剣丞の親友に戦闘狂がいたなら 作:まくろ
天下分け目の桶狭間の戦いが終わりそれから七日がたった時剣丞が起きたという知らせを受けたのは目を覚ました昼過ぎのことであった。俺は久遠様の屋敷へと向かい案内を受ける。そしてのほほんと外の風景を眺めている剣丞の頭をコツンと叩いた。
「よっ!剣丞!!」
「…えっ?旭!?」
驚いたようにしている剣丞に俺は苦笑してしまう。
「よう。かなり長い間寝てたな。お前。」
「…えっと、旭。これって。」
「一刀伯父さんから何も聞いてないのか?まぁ、恐らくパラレルワールドって奴だろうな。伯父さん曰く外史と呼んでるらしい。」
「……やっぱりそうなのか?」
「ついでに一刀伯父さんに刀預かってるから剣丞持ってたら?俺は自分の小太刀あるし。」
と事前にもらっていた刀を剣丞に渡す。
「でも何で織田家に配属されてるんだ?」
「ん?落ちた時が桶狭間の戦いだったからなぁ。大雨の中であったのが久遠様だったわけ。行くあてもなかったから俺も参戦して、手柄をたてたら雇ってもらえるようにしてもらった。今川義元討ち取ったからここにいるってわけ。」
「……お前何やっているんだよ。」
「仕方ないだろ?織田家に信用されるにはそうするしかなかったんだよ。天から落ちてきて身寄りもないのに二人でそれも剣丞が気絶したなかだったら死ぬぞ。ゲリラ豪雨もあったし低体温症も怖かったからなぁ。」
なるべくあの場面で露頭に迷っていたら俺はともかく剣丞は死んでいた可能性が高いだろう。
「…お前学校の成績悪いのになんでそこは頭回るんだよ。」
「道場で鍛えたりと異世界で冒険者してたりと剣丞のところの訓練を受けていたらなぁ。つーかお前もそれくらいならできるだろ?」
「……まぁ、今川義元を討ち取るという無茶を除けばな。」
まぁ、確かに武道に関しては俺の方が鍛えられてるからなぁ。
「まぁ、久遠様が暫くは俺と剣丞の保護はしてくれるらしいから、どうせなら織田家で奉公した方がいいだろ?行き場もないし。そういや久遠様とあったか?」
「久遠?あーまぁ、な。」
「……?何があった?」
明らかにおかしい挙動になった剣丞に俺は首を傾げる。
「久遠の夫になった。」
「……?は?」
「実はな。」
と話し始める剣丞。どうやら在食住の提供の代わりに近くにいることで隣国などから崇められるなど大きな影響を与えられやすいのと、後は俺が少し手柄を上げすぎたらしい。およそ20の兵で今川義元を討ち取る。そんな人物の友達ってことなのでなるべく近くにおいておきたいとのこと。
「まぁ、打算だらけだけどな。得も多いし。何より、あんなに可愛い女の子が奥さんになってくれるしね。」
「……お前本当に伯父さんと似てきてるな。否定はできないけど。」
「そういう旭は何してたんだ?」
「俺?生活道具を買いなおして、服とかの調達に長屋の掃除、戦争の後始末と褒美にもらった兵を調きょ……訓練してた。」
「お前いま調教って言ったか?」
なお桶狭間の戦いでは俺は住まいと兵100、そしておそらく見張り目的であるが家臣が付いてきたのだ。なお家臣はまだ誰になるかは決まってないらしく、後回しになっている。
「……だってかなり弱いしなぁ。尾張兵。少しばかり八重樫の訓練やってみたから。」
「うげ。マジで」
一週間のうちに叩き込んだのである程度形にはなった。形になったというか。無理やり使えるようにしたというのが正しい。そんなことを雑談していると外から襖を叩く音が聞こえる。
「…あの?旭様?」
「……ん?俺?」
「少しばかりお時間いただけましょうか?」
「……ん。いいぞ。」
すると剣丞が頷くのが見えたから了承を出すとするとオレンジ髪のショートカットで桶狭間の戦いで見覚えのある少女が平伏していた。
「……ひよだったか?」
「はい!お殿様より旭様のお世話を命じられました!!木下藤吉郎ひよ子秀吉と申します。今後ともよろしくお願いします。」
「えっ?」
木下藤吉郎ってことは。豊臣秀吉よな?
……マジで?
