【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第四一話:しばしの別れ》

 四月の末。春の陽光が柔らかく王宮の庭園を照らしていた。

 駆達桐島一家とレオンの四人は、三月の王宮での祝勝パーティ以来王宮に滞在していたが、遂にその日が訪れた。

 

「美香子様、本当にお別れなのですか?」

 

 王宮の大広間には豪華なシャンデリアが輝いている。

 ある上流階級の青年が、美香子に名残(なごり)()しそうに(たず)ねた。

 

「はい。名残惜しいですが、しばらくの間、冒険の旅に出ることになりました」

 

 美香子達四人は盛大なパーティで見送られ、王宮を後にすることとなったのだ。

 

「でも、また戻ってくることを約束します」

 

 その言葉に、青年は少しだけ安堵(あんど)したようだったが、表情を見るに(さび)しさは隠せないようだった。

 別の青年貴族たちが続く。美香子に対する想いを胸に、次々と彼女に話しかけていた。

 

「美香子様、七月から行われる闘技大会、私も出場する予定なのですが、ぜひ観覧に来ていただければ、と」

 

 美香子の美しさと優雅さは、彼らにとって特別な存在だったのだ。

 

「それは楽しみですね。もし時間が許せば、ぜひ観覧させていただきます」

 

 その言葉に、その青年貴族は喜びの表情。

 

「もしよければ、レオン君の闘技大会での活躍のため助力させて頂けませんか? モンスターを仲間にしたり、修行したり、力になれると思います」

 

 別の青年貴族が提案した。

 彼らは美香子の言葉に希望を見出し、さらに話を続けていた。

 

「それは素晴らしい提案ですね。有難うございます……ただ、レオンは一度帰郷することになっておりまして――」

 

 美香子は感謝の意を示しながら、申し出を受け入れたり、受け流したり、時に断ったりしていた。

 彼女のそつなく優しい言葉に多くの青年たち満足しているようだった。

 

「美香子様、どうかお元気で。あなたの冒険が成功することを心から祈っています」

 

「ありがとうございます。ご厚意、感謝いたしますわ」

 

 そして青年たちとの会話を楽しみながら、美香子は心の内でこの華やかな世界に対する郷愁(ごうしゅう)の念を抱いていることに気がづく。

 『冒険者としての使命を果たす』。その信念が彼女の心の確たる位置を占めているのは確かであったが、この王宮での優雅なひとときもまた、今美香子を囲んでいる青年たちと同じように、確かに彼女の心に深く刻まれていたのであった。

 

 

 

 美香子は、エレアノール王妃と別れの挨拶(あいさつ)を交わしていた。エレアノールの銀髪がシャンデリアの光を受けて輝き、その碧眼(へきがん)に優雅な微笑みを浮かべていた。

 

「美香子様、そのドレス、とてもお似合いです」

 

 その瞬間、美香子はふと気づいた。

 彼女が今(まと)っているドレスはエメラルドグリーン色のドレス。王宮での滞在の際に貸し与えられたドレスの一着である。

 

「(そう……そういうことだったのね)」

 

 美香子は気づく。どうして自分が今日このエメラルドグリーンのドレスを選んだのかを。

 

「ありがとうございます、エレアノール様」

 

 エメラルドグリーン。それは王宮での初めてのパーティ、祝勝パーティのあの夜に、エレアノールが纏っていたドレスの色だったのだ。

 美香子は、王宮での日々を思い返す。

 エレアノールの優雅で教養(あふ)れる姿、尊大な素振りはまるでなく、誰に対しても丁寧(ていねい)

 美香子は心から憧れていたのだ。エレアノールのようにありたい。そう無意識の内に願い、その姿を追い求めていた。そんな自分に気がついた。

 心に、新たな決意が芽生える。

 

「美香子様。どうか、お気をつけて」

 

 冒険者としての使命を果たしながらも、エレアノールのような淑女(しゅくじょ)でもありたい、と。

 こうして最後のパーティが終わり、桐島一家とレオン達は王宮を去ったのである。

 

 

 

