【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第三一話:それぞれ 前編》

 駆はエレアノールに案内されて、パーティに参加する中年女性のマダム達の元へと向かっていた。パーティ会場の一角には、豪華なドレスを纏ったマダムたちが集まり、優雅に談笑していた。

 

「駆さん、どうぞこちらへ」

 

 エレアノールは微笑みながら駆を案内し、彼をマダムたちの元へと連れて行った。シャンデリアの光をジュエリーが反射している。

 見目(うるわ)しく、あるいはかつスタイルの良い者もあったが、駆の視線はエレアノールに釘付けだった。

 

「皆さん、こちらは駆さんです。エルダリオン魔法学院を卒業されて、今はウォーリアーズで魔法使いとして活躍されていらっしゃいます」

 

 エレアノールの紹介に、駆は少し緊張しながらも一礼した。

 

「初めまして、桐島 駆と申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

 マダムたちは駆の初々(ういうい)しい態度に微笑みを浮かべながらも、

 

「駆さん、お会いできて嬉しいわ」

 

「……え……は、はい。恐縮です……」

 

 彼の意識と視線の大半が、エレアノールに向けられていることに気づいていた。

 駆はエレアノールに夢中で、マダムたちの磨き上げられた美貌や教養溢れる雑談には、ほとんど関心を寄せてはいないようであった。

 

 

 

 エレアノールと駆との対面を終えたマダムたちの一グループは、パーティ会場の一角で話し合っていた。今駆達は別のマダムグループと談笑している。

 豪華なドレスを纏った彼女たちは、シャンデリアの光に照らされながら、優雅にワインを傾けていた。

 

「駆さん、王妃様に夢中ね」

 

 一人の女性が微笑みながら言った。その言葉に、他の女性たちも頷いた。

 

「ええ、彼の視線はずっとエレアノール様に向けられていたわ」

 

 その声色はどこか不機嫌(ふきげん)だ。駆の態度はあまりに失礼であると考えていた。

 

「でも……叶わぬ恋だわ。エレアノール様は王妃、駆さんはただの傭兵よ」

 

 少し(さび)しげな表情を浮かべる女性もいた。

 

「そうね……でも、あたくしは応援してあげたいわ。駆さんの純粋な心が伝わってくるもの」

 

「わたくしも同感。彼の初々しい仕草(しぐさ)には心が温まるわ――」

 

 一方で、駆に好感を抱くマダムも確かに存在した。

 対面の間、駆の初々しい対応に微笑みを浮かべていた彼女たち。

 

「素敵な若者よね。わたくしも彼に興味があるわ」

 

 だが外面的には同じ反応でも、内面は異なっていたよう。

 そのマダムは、駆の初々しさに共感していたマダムとは少し、いや大分違った意見を持っていた。

 

「あなた、駆さんを自分のものにしたいの?」

 

「ええ、彼の純粋さと情熱に惹かれるの。エレアノール王妃に夢中なのは分かるけれど、わたくしも彼にアプローチしてみたいわ」

 

 その言葉に、グループの他の中年女性たちは揃って驚きの表情を浮かべた。

 

「それに彼、中々に可愛い顔をしているじゃない? わたくしの好みだわ」

 

 複雑な表情の女性たち。

 

「……まあ、駆さんがどんな選択をするのかは、彼次第よね」

 

「そうね。でも……そうね、若い彼の幸せを願っているわ」

 

 中年女性たちはそれぞれの思いを胸に抱きながら、それからも駆とエレアノールについて話し合いを続けた。

 いずれにせよ彼女たちの共通した認識は、『純粋な想いを秘めた青年』と『優雅で気品あふれる美しき王妃様』であった。

 

 

 

 レオンとマリアは中年男性たちと対面していた。マリアは母親譲りの銀髪と碧眼を持ち、清楚なドレスを纏っていた。美しさと気品はさるもの。御年一八歳。来月が誕生日である。

 レオンもまた、上質なジュストコールを纏い、慣れない場に落ち着かない様子ではあるが、彼女の隣に立っていた。

 

「レオン君、そのケットシーの魔物:ミケ君について教えていただけますか?」

 

 中年男性の一人が興味深そうに(たず)ねた。レオンは緊張しながらもハキハキと返答する。

 

