【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第四七話:覚悟の夜》

 蒸し暑い真夏の深夜。喧騒(けんそう)も遠くなった闇夜の王都。

 ジェイクは深酒に酔い、ひとり彷徨(さまよ)っていた。雲の隙間(すきま)から漏れる月光が、舗装(ほそう)された石畳にわずかな光を投げかける。

 

「ヒック……ウィーック……」

 

 ジェイクの心の内に潜む複雑な感情が、酒の熱さとともに胸でざわめいていた。

 やがて彼は、ひっそりとした路地裏に辿り着いた。古びた煉瓦(れんが)壁に背中を預け、その場に腰を下ろす。

 蒸した熱風が静かに路地を吹き抜ける。疲れ果てた瞳。

 

「……ジェイク……ジェイク……」

 

 どこからともなく低い声が聴こえる。顔を上げるジェイク。

 

「……今こそ立ち上がるときだ……」

 

 暗がりの中、人影。月明かりに照らされても漆黒に包まれるシルエット。

 その姿は、ジェイク自身の輪郭(りんかく)を映し出していているようにも見える。

 声は低く、人の心を串刺しにするような鋭い響きを持っていた。

 

「今の腐敗したウォーリアーズに必要なのは、変革だ……」

 

 自分の影が実体を持ち、浮かび上がった。ジェイクはそう思わずにはいられなかった。

 

「かつて誓った大魔王討伐の熱き理想……! だが今や、ウォーリアーズは王侯貴族の掃除屋に甘んじ、ただ贅沢(ぜいたく)な宴に酔いしれるだけの腐敗した存在となってしまった」

 

 それはまるで、ジェイクが抱える不満と絶望を具現化したかのよう。

 

「こんなこと……許されると思うか?」

 

 ジェイクは、心の奥で激しく揺れる自身の感情に気づいた。

 怒りと、そして何より深い悲哀。ジェイクは拳を固く握りしめ――

 

「だからこそ、討たねばならぬ……内に眠る信念を呼び覚ませ! 覚醒(かくせい)せよッ! 反逆だ! ウォーリアーズ団長:桐島 信彦を――」

 

 影へと、もう一人の自分へと、力強い一撃を放った。決然。

 

「俺は仲間を……アニキを決して裏切りゃぁしねぇ……! たとえ、今のウォーリアーズが(ゆが)んでいるとしても……俺が、アニキと、ウォーリアーズの仲間達と共に過ごした日々を、絶対に無意味なものにしたりはしねぇ!!」

 

 拳が闇を切り裂き、消し飛ばす。

 影は蜃気楼(しんきろう)のように形を失い、さながら夜に溶け込むように幻影は消滅した。

 

「俺は魔に屈しねぇ……真実は、俺たちが歩んできた道のりにある。仲間を信じ、己が信念を信じる」

 

 路地裏に吹き抜ける暖かい夜風。

 

「それが、俺の生き様だ」

 

 

 

 王都の高級宿。

 その一室で、アルフレッドはひとり佇んでいた。

 魔導書を開き、何事か呟いていた彼であったが、呟きはほどなく止んだ。

 静寂(せいじゃく)の中で、アルフレッドは手にした魔導書をそっと閉じた。

 

「さすが勇者パーティの副団長と言うべきか……」

 

 低い声。憎悪を伴った。

 アルフレッドはテーブルに置いたグラスを手に取る。中には深紅(しんく)のワイン。

 

調略(このやり方)は失敗……だが――」

 

 見つめ、グラスの中のワインを一息に(のど)へと流し込む。

 

「次こそは必ず……! 必ずや《駆の最愛の父(信彦)》を葬り去り、最愛の女性(美香子)を、私の(モノ)に……!」

 

 口元に残る鮮血色の液を(ぬぐ)いながら、悪役貴公子(アルフレッド)は、魔に魅入(みい)られたかのごとき邪悪(じゃあく)な笑みを浮かべるのであった。




・あとがき

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 それでは、またお会いしましょう。
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