【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
ネヴァースプリング伯爵の間。朝の光が高窓から
ホノリア国王エドアルトは、重厚な椅子に腰掛け、彼の前に立つアルフレッド=ヴァレンタインは、王太子として、側近たる監察官として、言葉を選びながら進言する。
「『
しかし、エドアルトの緑色の瞳は、決意に満ちていた。彼はゆっくりと立ち上がり、ヴァレンタインの肩に手を置いた。
「
そして静かに言い放つ。
「今がその時」
エドアルトの茶色の髪が朝日に照らされて輝き、蓄えられた
「では行こうか、我が友よ」
城門近くの
「グハッ!」
何者かに背中を蹴とばされた。
地面に倒れ込む。
怒りの感情を込め、エドアルトが振り向くと、
「たくっ! どういうことだい?」
そこには鳥を彷彿とさせる頭に人間の体、そして巨大な翼を生やした亜人の姿。
「これから死地に
メリダは怒り心頭といった具合で、地面に倒れ込んだエドアルトを見下げている。
「メリダよ。我が親愛ある友よ……ではこちらからも問わせてもらうが」
エドアルトは
「出会い頭に蹴飛ばすのが、相棒のすることか?」
恨み言を漏らす。
メリダは手を差し伸べ、エドアルトはそれを掴んで立ち上がった。
「時には拳を交わしあうのが、相棒ってもんじゃぁないか。だろう、《ネルウァ》?」
ニヤリと笑うメリダにエドアルトは、いやエドアルト=ネルウァは一際大きなため息をつき、やれやれといった様子で首を振る。
「ほらお乗りよ。姉さんのいる砦まで、あたしの翼ならひとっ飛びさ」
親指で自身の背中に生える羽を指さしメリダ。
ちなみに、オークやリザードマンも同じ魔物であるが、魔人と区別されていて、魔獣と呼称されている。
「……安全運転で頼むぞ」
「ヤワだねぇ」
二人は城壁を越え、広大な空へと飛び立った。メリダの羽は力強く、しかし穏やかに空を切り、彼女の背中に掴まるエドアルトは安堵の息をついた。
平野を越え、山々を眼下に見下ろす。霧峰山脈。山脈の最高高度は雲を突き抜けるほどであり、それほどの上空であればアーヴィスはともかく気圧気温始め様々な要因で、エドアルトにはとても耐えられない。今彼らが飛ぶのはもっと低空だ。
彼らは山脈に築かれた砦の一つへと舞い降りる。メリダは慎重に降下している。彼女は、砦群を繋ぐ長城に沿って飛び、目的の砦の門前へとエドアルトを運んだ。
「エドアルト陛下、メリダ《
彼らの到着は、砦の衛兵たるミノタウロスによって静かに迎えられた。
「アリアドネ聖魔司令がお二人をお待ちです」
エドアルトとメリダは顔を見合わせた。
『御身一つ』との要請であったが、二人で来ることがアリアドネにはお見通しであったらしい。
「ご案内いたします」
砦の門が開く。
「(あれは母上の好きだった花では?)」
ふと遠き日の記憶が思い起こされ、エドアルトは思索に耽る。彼の緑瞳は、
「陛下、お待ちしておりました」
砦の司令室に入ると、アリアドネが静かに声をかける。彼女の声は、戦いの疲れを一切感じさせず、むしろ研ぎ澄まされた剣のように、鋭く、冷静であった。
彼女の羽毛は、夜空を思わせる深い紺色で、光に当たると星のようにきらめく。その姿はまるで神話から飛び出してきた伝説の生き物のように、神秘的な美しさに満ち溢れていた。
「マスター・ヴァレンティヌスは、クーデターを通じて、陛下の《王としての資質を問う試験》を行っていたのです」
「どういうことだい、姉さん」
ゲオルギオス・マクシミアヌス・ヴァレンティヌス・ド・ホノリア。それが辺境伯の本名である。
アリアドネはメリダと同じく
「マスターは、もし陛下がクーデターの企みに気づかず、兄に遠慮し続けるようならば、王として不適格だと考えていました」
彼女の声は、穏やかでありながらも力強い。部屋に満ちる
