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月夜に映えるわずかな光がコインの輝きを生み出す。
パチリと電撃が指元に流れ、怒りからか手も身体も震えが止まらない。
「そんな……そんなモノのために…………!!」
私は生まれて初めて本気で『人を殺すため』にこの『力』を使う。
ただ、深い悲しみと溢れ出す怒りと憎しみに身を委ねて。
「そんなモノのためにあの子を殺したのか――――ッ!!!!」
――――『超電磁砲』
私の代名詞とも言えるその技を白の悪魔に目掛けて放った瞬間、私の意識は闇へと落ちた。
……
…………
………………………?
「あれっ?」
気がついたら私は寝ていた。
見上げた空は、果てしない白。白。白。
起き上がって、周りを見渡してみても、目に映るのは果てしない白。白。白。
…………どこだここ? というか、なんで私はこんなところで寝ているのだろうか?
『あれ? だれかと思えば………………………ってダレでちか?』
後ろから聞こえてくるのは声足らずの幼い声。
ふと、後ろを振り返る。…………なんというか、巨大なテレビがある。
その中で、鼻をほじくる幼女の姿。え? 何コレ? というか、あんたがダレ?
『こんな時期にここにやってくるなんて…………。あ、ひょっとしてあんた、うんこマンでちか?』
ダレがうんこマンかッ!? 私が男に見えるのか!? というか、なんでもいいけど鼻ほじりながら喋らないでよね!!
『ひぐっ……。そんなおこらないでほちいでち……。そんなにおこると、かみしゃま、かみしゃま…………うぇ~~~~んッ!!』
ああ、その…………なんというか……ゴメン。お願い、泣かないで。私が全面的に悪かったから。お願い!!
『……ヒック。うん。かみしゃま、もう立派なレディーだから泣かないでち』
ニッパリと笑う自称神様。
……っていうか、あの……なんで私ここにいるの? というか、何でテレビと話してるの、私?
『それは私が答えよう』
そう言うと、テレビのチャンネルがパチリと入れ替わり、代わりに犬が画面に出てきた。
……って、犬!? 今、あんたが喋ったの!? 空耳……だよね?
『とりあえず現状を把握してもらおう。キミがここに来たのは、手違いのようなものなのだ。本来ならある男に来てもらうはずだったのだが……まあ、それはいい。とりあえず、キミは死んだ。ここまではいいかね?』
…………空耳じゃないし。
というか、手違いで人を呼ぶなって…………え? 死んだ? 私が? どうして?
『覚えていないのかね? キミはあの一方通行に挑み、そして返り討ちにあったのだ。まあ、ここはキミにとって天国のようなものだと思ってくれればいい』
――――一方通行。
そうだ、私は……あの私のクローン……9982号が一方通行に殺されたことで逆上して、あいつに挑んだんだった。
それで砂鉄も鉄のレーンも弾かれて、それで『超電磁砲』であいつを撃とうとして…………あれ? この後覚えてないよ?
『反射されたコインに貫かれ、キミは死んだ。それはもう、あっさりとグロテスクに』
え? まさかの自滅!?
いや……でも……ホラ、私、今息吸ってるし、生きてるよ? 手も動くし足も動く。
『だから天国のようなものだと言っている。もう一度言う。キミは死んだ』
パチッと音が鳴り、チャンネルが変わる。
画面に映るのは……またも犬。しかし、こんどはブルドック。
『キミは死んだ』
またまた画面が入れ替わり、こんどはこけしが画面に映る。
『キミは死んだ』←こけし
『キミは死んだ』←猫
『キミは死んだ』←幼稚園服を着たアリクイさん
『キミは死んだ』←変なおっさん
『キミは死んだ?』←謎のゴルファー
『乳は死んだ?』←手をムニムニ動かす男子高生
ちょっと、最後の方疑問系になってるわよ!? あと、関係ないこと言ってる人一人!!
あ、あんた!? 何見てんのよ!? ……!! 何ガッカリした顔で私の胸見てんのよ!? 殺すわよ!?
『とまあ、そういうことだ。キミは死んだ。理解してくれたかな?』
再び初めの犬が映る。
…………いや、理解も何も実感がないし。でも、なんとなく、死んじゃった、っていうのは理解した。
ねえ、私これからどうするの? 成仏するの? どうやって?
『おや、現世に未練はないのかね?』
いや、もちろんあるけどさ……。でも、私死んじゃったんでしょ?
あ、そうだ。私に似た子、ここに来てない? カエルのバッジ着けた子。あの子も天国に行けるの?
『それは知らない。ここにはキミしか来ていない。それに、キミには物語りを紡ぐことができる。それなのに、もう諦めてしまうのかい? うんこマンは諦めなかったよ?』
いや、だからさ……。うんこマンってダレ?
そっか、そりゃそうよね。私、地獄行きだよね? あの子達、私のせいで生まれたんだよ?
私さえいなければあんな風に殺されるために生まれてなんてこなかった。そりゃ私、地獄に落ちるわ。ハハハ。
…………ねえ、神様? 教えてくれない? あの子達、これからみんな殺されちゃうの?
足ちぎられて、苦しめられて……。あんな男に殺されるためだけに生まれたっていうの?
『それを決めるのは、他ならぬキミ自身だ』
…………どういうこと?
再びパチッとチャンネルが代わる。画面に出てきたのは、あの幼女だ。
『生き返りたいでちか?』
…………へ? そんなこと、できるの?
『できるでち。かみしゃま、こう見えて凄いでち。何でもできるでち!』
……生き返る? でも、私だけそんな……。例え私が生き返っても…………あの子は生き返らない。
『生き返るのは最後に意識を失った時点……つまり、今日の朝でちね。うんこマン・レディーの活躍次第で、あの子も生き残ることができるでち!』
今日の朝!? つまり、私は時を遡って生き返ることができるってことなの!?
『理解が早くて助かるでち。うんこマン・レディーは優秀でち』
いや、そのうんこマン・レディーってのやめてくれない?
ああ、もうそんなことどうでもいい!! 早く生き返らせて!! あの子は死ぬ必要なんてない!! 生きるべき『人間』なのよ!!
『さすがハッピーエンド至上主義、うんこマンの女版でち。向こうに扉が見えるでち? あの扉をくぐれば、うんこマン・レディーは生き返ることができるでち。だけどいくつか注意点が…………』
「ありがとう、神様!!」
私は走り出す。
神様が何か言いかけていた気がするが、そんなこと気にする暇もなく走り出す。
――――ミャー、と鳴く四足歩行生物がピンチです
初対面での一言がこれだ。いや、あんたの方がピンチだっての!!
――――グッジョブです! とミサカは惜しみない賞賛を贈ります
勝手に人のアイス食べて、紅茶奢らせて、でも、ハンバーガーを半分こして分けてくれる優しさもあって。
――――お姉様から頂いた初めてのプレゼントですから
あんな、子供向けのカエルのバッジを嬉しそうに受け取って。
未来もない、夢もない。今日が終わる前に死んでしまうその命で、あんたは満足なのか!?
ハンバーガーよりももっとおいしい食べ物は山ほどある。それを食べずに死んで未練も何もないものなのか!?
そんなのは認めない。だから、私は走る。
扉目掛けて、全力で。息を切らせて。もう一度、あの子に会うために。
――――ハッピーエンドを目指して。