【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第三〇話:愛と愛》

 豪華なシャンデリアの光がタペストリーに反射し、まるで星空のように(きら)めいていた。

 

「美香子、こちらへ」

 

 アルフレッド=ヴァレンタインは美香子の手を取り、彼女を若い男性や女性たちの元へと案内した。彼らはヴァレンタインと同世代で、美香子に興味津々の様子だった。

 

「こちらは桐島 美香子さん。ウォーリアーズ団長:桐島 信彦殿の奥方です」

 

 ヴァレンタインの紹介に、美香子は微笑みながら一礼した。

 

「初めまして、美香子と申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

 若い男性たちは思わず美香子の美しさに目を奪われた。

 

「美香子さん、そのドレスは本当に素敵ですね。とてもお美しい」

 

「ありがとうございます。アルフレッド様が選んでくださったのです」

 

 美香子が答えると、男性たちは一瞬ヴァレンタインに嫉妬(しっと)の視線を送った。しかし、すぐに彼女に対する興味を取り戻し、世間話に興じた。

 ちなみに美香子だけでなく、駆や信彦、レオンも誰かに問われれば『自分の纏う礼服一式はアルフレッドより送られた』と答えたであろう。

 なぜなら、彼ら四人の王家への窓口はヴァレンタインを通してのものであり、王家からのプレゼントとはヴァレンタインからのプレゼントと同義であったから。とはいえ美香子だけはドレスを特別な方法で送られてはいたが……

 

「美香子さんは、どちらのお国からいらっしゃったのですか?」

 

「ウィンターウッドから参りました」

 

「おぉ確か……観光名所ですね。話には聞いております。とても良いところであると(こんな爆乳人妻と(ねんご)ろにしやがって……王子め、(うら)めしや……)」

 

 若い男性たちが彼女に好意を抱いていることが明らかだった。時折彼らの視線が、彼女の豊かな胸元へと向かうが……そこは上流階級。そう不躾(ぶしつけ)な行いを出来るはずもない。一瞬一瞬のことなので、美香子もそれには気づけていない。

 一方、若い女性たちは、

 

「アルフレッド様、今日は本当に素晴らしい夜ですね」

 

「ええ、皆さんと一緒に過ごせることを楽しみにしていました」

 

 ヴァレンタインが微笑むだけで、女性たちは彼に夢中になっていく。ヴァレンタインに好意を抱いている様子だった。

 

「美香子さん、殿下とはどのようにしてお知り合いになったのですか?」

 

 そして同時に美香子に対して嫉妬の視線を送った。

 

「冒険者としての任務をこなす中で、王太子殿下にお力をお貸しいただく機会があり、知り合いました。とても優しくて、頼りになる御方です」

 

 美香子が答えると、女性たちはさらに嫉妬の色を濃くした。

 

「そうですか……本当に……アルフレッド様は、本当に、素晴らしい御方ですね」

 

 美香子はその視線に気づきながらも、微笑みを絶やさずに会話を続けた。

 

市井(しせい)に住む一市民の方にでさえ、心をかけてくださるのですから。そう思うでしょう、美香子夫人?(いくら美魔女とは言え、貴族でもない年増(としま)女が!)」

 

「ええ、本当にそう思います。とてもお優しい方です」

 

 若い男性たちは美香子に好意を抱くと同時に、ヴァレンタインに嫉妬していた。

 若い女性たちはヴァレンタインに好意を抱くと同時に、美香子に嫉妬していていた。

 美香子の美しさと優雅さは、色々な意味で会場にいる若者達の視線を引きつけ、結果その存在を一層際立たせていた。

 

 

 

「美香子さん、あらかた挨拶(あいさつ)も終わりましたし、少し休憩しに行きましょうか?」

 

「ええ、是非。すこし疲れて来たので」

 

 二人は対応していた若者たちに別れを告げ、手を取り歩き出す

 

「美香子、今日の君は本当に素敵だよ」

 

 ヴァレンタインが美香子に優しく囁いた。

 美香子はその言葉に頬を赤らめ、微笑みながら答えた。

 

「ありがとう、ヴァレンタイン。あなたがいてくれるおかげよ」

 

 その場を後にする二人を見て、若い男性たちはヴァレンタインに対する嫉妬の色を一層濃くし、若い女性たちは美香子に対する強烈(きょうれつ)な嫉妬の目線を浴びせるのであった。

 

 

 

 パーティの喧騒から離れ、ヴァレンタインと美香子は王宮のバルコニーに出た。夜空には無数の星が(またた)き、月光が二人を優しく照らしていた。バルコニーからは王都ルテティアの美しい夜景が一望でき、遠くには街の灯りが宝石のように輝いていた。

 

「美香子、パーティはどうだい? 何か困ったことは?」

 

 ヴァレンタインは美香子の手を取り、優しく微笑んだ。彼の緑色の瞳は真剣な光を帯びていた。

 

「ふふっ、ヴァレンタインが支えてくれているんだもの。何も心配事などないわ」

 

