ハッピーエンドを目指して   作:なか115

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第3話

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 とりあえず今回の実験場の下見を兼ねて、私は少し早めに戦場にきた。

 ……ふむ。あんまり武器になりそうなものはない。鉄とか磁力で操れるものとか磁力で力場を作れるフィールドだったらもっと良かったんだけど、まあ文句は言わない。

 

 

 学園都市は広大な土地を特殊な外壁で覆っており、更にその町には外界では考えられないほどの機械文明が進んでいる。

 その町の中でなら、かなりの力場は常時存在する。つまり、学園都市の中こそ私の力が活きる絶対的なフィールドなのだ。

 

 

「よいしょっと……あー、重かった」

 

 

 鞄を適当にそこらへんに置き、その中身も適当にそこらへんにばらまく。これで、とりあえず準備は完了。

 私の武器が、電撃や超電磁砲だけだとは思わないことね。今回は準備もバッチリだし、油断もない。

 高鳴る鼓動を手で包み込むように押さえつつ、深呼吸。

 

 

 ――――一方通行。

 訊いた話では、ありとあらゆるベクトルを操る能力者だとか……。正直、どんな能力なのか予想がつかない。

 前回私の砂鉄の渦やレーンを弾き飛ばしたのもベクトルを変えたということなのだろうか? うーん、分からない。

 

 

 私はあの子から借りたゴーグルを頭にかけると、静かに振り返る。

 私の展開する電磁波が、他人の存在を感知した。こんな時間にこんな場所に、一人でくるなんて恐らくヤツしかいない……。

 

 

「おいおい、指定ポイントにいねえと思ったらこンなところにいやがったか……。なンだァ? 今日は中止にしようってかァ?」

 

 

 気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべ、現れたのは学園都市が誇る最強、一方通行。

 一方通行はヘラヘラとそのまま慣れなれしく話しかけてきた。

 

 

「いい加減こっちもダリィんだよ……。毎回毎回ただ殺すだけじゃあ飽きるンだよ……。テメェをいたぶって殺すのも面倒だし、今日は止めておくかァ?」

 

 

 ケラケラと嘲るように笑う一方通行。

 

 

 

 

 ――――俺に挑もうと思うことすら許さねえ絶対的なチカラ『レベル6』が欲しーンだよ

 

 

 

 

 パチリと頭から火花が巻き散る。

 人を殺しても何とも思わない、まるで遊びのように殺人を犯す外道。

 そんなアンタのために……………

 

 

「あの子タチは生まれてきたんじゃない!!」

 

 

 手加減一切なしの落雷が一方通行に直撃する。

 最高10億ボルトをゆうに超える私の一撃。通常ならばくらえば魂すらも焼き尽くすその一撃。しかし、

 

 

「あン? この威力…………なンだ?」

 

 

 一方通行はまるで意に介した様子もなくその場から一歩も動いていない。

 そして当然のように無傷。やはり、コイツには電撃は効かないのだろうか?

 

 

「それなら!!」

 

 

 ギッ! とチカラを込めると、それに呼応するかのように数百もの鉄球が虚空に浮かび上がる。

 これは、私がさっき鞄に入れてきたパチンコ玉よりも少し大きなサイズの鉄の玉。その数およそ300。(重たかったんで、磁力を利用して持ってきた)

 

 

 見た目は小さいが、1キロ近くあるこの鉄の玉。

 総重量が300キロになろうとも、私のチカラで磁力を応用すれば…………!!

 

 

「……このチカラ……。テレキネキスのレベル4クラス……? いや、もっとか。てめェもしかして……」

 

 

 一方通行の呟きを無視し、私は鉄の玉を一方通行に向けて一斉にけしかけた。

 あるものは弧を描いて。あるものは直線的に。あるものは二つ、重なり螺旋を描くように。

 鉄の玉は、音速を超えるスピードで一方通行に迫る。……当たる!!

 

 

「……磁力でこれだけの鉄の玉を動かしてンのか。たいしたパワーと応用力だが……」

 

 

 パアン、と音を立て、鉄の玉はまるで見えない壁に当たって跳ね返ったかのように四方八方に飛び散り、

 

 

「……ただの手品だな。こンなんで倒せると思ったか? オリジナルよォ?」

 

 

 一方通行はそう言って静かに笑った。

 …………開始5分もかからずにもうバレた。いや、別にいい。そもそも、そんな事どうでもいい。

 できればもっと油断しているうちに致命傷の一撃でも与えてやりたかったが、こうなってしまっては仕方がない。真っ向からケリをつける!!

 

 

「手品はコレだけじゃあないわよッ!!」

 

 

 瞬間、地面からワイヤーが蜘蛛の巣のような形で一方通行を中心に取り囲む。

 磁力に反応するのならば、どんなものでも私の思い通りになる。どんなにベクトルを操ろうとも、コレだけの電撃、凌げるか!?

