【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
七月も半ば。
ルテティアの街並みは鮮やかな陽光に照らされ、輝いている。
グラン・コンベンションの開会式セレモニー。
セレモニーの行われる巨大な円形闘技場は、熱気に包まれている。人々の歓声が重なり合っている。
「モンスターマスター達の祭典:グラン・コンベンション。冒険者である俺たちには縁遠いものだと思っていたが――」
桐島一家とレオンは、王家の招待を受け、貴族や富裕層と共に特別な区画に通された。
その場所からは、
「案外悪くない、でしょ」
美香子が微笑みながら信彦の言葉を受け継いだ。
信彦は頷き、
「あぁ。闘技場全体が、この王都市民が一つとなって連帯しているさまは、見ていて力強いの一言だ。心地が良い」
セレモニーが始まった。
闘技場の正門がゆっくりと開かれ、
「カッコいいずら!」
レオンは目を輝かせ、興奮気味に言った。
「おらもいつかあんな風になれたらいいずら~」
駆は笑顔で
「絶対叶うよ。努力は必ず報われるんだから」
騎士たちの行進が終わると、次に現れたのはペガサスが
先頭車両にはホノリア国王エドアルトと王妃エレアノールが並んで座っていた。エレアノールは銀髪を風になびかせ、その
「エレアノール様、本当に素敵だわ」
美香子は思わず
後部車両には王子アルフレッドと王女マリアが乗っていた。
王族たちは観客たちに笑顔を向け、手を振っている。
「今日この場に皆が集ったことを誇りに思う!」
闘技場の特設ステージに降り立つ馬車。華麗に馬車を降りる王族たち。
エドアルト国王がステージの一際目立つ場所に立ち、開会の挨拶を行った。
「我らがホノリアの繁栄は、市民の皆皆々の努力と献身のおかげであることを余は、今再確認した」
エドアルトの深い声が広場に響き渡る。現実世界のマイクに相当するような、何らかの魔法的
国王の言葉は参加者全員の心に刻まれた。彼の言葉には、国の未来への希望と繁栄、そしてここに集う全ての者への感謝が込められていた。
「今年のグラン・コンベンションも、皆の力で素晴らしいものとなるだろう!」
エドアルト国王が高らかに宣言すると、広場は大きな歓声と拍手に包まれた。
開会式が終了すると、大きな会場で立食形式のパーティが開かれた。
上流階級の人々が一堂に会し、華やかな
信彦は他の上流階級の要人たちと話し込み、駆とレオンは少し離れた場所で二人で食事を取っている。
美香子は貴婦人との談笑を終えて、駆達に合流しようかと思ったその時、ふと視線を感じて振り返った。
そこには一人の青年貴族の姿。
「お久しぶりです《春の微笑み》」
その青年は美香子にかつて恋文を送り、美香子がアルフレッドのプロポーズを断る遠因を作った、あの青年貴族であった。
「私のことを覚えていますか?」
青年は礼儀正しく頭を下げ、美香子に話しかけた。
美香子は微笑みながら頷いた。
「えぇもちろん、覚えています」
「本当ですか? 光栄です」
青年は少し顔を赤らめながら、まっすぐに美香子を見つめている。
美香子はそんな青年の純真さに心を動かされながらも、一線を引きつつ失礼にならないように慎重に言葉を選んで雑談を交わす。
「実は、今年のグラン・コンベンションに出場することになったのですが……もしよろしければ、ご観覧いただけないでしょうか?」
「ええと……」
美香子はどう返事を返したものか困惑しながらも、エレアノール王妃から教わった淑女のたしなみを思い出し、丁寧に応対することに努めた。
「ご招待ありがとうございます。時間があれば、是非観覧させて頂きますね」
青年は見るからに嬉しそうに破顔させて、再び深く頭を下げた。
「ありがとうございます《春の微笑み》。あなたの温かいお言葉が私の力となります。美香子さまの応援を頂ければ、試合に全勝出来る気がします!」
「ご活躍を拝見できるのを楽しみにしていますね」
美香子は彼女の二つ名に恥じない優しい微笑みを浮かべながらも、心の中には複雑な感情が渦巻いていた。青年の必死な想いが伝わり、心が揺れ動かされていた。
