剣丞の親友に戦闘狂がいたなら   作:まくろ

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鬼との出会い

「あの?お頭?どこに行くんですか?」

 

結局恐る恐るだが隣を歩いてくれているひよが聞いてくる。

 

「ん?特に何も決めてない。というより清洲を案内してくれるって言ってなかった?」

「今からですか?」

「いや。元々俺今日休暇の日なんだよ。だから恩賞ももらったし。ひよのことも色々知りたいしな。」

「私のことですか?」

 

不思議そうにしているひよに俺は頷く。

 

「そう。元々気になっていたんだけど、何で俺なんだ?仕官先なら麦穂さんや壬月さんの方がよくなかったのか?」

「い、いえ。田楽狭間の天人って呼ばれているお頭の側仕えになれるんですよ!!それに私は田楽狭間で何もできませんでしたし。」

 

ひよは少し悲しそうにしている。もしかして地雷だったか?つーかおれ田楽狭間の天人って言われてるのか。

まぁ、あの戦は剣丞を助けるために無理矢理武功を立てた戦でもあったしなぁ。

 

「……というよりひよって戦得意なの?」

「えっ?」

「いや、俺、体の作りからみたらある程度相手の力量はわかるけど、そこまで戦得意じゃないだろ?頸とか取れるの?」

「うぅ。確かにそういうのは得意じゃないですけど。」

「それなら俺が戦では先鋒になるかなぁ。ひよは裏方になるけど、内政とかはできる。ある程度麦穂さんに相談して給金とかも決めたのはいいけど、そういったこと苦手だからできればひよに任せたいんだけど。」

「えっはい!!計算だけは得意ですから。」

「それなら内政はなんとかなりそうだな。とりあえずひよの給金はこれくらいでいいか?」

 

俺は帳簿を見せる。一応他の隊よりも少し多くしている。

 

「えっと、これ多すぎませんか!?」

「これくらいじゃないと面目立たないんだよ。言っとくけど、ひよってこの部隊なら俺の次に発言力あるんだぞ。」

「そ、そんなことを言われても、この額で裕福に暮らしても二月は暮らせますよ!!」

「…それくらい期待してるってこと。誠意は言葉じゃなくて金額って言うしな。」

「うぅ。期待されてるのは分かりましたけど。」

 

俺の言葉にひよが頭を抱えている。俺はその姿に小さく微笑んでしまう。

そういう謙虚なところが俺は安心できるんだよなぁ。正直もう少し低めに設定している給金の案も考えていたけど、これで良かったと感じてしまう。

…久遠には感謝しないとな。

俺はそう思いながらも少しだけ聞いてみたいことがあった。

 

「ひよは出世したいんだったか?」

「はい!私、生まれも育ちも貧乏でして、立派な身分になって家族を養いたいなって。」

「あぁそういや、織田家って津島あるから給金少し高いのか。」

 

津島港は織田家が石高が低めなのに金銭的に恵まれてる原因でもある。実際にこの街にはカップル連れも多いのだ。

 

「…まぁ、それなら少しは戦場にも立たせようかな。裏方を仕切って貰えると助かる。」

「はい。そのくらいなら。」

「……あっそうそう。今日の夜、久遠から少し巡回するような任務あるんだけど、ひよもくる?」

「……えっ、夜ですか?」

 

ひよは首を傾げる。俺は頷くと一言告げる。

 

「鬼の調査だってさ。なんか人肉を食べるとのことらしい。」

 

 

夜遅く。どうやら外出するとのことなので剣丞の護衛を兼ねてくれと頼まれたのだが、

 

「ひよって変死体のこと聞いてるか?」

「は、はい!!馬廻衆だった時に殿様からきいてます。」

「久遠様がか。……ということは鬼はともかく変死体が上がっていることには違いないのか。」

「変死体ね。旭は何か覚えてるか?」

「いや。何も。まぁ、変死体ってことは獣の類か本物の鬼であることが高いことだな。」

「……へ?人間ってことはないのか。」

「ほぼないと思ってる。というよりも刀や槍がある時点で取るんだったら頸とかだろ。それなら首無し死体とかで噂になるだろ。」

「…あぁそういやこの時代って頸切りって時々あるのか。」

「有名な奴の頸が自分の名声を高めるくらいだからな。」

「あの?そういうことってお頭のところにはなかったんですか?」

 

