ハッピーエンドを目指して   作:なか115

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第5話

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ちょっぴり残酷な描写があります。見る人は注意してください。

 

 

 

 * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 私は再び生き返り、そして9982号と分かれる前にキオクを取り戻す。

 

 

「…………お姉様? どうかしたのですか、とミサカは首をかしげます」

 

 

 そんなことをきいてくる9982号にとりあえずビリビリ攻撃で失神させる。

 そしてとあるホテルの一室に彼女を寝かせ、私はそのまま情報収集の旅に出た。

 

 

 う~ん。とはいえ、情報収集と言ってもどこで何をすればいいものか……。

 とりあえず私は、初春さんに電話することにした。

 

 

『……はいもしもし。珍しいですね、御坂さん。どうかしましたか?』

「あ、初春さん? 夜分にごめんなさい。唐突で悪いんだけど、一方通行って知ってる?」

『一方通行……? ってもしかして、あの第一位のですか? 名前くらいは知ってますけど……』

「そうそう、その一方通行。アイツって何処の施設で開発受けてるか知ってるかな? できたら場所とか教えて欲しいんだけど……」

『場所って……。ちょっと時間かかるけど大丈夫ですか?』

「うん。悪いんだけど、できるだけ急いで欲しいな。ゴメン。今度ケーキでも奢るからさ」

『いえ別にいいんですけど……。御坂さん、何か危険な事しようとしてもせんか?』

「アハハ、そんなんじゃないって。ただどんなヤツでどんな訓練受けてたのか知りたいだけだって。じゃあ、何か分かったら連絡して」

 

 

 そういうと、やや強引に電話を打ち切った。

 コチラからかけた電話にも関わらず、割と失礼なことをしたが、そんな事言ってられる状態じゃない。

 私は私で一方通行のことを調べることにした。

 

 

『一方通行はロリコンだ。いや、ペドフェリアだ。憎むべき人類の敵なので即効殺すことをオススメする』

 

 

 なんて記事は出てくるわけもなく、ただひたすらハズレばかりでストレスが募る。

 アイツ、何で個人情報がランクS以上なのよ!? もっと住民票くらい簡単に身元分かりなさいよ!!

 アドレスさえ分かれば私の能力で何とでもなるんだけど……。こうも闇雲に探すとなるとどうしても時間がかかる。そんなことしてる時間なんてないのに。

 そんな時、初春さんからメールが届く。その中身には、今現在一方通行の開発をしている研究所の住所が書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * *

 

 

 

「…………うん。ここが一方通行の開発を行っていた研究所で間違いなさそうね。絶対能力者計画の研究所とはまた違うみたいだけど…………ま、いっか。それにしても、さすが初春さんね。こういった情報収集にスピードは、私でも及ばないくらいだわ」

 

 

 携帯型パソコンのコンソールを弄りながら、私は夜の研究所を眺めていた。

 時刻は9時近くを示している。予定なら、もう実験が開始される時間帯である。

 ププ、ザマーミロ一方通行。今日はこの星空の下、ポツンと一人で待ちぼうけしてなさい。

 そんな小学生の仕返しじみた事を考えながら、私は研究所に忍び込んだのだった。

 

 

 

 

 セキュリティーを無効化しながら私は進む。結局、電気を使ってセキュリティーなんてやっていても、私には無意味なのよね。

 研究所は思ったよりも警備は強くなかった。割とあっさり進入でき、そして簡単に資料室へとたどり着くことに成功した。

 

 

「さて……と。一方通行のデーターはっと……………ってアイツ、こんなにたくさんの研究者が専属でついてんの!? さすがは第一位ってことなの……かしら?」

 

 

 私自身、研究所に身を置いているときはそれなりの研究者たちがついてくれたものだが、それにしてもこの人数は尋常でない。

 こんなに人数がいては、息をするのも苦しいハズなのだが……………。

 

 

「ま、あの外道がそんなヤワな精神構造してるわけないか。とりあえず能力関係を中心に調べないと……………………………………………………ん?」

 

 

 なんか研究者の中に見知った名前の人がいたような…………。

 木原数多。……知らないけど……。ん? 木原? どこかで…………?

