【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第一四話:美香子を追う》

 深い緑に覆われた森の中、傭兵団に守られた商人たちのキャラバン隊がゆっくりと進んでいた。

 

「歳を食ってるが、なかなかの美人だ。胸も大きい」

 

 そんな一行を監視する者たちがいる。

 盗賊団。彼らは森林地帯に潜み、木々の合間からキャラバン隊を油断なく見張っていた。

 

「確かに《組長(ボス)》のタイプの女だな。商売女でもないだろう。真面目そうな素人の女だ」

 

 正確に言えば、品定めしていた。

 舎弟(下っ端)の一人がキャラバン隊一行を発見。若頭(幹部)を呼んだ。

 

「お前の言う通り、ボスの《元愛人》の代わりになるかもしれねぇ……よし、あの女捕まえるぞ。ボスに献上する」

 

「でもあのキャラバン隊、結構な警備体制ですぜ。いけますかい?」

 

 年の頃も、容姿の雰囲気も、スタイルの良さも、幹部はボスの《元愛人》と今彼の視界に収まる《その女》に共通点があるように思えた。

 胸元の開いた白いドレスに空色のマントをまとい、杖を持っている。僧侶だと一目で分かる《その女》。

 美香子だ。

 

「……しゃあねぇだろ。ボスが不機嫌だったせいで、ボコボコにされちまった奴もいたしな。あいつ、しばらく寝たきりだぜ」

 

 《ボスの元愛人》。彼女はボスに(さら)われて愛人にされていた人物で、美香子と同じく四〇代中頃であった。

 先ごろ、彼女は盗賊団の下っ端(したっぱ)の若者と協力して逃げ出してしまった。

 

「そのうち俺だってとばっちりを受けるかもしんねぇ。一か(ばち)かだがやるしかねぇだろ」

 

 ボスの何人もいる愛人たちの中で彼女は一番の待遇で、ある程度は自由を与え、そこそこな暮らしをさせていた。

 元愛人は攫われた当時は二〇代中頃だったというが、逃げたのは四〇代の中頃。二〇年近く囲っていた。当然子供もいた。愛人をとっかえひっかえし、その愛人が自分の子供を産むと(わず)かばかりの金を与えて放逐(ほうちく)する、という常に新しい女性(犠牲者)を求めるボスには珍しいことであった。

 だが、よりにもよってボスが些細(ささい)なことで毛嫌いして、以来事あるごとに(いじ)めていた若い盗賊と同時期に、その元愛人は姿を消してしまったのだ。

 

「あのキャラバン隊が森を抜けて野営したら……奇襲でもかけるか……少しは油断してるだろ。あの女を捕まえたら、すぐにずらかる」

 

 はっきりとは分からなかったが『駆け落ちかもしれない』『少なくとも元愛人はボスの元を離れたがっていた』と盗賊団の者は皆思った。

 だが、ボスは『自分は魅力的な男だ』と自負していたので、元愛人に逃げられた、まして自分が(はずかし)めていた男性に寝取られたなど、プライドが許さなかった。

 以来、嫉妬心(しっとしん)(あお)られたのか、元々暴力的だったボスはより過激さを増し、幹部たちでさえその扱いに困るようになっていた。実際ボスにボコボコにされて今動けなくなっているのは、三人いた盗賊団の幹部の内の一人。

 

「略奪品は全部自分のものにしていい。それならお前らもやる気もでるだろ? 金持ち連中だ。短い時間でも、上手くやりゃあ実入りもあるだろうさ」

 

 リスクとリターンが()り合わない。だが、やるしかなかった。ボスの機嫌を取るため。幹部の地位を守るために。

 現在盗賊団の幹部は二人だけ。暴行を受けた幹部は『お前は今日からただの舎弟(しゃてい)だッ!』とボスに言い渡されていた。元愛人に逃げられ、理不尽さを増していたボスに苦言を(てい)した幹部に待ち受けていたのは、そんな仕打ちであった。

 

「離して! 離してよ!!」

 

「黙れ! 大人しくしろ! お前はボスのものだ」

 

「駆! サンチャゴ! レオンくん! 誰か助けて!!」

 

 美香子は必死に抵抗したが、寝込みを襲われ、杖も奪われた状態では、(かな)わなかった。

 幹部は美香子を縄で拘束(こうそく)すると、もう一人の幹部と協力して、彼女を(ともな)って森の奥へと消えていった。

 

 

 

 駆はレオンとミケの姿を目で必死に追い、走っていた。道を選んでくれているのだろうか? 駆が一人で森の中を駆け回っていた時とは違って、転ぶこともローブが引っかかって前に進めなくなってしまうこともなかった。

 母はどこに連れて行かれたのだろうか? 何の目的で母は攫われたのだろうか? 母は無事だろうか?

