【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
ある日の午後、美香子はサロンで仲良くなったご婦人と共に王宮の
「今日は本当に楽しかったわ、美香子さん。あなたの冒険の話を聞くのが楽しみで仕方ないの」
と、ご婦人が微笑みながら言った。
「わたしもです。皆さんとお話しすることで、たくさんのことを学ばせていただいています」
と、美香子は柔らかな笑顔で応えた。
その時、廊下の向こうから一人の青年貴族が歩いて来た。彼は美香子に気づき、その美しさにふっと目を奪われた。美香子は、彼の視線に気づくと、自然に優しく微笑みかけた。その微笑みは、まるで春の陽光のように温かく、心を和ませるものだった。
青年貴族は、その瞬間、一瞬で心を
「あの……どうかされましたか?」
美香子と婦人が去って後も、しばし棒立ちのままであった青年。
通りがかった衛兵が青年に気づき、声をかけた。
「い、いえ、何でもありません」
ここに来て、ようやっと正気を取り戻した青年は慌てた様子でその場を去っていく。
たが、その心にはまだ美香子の微笑みの余韻が残っていた。彼女の優雅な姿と温かな微笑みは、青年の心に、美香子派である彼のピュアな心に深く刻まれた。
「はぁ……美香子さん」
青年は、その後も美香子のことが頭から離れず、あの日の彼女の微笑みを胸に秘めながら、日々を
時は流れ、四月。桐島一家が宮廷に滞在して一月が経とうとしている。
美香子は、庭園のベンチに腰掛け、ヴァレンタインとのデートの待ち合わせまでの時間を過ごしていた。庭園には色とりどりの花が咲き乱れ、風に乗って甘い香りが漂っていた。陽光が木々の間から差し込み、彼女の顔を優しく照らしていた。
その時、近くの茂みの向こうから、若い男性たちの話し声が聞こえてきた。美香子は興味を引かれ、そっと耳を傾けてみることにした。
「《春の微笑み》に想いを伝えようと思っているんだ」
一人の青年貴族が友人に話しているのが聞こえた。美香子はその言葉に驚き、さらに話を聞いてみることにした。
「《春の微笑み》って、あの?」
「あぁ、そうさ。彼女はとても魅力的で……何度か言葉を交わしただけだけど、彼女の笑顔に僕の心は完全に奪われてしまったんだ」
青年貴族の声には、純粋な恋心が込められていた。美香子はその言葉に心を打たれ、彼の気持ちを応援してあげたいと思った。
「でも、彼女は人妻だし……私たちとも身分が違う。平民の間ではトゥルバドゥールはそれほど
「君の言う通りだ……だけど勇気を出して、恋文を出そうと思っているんだ……気持ちに区切りをつけるためにも」
「そうか……良い考えだと思うよ。何にせよ、気持ちを伝えることが大切だ」
友人の励ましに、青年貴族は少し勇気を得たようだった。美香子はその様子を見て、彼の純粋な恋心に母性をくすぐられた。
「(幸せになれるといいわね)」
美香子は心の中でそう思いながら、彼らの会話を聞き続けた。庭園の花々が風に揺れ、彼女の心に温かい感情をもたらす。
「(大丈夫。だって、わたしとヴァレンタインという例もあるんだから)」
デートの時間が近づいてきた。美香子は立ち上がり、待ち合わせ場所へと向かった。
恋に悩むその若き青年貴族の《春の微笑み》という既婚女性への想いを、ヴァレンタインの自分に抱いているであろう恋心に重ね合わせながら。
春の暖かな陽光が王都ルテティアの街並みを照らし、美しい花々が咲き誇る中、美香子はヴァレンタインと共にデートを楽しんでいた。彼らは手を繋ぎながら、石畳の道を歩き、街の風景を楽しんでいた。
「美香子、君は本当に美しい」
ヴァレンタインは、美香子の顔を見つめながら言った。
「たとえ目元を覆い隠す仮面をつけていても、その美しさは隠しきれない……いや、より引き立ててくれていると言った方が適切かな?」