信彦は相変わらず別の要人たちと話し込み、美香子と青年貴族に意識を向けていない。駆とレオンは連れて来たしろちゃんとミケを交えて、同世代の若者たちとの会話に花を咲かせている。
美香子は
グラン・コンベンションは年に一度、ホノリア王国で行われる大規模なイベントだ。七月~九月にかけて開催される。
貴族や市民が集まり、仲間モンスターとのスポーツ競技や
貴族。所領を継げない次男以下の貴族の子息たち。
彼らは良い成績を残すことで、大貴族に召し抱えられるチャンスを狙っている。
一般市民。農家や猟師など、さまざまな背景を持つ人々。
貴族が参加できる部門とは分けられるものの、成績を残せば名誉モンスターマスターの称号を得ることができる。すなわち貴族に仲間入りすることの出来る
耕作の友である牛が魔物化したミノタウロスを連れた農民などは、まさしくその代表例ともいえる。象徴として、市民が参加できる競技や模擬戦闘を差し示す目印のロゴに使われているくらいだ。
「やっぱりこの紫のドレスがいいかしらね?」
その日の朝、美香子は王都のウォーリアーズ本部に向かい、ドレスの試着を行っていた。エレガントな紫のドレスは彼女の美しさを引き立て、その豊満な
「でもやっぱり……少し申し訳ないわね」
美香子は悩んだ末に青年貴族の試合を観覧することに決めた。
あの日より数日が経ったが、
美香子は息子やレオンとそう変わらない年齢の青年、一七歳の彼に対する親心を抱き、また自分を好いてくれている男性を無下にすることに負い目を感じ、観覧を決めたのであった。
「このドレスも悪くないわ」
別のドレスを纏い、鏡の前に立つ美香子は微笑みながら言った。
青いドレス。そのドレスは
試合の当日、美香子は緊張と期待が入り混じった表情で会場に向かった。未来を
試合が始まると、青年貴族は相棒の聖魔と共に見事な技を
「本当に素晴らしい試合でした。あなたの技術と努力が見事に結実しましたね」
試合が終わり、青年貴族に誘われたお茶の席で、美香子は彼を賞賛する言葉を贈る。
「ありがとうございます、美香子様。あなたが見守ってくださったおかげで、力を
美香子の温かい言葉に、青年は照れながらも嬉しそうだ。
その後も試合について語り合い、一息ついたところで美香子は彼との出会いを思い出しながら、こう切り出した。
「そういえば、エリックさん。あなたと初めて王宮のパーティで出会って――」
すると青年貴族は、エリックは少し驚いた様子。「あら、わたし何か不味いことを言ってしまった?」そう慌てる美香子に。
「いえ実は……美香子様との初めての出会いは、王宮の
美香子は思い返してみるが……一切記憶にない。
「あぁ、そうだったのですね。確かに……そのようなことがあった気がします」
しかし美香子は淑女らしく深く頷くのである。目指すべき淑女像よろしく。
穏やかな午後の日差しが、王都ルテティアの一角にある優雅なお茶の席を暖かく包み込んでいた。石造りのテラスには美しく装飾されたテーブルが並び、
「美香子様、本日お召しになられているそのエメラルドグリーンのドレス、とてもお似合いです」
美香子は、胸元が優雅にカットされたエメラルドグリーンのドレスを身に纏い、洗練された笑顔を浮かべながら紅茶を口に運んでいた。
「ありがとうございます、エリックさん」
どのドレスを纏うか悩んだ末に、美香子が選び抜いたのがこのエメラルドグリーンのドレスであった。
そのドレスは、陽光に照らされると
胸元のデザインは、彼女の豊かな曲線を魅惑的に強調しながらも、上品さを失わない控えめな仕立てであり、
「ドレスの優雅さと、美香子様の暖かさが一体となって、輝きがさらに増しているように思えます」
向かいに座るエリックが雑談の合間にそのドレスに視線を向けるたび、美香子は口元に穏やかな笑みを浮かべたりしている。
柔らかな風が二人の間をそよぎ、テラスに咲く花々の甘い香りを運んで来る。
その穏やかな時間の中で、美香子はエリックの誠実な眼差しを見つめ、いつの間にか彼との交流を大切に思う気持ちが自分の中に芽生えていることに気づくのであった。
・あとがき
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それでは、またお会いしましょう。