【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
明けましておめでとうございます!
ミルトンの冒険者ギルドの地下牢へと続く石段。ギルド長のガレスの後を追う、信彦とヴァレンタイン。石畳の階段を下りる足音は、牢獄へと続く暗く湿った石壁に反響する。
「この先が件の盗賊頭目の独房です」
ガレスが牢獄の入り口を指さし、静かに告げた。
「痛み入る、ガレス殿」
信彦が礼を言い、ヴァレンタインも礼。そして懐より何かを取り出した。
淡く水色に発光するそれ。
「魔動機ですか?」
「えぇ。転移の《小》水晶です」
ヴァレンタインは《
魔動機とは、マナ、すなわち魔法の力で動く機械全般を指す。
駆の持つスマホモドキも、この転移の小水晶も、そして
「尋問のため、仲間を呼びます」
ヴァレンタインが水晶に力を込めると、宙に半透明の発光する
「……俺には難しくて訳が分からん。ガレス殿は魔動機には?」
信彦の目に映る、複雑な光のパターン。まるで星座のように美しく、謎多き構造を成している。
「
苦笑いを浮かべる、ガレス。
魔動機は
実際のところ、ヴァレンタインは他人に使用されないために設定した《複雑なパスワード入力》をしていただけであったが、見つめる二人の中年にはさっぱりの光景であった。
彼らにとって、ヴァレンタインの魔動機操作術は、さながら遠い昔話の中の魔法使いが振るう奇跡のよう。
……さすがにそれは、
「操作が終わりました。転移の魔法を発動します」
小水晶の秘められた力を解き放つ。周囲は突如として眩い光に包まれた。
空間が歪む。
「お呼びでしょうか?」
そして気づけば、三人の前には《半人半蛇の魔物:ラミア》の姿があった。
「?!」
信彦は、ラミアの存在に一瞬たじろぐ。も、すぐに落ち着きを取り戻した。
「彼女はセレスティア。私の信頼する仲間です」
「皆様、どうぞよろしくお願いいたします」
セレスティアの上半身は、人間の女性のそれと変わらない。だが、下半身は
「よろしくお願いする」
「儂はミルトン冒険者ギルド長:ガレス。お初にお目にかかる」
年の功か? 信彦よりも一回り上のガレスは
「セレスティア殿、あなたは
セレスティアの顔立ちは薄明りの中でさえ、人間と魔物の境界を
完璧なまでに整っている。
「いえ、わたくしは
彼女の長く流れる髪はエメラルド色で、水晶の光を受けて、宝石のような輝きを放っている。その瞳は、
「彼女の力で、頭目の口を割らせます。
そして薄い桃色の
ラミアの話す言葉には、魔法のような魅力が備わっている。耳を傾ける者は、時の流れさえ忘れてしまう。
「なるほど……ラミア。話には聞いています」
在りし日。
信彦は出くわしたことはなかったが、冒険者、特に《男性の、パートナーのいない冒険者達》は警戒すべき、とされている魔物だ。
「冒険者を攫って、その者を魔物:
歌声を使って
それが信彦の知る魔物:ラミアである。
「いえ、そのようなことは致しません。わたくしは、盗賊の頭目にチャームの魔法をかけ、彼がひた隠しにしている秘密を自白させるために
「彼女には事前に今回の目的については話しています。必要以上のことをさせるつもりはありませんので、ご安心を」
セレスティアは理性的であり、またヴァレンタインも確固たる口調で言い切る。
実際、今目の前にいる彼女は信彦が耳にしてきた
「……すみません。疑うような言葉をかけてしまい」
信彦は途端に自分が恥ずかしくなってきた。
「冒険者という職業
頭を下げる信彦。
「大丈夫ですわ、慣れていますので」
「ええ、彼女の言う通りです信彦殿。どうか顔をお上げください。元はと言えば、《この国の制度》に問題があるのですから」
ホノリア王国。
ミルトンやウィンターウッド、グリーンヒルズ村のあるベルギガ辺境伯領も含めて、この地を統治する政府である。
「私のような王侯貴族でなくとも、《
魔物と共に戦いに臨む者のことを、モンスターマスターと呼ぶ。
しかし
「(もちろん例外はある。レオンのミケのように)」
ミケは猫の魔物:ケットシー。厳密に解釈すれば、ミケを
ただ、あくまでレオンは猟師の息子であり、ミケは《戦いではなく、狩りのお供》。それがこれまでの建前であった。
「……俺は古い人間です。あくまで魔物を討伐対象としか見れない。ですが、若い者たちの中には異なった考えを持つものもいます」
とはいえ今やレオンは傭兵団:ウォーリアーズの一員であり、冒険者である。
今のところお目こぼしに預かっているが、いずれ何か問題が起きるとも限らない。
「そしてヴァレンタイン殿、貴方のような考えを持った貴族もいらっしゃる。いずれ、王国が変わることもあるかもしれませんね」
希望の気持ちも込めて、信彦はそんな言葉を投げかけた。「ええ、いつの日か」ヴァレンタインが返す。
「コホンッ……さて、そろそろ本題に戻りましょう。扉を開けてもよろしいかな?」
脱線した話を引き戻すガレス。面々に問いかける。
頷く一同。ガレスの手が鉄扉に触れ、力が込められる。重音と共に、扉はゆっくりと開かれた。
そこには冷たく、更に薄暗い独房エリア。信彦たちはガレスに導かれ、その
「……とうとう来たね」
独房の一つまでやって来ると、中にいた囚人がおもむろに呟いた。
「この男が、例の盗賊の頭目です」
金髪五分刈り。顔は日焼けし、目つき悪く、人相いかにもチンピラのそれ。年齢はおよそ還暦。筋肉質な男であった。
男の視線は、獲物を狙う
「では皆さん、こちらを耳に」
美香子達が
ヴァレンタインは、手に持った
全員が耳にそれを装着すると、一同の後ろから付いて来たラミアのセレスティアが静かに歩み寄り、盗賊ボスの独房の前に姿を現した。
「へぇ~マーメイドかいな。
ヘラヘラ笑いながら軽口を叩く頭目。
彼女はニッコリと微笑むと、ゆったりとした動作で胸に手を当て、歌い始めた。
「♪~♪~♪~~」
「へぇ~、歌い手さんかいな。上手いな~。ますます欲しなるわ~」
思わず
次第に彼の目が
頭目の粗野な眼差しは、更に虚ろに。
そして気づけば、その目から生気がすっかり失われていた。
「終わりました」
セレスティアは頭目のその様子を確認すると、歌唱を止めて、ヴァレンタイン達に振り返った。
ヴァレンタインは頷くと、耳栓を外し、信彦とガレスにもジェスチャーで外すよう伝える。外す二人。
「彼はチャームの魔法にかかり、魅了状態にあります。いまなら
「ありがとう、セレスティア。それでは彼に問いかけてください」
ヴァレンタインはセレスティアに感謝の意を示すと、続ける。
「《
「承知いたしました」
セレスティアは静かに応じ、頭目に問う。
「頭目、
盗賊のボスは虚ろな目で、
・あとがき
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それでは、またお会いしましょう。