【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第二九話:晴れの日》

 三月。王都ルテティアは、春の訪れを告げる暖かな陽光に包まれていた。整備された街路には、色とりどりの花々が咲き乱れ、風に乗って甘い香りを漂わせている。

 豪華な建物が立ち並ぶ街の中心部。大通りは人で(あふ)れかえっていた。市民たちは早朝から集まり、《パレード》を一目見ようと待ちわびていた。《ウォーリアーズの活躍を称える》ための、春の行進。

 色鮮やかな旗が掲げられ、花びらが舞い散る中、音楽隊の演奏が響き渡っていた。

 ルテティアの王都はその日、特別な輝きに包まれていた。

 

「見て、ママ! ウォーリアーズだよ!!」

 

 子供たちの歓声が響く中、騎乗した信彦は鎧兜(よろいかぶと)を身にまとった勇士然とした堂々たる姿で都の大通りを、御者(ぎょしゃ)に導かれゆっくりと進んでいる。

 信彦は街の人々に手を振り、微笑みを返していた。

 

「本当に素晴らしい戦士だわ」

 

 人々は信彦の姿に感嘆(かんたん)の声を上げていた。

 

「彼のような強い冒険者がいるから、俺たちは安心して暮らせるのさ!」

 

 信彦の隣には美香子の姿。ギリシア風ドレスに空色のマントを纏い、夫と同じく騎乗している。

 

「奥様も素敵だわ」

 

 美香子は、そんな周囲の反応に応えつつ、信彦の隣で優雅に馬を進めていた。

 

「素晴らしいカップルだね」

 

 その時、美香子はふと視線を感じ、道端に立つ一人の少年に目を留めた。少年は美香子の姿に見惚れていたが、彼女が微笑みかけると、驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべた。

 

「(僕に微笑んでくれた……?!)」

 

 少年は顔を真っ赤に染め、胸が高鳴るのを感じた。『まるで女神様のみたい』。少年の心に、美香子の優雅な微笑みが深く刻まれた。

 

「美香子、あなたは本当に特別な存在だ。多くの人々を幸せにするでしょう」

 

 アルフレッド=ヴァレンタインは上質なジュストコールを纏い、堂々とした姿で馬に乗っていた。

 美香子はヴァレンタインと信彦に挟まれている形で進んでいたが、少し道幅が狭くなった際に、ヴァレンタインが彼女に近づき、(ささや)いた。

 

「今日だけは、今だけは、あなたは王国に住むすべての人のもの。そう、今《だけ》は」

 

 ヴァレンタインの言葉はロマンスに溢れており、その瞳には深い愛情が込められていた。美香子は彼の言葉に頬を赤らめ、微笑んだ。先程、少年に向けた以上の感情を乗せて。

 

「ええ、ヴァレンタイン。私の恋心はあなただけのもの」

 

 再び大通りに戻る。信彦は街人への対応と彼らの歓声もあってか、美香子とヴァレンタインの囁き合いには気づけなかったようであった。

 

「あの魔法使い君、素敵じゃない?」

 

 パレードの先頭を進む信彦、美香子、ヴァレンタインの三人に続いて、サンチャゴにジェイク、美姫にルドマン、そして駆レオンを始めとするウォーリアーズ傭兵団面々が続く。

 彼らはそれぞれの武具を身に着け、よろしく勇士然とした姿で徒歩で歩いている。

 

「そうねぇ……あたしは隣の金髪の男の子の方が好みかな」

 

 人々はウォーリアーズの一同を見つめ(あこが)れや羨望(せんぼう)の眼差しを向けている。パレードは続く。陽光に照らし出されている彼ら。キラキラと輝いている。

 街の人々は歓声を上げ、称える。《ホノリア王国転覆を企てたベルギガ辺境伯の陰謀》を未然に防止することに成功した、彼らの功績とその栄誉を。

 

 

 

 そしてその夜、ルテティアの王宮は一層の輝きを放っていた。

 大広間には豪華なシャンデリアが煌めき、壁には美しいタペストリーが掛けられている。床には赤い絨毯(じゅうたん)()かれ、貴族たちを始めとした王家にゆかりある上流階級の人々が優雅に談笑していた。

 

「ねぇあなた見て、あのご婦人じゃないかしら?」

 

 パーティ会場の広間の大扉が開き、主役たちが現れる。

 豪華な装飾が施された扉がゆっくりと開かれると、会場内の視線が一斉に集まった。

 

「なんて美しいんだろう……」

 

 参加者たちの囁き声。まず現れたのはヴァレンタイン。

 そして彼にエスコートされる美香子の姿。美香子はヴァレンタインと共に見繕った(くだん)の紫色のドレスを纏っている。

 

『美香子、今夜は特別な夜です。あなたの美しさが一層輝いています』

 

