ハッピーエンドを目指して   作:なか115

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第8話

 

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 夢を見ていた気がする。

 夢の内容は思い出せない。

 

 

 …………背中と腰が痛い。動きに支障はないが、たまにズキリと痛む。

 しかし数秒もすれば痛みも治まったので、私は外に出かけることにした。

 

 

「いやいやねーだろ、とミサカはミサカの素体のお子様センスに愕然とします」

「な、何おう!! じょ、冗談よ。ちょっとためしにつけようと思っただけなんだから」

 

 

 自身のクローンである妹と出会い、センスをバカにされ、バッジに手を伸ばそうとしたところで――――

 

 

 ――――溢れ出る、記憶、きおく、キオク………………………

 

 

「痛ッ!!」

 

 

 背中と腰が痛い!! シャレにならないほど痛い。

 キオクが戻っている最中で頭も痛い。私は数秒ほど頭を抱えてうずくまった。

 

 

「お姉様!? どうかしましたか、とミサカは心配してお姉様の肩に手をかけます」

 

 

 妹がそう言って私の肩に手をかけた瞬間、電撃ビリビリ攻撃により再び妹は気を失った。

 

 

「…………あー、痛かった。ゴメン、いきなり。今回もなんとか戻って来れたわね…………。ハァ…………。よし、早速また手がかり探しに行くとしますか!!」

 

 

 妹をとあるホテルの一室にあずけ、私はそのまま妹達の開発施設を探す旅に出たのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さすがに学園都市ぐるみで秘密裏に行われている施設を限定するのはとても難しく、初春さんの協力を得てもそれでも3回ほど死んで繰り返すはめになったが、どうにか発見することに成功した。

 絶対能力者計画の研究施設。ここになら、妹達のデータや一方通行に関することも知ることができそうだ。

 

 

 施設の中は研究者が多く、見つからずにデータを盗み見るという作業をするのは困難を極めたが、結局死ねばリセットされる。

 私はかえって開き直り、見つかるのを覚悟でガンガン資料を探してみることにするのだった。

 

 

 ……そして2日目。妹達のデータはボチボチ出揃う。

 『ミサカネットワーク』。通常不可能な電撃使い同士の能力による交信を、脳波の波形を同じくするクローンを用いることにした応用技術。

 ……おそらくこれ、私でも介入することができるだろう。こっちからの一方的な送信しかできないかもしれないが、電波を乱すとかなら容易に行えそうだ。

 

 

 他にも彼女達の体調管理のことや、学習機能なども調べておく。

 …………まいった。これ、一方通行の実験に合わせてあるもんだから調整ならなんやら無視されて設計されてある。

 おそらく、一方通行に殺されなくとも調整抜きでは1年持たずに彼女達は死ぬ。一応この成長促進剤やらなんやらを止めてきっちり処置すればかなりの年月を生きることができるようになるようなんだけど……。

 

 

「…………結局、あの子達は学園都市の手から離れては生き残れない……か……」

 

 

 死を前提に作られた哀れなクローン。彼女達のその先に未来はない。

 ……いや、諦めない。未来がなければ作ればいい。一方通行を退け、調整も行い普通に生きる。そんなことも決して不可能ではないはずだ。

 しかしやはりそこでもネックになるのは学園都市とのパイプ役だ。

 

 

「……誰かいないかしら? 学園都市上層部とパイプを持っていて彼女たちを護れるくらいの影響力を持つ人間は……?」

 

 

 調整だけなら木山先生に頼めば……いや、巻きこんだらどうなるか分からない。最悪、消されてしまう恐れがある。

 そもそも護るなんてできない。私でも、一人では学園都市を敵にしては適わない。やはり、全員を助けるなんて無理なんだろうか……?

 

 

「…………フゥ。大丈夫。時間だけなら私はたくさんあるんだから。絶対に諦めてたまるもんですか」

 

 

 唇を噛み締める。

 …………そろそろ、死ななくてはいけない時間だ。

 またいつものあの場所に行こう。

 私は研究所を抜け出し、気分晴らしに超電磁砲を一発ぶち込んでから研究所を後にする。

 

 

 目指すは大型ダンプカーのある工場街。なんとなく、私は毎回あそこで死ぬようにしている。

 さて、イヤだけど今回もサクッとやっちゃいますか……………と、

 

 

「……ハッ……ハッ……ハッ……!!」

 

 

 誰かの気配を感じた私はとっさに建物の影に身を隠す。

 …………またアイツだ。あのツンツン頭、どうしてこう毎回毎回現れるのかしら? いっつも走ってるし。誰か探してるのかしら?