そういえばひよは知らないのか。俺達がいた世界を。

 

「俺達は平和な世界から来たからね。戦い慣れているのはこいつくらいだろ。」

「ひっでぇな。まぁ、俺もある程度剣丞には鍛えていたし、戦えるようにはしてるだろ?」

「それがこのためとは思ってないだろ?」

 

まぁ、異世界転移しますよ。なんて信じてくれないだろうな。分かりきってたからなぁ。一刀さん。

 

「でも月明かりがこんなに明るいなんて思わなかったな。」

「こっちは真っ暗でも空気中のモヤは確実にあるからな。星もここまで綺麗には見えないぞ。」

「…そうなのか。でも、我ながら思うけど、動じてないよなぁ俺達。」

「……正直元の世界ではお互いに保護者同士で苦労してたからだろ。」

「そうだけど、こんな淡泊な奴だから彼女もできないんだろうな。」

 

人誑しの才がないわけではないんだけどな。こいつ。

俺は何人か剣丞のことを好きだった奴も知ってるし、なんなら俺と絡むような奴だ。お人好しであることは分かっている。

そんなことを話しながら巡回を始めて数分が経とうとしていた。

 

「きゃ!!誰か助けて!!」

 

そんな声がかすかに聞こえた。

 

「……剣丞行くぞ!!どうやら当たりのようだ!」

「……えっ?」

「ひよはそこの後ろにいる二人に保護してもらえ。」

「えっ、ちょ、ちょっとお頭!!」

 

俺は真っ先に飛び出す近くの塀をよじ登り真っ先に声のしたほうに走り出す。

するとそこには着物姿の女性が腰を抜かしている姿と、

 

すでに上半身のない、紺色の和服を着た人を食べる化け物ともう一人の何処かでみた覚え女性に襲いかかろうとする化け物姿だった。

 

俺はすぐさま飛び降りこの世界で買った刀を差し出す。

 

「……っ!」

 

思った以上に力が強く押されることにイラつきを覚える。

 

「あの、貴方は。」

「織田家の家臣だよ。……まぁ名乗るほどでもないから気にするな。」

「あの、ケイシュウさんは。」

「……あの男性か。悪いけど、間に合わなかったな。」

「そ、そんな。」

 

まぁ、それでも一人は助けられることはできたか。

 

「旭!!」

 

その声に俺は軽く舌打ちしてしまう。その名前は出さないで欲しかったなぁ。

 

「剣丞。その女性連れて下がれ。流石にこの路地で女性を庇って戦うことなんて出来ないしな。」

「っ!分かった!!えっと援軍は?」

「要らない。……多分どうにかなるしな。」

 

そして俺は刀を構える。力も速さもおそらくはかなり高い部類に入るだろう鬼には流石に機動力では躱せないだろう。

でも自分よりも格上相手はそれなりに戦ってきてるんだよなぁ。

さてと、お手並み拝見といくか。

刀は刀身が小太刀よりも長く守りを固めるにはちょうどいい。それに今一匹は餌にかじりついているようだし速さにも力にもついていけるはず。

そしてその鬼が動き始めると俺は初撃を流し少しばかり力を加えその後斬る。

力で押し切ろうとしたのだろう。体がねじれ体勢を崩れた先を切り込む感触は良かったが一撃で倒れた感触はなかった。

早いけどその分体勢を整え体を振り向く時間はかなり時間がかかる。その間に俺は数回斬り込むと、その生物は動きを止めた。

 

「……弱いな。お前。」

 

動きは単調。それも行動パターンも変わらないのであることが予測される。何処かの大迷宮を元に階層を考えると40層くらいだろうか。

 

「……さてと後一匹か。」

 

俺は刀を握るともう一匹の方に向ける。そして鬼は食事を終え始めてこちらの方を向く。

すると後ろの方に仲間の死体があるのに気づいたのであろう上の方に声を上げた。

 

すると前後に数匹の鬼が現れる。2匹ずつだから合計4体か。

うーん。流石に挟撃は厳しいよなぁ。……奥の手でも使おうかと迷っていた先だった。

 

「ひゃあーーーはぁぁーー」

 

そんな何処かの世紀末みたいな声が、聞こえるとそこには奥から一人の女の子が槍を構えて一閃を切り出す。

俺よりも少し年下であろう少女の槍はとても派手そうに見えて合理的な槍さばきのは見てわかった。ので俺は後ろを見て小さく微笑む。

 