 美香子は彼の手を握り返しながら、先程までとは一転してくだけた調子で答えた。

 彼女の紫色のドレスは、まるで夜空に輝く星々のように煌めき、彼女の豊かな曲線を優雅に包んでいた。胸元の繊細なレースと金糸の刺繍がデコルテを美しく飾っている。肩にかかるように整えられた黒髪。その瞳は優しさを湛える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「美香子、私はあなたを愛しています。あなたと過ごす時間は、私にとって何よりも大切なものです。だから、どうか《私と結婚して欲しい》」

 

 そして微笑むと魅力が一層輝いた。

 突き動かされたのだろう。ヴァレンタインは真剣な表情で、美香子に求婚した。彼の言葉は心からのものであり、その瞳には深い愛情が込められていた。

 

「……」

 

 美香子は一瞬、言葉を失った。彼女もヴァレンタインに対して強い恋愛を抱いていたが、

 

「……ヴァレンタイン、あなたの気持ちはとても嬉しいです」

 

 同時に信彦や駆への家族愛も深い。

 

「でも、わたしは信彦を、駆を愛しています。わたしの夫であり、息子である、二人を」

 

 美香子は涙を浮かべながら、ヴァレンタインの求婚を拒否した。彼女の心は痛んでいたが、その返答に後悔はなかった。

 ヴァレンタインは美香子の言葉にショックを受けているようだった。

 

「美香子、あなたの気持ちは分かります。私もあなたの幸せを願っていますから」

 

 美香子の手をヴァレンタインは優しく握りしめ、深い緑色の瞳で彼女を見つめた。

 

「……実のところ、その返事は私も予想していました。ですので美香子――」

 

 そして沈黙の後、ヴァレンタインは深呼吸をし、決意を固めたように美香子の前に片膝(かたひざ)をついた。

 

「私と事実婚をして頂けませんか?」

 

 美香子は驚きの表情を浮かべた。ヴァレンタインの言葉は予想外であり、彼女の心を()さぶった。

 

「事実婚……ですか?」

 

 ヴァレンタインは(うなず)き、続けた。

 彼の瞳には真剣な光が宿り、その姿はかつて美香子に結婚を申し込んだ、プロポーズをした信彦の姿を美香子に彷彿(ほうふつ)とさせた。

 

「そうです……美香子、あなたに信彦殿がいるように。私にも内々の婚約者がいます。大貴族の娘との《望まぬ政略結婚》です。将来夫婦になることでしょう」

 

 美香子はそのあまりにも《赤裸々(せきらら)な内実》の告白に驚きを隠せなかった。

 

「あなたにも信彦という夫がいる。互いが同じ状況なら《共犯者》です。負い目も二人で背負えば、少しは軽くなるとは思いませんか?」

 

 彼女の心は混乱する。

 

「ヴァレンタイン、それは……」

 

 どう答えるべきか……分からない。

 ヴァレンタインは美香子の手をさらに強く握りしめ、真剣な表情で言った。

 

「美香子、私があなたのドレスを紫色にして欲しかったのには《もう一つ理由》があったのです。《紫は王家の色》。パーティの最中、あなたは多くの憧れや嫉妬の視線を受けていました」

 

 美香子はその言葉に衝撃を受ける。

 

「《ロイヤルヴァイオレット》それがその色の正式名称です。参加者にも既に、あなたと私が《特別な関係(愛人)》であると思っているものもいるでしょう。つまり、あなたが私の《本当の伴侶(側室)》となるべき存在だと」

 

「んぁぁ……」

 

 思わずうめき声を漏らした。

 外堀(そとぼり)を埋められてしまった。

 彼女の心は揺れ動き、ヴァレンタインの言葉が頭の中で反響していた。彼女はヴァレンタインを愛しているが、信彦への愛も捨てきれない。その提案は彼女にとって、あまりにも大きな試練だった。

 

「ヴァレンタイン、わたしは……」

 

 美香子は言葉を探しながら、恋人の瞳を見つめた。彼女の心は葛藤(かっとう)していたが、同時に彼の真剣な気持ちも感じていた。

 

「美香子、先程言った通り、私はあなたの幸せを願っています。どうか、私と共に未来を歩んでください」

 

 ヴァレンタインの言葉に、美香子は深く考え込む。心が揺れ動く。

 

「ごめんなさいヴァレンタイン、私は《信彦を》愛しています。《家族として》」

 

 美香子は涙を浮かべながら、ヴァレンタインに答えた。彼女の心はまだ揺れ動いていたが、

 

「しかし、あなたの気持ちも理解しています。わたしもあなたを愛しています《恋人(セカンドパートナー)》として」

 

 彼の真剣な気持ちを《尊重しよう》と決意した。

 

「ですが《時間をください》……わたしたちの関係がどのような形になるかは分かりませんが、その提案を、事実婚を真剣に考えるための時間を……」

 

「……ありがとう、美香子」

 

 ヴァレンタインは美香子の手を優しく握りしめ、

 

「あなたの答えを待っています」

 

 彼女の決意を尊重した。二人は夜空の下で静かに抱き合い、互いの気持ちを確認し合った。

 その瞬間、結果がどうなるにせよ、二人の絆は一層強くなり、決して忘れることの出来ない深い繋がりが生まれたのであった。




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

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 それでは、またお会いしましょう。
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