 

 

「……クソッ!! 今回はここにはいないのかッ!?」

 

 

 捨て台詞を残し、あのバカ――――上条当麻は走り去って行った。

 

 

 …………今回は? どういうことだろうか?

 まあいいや。私は今はそんなことを考えている時ではない。

 

 

 誰もいなくなったのを見計らい、私は前回と同じくして死ぬのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

『やはりキミも姿は違えど、うんこマンなのだね』

 

 

 目覚めた私にそう言ったのは犬神様。いや、開口一番意味が分からないんですけど?

 

 

『そのままの意味さ。キミも彼も、立ち止まらない。立ち止まりそうになっても、必ずまた走り出す。……我々はそういったキミ達を見るのがたまらなく好きなんだろうね』

 

 

 …………。まあ、私もうんこマンさんのキオク見たけど、あそこまで走り続けるのは難しいわよ。少なくとも私じゃあできそうにないし。

 

 

『謙遜はいらないよ。キミは一度は恐れた死を再び乗り越え走り始めた。さすがだよ。……しかし、そろそろ一人で何かをするのは限界があると思わないかね?』

 

 

 …………どういうこと?

 

 

『キオクを見たのだろう? だったら、うんこマンがどうやってあのセカイで戦ってきたのか思い出してみるといい。彼はたくさんの人と力を合わせて戦ってきた。彼はキミほど特別ではない。普通の人だ。それでも人と協力して、魔女を幸せへと導いたのだ。……キミはいつまで一人で戦うのかね?』

 

 

 …………私は犬神様の問いに答えずにそのまま背を向けた。

 きっと画面では悲しい顔をした犬神様の顔が映っているのだろう。

 

 

 でも、これは私の問題なのだ。他の人は関係ない。私が解決しなければならない問題なのだ。

 私は再び扉目掛けて走り始める。再び生き返るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 * * * * * * * * * * * * *  * *

 

 

 

 

 

 さて、今回は残る資料を探しに少し奥に潜るとしようかしら。

 研究室には人がたくさんいて誰もいなくなる気配がなかったのでみんな電撃で気絶させる。

 潜入の際はできるだけ痕跡を残さないようにとか昔は気にしていたが、最近自分が大胆になってきているのが分かる。ま、ごそっと今回も探るとしますか。

 

 

 とはいえ、そろそろ妹達の情報も一方通行の情報も集まってきたのよね…………。もうこれ以上は情報なんてないと…………うん?

 奥の方に保管されていたこのデーター…………これ、妹達と一方通行の戦闘記録?

 ご丁寧に場所や時間、シチュエーションまで記入して保管してある。

 …………正直、見たくないけど…………。

 

 

「そんなこと言ってる訳にもいかない……よね。とりあえず見ておかないと……」

 

 

 そう言うと、私はファイルを再生し始めた。

 00001~09981号までの戦闘データ。これを見るのにはかなりの時間がかかりそうだった。

 

 

「……………………………………………………」

 

 

 2時間後。

 私はようやくファイル00001を見終えた。

 いたぶって、いたぶって、最後は即死させられた00001号。

 …………しかし、殺した時のあの一方通行の表情は……………。……もう時間がヤバイ。また一回死んで次見よう。

 

 

 そうして私は、死んで生き返ってデータを見てまた死んでを何回も繰り返す。

 始めは何回死ぬことになるかと思ったが、ファイルも00500を超えた辺りから時間は加速する。

 一方通行が殺しに慣れたのだろう。明らかに殺すスピードがあがる。一本のファイルの時間は10分を切るようになっていた。

 

 

 しかし、ある時を境に再び時間が増えることになる。

 一方通行が相手に苦痛を与えて殺すようになったのだ。

 酷い時は手足を引きちぎり、全身の血液を逆流させて殺す。そんな回も何回かあった。

 

 

 楽しそうに笑う一方通行。笑いながら殺す一方通行。狂ったように叫ぶ一方通行。

 でも、私にはあなたは………………………。

 

 

