【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第四八話:新生活》

 秋の朝。青空に浮かぶ淡い白雲。澄み渡り()き通った空気。

 王都ルテティア近郊。

 ウォーリアーズの野営地を柔らかな光が照らしている。

 現在野営地では多くの者が朝食の席に座り、(にぎ)わいを見せている。

 

「皆、今日はよく集まってくれた! 我らウォーリアーズ傭兵団、心を一つにして、訓練に励もう!」

 

 ウォーリアーズは、王侯貴族大商人の支援を受けたことで、クランメンバー百人にも及ぶ大規模な傭兵団へと成長した。

 整備された石造りの訓練場では、朝の冷気を感じさせる()んだ空気の中、朝食を食べ終えた団員たちが、それぞれの武器や魔導書、あるいは杖を手に、熱心に訓練に励んでいた。

 合同訓練。

 新人冒険者だけでなく、既に実績ある冒険者を多数仲間に加えたプラチナランク傭兵団:ウォーリアーズの親睦会(しんぼくかい)を兼ねた合同訓練であった。

 

「今日はとても充実した一日になりました。皆さん! わたし達の新たな仲間となってくれた皆さん! そしてこれまでわたし達と共に戦って来たウォーリアーズの勇士たち! 今日この日、ここに集まってくださったことを心から感謝いたします」

 

 訓練の開会の式辞は信彦。閉会の式辞は美香子が担う。

 

「明日からもまた、皆で力を合わせ、クエストに挑んでいきましょう!!」

 

 最後の()めの言葉を駆が。

 応える団員たち。

 ――こうして、執政(ルーサ)暦一三一三年一〇月の合同訓練は厳しくも充実した温かい人間模様の中で幕を閉じたのであった。

 

 

 

 執政暦一三一三年一一月。冷たく澄み渡るある日の王都の朝。

 冬の染み渡る空気の中、王都ルテティアの一角にあるウォーリアーズ傭兵団本拠点のクランハウス。

 その一室で、美香子は新たに傭兵団に加わった神官たちの指導にあたっていた。白いギリシア風ドレスに身を包み、差し込む朝日が照らし出す彼女の姿は輝きを放ち、優雅な身のこなしと柔らかな声で回復術士の新米神官たちの心に寄り添っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「戦場においても心を澄ませ、祈りと共に己の内にある光の(ともしび)をかざし続けること。それが大切です」

 

 彼女は丁寧に、しかし(おごそ)かにその教えを説く。一人の生徒が不安な様子で尋ねた。

 

「美香子先生、実は私はいままで神殿勤めだったので戦闘の実戦経験がないのですが……」

 

 彼女は優しく微笑みながら、暖かな手のひらをその青年神官に差し出すように語った。

 

「大丈夫です。冒険者として新人であるあなた達をいきなりモンスターとの戦闘クエストに出撃させたりはしません」

 

 その声には、慈愛(じあい)が込められている。

 

「一歩一歩着実に克服していってください。実際、わたしも最初は――」

 

 美香子は優しい語り口で、プロセスを()んで冒険者としてのキャリアをこのウォーリアーズで積んでいけることを、新人たちに説くのである。

 

 

 

 夕刻。ウォーリアーズのクランハウス中庭を赤く染め始めた頃。

 美香子は身支度を整え、社交界へと(おもむ)く支度を始めた。

 彼女の日々はかつての冒険者としてのクエストをこなす日々から様変わりし、本拠点のクランハウスで新人冒険者たちの訓練や授業をつけたり、ウォーリアーズの事務処理の決裁をしたり、そして――

 

「春の微笑み、あなた様のお美しさは、まるで朝露(あさつゆ)に輝く花のようです」

 

「そのように仰っていただけるのは光栄ですわ、アレクサンドル殿」

 

 ウォーリアーズのパトロンである王家や貴族、大商人たち上流階級の人々とのつながりを育み、信頼関係を醸成(じょうせい)して、継続的に支援を得ること。

 傭兵団長として、危険なクエストに率先して挑み、最前線に身を投じている信彦に代わり、桐島夫人として、美香子は王宮や、時に地方の有力者の開催するパーティに参加する日々を送っていた。

 天井に描かれる美しいフレスコ画。(きら)びやかなシャンデリアの灯りの下、大理石の床が輝く。

 普段のクランハウスで纏う神官然とした服装とは異なり、《春の微笑み》と称えられる優雅な装い。

 まるで一陣のそよ風が、冬の寒さを和らげるように、美しく柔和な彼女の姿やその立ち振る舞いが宴席をほんのりと温かく包み込んでいた。

 

 

 

 夜も更けて。

 月光に照らされたクランハウスを、静謐(せいひつ)な空気が柔らかく包み込む。

 美香子は自室の窓辺に腰を下ろしていた。

 日中のクランハウスの喧騒や華やかな社交会からは一転、ここはまるで別世界のようだ。美香子は、穏やかで温かな時の流れに身を委ねる。

 燭台(しょくだい)の明かりが、淡いクリーム色の壁紙を照らし、室内を柔らかな陰影で彩る。

 

【春の微笑み】

 

 その夜、美香子は一通の封蝋(ふうろう)された封筒(ふうとう)から取り出された手紙を手にしていた。

 

【親愛なる貴女の元へ。この筆の行き着く先である貴女に、私の心を】

 

 手紙の差出人はエリック。あどけなさが残りつつも、騎士としての誇り高い風格を兼ね備えつつある一七歳の青年。

 

【主君たる公爵様のために。何より王国に生きる全ての無垢(むく)の民のために。剣を握り、(よろい)を纏い、光と闇の狭間を走る私の心は、時に孤独に震え、時に歓喜に満ち溢れております】

 

 グラン・コンベンションでの活躍が認められ、エリックは王国屈指の権勢を誇る公爵に聖魔の騎士(モンスターマスター)として仕えることとなった。

 丁寧な筆致で(つづ)られたその文面からは、騎士としての日々の苦労や、栄誉ある任務への覚悟、そして何よりも美香子への秘めたる想いが溢れ出していた。

 

【――貴女の笑顔を思い出すたび、胸の奥に温かな光が灯ります。

 

何気なく交わされた言葉、(はかな)くも美しい眼差し、そして柔らかな心。

 

その全てが、私にとって何よりの宝。

 

王国の未来を護るため、公爵様の(かたわ)らで、己が誇りを()す所存です。

 

ですが貴女への想いは決して色褪(いろあ)せることはありません。

 

たとえどんなに遠い地にあっても。

 

貴女のエリックより】




・あとがき

 お楽しみいただけていたら幸いです。

 高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)

 それと、実は『異世界かぞく!』の冒頭部分を漫画にしてみました♪
 X(twitter)とpixivで公開してます。

X→https://x.com/Houjou_Yuh/status/2000773409089970207
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 もし宜しければ遊びに来てください(⁠◕⁠ᴗ⁠◕⁠✿⁠)
 それでは、またお会いしましょう。
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