 なんとなくこの木原という名前が気になったので適当に調べてみる。すると、何人か関連する人間が浮かび上がってきた。

 

 

「木原幻生……!! たしか木山先生の……!! あいつの親族ってことは……いた!! クリスティーナ=木原=ライフライン!!」

 

 

 思い出したくもない名前を発見してしまった。

 クリスティーナ=木原=ライフライン。私が以前関わった事件の首謀者であるイカレた女である。

 人のことを平気で実験動物扱いし、人間の命をなんとも思わないマッドサイエンティスト。最悪の女である。

 ……しかし、彼女は研究者としては優秀であった。もしも私達が手出しをなければ、本当にレベル6を作り上げていたかもしれない。

 

 

 その親族である木原数多。どうせロクでもない人間なんだろうけど、その優秀さは確かなのだろう。

 奇しくも彼が一方通行の開発の主なメンバーだったようで、私は彼のレポートを中心に一方通行のことを探ることにした。

 

 

 

 

 …………

 

 

 ………………………

 

 

 ………………………………………………

 

 

「何……コレ?」

 

 

 木原数多のレポートに書いてあったのは、『一方通行というモルモット』の生態のようなものだった。

 9歳の時から特力研など、優れた研究所を転々とし、そこでも恐怖の対象に抱かれていたこの最強の能力者を、学園都市は勢力を上げて殺しにかかった。

 街中にもかかわらず戦車を、ミサイルを、機動鎧まで持ち出して一方通行を殺しにかかった。

 結果は言わずとも。無傷の一方通行に傷ついた人々。何もしていない一方通行の完勝であった。

 

 

 この事件は結局、一方通行の力を恐れた一部の研究者達が中心となったことで行われたということで処分された。

 誰もが恐怖を抱く最強の能力者。そんな彼に目をつけたのが木原数多だった。

 なぜだかは分からないが、一方通行は素直に開発を受け、その後特に暴れたりもせずに大人しくしている。

 そんな彼の心情を、木原数多はこう読み取っていた。

 

 

『最強の能力に最弱の精神。彼は自分だけの現実、パーソナル・リアリティを広げようともせず、その中に篭ってしまっている。今現在の彼でいる限り、絶対能力者への進化の可能性は薄いと考えられる』

 

 

 …………………………………。

 なによコレ。違うわ。アイツは人間じゃない。人の皮を被った悪魔。妹達を何人も殺してきた殺人鬼だ。

 カラカラの喉に唾を飲み込み、私はその後を見る。

 

 

『彼は人を傷つけるのを恐れている。その能力ゆえに、手加減ができない。人との繋がりを保てぬまま、彼は永遠に孤独であることを選ぶ。人をこれ以上傷つけないために』

 

 

「ア、 アハ。何この木原っての。うまく考え過ぎじゃないのよ。違うのよ…。アイツは悪魔で…………アイツは………」

 

 

 その後のレポートを見て、思わず私は目をむいた。

 

 

『あの男の計画通りである。この先彼は誰も自分によってこないようにと、更なるチカラを求める。そこで、頓挫した『超電磁砲量産計画』を利用し、『絶対能力者計画』を打ち立てる。これをカモフラージュに、あの男が計画するように一方通行と妹達を同時に…………………』

 

 

 その後の文章は破損しており、これ以上読むことはできなかった。

 あの男とは? いや、一方通行以外にもあの子達を利用しようとしている人たちがいるということだろうか?

 ということは、例え私が一方通行を倒してもあの子達の悲劇は止まらない?

 また誰かに利用され、その命を簡単に捨てようとするのかもしれない。

 

 

「……余計なことは考えるな!! とにかく今はあの一方通行を倒す、その資料だけをさがさないと……」

 

 

 現実に実験は進んでおり、結局あの子達は一方通行に殺される。

 とりあえず、それだけから止めることを始めよう。ただでさえ、時間なんてないのだから。

 動揺を隠しつつ、私は資料探しに精をだすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

 結局、一方通行の能力に関することを知ることはあの研究所ではできなかった。

 恐らく、名前にあった木原数多とかいうヤツが自分の研究所に持って帰ったのだろう。

 あそこには特に知っても困るような情報はあの破損した情報以外にはなかった。

 

 

 時計を見る。時刻はすでに、12時を示していた。

 かなりの疲労感。今すぐにでも目を閉じて、寝てしまいたくなる。

 