「ミケは非常に(かしこ)く、おらにとっては兄弟のような存在ですずら」

 

 ミケはレオンの足元いる。紳士(しんし)的な(たたず)まい。レオンや、あるいは駆などより余程堂々としている。

 

「本当にお利口さん。レオン様、ミケはどのようにしてあなたのお仲間になったのですか?」

 

 その大きな瞳を優しそうに細めながら、マリアはミケの頭を優しく撫でる。

 

「それは……簡単に言うと、相棒ですずら。狩人になるため修行するうちに助けてくれるようになって、自然と仲間になりましたずら」

 

 中年男性たちはその話に興味津々で、さらに質問を続けた。

 

「ほぅ、狩りがミケ君の本分なのだね。どのような能力を持っているんだい?」

 

「非常に敏捷(びんしょう)で、危険を察知する能力に優れていますずら。人の言葉を理解し、コミュニケーションも取れますずら……あっ、でもミケの言葉はおらしか分からないみたいで――」

 

 

 

 吹き抜け二階のギャラリーでは、信彦とエドアルトが豪華で心地よさそうななソファに座り、話し合っていた。

 

「信彦、今後の王国はどうあるべきだと考える? 忌憚(きたん)なく申せ」

 

「はい、陛下。私は――」

 

 彼らは真剣に語り合っている。

 その姿は共に、まさに王国の未来を担う者たちの決意を感じさせるものであった。

 

 

 

「アルフレッド様と美香子さんが見当たらないわ」

 

「どこに行ったんだ?」

 

 アルフレッド=ヴァレンタインと美香子がバルコニーに行ってしまい、パーティ会場から姿が消えてしばらく経った。参加者たちとの対面をあらかた終えた主役たちは、二人がいなくなったと参加者たちから知らされる。

 場が少しざわつき始めた。

 

「ミケと一緒に探してみますずら!」

 

 ミケは敏捷な動きでパーティ会場中を探る。美香子とヴァレンタインの(にお)いを頼りに。レオンもその後を追った。

 そしてバルコニーに到着すると、二人の姿が見えた。

 

「月が綺麗だね、美香子」

 

「ありがとう、ヴァレンタイン。あなたの言葉がわたしにとって一番の宝物です」

 

 ヴァレンタインと美香子は、月明かりに照らされながら、いいムードに包まれていた。

 

『レオン、どうする? 吾輩はお前の判断を尊重するぞ』

 

 レオンはその光景を目にし、動けなくなってしまった。彼の心は複雑な思いで揺れ動いていた。嫉妬と戸惑いの感情。

 

「アルフレッド殿下、美香子さん! 皆がパーティ会場からいなくなってしまったお二人を探していますずら!!」

 

 しかし、ほどなくして二人がキスをしようとした瞬間、レオンは勇気を振り絞ってバルコニーに突入した。

 見つめ合い、ヴァレンタインが美香子の(あご)を指で軽く持ち上げ、自身の顔を近づけていき。

 美香子も受け入れるように、瞳を閉じようとしたその瞬間。ギリギリのタイミングでであった。

 

「それはすまないことをしてしまった」

 

 レオンの叫び声にも似た声に、二人はハッと我に返った。

 

「美香子さんが体調を崩されてしまってね。今、その確認をしていたんだ。美香子さん、体の具合はどうですか?」

 

 ヴァレンタインはすぐに咄嗟(とっさ)の言い訳をした。

 

「え、えぇ。だいぶ楽になりました。看病してくださり、有難うございます、殿下」

 

 美香子も話を合わせるように応えた。

 レオンは大仰(おおぎょう)な仕草で、いかにも納得した様子で頷いた。

 

「それは良かったですずら! では、パーティ会場に戻りましょう!!」

 

 ヴァレンタインと美香子はパーティ会場へと足早に戻って行く。

 互いの手を取り合って。

 

「……」

 

 二人の背中には、レオンの(いぶか)し気な視線が注がれていた。




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

 ところで、来週日曜日(8月24日)は中々忙しくなりそうで、今週木曜日(8月21日)に次話を投稿したいと考えております。よろしくお願いします。

 高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
 それでは、またお会いしましょう。
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