「民を
エドアルトは深くため息をつき、窓の外に広がる山々を見つめた。その先に広がるのは、大魔王の治める暗黒帝国。
兄にも考えがあってのことと理解はするものの、弟を信じず、国を二分するような行動に出、弟を残し、一人この世を去ったことに、悲しみとともに怒りを感じていた。
「しかし陛下、あなたは企みに見事気づき、歴戦の傭兵団を伴わせた王太子殿下を差し向けた」
アリアドネは続ける。
「もとよりマスターは、自身の判断が
メリダは、エドアルトの隣で静かに頷いた。彼女のオレンジ色の瞳は、姉の言葉に深い理解を示していた。
「……確かにそうであったかもしれない」
エドアルトも沈黙の後、彼の近侍と同じく認める。
「もしネヴァースプリングにそなたが配置されていたのなら、ヴァレンタインの聖魔の助力なしには、さしもの傭兵団といえど勝ち目は薄かったであろう。聖魔達の大半は砦を守るそなたに預け、精鋭とはいえリザードマン四体のみで交戦したのは、そなたの発言を、兄上の
王としての資質。エドアルトは考える。『果たして自分はそれを持ち合わせているのだろうか?』と。
「わたしは、陛下がこの厳しい情勢をも乗り切る資質を有していると信じています」
堂々としたアリアドネの声は、部屋中に響き渡り、エドアルトの心にも響いた。
「マスター・ヴァレンティヌスも同じく。陛下、あなたはこの国を、どんな困難からも守り抜くことが出来るはずです!」
アリアドネは微笑みを浮かべる。
エドアルトは決意を固めた。
「アリアドネ、兄上のおっしゃった通り我らがホノリアは遠からず
エドアルトはアリアドネに
「余は、この国を守り抜くという重責を負っている。それにはより多くの者の助けが必要だ」
彼の声は、温かでありながら力強かった。部屋を満たす暖炉の炎のように。
「アリアドネ、余の近侍となり姉妹で王国を支えてはくれまいか?」
アリアドネは静かにエドアルトの言葉に耳を傾けていた。
そして頷き、
「わたしはあなたのため、亡きあの人のため、全てを捧げる覚悟です。ホノリアの平和のために、あなたに仕えます、《マスター・ネルウァ》」
「姉さんの知恵、そしてあたしの力があれば百人力さ! ネルウァ、しっかり使いこなしておくれよ」
部屋に満ちる空気が変わった。互いの目を見つめ合う三人。信頼に満ち溢れている。
彼ら彼女ら三人が、王国の未来を明るく照らし出す光となることだろう。
・あとがき
著者の北条 ゆうです。
《第二章 エピローグ》お読み頂き、本当に有難うございます。お楽しみ頂けましたでしょうか?
さて、前話の《第二章 最終話》でこの小説のタグにも入れている《因果応報》のテーマについて《第一章 プロローグ》と合わせてお読みいただくことで、物語として少し形にすることが出来たかな、と思っているところなのですが……
ここでお話のストックを貯めるため、週一回連載を終わりにしたいと考えております。
キリの良いところまで書き上げましたら、再び週一回更新を再開する予定です。
そして来週木曜日(二月二七日)から《カクヨム》でも『異世界かぞく!』の連載を開始したいな、と考えております。
毎日更新の予定です。もしよろしければアニメの再放送のような気持ちでカクヨムの方にもご来訪頂けますと、幸いです。
それでは! またお会い出来ると願って!
高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(≧▽≦)
読者の皆様、有難うございました(^^)
※追記
カクヨムでの連載を開始しました!→https://kakuyomu.jp/works/16818093094556758762
※追記2
『小説家になろう』でも連載を開始しました!
→https://ncode.syosetu.com/n8259kh/