 

「ヤバ。そろそろ死なないと…………。一方通行、まだあそこにいるかな?」

 

 

 そう口にしたところで、あの文章が頭の片隅によぎる。

 

 

『彼は人を傷つけるのを恐れている』

 

 

「ハッ、んなワケないっての。そんな人間があんなに嬉しそうに人を殺さないっての。現に私なんて、もう何かい殺されたか」

 

 

 言ってて少しブルーになる。

 とにかく、殺してもらわないと。このまま意識を失ったりしたらエライことになる。

 

 

「まったく、どうなってるんだ……ったく…………不幸だ」

 

 

 ドキッ! と、思わず心臓が跳ね上がる。

 気がつけば、自販機を目の前に頭をポリポリとかくウニ頭の男が一人。

 私を一番ムカつかせることがうまい、あの男が立っていた。

 

 

「……ん?」

 

 

 ヤバッ、目が合った。

 コイツと関わりあったら死ぬなんて騒ぎではなくなる。このまま去るべきか……。

 

 

「オイ、そこのキミ。こんな時間に歩いてると危険だぞ。道に迷ったのか?」

「迷うか!! というか、何でアンタがこんな時間にここにいるのよ!?」

「いや、上条さんは……何と言うか……まあ、いつもの不幸で不良から逃げ回り、気がつけばここに……ってキミ、もしかして……俺の知り合い?」

 

 

 すっ呆けた顔で私の顔を覗き込むこのバカ。

 ……ったく、人がイライラしてるときに……………

 

 

「つまんない冗談言ってんじゃないわよッ!!」

「へ? ――――おわッ!? 雷!!?」

 

 

 私の電撃を、またもアイツは右手をかざして防ぐ。

 アイツは自分の手と、私を交互に見て、

 

 

「何すんだよオイ!! なんでいきなりビリビリすんだよ!!」

「またアンタは!! ビリビリって言うなって言ってんでしょ!! 私には御坂美琴って名前があるって何度言ったらわかんのよ!!」

 

 

 再び放たれた電撃をまたもアイツは防ぐ。

 あーもう、関わる気なんてなかったのに、つい挑発されて絡んでしまった。

 早く死なないといけないのに…………。

 

 

「はー。もういいわ。私もう帰るから。アンタも帰りなさい。バイバイ」

 

 

 そういって手をヒラヒラと振って帰ろうとするが、

 

 

「えーっと、その御坂……さん? このボク、上条さんとお知り合いなのですよね? よろしければその……道を教えて頂けるとありがたいと……」

「アンタ、自分で言っといて自分が迷子なの!? ……フゥ、まあいいわ。ついてきなさい。あんたの家、どこだっけ。分かるとこまで案内してあげる」

「いいのか!? いや、いいんですか!? いや、ありがとう!! なぜか携帯の電池は切れるはサイフは落とすはで上条さんはこれからどうしたらいいかと――」

「お姉さま?」

 

 

 アイツが言葉を言い終わる前に。聞きなれた後輩の声が後ろから聞こえてきた。

 ギギギ、と振り返ると……目に涙を浮かべ、ハンカチを噛み締めて悔しがる後輩の姿。

 黒子は、グググ、と歯を噛み締めて、

 

 

「初春からお姉さまの様子が変だと聞いてこんな夜晩くまで黒子はお姉さまを探し回っていたというのに……なんとそのお姉さまは殿方と逢引中!! 黒子は!! 黒子は!!!!」

「落ち着けってのこのバカ!! 私がコイツのあったのはついさっきで、しかもたまたまで!!」

「言い訳は聞きたくないですの!! 言い訳はたっぷりと、寮監様にしてくださいまし!!」

 

 

 ……へ? 寮監? マズイ!! 

 寮監に絞られれば死にはしなくとも絶対失神する! つまり、意識を失う!! 

 それはダメだ!! 私はすぐにでも一方通行に殺されなくてはならないってのに!!

