【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第一八話:ひとときの 前編》

 ウィンターウッドの街、その一角。輝きによって一瞬だけ周囲が明るく照らされた。その光が消え去ると同時に、美香子とヴァレンタインの二人が姿を現した。ミルトンからウィンターウッドへと《転移の大水晶(グラン・ポーター)》を使ってテレポートしたのだ。

 

「お疲れ様です」

 

「職務ご苦労様」

 

 ポーターの監視衛兵は、ヴァレンタインと美香子に向けて(おごそ)かな顔で。

 返すヴァレンタイン。美香子も軽くお辞儀をする。

 

「もしよろしければ、お店までご一緒しましょうか?」

 

「有難うございます。でも大丈夫です、馴染みの街ですから」

 

 ポーターの区画を出て街の一番大きな広場に出て、二人はそんなやりとりを交わす。

 子供たちが駆け回り、笑い声が空に響いていた。

 

「そうですか……それでは、私はこの街の散策してみたいと思います。初めて来る街なので、興味があります」

 

 ヴァレンタインは少々残念そうであったが、微笑みながらそう返す。

 二人は待ち合わせ時間と場所を決めて、別れた。

 

「さて、じゃあささっと用事を済ませちゃいますか」

 

 彼女は、ウォーリアーズの装備品を手配してもらっている馴染みの店へと足を運んだ。

 

「おう、ママさん! いらっしゃい。任務は無事成功かい?」

 

 店の中は、魔法の杖や魔導書はもちろん、壁一面に様々な種類の武具が飾られており、それぞれが独自の物語を持っているかのようだった。店主のオヤジの気の良い声が店内に響き渡る。

 美香子は挨拶を返すと、自分にぴったりの杖を見つけるために、店内を丹念に探し始めた。彼女は、杖一本一本に触れ、その杖が持つ魔法力を感じ取ろうとした。

 そして、ついに、紫の宝石で装飾された杖の前に立った。その杖を手にした瞬間、彼女の周りの空気が変わり、杖はまるで長い間彼女を待っていたかのように輝きを放つ。彼女は、その杖を手に取り、重さ、バランス、触り心地を確かめた。

 杖は、彼女の手の中でさらに輝きを増していく。さながら杖が彼女を選んだかのように。

 美香子は、その杖を持って新しい冒険に出ることを決心した。

 

「それにしても災難だったね。杖はお安くしといてあげるよ」

 

「ありがとうございます、おじさま」

 

 事情を話したことで、出費も大分(おさ)えることが出来た。元々懇意にしている店なので、割引価格で購入できるのだが、その上一段と色を付けてくれた。美香子もホッコリと自然と笑みが零れる。

 

「じゃあそろそろ日も落ちるし、気を付けて。まあ、ミルトンと違ってこの街は治安が良いから、大丈夫だと思うがね」

 

「ふふっ。ええ、ウィンターウッドは良い街です。素敵な武具屋さんもありますしね。それでは」

 

 お国自慢はどこでも共通だが、実際良くも悪くもウィンターウッドは都市のミルトンとは違って小規模な田舎街で、その日暮らしのならず者達がそうたむろ出来るほど豊かな街でもない。

 いずれにせよ、美香子も武具屋の店主もやはりウィンターウッドに地元愛を抱いている。『賑やかさはないが、その分、人々の心の温もりが感じられるいい街』と。

 彼女は店を後にし、ウィンターウッドの夕暮れに身を委ねる。

 

「すみません。お待たせしてしまいました! 急いだつもりだったのですけれど……」

 

「いえいえ、私の散策が早く済みすぎてしまっただけですから」

 

 予定時刻より三〇分ほど早く集合場所に美香子は到着したが、既にそこにはベンチに座ったヴァレンタインの姿があった。

 

「よろしければ夕食をご一緒しませんか? 散策で良いレストランを見つけたのですが、一人では入りずらいもので」

 

「ええ、そうですね。私もお腹が減っていたところです。喜んで。ちなみにお店の名前は?」

 

 そのレストランはウィンターウッドで最も高級な店であった。

 

「では参りましょうか」

 

「何から何まで、すみませんわ」

 

 支払いはヴァレンタイン持ち。

 高級レストランに相応(ふさわ)しい服装に着替えるため、美香子は拠点に寄ることになった。日も落ちて来たということでヴァレンタインも同伴している。

 

「良い街ですね」

 

「はい。私もこの街が大好きです。特に冬の、雪が降る時期のこの街はとても美しいんですよ」

 

 《雪樹郷(ウィンターウッド)》の街は、その名の通り森に囲まれた街だ。雪に覆われた木々が月光を反射し、その光景が、夜空に輝く星々のように見えることが、街の名前の由来だった。

 

「その時には是非またこの街を訪れたいものです」

 

「ふふっ、その際には歓迎させてもらいますね」

 

 夕暮れ時の街の喧騒を抜けて、美香子とヴァレンタインはウォリアーズの拠点に辿り着く。

 クランメンバーは今、皆出払って無人だ。

 美香子は常々携帯している(かぎ)で門扉を開けて、ギルドハウスへとヴァレンタインを客間へと誘う。

 

「お気遣い頂きありがとうございます」

 

「いえいえ大した持て成しも出来ず申し訳ないですわ……では、着替えてきますので、こちらで少しお待ちください」

 

 お茶とお菓子を出して、美香子は私室へと向かった。

 

 

 

「もしかして、これって浮気?」

 

 美香子は鏡の前に立ち、赤いドレスを身にまとった自身の姿を見つめていた。ドレスは、彼女の()れた美しさを引き出している。情熱的な色合いの、深紅の布地が彼女の肌に溶け込むようにしなやかに流れる。

 彼女の心は複雑な感情に満ちていた。

 美香子は自分の胸元を見下ろす。普段のドレス以上に谷間が露出し、美香子の大きな胸をを強調するようなデザイン。少し照れくさい気持ちになりながら、一方で夫の信彦への罪悪感が彼女の心をかすめた。

 

「……いいえ、違う。私はただ、ヴァレンタインさんに感謝しているだけ。彼は私をならず者達から助けてくれた。大金がかかるグラン・ポーターを特別にただで使わせてくれた。そのおかげで、素晴らしい杖をお手頃に買うことも出来たじゃない?」

 

 彼女は胸に手を当てて、深呼吸をする。

 

「それに私オバサンだし……このドレスだって昔、信彦さんとのデートで着てた奴だし」

 

 美香子はそう自分に言い聞かせた。邪な考えを振り払う。

 

「……もしかして私、イタイ?」

 

 そして頭が冷静になってくると、今度は別の意味で自分の恰好が照れくさく思えて来た。

 いい年したオバサンの胸など、誰が好き好んで見ると言うのか?

 

「でもあのレストランは高級店だし……うん。大丈夫」

 

 彼女は鏡に向かって微笑み、自分自身を励ます。

 そしてドレスの裾を整えるとヴァレンタインの待つ、客間へと戻って行った。




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

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 それでは、またお会いしましょう。
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