「……そっちは大丈夫そうだな。さて力量も分かったし……皆殺しにするか。」

 

と俺も剣を鞘にしまい小太刀を二つ構えて二匹の鬼に走り込む。

その後鬼を蹴散らすまで数分程度で片付くのであった。

 

「いやぁ~オメェ強えな!!どこの組のもんだ!!」

 

するとそっちも終わったのか槍を抱えて笑っている少女に俺も苦笑してしまう。

 

「南雲だよ。南雲隊。」

「あっ?確か田楽狭間の天人の隊か?確かあそこって新兵が多かったはずだがこんなに強い奴もいたんだな。」

 

あー。なるほど。それならあの弱さも納得だな。うちの兵本当に弱いんだよなぁと思っていると

 

「あん。クソガキ。全部殺り終わったのか?」

「母っ!そんなもん皆殺しにしたに決まってるだろ。……まぁ二匹ほど取られたけど。」

「お頭!!無事ですか!!」

「ん?ひよか。大丈夫。怪我一つないから。」

 

すると大柄な見知らぬ女性と見知った顔の少女が近づいてくる。

 

「お頭?お前みたいなお頭織田家にいたか?」

「南雲隊?もしかしてお前があの田楽狭間の天人か?」

「……そのあだ名嫌なんだけどなぁ。」

「…やっぱり小僧相当やるな。おい!サル。」

「は、ひゃい!!」

 

噛みまくりでありながら答えるひよに俺は苦笑してしまう。こういった時も魅力の一つなんだろうな。

 

「もしかして田楽狭間の噂は本当なのか?コヤツが今川義元を討ったというのは。」

「ほ、本当です!!」

「ほう。それが本当なら楽しめそうだな。」

 

すると後ろから槍を抜き出し、そしてひよの方に一閃する。

 

「っ!」

 

俺はすぐさま一歩引きひよを片手でひきながら刀で振りかざされた槍を止める。

 

「……えっ?」

「…ほう。やはり防ぐか。」

「たち悪すぎですよ。俺ではなくてひよを狙うなんて。」

「小僧なら防げるだろう。」

「まず当てる気なんてなかったでしょうに。」

 

するとカカカと笑う女性に少しだけ聞き覚えがあった。こんな無茶苦茶な織田家の家臣といえば、

 

「もしかして森一家ですか?」

「おうよ。泣く子も黙る森一家とは俺達のことよ。」

「……あぁ。なるほどなぁ。」

 

尾張最凶と呼ばれるのは聞いているけどここまでぶっ飛んでいたことは流石に予想してなかったな。

 

「ほう。森一家と聞いても恐れぬか。」

「あいにく、うちの爺ちゃんとうちの門下がそんな感じなんで。……いや母さんも親父も戦いのときは同じみたいなもんか。」

「あの、お頭。どういう家庭に育ったんですか?お頭って平和な国で育ったんですよね。」

「阿呆。小僧の強さはいくつか修羅を乗り越えてないと出ないはずじゃ。……しかもまだ、本気でお主剣を振ってないだろ。」

 

あっ。そこバレるんだ。剣丞にならバレるかもとは思ってたけど流石職業軍人。

 

「殺さない相手に本気なんて出せるわけないじゃないですか。鬼も全然歯ごたえないし。」

「しかし戦場だといつ殺されてもおかしくはないのだぞ。」

「分かってますよ。……ただいつもは殺し合いに慣れてる分こういった虐殺は苦手なんですよね。」

 

元々獣を狩るのは慣れているし、戦うのは好きな方だが、弱いもの虐めは苦手なのだ。

 

「…小僧相当狂っておるな。」

「狂ってるのはお互い様ですよね。」

「ほう。言うではないか。しかし、相当腕が立つようじゃのう。」

 

すると笑い出す大柄の女性にその娘である女性は不思議そうにしている。

 

「ワシの名前は森三左門可成。通称は桐琴。そこのクソガキは森長可。通称小夜叉だ。」

「母ぁ!?」

「南雲旭。南雲でも旭でもいい。通称はないから好きに呼んでくれ。」

「お、お頭!」

「フフ。今度会う時は酒でもご馳走しよう。クソガキ帰るぞ。帰って酒だ!」

「お、おう!!」

 