 パーティ会場へと足を踏み入れる前、美香子と手をつなぐヴァレンタインは彼女に微笑みながら囁いた。

 

『ありがとう、ヴァレンタイン。あなたのおかげでわたし達は……ううん、わたしはこの夜を心から楽しむことが出来そう』

 

 深い紫色の生地に金糸の刺繍。胸元には繊細なレースがあしらわれ、デコルテを美しく飾っている。

 黒髪は柔らかく波打ち、肩にかかるように整えられている。瞳は優しさを(たた)え、微笑むたびにその魅力が一層輝く。彼女の姿は、会場にいる全ての人々の視線を一瞬で引きつけた。

 

「駆さん、どうぞこちらへ」

 

「は、はい。エレアノール王妃……」

 

 美香子・ヴァレンタインのペアに続くのは、駆と、ホノリア王国王妃:エレアノールであった。

 駆の声は震えていた。手も震えていた。だがエレアノールはそんな彼の緊張を感じ取ったのか、微笑みながらその手を差し出した。汗ばんだ手で握る駆。

 しかしエレアノールは嫌な顔一つせず、彼を(ともな)ってパーティ会場へと足を踏み入れていく。

 

「はぁ~……エレアノール王妃。今日もお美しい。素敵だわ~」

 

 エレアノール王妃は豪華なドレスを纏っている。深いエメラルドグリーンのドレスで、胸元の銀糸の刺繍がその豊満なバストから作り出される谷間を美しく、魅惑的に飾っていた。

 

「まるで美の化身:アフロディーテのようだ……」

 

 駆は深い紺色の生地のジュストコールを身に纏い、パーティ会場に足を踏み入れた。王家よりこの日のためにプレゼントされた、上質な、オーダーメイドの一品だ。

 その心は落ち着かず、高鳴っていた。

 

「英雄だが何だか知らないが――」

 

 月光のように輝く銀髪。

 宝石のように美しい碧眼(へきがん)

 肌は陶器のように白く、滑らか。

 

「ポッとでの傭兵風情の小僧(こぞう)が……!」

 

 その美貌には神々しさすら感じさせる。

 そして何より、はち切れんばかりに主張するその二つの大きな乳房。

 妖艶(ようえん)さや母性はもちろんのこと、その驕奢(きょうしゃ)なドレスも相まって、迫力あるバストは気品と威厳をすら()ね備えていた。

 

『駆さん、あなたの瞳には純粋な心が映っていますね。あなたのような素敵な若者と出会えて嬉しいです』

 

 入場前のやりとり。

 彼女の温かい言葉は、まるで春の陽光のように、彼の心を包み込んだ。

 

『あ、ありがとうございます。エレアノール王妃……!』

 

 駆はその言葉に一際胸が大きく躍動(やくどう)するのを感じた。たまらず顔を赤らめてしまったことも感じる。

 

「くそっ……! 羨ましい……」

 

 端的に言って、《駆はエレアノールに一目惚れ》していた。

 

「ふむ……彼ら、ウォーリアーズは――」

 

 そしてレオンとホノリア王女マリアが入場してくる。レオンもやはりプレゼントされた上質なジュストコールを纏っている。

 王女マリアは母親譲りの銀髪に碧眼。エレアノールの若い頃に(うり)二つと王国でも評判である。彼女も豪華だが、しかし母親とは違い清楚(せいそ)なドレスを纏っていた。

 

「それほどまでに王家にとって特別な存在というわけか」

 

 最後に、ウォーリアーズ団長:桐島 信彦と国王:エドアルト・ホノリアが姿を現す。

 彼らはエスコートする女性を連れていなかったが、その入場は一際格式高く、威厳に満ちていた。

 信彦は上質なジュストコールを纏い、堂々とした姿で歩を進めた。

 エドアルトは王冠を(いただ)き、豪華なローブを纏っていた。その姿はまさしく王者の風格。 

 参加者一同は一斉に平伏(へいふく)した。彼らの開ける道を通って、信彦とエドアルトがゆっくりと歩を進め、パーティのもっとも目立つ場所、吹き抜け二階へと向けて階段を上っていく。二対ある階段を分かれて一人づつ上っていく。

 会場全体に静寂と緊張感。

 二階に到着すると、エドアルトと信彦は会場全体を見渡せるギャラリーに立った。

 

「ホノリアに、ウォーリーアーズに栄光をあれ!」

 

 エドアルト国王が高らかに宣言すると、

 

「「「「「栄光をあれ!!」」」」」

 

 会場全体に歓声。

 参加者たちの声が一斉に響き渡り、パーティの幕が開けた。豪華なシャンデリアの光が一層輝きを増し、会場全体が祝福の雰囲気に包まれていた。




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

 高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
 それでは、またお会いしましょう。
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