【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
その夜、美香子は寝室で一人ベッドに寝転びながら、レオンの言葉を思い返していた。彼の真剣な眼差しと、心からの忠告が頭から離れない。
「……どうして一三歳の男の子に、そんな忠告されなきゃならないのかしら?」
しかし、ふとした瞬間に彼女の心には怒りが炎が灯った。
美香子はベッドに腰掛け、深いため息をついた。彼女は自分の感情が大人げないことを理解していたが、それでも抑えきれない怒りが心の中で渦巻き、
「(わたしは彼の母親ではないし……息子でもない少年に、そんなことを言われる筋合いがあるはずないじゃない……!)」
美香子はそう思いながらも、レオンの言葉が彼女の心に深く突き刺さっていることは認めざるを得なかった。
「レオンは正しい……だからこそ、余計に腹が立つのかもね……」
美香子は自分の感情を整理しようと努めたが、怒りはなかなか収まらなかった。彼女は天井を見つめながら考え込んだ。
「駆……信彦さん……」
胸が締め付けられる。彼女は家族のことを大切に思っており、彼らを傷つけたくないと強く願っていた。
「でも、どうすればいいの……?」
だが同時にヴァレンタインのことも大切に思っていた。最愛の恋人として。
美香子は自問自答しながら、心の中に答えを探していた。レオンの忠告に耳を傾けるべきか、それとも……
「……」
美香子はその夜、なかなか眠りにつくことができなかった。レオンの言葉がいつまでも頭に響いていた。
心を落ち着けようと美香子は深呼吸し、目を閉じた。
美香子は王宮の広間に立っていた。広間は豪華な装飾が施され、煌びやかなシャンデリアが天井で輝いていた。美香子はエレガントなドレスを身にまとい、その姿はまさしく貴婦人。
彼女の前には駆が立っていた。駆は美香子を見つめ、優しい笑顔を浮かべていた。美香子は少し緊張しながらも、駆に向かって話し始めた。
「駆。ママ、ヴァレンタインと結婚しようと思っているの」
その言葉に駆は驚くことなく、むしろ美香子の決断を称賛するように微笑んだ。
「ママ、それは素晴らしい決断だよ。アルフレッドさんは立派な人だし、素敵な旦那さんだと思うよ」
「……駆、本当にそう思うの?」
駆は頷き、美香子に向かって続けた。
「ママが幸せになることが一番大切だよ。僕も、それにパパも、何よりママの幸せを願っているんだ」
美香子は駆の言葉に涙が浮かんだ。
「ありがとう、駆」
美香子は駆に感謝の気持ちを伝え、彼を抱きしめた。
美香子は目を覚ました。ベッドに横たわっている。窓から見える空は未だ暗く、深夜。
「わたしは一体……何をしているの?」
美香子は
「駆や信彦さん、レオンにウォーリアーズの仲間達。皆のことを第一に考えないと……!」
何よりも彼女にとって衝撃だったのは、夢の中の《駆が美香子の決断を称賛していた》ことだった。《批判ではなく、賞賛》されたことによって、美香子は遂に自分がどれほどアルフレッド=ヴァレンタインと出会う前の、冒険者として、妻として、母としてあろうとした《自分の理想像とかけ離れた存在になろうとしているか》に気づいたのだ。
「家族のために……! 私は桐島 美香子。駆の母で、信彦さんの妻……!」
彼女の心には、レオンの言葉がいつまでも響いていた。
美香子は決意を固めた。
王宮での滞在もまもなく終わろうとする頃、美香子はヴァレンタインと王都でデートをしていた。
美香子は豪華なドレスではなく、古代ギリシア風のドレスを纏っていた。
白いキトンのドレスは美香子に清楚な印象を与えている。空色のマントが風にそよいでいる。
「美香子、君と過ごす時間は本当に幸せだ」
「ええ、わたしもよ。ヴァレンタイン」
二人は王都の街並みを歩きながら、様々な話を交わした。互いの手を取りあって。
デートの最後、二人は静かな公園のベンチに腰掛けた。夕暮れの光が美香子のドレスを柔らかく照らし、彼女の姿はまるで神話の女神のようだった。ヴァレンタインは美香子の手を握り、真剣な表情で彼女を見つめた。
「君と一緒なら、どんな困難でも乗り越えて行ける」
決意を込めたヴァレンタインの言葉。真剣な表情で告白されたその言葉に、特別な意味が含まれているのは明白だ。
「……」
美香子は微笑みを浮かべたが、その瞳にはどこか悲しげな光が宿っていた。
彼女は沈黙の後、心を決めたように口を開いた。
「ヴァレンタイン、今日で最後にしましょう」
ヴァレンタインは驚きの表情を浮かべ、美香子の言葉を理解しようとした。
「どうして? 私たちはこんなにも幸せなのに」
美香子は恋人の手をしっかりと握りしめ、優しい声で続けた。
「あなたとの時間は本当に素晴らしかったわ……でも、わたしは母として、妻として、そして冒険者としての自分の気持ちを大切にしたい……駆や信彦さん、そしてレオンやウォーリアーズの仲間みんなのことを大切に思っているから」
美香子は深い息をつき、決意を秘めた口調で言葉を紡ぐ。
「彼らを傷つけたくないの」
ヴァレンタインは美香子の言葉に耳を傾け、彼女の真剣な表情を見つめた。
「美香子……女性としての君は、どう思っているんだい?」
しばらくの間、黙っていたヴァレンタイン。だがやがて、静かに問いかけた。
美香子はその言葉に一瞬驚き、心の中で葛藤していたが、ほどなく同じく静かに答えた。
「そんなこと……あなたが一番良く分かっているでしょう、ヴァレンタイン」
ヴァレンタインは美香子の言葉に深くうなずき、彼女の手をしっかりと握りしめた。その気持ちを理解し、流れるように彼女を抱きしめた。
二人はしばらくの間、黙って抱き合っていたが、気づけばいつしか美香子はヴァレンタインの腕から離れていた。
「さようなら、ヴァレンタイン。あなたの幸せを祈っているわ」
ヴァレンタインは美香子の言葉に微笑みを浮かべ、彼女を見送った。美香子は公園を後にし、王宮へと戻っていった。
美香子はヴァレンタインの腕からそっと離れ、公園の出口へと向かって歩き出した。
彼女の背筋はまっすぐで、歩みは決意に満ちていた。
「美香子……」
ヴァレンタインはその背中を見送りながら、愕然とした表情で
元恋人の決断を尊重しようと努めるが、胸に痛みが広がっていく。
「どうしてこんなことになってしまったのか……」
その声はすぐさま風にかき消される。彼はベンチに腰掛け、頭を抱えた。
心に美香子との思い出が次々と浮かんできた。朗らかな笑顔、優しい言葉、そして彼女との幸せな時間。それらが彼の心をより一層締め付ける。
アルフレッドは自問自答しながら、心の中で答えを探していた。美香子の決断を理解しようと努めたが、その痛みは消えることなく、彼の胸に残り続けるのであった。
・あとがき
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それでは、またお会いしましょう。