少し戸惑いながら帰っていく小夜叉と呼ばれた女性に少し呆れつつ俺はその場を見渡した時。

 

「……えっ?」

 

その地点にはすでに倒した鬼は存在せず、すでに更地であった。

 

「あのーお頭?」

「ひよ。鬼の死体どこにいったか分かるか。」

「えっ?って鬼が出たんですか!!」

 

ひよは、知らないとなるとその以前。殺した後にすぐにいなくなったと仮定するのが正しいか。そう考えると、この鬼と呼ばれる生物はどこに消えたのであろう。

 

「ゴホン。旭殿その話詳しく聞かせてもらいますか?」

「ん?」

 

すると織田家家老の二人と剣丞の姿が見える。そこには保護した女の人はいなかったので既に解放したのだろう。

穏やかな性格なのは俺が知っている武将丹羽長秀と呼ばれる武将の通称麦穂さんも壬月さんも桶狭間の戦いの論功褒賞以来か。

 

「論功褒賞以来ですね。お二人とも。」

「えぇ。ところで、お二人の仲が宜しいのはいいことですが、時と場所を考えて貰えると。」

「……?」

 

俺が今の姿を見るとひよを守っていたように腕で抱きしめたようにしていた。

 

「あぁなるほどなぁ。……悪いな。咄嗟とはいえ。」

「い、いえ!」

「んで話戻すんだけだけど、どこからみてました?」

「いえ。私たちは保護した女性から話を聞いていましたので。」

「あー。すいません。お手数おかけしちゃって。……恨んでましたよね。あの女性。」

 

俺の言葉に少し息を呑む剣丞とひよ。壬月さんも麦穂さんも言葉に困っている。

 

「なんで分かったんだ?」

「亡くなった男性恐らくだけど、婚約者もしくはお互いに想い合ってる同士だ…う。夜に男女二人組でいたらどちらかが逢引でも誘ったんだろ。まぁ、仕方ないとはいえ恨まれる覚悟はしていたよ。片方が既に食べられていた状況だったらな。それに男性が食べられていたのが決定的だよ。……彼女を死んでも守りたかったんだろ。その人は。」

「えぇ。来月婚姻を挙げるために買い物に来たとのことでした。そしたら山の方から鬼が現れたとのことらしいです。」

「……なるほどなぁ。」

 

多分俺も剣丞も同じことをするのであろう。少しだけやるせない気持ちが俺も剣丞もあるだろう。

 

「……でも、旭は。」

「…あぁ。やれることはやったとは思うけどなんかなぁ。……助けたとは言い難いな。」

「えぇ…犠牲者は出てますしね。」

「だけどまぁ、今はともかくさっきの奴のことだけど。仲間がいるようだけど大丈夫なの?」

「……大丈夫じゃないから俺にお役目が来たんだろ。……一匹程度なら剣丞もなんとかなりそうだけど、流石に群れなら厳しいだろうな。俺でも10体かな。同時で戦って無事で生きて帰れる保証があるのは。今は群れてないから別にいいんだけど、10から20程度の群れを作られたのなら……村程度なら壊滅させられるだろうな。」

 

実際に戦ってみて、それが俺の見解だろう。

 

「とりあえず、帰るか。剣丞は。」

「私が送ろう。元々そうするように言われていたからな。」

「助かります。それなら俺が麦穂さんは送りますよ。」

「えっ?」

 

驚いたようにしている麦穂さんだけど、俺の言葉に剣丞が続く

 

「鬼がいる中で単独行動取るほうが危険だからかな?」

「そうだな。最悪仲間を呼ぶことができることがあるのならなるべく武将であれど単独行動は控えた方がいいだろうしな。」

「ひよ。少し遠回りになるけどいいか?」

「ひゃ、ひゃい!!」

「あの?ひよ子ちゃん。そこまで緊張しなくてもいいのよ?」

「む、無理ですよーー!!」

 

泣き言のようにしている二人を俺たちは見つつ少しばかり笑みを浮かべる。

 

「……強くならないとな。」

 

俺は剣丞の言葉には何も答えない。でも、強くなろうとする意思があれば剣丞を強くなれるだろう。

俺の隊にきたら久しぶりに鍛えてやるかと少しばかり楽しみも増えるのであった。

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