 

 

「ね、ねえ黒子……。私この後寄るところがあって……」

「んま、お姉さま、まさかこの類人猿とお泊りと!? 許しません!! ええ、許しません!! 黒子の名が黒いうちは、絶っっ対に許しません!!」

「目じゃなくて名なんだ。まあ、あんた目は黒くないしね。……って違う!! 誰がコイツの家に泊まるのよ!! 私は他に寄るところが……」

「いいえ、それは許しませんですの!! お姉さま、もうお帰りくださいまし!! 何時だと思っているんですの!? アンチスキルにご厄介になりたいんですの!?」

 

 

 ……ダメだ。黒子は熱くなってて私の話を聞いてくれない。

 アイツはアイツで、なんかオロオロしてるだけだし。何かフォローしなさいよね!!

 

 

 って待てよ。私、一方通行に殺されることばっか考えてたけど、別に自分で死んでもいいんじゃない? 死に方は問わないって言ってたし。

 このままじゃ黒子に強制テレポで連れ帰されちゃうし、うん。自殺しよう。そうすればまた今日に逆戻りだし。この誤解もなくなるし。

 

 

 でもどうしよ? 高いところから飛び降りても黒子が助けちゃうし、能力で死のうにもアイツに止められちゃうかも。うーん。

 そうだ!!

 

 

 ピカリと閃いた。磁力を利用すればいいんだ。

 私は時々磁力を利用して緊急回避したりするが、逆に磁力でモノを引き寄せればいい。

 例えばそこらへんに落ちてる金属片なんかを私の心臓に向けて磁力を発信。

 普通はそんなことしないだろうけど、ストップさせずに自身に身体を貫くことくらいならできる。

 

 

 黒子は何やらアイツに因縁をつけ始めて二人とも私から気を逸らしている。

 やるなら、今!! 

 

 

 ビリッ、と私の頭から火花が散る。

 ちょうどいい感じに尖った鉄パイプを発見。あれを私の心臓に……!

 鉄パイプはフワリよ浮かび上がると、風を引き裂き、私の胸部へと突き刺さった。

 

 

「――――ゲホッ!!」

 

 

 強烈な痛みと共に喉が熱くなる。胸も、目も、耳も。しかし、手足は言うことを聞かずにその場に私は倒れこんだ。

 

 

「お、おねえ……さま……?」

 

 

 黒子が信じられないと言った表情で私に歩み寄ってくる。

 ……痛っ。おかしい……な。心臓を……一突き……即死を狙った……ハズなんだけど…な。

 あれほど慣れた死を恐れたのか、私はつい軌道を逸らし、即死を免れてしまったようだ。

 

 

「なな、なん……ですの……コレ……。こ、この……お、お姉さまの……胸から……出ていきなさいな……こんなものが刺さっては…………アハハ……」

 

 

 黒子が私の胸に刺さった鉄パイプに手を伸ばす。

 

 

「――――止めろ!!」

 

 

 そんなアイツの叫びも虚しく、黒子は鉄パイプをテレポートさせた。

 瞬間。私の胸から噴水のように血が飛び出した。

 私の身体から出る赤が、虚ろな瞳の黒子の顔を染めていく。

 

 

「い、いや……で…でないで……そんな……あれ? い、いや、お、おねえ……さま?」

 

 

 黒子は小さな手で私の血を止めようとするが、そんなもので私の血は止まらない。

 段々と意識が闇に沈んでいく。痛みはなくなっていく。ただ、自分が冷たくなっていく。

 

 

 …………怖い。何度も死んでいるのに、今初めて怖い。

 震え、涙が零れ出る。ヤダ、何コレ? 何で? 何でこんなに怖いの?

 

 

「イヤァァァァァァァッ!! お姉さま!! お姉さまッ!!」

 

 

 黒子が狂ったように叫ぶ。

 可愛い顔を血まみれにして叫ぶ。

 遠くでアイツが、「今救急車を!!」と叫ぶ声が聞こえる。

 

 

 

 

 ああ、そっか。私、バカなことしたんだ。

 絶対にやっちゃいけないことしちゃったんだ。

 

 

 深い後悔を抱え、私はゆっくりと目を閉じた。

 黒子の。後輩の、泣き顔から目を逸らすように。

 

 

 

 

『……………うんこマン・レディは本当にバカでち』

 

 

 ゴメン。

 

 

 私も心底そう思う。

 

 

 こんなんで……ハッピーエンド……目指していいのかな?

 

 

 

 

 

 

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