 駆の頭には時折そんな思索(しさく)が浮かんできた。が、胸の奥にしまった。

 今はレオン達に追いすがることが、美香子を助ける一番の近道と思ったから。

 

「駆さん、止まるずら。見つけたずら」

 

 そして彼らは盗賊団のアジトに辿り着いた。

 

「あれが盗賊団のアジトか……」

 

 歩みを止めたレオンは駆を制止すると、指を指した。その方向へと視線を向ける駆。目を細める。

 洞窟(どうくつ)の入り口が見えた。入口には松明が灯され、旗――盗賊団のシンボルらしき――が掲げられていた。

 見張りが二人ほど立っている。

 

「洞窟を改造してアジトにしてるのか?」

 

「たぶんそうずら。ミケは『あそこから美香子さんの匂いがする』と言ってるずら」

 

 「ニャー!」とミケが応えた。

 

「ありがとう、ミケ、レオン」

 

 駆は二人に感謝する。そして間髪(かんぱつ)入れずに続けた。

 

「準備はいい? 突入するよ……!」

 

「ま、待って欲しいずら……! 駆さん。それは危険すぎるずら」

 

 脇に(たずさ)えた魔導書を手に取った駆に、慌てた様子のレオン。

 

「どうしたの? 突入しないと、ママを助けられないよ?」

 

「おらも美香子さんを助けたいずら。でも駆さん、あの見張りをよく見て欲しいずら」

 

 少し苛立(いらだ)ちを含んだ声色の駆。レオンは落ち着いた様子で彼を諫める。

 

「鎧兜に(やり)。そこそこの装備ずら。野営地に襲撃してきた盗賊達もそうだっだずらが、冒険者でもおかしくないくらいの装備ずら。あんなのが洞窟の中には一杯いるずら。駆さんの魔法の力は凄いけど、絶対勝てないずら」

 

「確かに……でもじゃあどうすればいいの? 洞窟に突入しないと、ママを助けられない」

 

 苦悩の色が駆の顔に浮かんでいる。

 数の暴力。レオンの言が正しいのは彼にも分かるが、だからといって母を助けることを(あきら)めるわけには……

 

「裏口を探すずら。ミケ」

 

 レオンはそう言って、ミケに目配(めくば)せした。ミケはレオンの肩から飛び降りて、洞窟の周囲の探索を始めた。

 

「きっとあるはずずら。グリーンヒルズ村にもあったずら。いざという時の逃げ道ずら」

 

 駆とレオンはミケの後をついていく。

 しばらくして、ミケがぴたりと足を止めて鳴いた。

 

「ニャー!」

 

 駆とレオンはミケの向く方向を見る。小さな穴が見えた。大人一人が背を(かが)めて何とか通り抜けられる、というくらいの小さな入り口だった。

 周りの景色と馴染(なじ)んでいて目を()らさなければ、見つけるのは難しい。

 

「これが裏口?」

 

 穴まで行き、駆が呟く。

 

「そうみたいずら。ミケは『ここから匂いがする』と言っているずら」

 

 レオンはミケに尋ねて、その返事を聞いて言った。

 

「じゃあ行こうか……魔法の灯りを少し暗めで進もうと思うんだけど、二人はどう思う?」

 

 そろそろ自分が冷静な判断力を失っていることを自覚し始めた駆。レオンとミケに問いかけた。

 

「にゃー」

 

「おらも良いと思うずら。灯りがあれば(ワナ)があっても気づきやすいし、中に敵がいたとしても松明と違って光の量を少なめに調整してもらえれば、多少気づかれ難くなると思うずら」

 

 自覚出来ているということは、逆に言えば冷静な判断力が戻って来た証なのかもしれない。

 かくして二人と一匹は、裏口から盗賊団のアジトへの進入を開始するのであった。




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

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 それでは、またお会いしましょう。
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