美香子は微笑み、少し照れたように目を伏せた。
「ありがとう、ヴァレンタイン。あなたがプレゼントしてくれたこの仮面、わたしも気に入っているわ」
二人は互いに、いわゆるベネチアンマスクのような目元を覆う仮面を被っていた。
「それに、こうやって誰に
祝勝パーティでレオンに逢瀬を目撃された一件以来、余計な騒動を起こさないためにと二人で考えた対策であった。
仮面は美香子の目元を隠すと同時に、まるで神秘的なベールのように彼女の美しさを引き立てていた。仮面の下から覗く瞳は、魅惑的な輝きを放ってさえいる。
「ここ、本当に素敵な場所ね」
二人は、王都の中心にある大きな噴水の前で立ち止まった。噴水からは、きらめく水が音を立てて流れ落ち、周囲の花々がその水しぶきを浴びて輝いていた。美香子はその光景に見とれ、ヴァレンタインの手をぎゅっと握りしめた。
「あぁ、私もそう思うよ。それに……君と一緒にいると、どんな場所でも特別に感じるんだ」
ヴァレンタインは、美香子の手を優しく引き寄せ、彼女の耳元で囁いた。
美香子はその言葉に胸がときめき、ヴァレンタインの肩に頭を預けた。二人はしばらくの間、何も言わずにその場に立ち尽くしていた。周囲の喧騒が遠くに感じられ、まるで二人だけの世界にいるかのようだった。
「愛しているわ、ヴァレンタイン」
「えぇ美香子、私も」
夕暮れの王都の街角、通りを行き交う人々は、日常の喧騒に包まれていた。商人たちは声を張り上げて商品を売り込み、子供たちは笑い声を上げながら駆け回っていた。その中に、ひときわ目立つ二人の姿があった。
美香子とヴァレンタインだ。
目元を覆う仮面をつけた二人は身を寄せ合い、愛を語らい、そして時折静かに口づけを交わしている。
しかし、通行人たちはその二人の正体に気づくことなく、ただの一組の恋人、たまに見かける青年と熟女のカップルとして見過ごしていた。仮面の下に隠された王国の太子も、英雄の人妻も、誰の目にも留まることはなかった。
通行人たちは、ただ日常の一部として二人を見過ごしていくのであった。
王都でのデートを終えて夜。
王宮の自室に戻った美香子は、ヴァレンタインとのデートの余韻に
「美香子様、お手紙が届いております」
ノックの後に、美香子付のメイドが部屋に入り、美香子に手紙を手渡した。
美香子は手紙を受け取り、メイドが退室したのち、封を開けた。中には、美しい筆跡で書かれた手紙が入っていた。
【《春の微笑み》
あなたの美しさと優雅さに心を奪われ、どうしてもこの気持ちを伝えずにはいられませんでした。初めてお会いした時から、あなたの微笑みが私の心を鷲掴みにし、夜も眠れぬほどに恋焦がれております。
あなたの存在が、私の人生に光をもたらしてくれました。どうか、この手紙を読んで、私の真摯な気持ちを受け止めてください】
手紙の最後には、彼女への想いを込めた詩が書かれていた。
【春の微笑み 君の笑顔は陽光のように温かく 心を照らす 君の優雅さは花のように美しく 私の心に永遠の春をもたらす】
美香子はその詩を読み、胸が高鳴るのを感じた。
そして思い起こす。
ヴァレンタインとのデート前に、王宮の庭園で人妻への恋心を語っていた青年貴族。彼の想い人が《春の微笑み》ではなかったか、と。
「……」
彼女はこの手紙を書いた青年貴族の純粋な気持ちを動かされるも、同時に、いやそれ以上に戸惑いを覚えていた。
美香子は手紙をそっと机の上に置き、深呼吸をして気持ちを落ち着けた。彼女はこの手紙をどう受け止めるべきか、そして今後どのように対応すべきかを考えながら、静かな夜を過ごした。
・あとがき
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それでは、またお会いしましょう。