「…………あなた、ここで一体何をしているの?」

 

 

 ……と、テレビを見るのに集中していたら、つい研究者の一人に見つかってしまった。

 初めて見る顔だ。若い、オカッパ頭の美人な研究者。でも、この腐った計画に加担する腐った人間。

 気絶させるなりなんなりして今日はこれくらいにしておくか。そう思って力を込めたところで、

 

 

「…………あなた、妹達ではないわね? オリジナル……超電磁砲ね。と、長話は良くないわね。コッチに来て」

 

 

 変な女は私の手を取り、頭にゴーグルをつけるとそのまま歩き始めた。

 一発で本人と見抜かれたことと、あまりに動揺してしまったこともありしばらく止まってしまっていたが、私はこの研究者の後を追うことにした。

 

 

 堂々と歩く研究者。私はその後ろをオッカナビックリ歩く。当然いろんな人とすれ違う……が、誰も私を気にも止めない。

 ……私を妹達だと思っているのだろうか? なんか心配して損しちゃったな。

 そんな事を考えている内に、とある一室にたどり着く。

 

 

「入って。私の部屋よ」

 

 

 なんとなく警戒しながらも中に入る。

 中には人がいた。…………というか、私がいた。

 

 

「……えっ? お姉様……ですか? とミサカは驚愕を露にします」

 

 

 青いクランケ服を身にまとった妹達の一人。とあるホテルで眠っているあの子ではない。

 そんな当たり前のことを確認してしまう自分になんとなく嫌気がさした。

 

 

「さてと。悪いけど、長居はさせられないわ。この後色々用があるからね。この部屋の裏の扉から出れば外に出られるわ。行くなら早くしなさい」

 

 

 オカッパ頭の研究者はそう言った。

 

 

「……何が狙いなの、アンタ? 私を逃がそうっての? あんまり舐めないでよね。ここにいる研究者どもが総武装しても私には適わないって分かってる?」

「分かってるわよ。でも、あなたがここでもし暴れたら、あなたの相手をするのはその子たちって事になるわよ」

 

 

 そう言うと研究者は座ってコーヒーをすすり始めた。

 その子たち、というのは言うまでもなく妹達を指すのだろう。確かに、私はこの子達とは戦いたくはない。

 しかし、彼女達がいかなる武装をしようとも、大怪我負わすことなく彼女たちを撃退することはできる。そのことも分かって、この研究者はそう言っているのだろうか?

 

 

「この施設にはほとんど警備員ってのを入れてないの。これでも極秘だからね。それに彼女達なら死んでもいくらでも量産できる、みんなそう思っているから」

 

 

 彼女がそう言った瞬間、私は胸ぐらを掴みあげていた。

 パチリと頭から火花が散る。私は拳を振り上げ…………そして下ろした。

 

 

「……殴らないの? 意外と理性的なのね。フフ、それにしてももうここまで潜入してくるなんて……さすが超電磁砲。第3位は伊達ではないってことなのね」

 

 

 彼女は自嘲気味に笑った。

 ……何だろう、この研究者。他の研究者とは違う……。何かが。

 

 

「そんなあなたでもこの計画を止めるのは無理よ。もう知ってるでしょ? 第一位、一方通行。あの子に勝つのは不可能。もうどうせ止められないわ……この計画も……あの子も……」

「…………どういう意味?」

「……………ゴメン。聞かなかったことにしてくれる? さ、もう行って頂戴。もう人が来るわ」

「…………行く前に……この子と話がしたい」

 

 

 私は妹を見てそう言った。

 研究者は困ったように微笑むと、

 

 

「じゃあ私は出てるわね。5分以内に裏の扉から行って頂戴。それじゃあ、元気でね。……もう、会うことはないと思うけど」

 

 

 そう言って外に出て行ってしまった。

 誰かを呼びに行ったとかそんな雰囲気ではない。ただ、私と妹を二人きりにするために出て行ったのだ。

 …………ちょっと調子が狂ったが、時間もないので私は早速妹に話しかける。

 

 

「…………ねえ、あんたに一つだけ聞きたいことがあるんだけど…………」

 

 

 首を傾げる妹。

 こんなボケッとした表情も、あの9982号によく似ている。当たり前だけど。

 

 

 

 

 

 私は妹と一言二言話を交わすと、言われた5分以内に研究所を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

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