 王都にいたウォーリアーズの団員たちに(いとま)が出された。王都に本拠点(ほんきょてん)を築くため、ウォーリアーズの面々は様々な任務を受けていたが、これまでの労苦とこれから待ち受ける新たなクエストに向けて、およそ一月の長期休養が出されたのである。

 

「皆、休みが明けたら、忙しくなるぞ! 存分に英気を養ってきてくれ!」

 

 ただ信彦、美香子、駆、サンチャゴの四人に休みはない。《ウォーリアーズの支部を王国各地に設置するための旅》に出るからだ。

 

「レオン、お父様によろしくね。元気な顔を見せてきてあげて」

 

 レオンは故郷の村に戻ることになった。

 父に、そして故郷の皆に『冒険の成果や外の世界について語りたい』と心躍らせるレオン。

 信彦、美香子、駆、レオン、サンチャゴの五人は、王都の転移の大水晶(グラン・ポーター)で、ひとまずウォーリアーズの本拠点:ウィンターウッドへと移動した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 雪解け水が小川を流れ、緑が芽吹き始めている。木々は新緑に包まれ、花々が咲き誇り、鳥たちのさえずりが響き渡っていた。

 

 

 

 レオンを故郷のグリーンヒルズ村へと送り届けた後、信彦、美香子、駆、サンチャゴの四人はウィンターウッドの拠点に舞い戻った。彼らは王都の新拠点に持ち込むべき書類や武具などの選定及び整理を始めた。

 

「このドレス……」

 

 美香子は整理をする中で、あるドレスを発見した。

 

「懐かしいわ……」

 

 そのドレスは、ヴァレンタインとの初デートで纏っていた赤いドレスであり、若い頃に信彦とのデートでもよく纏っていた思い出深いドレスだった。

 ネヴァースプリングから王都に向かう際に、ウィンターウッドの拠点に寄り王宮での生活に不要な荷物を置いていったのだが、その内の一品であった。

 

「あぁ、昔よく着てたね、そのドレス」

 

 信彦が美香子の手にあるドレスを見つめて。

 

「うん。王宮では新しいドレスばかりだったから、妙に(なつ)かしくなっちゃって」

 

 実際には数か月前までは、特にネヴァースプリングにいた頃などにはヴァレンタインとの密会の際によく纏っていたので、懐かしく感じるのは妙な気もするが、美香子はそのような感情を抱く。

 それほど王宮での生活が彼女の人生に与えた影響は大きかったということだろうか?

 

「やっぱり、このドレスは特別ね」

 

 その日の夜、美香子はふと思い立って、赤いドレスを纏って鏡の前に立ってみた。

 王宮で纏っていた豪華なドレスに比べるとシンプルだったが、それでも美香子によく似合っていた。シンプルなデザインが、彼女の自然な美しさを引き立てていた。

 王宮を去る際に貸衣装だったドレスを王家の好意で譲り受けていたため

 

『服をいくらか処分しなくてはいけない』

 

 と思っていた美香子だったが、この赤いドレスだけは絶対に残そうと決めたのであった。

 

 

 

 ウィンターウッドでの荷物を整理し、支部として必要な物資を残し、四人は一時的に王都へと舞い戻り、来るべき王都の本拠点に書類や武具などの荷物を運び入れた。

 そして今度は、支部候補の街へとグラン・ポーターを使い訪れていくことになった。ポーターは国王から特別な免許を得たので、いつかのヴァレンタインよろしく、一行は無料で使用することができた。

 彼らは次々と支部候補の街を訪れ、その街の特徴や利便性を確認していった。

 新たな支部を設置するための、大規模傭兵団(グラン・クラン):新生ウォーリアーズ誕生の準備は着々と進んで行く。




・あとがき

 という訳で、第四章スタートです。お楽しみいただけていたら幸いです(^^)

 高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)

 それと明日月曜日(11月3日)に、

『社交界の美香子とエレアノール』

 を描いたキービジュアルをpixivとX(twitter)に投稿予定です。
 もしよろしければ、是非そちらにも遊びに来て下さい(⁠◕⁠ᴗ⁠◕⁠✿⁠)

・pixiv
https://www.pixiv.net/users/18225898
・X
https://x.com/Houjou_Yuh

 それでは、またお会いしましょう。
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