【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
「エルミン様……今広場に攻め寄せて来ているオークは、人間、村の人達だった? そういうことずら?」
レオンは尋ねた。
「ええ、そうです。呪いで、乱暴なオークに変わってしまった村の方々です……私は彼らをオークへと変異させました」
エルミンは怒気を含んだ声で言った。
「そして村に救援の冒険者たちがくれば、彼らに無惨に殺されるように仕向けました。冒険者たちが村人を虐殺するように、《幻影の魔法》をかけたのです」
エルミンが、パチンッ、と指を鳴らした。
「村人達の姿をした《幻影》を救うために、冒険者たちが《本物の村人達》を虐殺するように」
すると広場で磔にされていた人間達は、砂が風に飛ばされるかのように、さらさらと消滅していった。
「おら、磔にされていたのはオルディン様達……エルミン様のお仲間のオークさん達だと思っていたずら……」
「彼らは私の大切な仲間、《家族》ですからね。そんな悲惨な役目を負わせはしません。呪いをかけるのと同時に、彼らをこの村から逃がし、ここには二度と近寄らないよう言いつけました……それに……」
エルミンは悲しそうに、続ける。
「もし彼らが村にいれば、私が呪いをかけることを止めたでしょう……私はそういう風に、彼らを育てましたから……」
「……エルミン様」
沈黙。そして、覚悟を決めたレオンが言葉を紡ぐ。
「エルミン様、謝って済む話ではないことは重々承知しているずら。でも、どうか、どうか許して欲しいずら。申し訳なかったずら、
レオンは言葉を失った。
本当は言い訳を話すつもりであった。だが言葉が続かなかった。うまく言葉をまとめられなかった。
「レオン……」
エルミンはレオンの手を握った。その手は温かった。
「私はあなたの勇気に感動しました。あなたは私たちを最後まで信じてくれました。殺されそうな危機に陥っても、ただ許しを求め、私たちを仲間だと思ってくれました。あなたは私たちを理解しようとした。あなたはこのような残虐な呪いをかけた私をも許そうとしているのです……」
エルミンは言った。その目は深く傷つきながらも、優しく微笑んでいた。
「だから、私もあなたに恩返しをしようと思います。私はこの呪いを解き、村の人間たちを元の姿に戻してあげようと思います」
「……本当に?」
レオンは目を光が宿る。
「本当です。でも、その代わりに――」
エルミンは満面の笑みで続けた。
「レオン、あなたも一緒に来てくれませんか? 私と一緒に、天国へ」
レオンの表情が強張る。
「呪いを解けば、私は消えてしまいます。この呪いのために、私は妖精としての力を全て使い果たしてしまいました。呪いを解けば、私の魂はこの世界に留まることができなくなる……」
エルミンは悲しげに言った。
「一人で死ぬのは寂しいです。レオン、あなたが一緒なら怖くない……どうですか? 一緒に死んでくれますか?」
レオンはエルミンの言葉に
だが、その心は揺れ動いてはいたものの、答えは既に決まっていた。
「……分かったずら。エルミン様、お、おら――」
と、エルミンはそこで握っていた手の片方を解くと、その手の指の一本で彼の口を塞いだ。
「レオン、あなたは私が思った通りの優しい子です」
エルミンはほほ笑むと、もう一つの手も解き、宙へと緩やかに昇っていく。
「でも気をつけてください。今のは《悪魔の囁き》です。そのようなものに乗ってはいけませんよ……私の二の舞になってしまうかもしれません」
「エルミン様……」
レオンの目から、涙が溢れ出す。
「レオン……泣かないで……私は幸せです。あなたに出会えて。再び人間を、《自らの理想》を信じて死ぬのことが出来るのですから……」
エルミンは優しく微笑んだ。
「レオン……ありがとう……そして、さようなら……どうか、その優しい心をいつまでも忘れないで……」
最後にそう言い残して、エルミンの姿は淡い光に包まれ、そして消えていった。
止まっていた時が動き出す。
「おぉ! 戻ったで! 人間に戻れたんや!!」
村人の一人が歓喜する。自分の体を見て。
牙は消え、鼻は小さく整う。服も局部を覆うだけのボロ布から、素朴ながらも人間らしい全身を纏うものに。
村人たちは呪いから解放されたのだ。
「おい達は……何ちゅうことをしちまっただ……」
村人の別の一人が泣き出した。
彼らの体は停止していたが、実のところ、エルミンの声は聞こえていた。
すべてを理解したその一人は、悔恨の念につかれた。
「許してくりゃんせ……許してくりゃんせ……」
村人のまた別の一人は土下座した。エルミンの消えて行った空に心を向けて。
「エルミン様……ありがとう……さようなら……」
レオンは空を見つめ続けていた。エルミンの姿を探す。だが、見つからない。エルミンは消えてしまったのだ。
空には
レオンは相棒のミケと共に、虹をいつまでも見つめ続ける。
アクロポリスにそびえる
村人たちはエルミンの
自分たちの罪を
自分たちに酷い目に
村人たちは、その碑の前にひざまずき、涙ながらに祈りを捧げる。
「信彦さん……おら、ウォーリアーズの一員になりたいずら。エルミン様の仲間たちに、エルミン様の最期を伝えたいずら。それに……」
復興に一段落ついた頃、レオンはウォーリアーズのリーダーである信彦に、自分の決意を伝えた。
ちなみにウォーリアーズも引き続き村に滞在し、村人たちの手伝いをしている。
「おら、この世界について知りたいずら。《エルミン様の遺志を継ぐ》ために、村の外がどういう世界なのか、どうすれば《人間と魔物が共存》できるのか、それを知るために、冒険者になってこの世界を回りたいずら」
「レオン……君は分かっているのか?」
信彦は厳しい目でレオンを見た。
「冒険者になれば、時に魔物と戦うことになる……全ての魔物がエルミン達のように善なる存在という訳ではない。君には、その覚悟があるのか? 時に彼らと《剣を交える》覚悟が」
レオンは真剣な表情。
「はい……あるずら。おらはエルミン様の夢を叶えることが、おらの使命だと思っているずら……困難にも直面すると思うずら……でも、人間と魔物が共存できる。そんな世界を作るためにも、おらは世界を回りたい、魔物達と向き合いたい、そう思っていますずら」
レオンは力強く言った。
「そうか……」
信彦はしばらく沈黙した。
「分かった。お前なら、ウォーリアーズの一員としてやっていけるだろう」
だが最後には、信彦は笑って言った。
「なにせ、君には既にミケという心強い魔物の仲間がいるのだから」
レオンの傍には、毛づくろいするケットシーのミケの姿。
信彦は続ける。
「それに、俺も今回の一件で思い知らされた。俺だけでは、君なしでは、この事件の真相にはとてもたどり着けなかっただろう。君のように、これまでの慣習に囚われない柔軟な姿勢こそが冒険者に求められる。偏見なく、澄んだ心持ちで物事の本質を捉えることの出来る人物こそが」
信彦は右手を差し出す。
「ようこそ、ウォーリアーズへ。これから頼むぞ、レオン!」
レオンは信彦の手を握り、感激して言った。
「はいっ!! よろしくお願いしまずら!」
・あとがき
これにて第一章が完結!
来週は《第一章 エピローグ》を投稿予定です。
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