 一方通行を取り囲んだワイヤーに、致死量の電撃を流す。たとえ電気が効かなくとも、これだけの電気を前にしては焼け死ぬのがオチ。

 私は例え、人殺しになったとしても、あの子タチを護る。

 電撃が一方通行に迫る。しかし、一方通行は一歩も動かない。それどころか、余裕の笑みを浮かべている。

 

 

「そんな手品じゃあ、アンコールももらえねェな」

 

 

 電気の渦の中心にいるにも関わらず、一方通行は笑う。

 残忍な笑み。だけど、どこか少しだけ楽しそうな笑み。

 

 

「まだまだァッ!!!!!」

 

 

 地面にあるレールのボルトが弾け飛び、前回と同じように鉄のレールが宙を舞う。

 そのレールは一方通行ではなくその周囲に突き刺さる。まるで、一方通行を囲む牢獄のように。

 

 

「あああああああァァァァァッ!!!!」

 

 

 即席の鉄の箱と貸したレールの束インザ一方通行に再び雷を落とす。

 これぞ、必殺。即席電子レンジでチン♪ 作戦。

 中のワイヤーと絡まって、しっかりと身体の隅から隅までキッチリ温めてくれる。

 しかし、そんな私の考えも虚しく、レールで囲んだ檻の一角が突然吹き飛ぶ。

 

 

 私はとっさに磁力を展開し、飛んでくるレールを逸らしそのままバックステップ。

 壊れた檻の中から出てきたのは…………こんがり焼けるどころか無傷の一方通行。

 ウソでしょ? あれでもなんともないっての?

 

 

「…………ククク。やるじゃねェかよオリジナルよォ。危うく死ぬ所だったぜ」

 

 

 ニヤァッと口を吊り上げる一方通行。

 まるで獲物を見つめる蛇のようなその残忍な笑みに、背筋がすくみ上がる。

 

 

「おまえスゲェンじゃねえか? この一方通行をここまで追い詰めたのはおまえが初めてだぜ? キハハハハハッ!!」

 

 

 一歩、また一歩と無防備にコチラに歩いてくる。

 …………どうしよう? もう持ってきた道具は全部使っちゃった。でも、アイツには傷一つつけられていない。

 

 

 いや、違う。突っ立ってただけだった一方通行がレーンの檻だけは壊して脱出しているのだ。本人が言う通り、死ぬところだったのかもしれない。

 電気による熱さ? 熱された空気による呼吸困難?

 ……おそらく後者。電気の網にいても平然としていたアイツだ。熱さくらい全然平気なのかもしれない。だったら!!

 

 

「………………ッ!!」

 

 

 パチリと電気が弾ける。

 私達電撃使いは大気中の酸素濃度を操ることができる。

 普通ならば範囲は狭く、室内程度しか及ばないその範囲の広さだが、私の力なら!!

 

 

「……………あン?」

 

 

 一方通行が自らの体調の異変を察知し、その動きを止める。

 少しの息苦しさを覚えたのだろう。私は、彼の周りの酸素を根こそぎオゾンに変換させることで彼を酸欠状態に陥らせようとしていた。

 よく考えたら、これなら殺さずにすむ。私だって、殺す覚悟はできているつもりだけど無理に殺そうなんて思っていない。ただ、全力でやらなければ勝てない相手。だからこそ、加減なんてしたられないのだ。

 

 

「イイねイイね最っ高だねオマエ!! さすがレベル5だ!! あのガラクタ共とは大違いだね!!」

「…………!! やっぱアンタ、生きてちゃいけないヤツみたいね!! そこで死んどけ!!」

「くかかかか!! そりゃ俺はもう、1万近い妹達を殺した外道だからなァ!! だからよ…………もう後何人殺してもかわらねえンだよッ!!」

 

 

 瞬間、大気が割れた。

 彼の周りを覆っていたオゾンは彼を中心とした空気の渦に吹き飛ばされ、暴風のように渦巻く空気の束は戦場の土を巻き上げていく。

 

 

「くかかききくくけけッ!!」

 

 

 バッと一方通行が手を私の方にかざした瞬間。

 まるで波のように吹き荒れる風が私を包み、そのまま地面へと叩きつけた。

 

 

「――――カハッ!」

 

 

 レベル4の空力使いでもあんなデタラメの量の風を操れはしない。なんなのコレは? 彼の周囲にある風のベクトルを変更した結果がコレなのか!?

 だとしたら、規模が違いすぎる。一体どれだけの演算をしたらこれほどの量の風を発生させることができるのだろうか?

 

 

「寝てンじゃねえぞ、オリジナルよォ!! オラァッ!!」

 

 

 再び風の塊を放り投げて来る一方通行。

 私は素早くポケットの中にあるコインを一枚取り出し、そのまま弾いた。

 

 

 ――――ゴバァッ!! 

 

 

 大気が割れる。私の『超電磁砲』と風の塊が激突した。

 私の『超電磁砲』はその余波だけで人が吹き飛ぶほどの風を巻き起こす。

 風の塊の中心を打ち抜くことで、なんとか風を相殺することに成功した。

 

 

「イイねェッ!! 次だオラァッ!!」

 

 

 一方通行がガッと土を蹴る。

 それだけで、まるで噴火したかのように土砂が巻き上がり、津波のように私に降り注ぐ。

 

 

「――――ちょ、待って!!」

 

 

 後ろに逃げ道はない。しかし、前にもない。横にもないし下にもない。

 ――――絶体絶命? いや、まだ!!