「お世話係って……あぁそういうことか。……えっとそのままひよでいいか?」
「はい!!えっと。」
「旭でいいよ。んでこっちが同郷の新田剣丞。」
「よろしくね。ひよさん。」
「はい!それでなんですけど。実はお世話係といっても何をすれば分からなくて。」
「お世話係ってことは他の世界から来た旭の補佐ってこと?」
「それもあるだろうけど、武将として武功を立てろってことだろ?」
「えぇ。そのとおりよ。」
すると襖が開き見知らぬ女性が入ってくる。
「えっと?」
「久遠の奥さんの帰蝶さん。」
「あぁ、お初にお目にかかります。南雲旭です。」
俺が頭を下げるとするとその女の人も頭を下げる。
「えぇ。私、織田三郎が妻、帰蝶と申します。それで何だけどひよも貴方が住んでいる長屋に引っ越すことになるわ。そこのあなたもね。」
「あーそれって。」
「えぇ。南雲隊に入ってもらうわ。久遠はいずれは独立させるらしいけど。」
とりあえずはそういうことらしい。つまり一人の部下は剣丞だと思っていたのはいいんだけど。ひよは何できるかまだ分からないしなぁ。
「あの?お頭?」
「……」
「お頭!!」
「…旭のことじゃないか?」
「……えっ?俺のこと?」
「そうですよ!!南雲隊の隊長なんですから!」
あ~そうか。一応上下関係ってことでもあるのか。
「…それにね。ひよ。桶狭間での褒美にあなたの隊に入りたいって言ったのよ。」
「……へ?何で?」
「そりゃあなたが今川義元を討ち取ったからでしょ。尾張中から天から舞い降りた英雄。それもそこの剣丞のために戦に参戦して、たった単騎で万のいる今川軍に突っ込み、その中で名のある武将数人と今川義元を討ち取ったって噂してるわ。色々尾ひれはついているでしょうけど。」
するとジト目で俺を見てくる帰蝶姫。でもそれ俺心当たりがあるというか、そういえばそんなことをやったような。
「……あの、帰蝶様。」
「何かしら。」
「それ全て本当のことです。」
「……えっ?」
俺は目をそらす。剣丞と帰蝶の目線が痛い。
「……本当なの?」
「は、はい。お頭が名乗りも上げずに真っ直ぐに今川軍の大将に突っ込んでいったので、そしたらすぐに名乗りを上げられたので、私たち何もやることがなくて。だから本当は恩賞を貰えるのも差し出がましいかったんですけど。」
「旭、お前本当に何してるんだ?」
「いや、だって本当に無抵抗だったし、油断もしてたから、守備兵もいなかったし、司令官だけ殺せば手薄のまま殺せるなぁって。」
剣丞に呆れられるけど、帰蝶は驚きを隠せないのか俺をじっと見てくる。
「まぁ、旭がそれくらいできることは知ってるしな。」
「ちょっ、ちょっとそんなに強いの?あなた。」
「確か八重樫流の師範代持ってなかったか?剣に関しては。」
「剣じゃなく忍術においても師範代はもってるぞ?だから剣丞にある程度教えてただろ。」
「……あの、お頭って実は凄い人だったんですか?」
「俺達がいた世界では剣道っていう剣術があるんだけど、確か小学生の頃から負けなしじゃなかったか?神童って言われていたよな。」
「いや、流石に師範や雫さんには負けてたけど、大会では一度も負けたことないな。」
俺はそういうと二人は驚きを隠せないでいる。
「えっ?でもお頭あの時小太刀使ってませんでした?」
「だってそっちのほうが強いし。」
「…本当に出鱈目的な強さなんだよ。まるでどこから攻撃が来るか分かってるような立ち回りをしてくるから。まぁ弓は下手だけど。」
まぁ、実際に見えてるしなぁ。俺は。危険になればその先の未来が見えるわけだし。
「それなら剣丞様も強いんですか?」
「剣丞は反対に朱里叔母さん知略とか褒められてなかった?まぁ、普通に剣術は上手い方だと思うけど、壬月さんや麦穂さんよりは強くないかなぁ。それよりも忍に適正がありそうだし。」
「そうなのか?」
「お前あそこまでの潜入術持っておいて適正がないって方が難しいぞ。」
正直忍術に関してはかなり八重樫でも通用するくらいには才能の塊だと思う。まぁ教え方も良かったのだと思うが。
「あの、もしかしてすることってありませんか?」
「いや、裏方も必要だろ。粗食の管理もそうだし、戦じゃなくても内政は俺達苦手だぞ。それに兵を率いるのは始めてだからできれば経験者を雇いたいし。」
「ふーん。ちゃんと見えてるのね。」
「まぁな。それに、俺一人じゃ戦えないだろ。桶狭間のときでも俺は義元が誰だか分からなかったしな。一人でやれることはある程度予測できてるからな。」
実際桶狭間の戦いではある程度幸運も重なっている。ゲリラ豪雨もあって足元が悪かったことなど色々あるのだ。
「…だからひよ。頼りにしてるからな。頼りないかもしれないけどよろしくお願いします。」
「ひゃあ!!お頭、滅相もない!!頭なんか下げないで下さいよ!!」
「ん?…まぁ、いいか。剣丞はこれからどうする?」
「俺、うーんもう少し寝てようかな。」
「……了解。んじゃ、ひよ。せっかくだし、清洲の街案内してくれないかな?おすすめの店とか教えてほしいんだけど。」
「……えっ。私がですか?」
「頼るって言っただろ。というわけで俺らはそろそろお暇するわ。多分今度会うのは評定だろうな。んじゃまたな。」
「……ちょ、ちょっと!!お頭!!」
そう言ってそそくさと外へ向かう。多分ここからあいつが信用されるには多分俺がいたら邪魔だよな。
頑張れここが正念場だぞ。俺はそう思いながら町へとでる。するとひよが少し離れた位置で後ろに隠れてようとしていた
「……何でそんなに離れてるんだ?」
「だって恐れ多いですよ。」
こっちもこっちでひよの距離感をどうにかすることから始まりそうだった。