は民間人を襲うこととかは決してなく、何なら民からも慕われているほと良い政治をしている。
「……旭。母ぁ?」
「雛。小夜叉。覚悟しとけ。……今後この世は荒れるぞ。」
「……えっ?」
「あぁ。小僧の言う通りだ。旭よいな。」
「ある程度鬼についてしれたから美濃の鬼も殺していいよ。麦穂さんには俺から告げておくから……とりあえず今日は俺と雛も狩らせてもらうぞ。」
「……えっ雛も?」
「今後は人ではなく鬼相手に戦が起こるだろうからな。」
「…!」
雛もその重大さが理解できたのだろう。
……雛も視線を引き締める。
「……旭くんは知ってたの?」
「鬼という意味不明な奴がいたら調べるだろ。なんなら少ないけど、領民から鬼を山で見たって奴らがいたしな。まぁ、猟師が……鬼が現れたときから比例するように狼やイノシシ、野犬の目撃数が減っているって聞かなければ調べなかったと思うけどな。」
「……何?」
「今日ではっきりした。俺が鬼の巣を当ててるのは、元々そこにはそういう生物の巣があったところだよ。んで、こっちは予想だけど、鬼っていうのはそういう動物を何者かによって鬼にされているんだと。」
その言葉に雛は絶句する。
それは桐琴さんや小夜叉も同じらしく俺の方を見る。
「…でもどうして鬼を作っているの?」
「さぁ。それに関しては分からんけど……多分だけど、俺と剣丞みたいな奴がいるんだろ。」
「……ほう?」
「どこから来たのかは知らないけどそれこそ外史から来た奴が鬼を広げてると考えるのが妥当だろう。それこそ歴史に干渉しようとしているやつがな。」
俺の言葉に桐琴さんは舌打ちする。そして槍を俺の方に向ける。
雛が前に出ようとするが俺はそれを抑え桐琴の意見を聞く。
「小僧。何故それが分かる。」
「元々俺の本職は人ではなく、鬼のような魔物を殺すのが本職だからだよ。」
「魔物?」
「魔に染まったもの。所謂人を殺すために生まれた生物のことだ。」
その言葉に桐琴さんは睨みをつける。
「……お主の世界は平和であったと聞いておるが。」
「俺の故郷ではな。でも、母さんは俺が産まれた星ではなく、そういう魔物が蔓延る世界で産まれたんだ。俺の親父も俺みたいに別世界にとばされた経験があるんだよ。剣丞も一度連れていったことがあるから知ってる。なんなら郊外を歩こうとするならそういう魔物に襲われても文句は言えないようなところだし、俺は慣れてるけど剣丞は死にかけたからな。」
「……ほう。そんな世界があるのか。」
「まぁ、そこは魔物が自然発生するからなんとも言えないけど……今回は生物を魔物にできるからこそ余程たちが悪い」
「……どういうことだ母ぁ。」
「小僧が言ってるのは人が鬼にされる可能性があるということだ。」
槍を下ろす桐琴に俺も頷く。小夜叉や雛もその事態はまずいと思っているだろうが。俺は最悪の事態を言葉にする。
「…もしそうなったら厄介どころか、最悪国すら落ちるだろうな。」
「えっ?」
「…ありえるな。鬼と呼ばれるものは旭やワシらじゃともかく足軽程度じゃ相手にならん。」
「最悪数万の鬼が連携を取ったら鬼が天下をとってもおかしくはないと思う。なんならその世界では魔物で国が滅びたところもあるからな。まぁ、それでも動けない。犯人もどうやって鬼が生み出されてるのも分かってない。それに完全に鬼がまだ人為的に出来たものとは限らない。一応久遠や麦穂さん、壬月には伝えるつもりだけど、確定まで言えることではない。」
「……でも、それじゃあ後手になるんじゃねーの?」
「だから厄介なんだよ。鬼を産み出してる奴らや目的も見えない以上これからは不利な戦になるだろうからな。」
その言葉に小夜叉が舌打ちをする。後手に回らざるを得ないのがこの鬼との戦いである。
「……ならどうするの?」
「鬼を殲滅するしかないだろ。近畿方面から流れてきてるんなら伊勢方面を皆殺しにしてくれていい。……俺は一度近畿方面に向かう。体裁的に近江の市と眞琴に会いに行くって言えば最悪近江には出られる。一応側室だしな。」
「小僧それは話していいのか?」
「ある程度こうなったら情報開示するしかないだろ。ひよが正室であるのは向こうも納得してるらしいしそっちは纏ってるらしい。」
なんなら浅井の眞琴に関してはかなり憧れているらしいから側室でも大歓迎とのこと。問題は。まぁ予想はしてたけど徳川の方だ。
「でも旭くんいいの?」
「ん?俺の婚約で平和が買えるんなら安いもんだろ。それに、嫌な奴だったら今後余程のことがない限りは会わなければいい。それだけだろ?」
「旭。相当覚悟決まっておるな。」
「…そうか?まぁ、俺がやることは単純だよ。……大切な人を守るために俺たちの前に立つ敵は皆殺しにする。簡単な話だろ?」
その言葉に三人は少し身体を一歩下がる。…久しぶりに威圧しちゃったか。
「とりあえず朝まで付き合え。この下は井之口の街だ。……詩乃が愛したこの街を鬼だらけにするわけにはいかないからな。今日中にこの周辺にいる魔物を皆殺しにするぞ。」
その言葉で俺は雛が告げた場所へ向かおうすると雛が俺の服を引っ張り顔を覗き込んでくる
「ん?どうした?」
「大切な人って雛も含まれているのかなって。」
「含まれてるよ。ずっと前からな。」
「…そっか〜。なら、雛も頑張らないとね。」
「おう。援護頼むよ。雛。」
「任せて〜」
そうして歩く先に鬼の巣を見かける。総勢10匹ほど小さな巣だ。
それを見つけると同時に四本の刃で鬼を斬り伏せる。
その鬼の巣を蹴散らすまで数分もかからなかった。