 

 

「なめんじゃ…………ないわよッ!!」

 

 

 私は土砂に負けじと砂鉄の竜巻を形成。そして土砂の波にぶつける。

 砂鉄の竜巻は、土砂の波を楽々と蹴散らかした。よし、これで……。

 

 

「くかかかかかか。余所見してていいのかァ?」

「――――えっ?」

 

 

 気がついたら、一方通行は私の目の前にいた。そして、私の手を握っている。

 

 

「終わりだ、オリジナル。ちょっとばかり楽しませてもらったが……もう楽になれ」

 

 

 手を振りほどこうとした瞬間、全身の血管が破裂するよう想像を絶する痛みが足の先から脳まで走り……そのまま私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 …………………………

 

 

 …………………………………………………………

 

 

 

 

 白い、見覚えのある天井。

 いや、天井なんてない。ただ、どこまでも白が広がっているだけだ。

 見渡す限りの白。白。白。…………なんというか、嫌な予感がする。

 

 

『あ、うんこマン・レディでち!! お帰り!!』

 

 

 聞き覚えのある幼い声に、私は頭をかかえた。

 もしかして、いや、もしかしなくても…………。

 私は声のしたほうに振り返る。やはり、見たことのある大きなテレビの中に見知った顔。

 

 

「た、ただいま……神様…………」

「惜ちかったでちね!! まあでもちゃんと死んで良かったじゃないでちか? 中途半端に気絶でもしてたら目も当てられましぇん」

 

 

 神様(幼女)は嬉しそうにニッパリと笑った。

 ……というか、良くないし。やっぱり私……もしかしてまた死んだ?

 

 

『死んだ瞬間、見たいでちか? そりゃあもう、一気に18禁でち!!』

 

 

 いや、そんなに嬉しそうに言わなくても……。

 というか、そんなに酷い死に方だったのかな? 私?

 そんな事を考えていると、またパチッとチャンネルが変わる。

 出てきたのは…………あの手をムニムニ動かす男子生徒。

 

 

『もちろん、いやらしい意味での18禁じゃなくてね?』

 

 

 そしてまた手をムニムニ。

 何そのカオ? 私ではいやらしい意味での18禁にはならないと? 私の胸になんか文句があるとでも!!?

 

 

『まあまあ、落ち着きたまえ。しかしうんこマン・レディ。酷くやられたな。もう心は折れてしまったか?』

 

 

 あ、犬の神様だ。見た目は犬なのに、このメンバーの中では一番まともに見える。不思議。

 というか、心が折れるとか……正直、「痛ッ」って思ったら気付いたらココにいたし……なんというか……また気付いたら死んじゃったって感じ。

 

 

『じゃあまた生き返りたいでちか?』

 

 

 再び画面は幼女の神様。

 ……というか、生き返っていいんですか? なんかこう……ありがちな生き返るに当たってのデメリットとか……?

 

 

『デメリット? どんなんでちか?』

 

 

 そりゃあ、生き返る代わりに言うこと聞けとか、そのチカラはおまえを孤独にするとか?

 

 

『そんなもんないでち。でも、うんこマン・レディが本当に生き返りたいと思わなかったら、もう生き返れないでち。つまり、うんこマン・レディの心が折れたとき、もううんこマン・レディは生き返れましぇん』

 

 

 うんこうんこうるさい。……なんか私、下品かな?

 ってことは、私が生き返りたいと望めば、何回でも生き返ることが可能なの?

 

 

『うん。多分でち!!』

 

 

 いや、そんな自信ありげな多分初めて聞いたわ……。

 でもいいわ。例えリスクがあっても、私はあの子を助けるためなら何回だって生き返る!!

 

 

『その意気でち。あ、そうそう。うんこマン・レディに伝言があったでち』

 

 

 伝言? ダレから?

 

 

『うんこマンでち!! え~と、何でコッチの『セカイ』とそっちの『セカイ』が繋がったのかは分からないけど、俺はこっちから協力する。たいしたことはできないかもしれないけどなんかキッカケ作ってやる。だ、そうでち!!』

 

 

 いや、だ、そうでちって言われても…………。

 そもそもそのうんこマンってダレなの? 私の知ってる人なの?

 

 

『うんこマンはうんこマンでち。カチカチうんこマンでち!!』

 

 

 ……ああ、もううんこうんこうるさい……。しかも意味分からない。

 

 

『とにかく、神しゃまも応援してるでち。頑張るでち! うんこマン・レディ!!』

 

 

 ああ、もう頑張るわよ!!

 何回死んだって、絶対に諦めるもんですか!!

 あの子を救うために…………私は何回だって生き返ってやる!!

 

 

 走る、走る、ひたすら遥かかなたに見えるドアに向かって走る。

 

 

 ――――今度こそ、ハッピーエンドを目指して。

 

 

 

 

 

 

 

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