【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第五二話:勇者として》

 深夜。月明かりが薄曇りの空から、街を(おぼろ)げに照らしている。

 作戦は静かに幕を開ける。凍てつく夜風がライヘンバッハの石畳を吹き抜ける。

 信彦とジェイク。二人の熟練冒険者はライヘンバッハ・レジスタンスの市民の案内の下、ライヘンバッハ市外の秘密通路を通り、市の旧市街へと足を踏み入れた。

 深い闇の中、細い坂道の路地を進む。

 彼らの目的は、不治の病すら治癒する奇跡を起こすと言う少女:ラファエラの捕縛(ほばく)にあった。彼女はライヘンバッハ一揆を主導するゼオン教徒達の名目上の最高指導者であり、精神的支柱とみられている。

 『ラファエラを捕縛し、その身の安全の保障と引き換えに、一揆を鎮静化する』。それが王国王太子アルフレッドより依頼された、ウォーリアーズ傭兵団(クラン)が遂行中のクエストである。

 

「この路地を抜け、右手に伸びる裏道に入る。そこから進んだ先にあるのが、ラファエラのいる屋敷の裏口だ」

 

 案内役の市民は信彦とジェイクに低い声で話しかけた。

 狭い抜け道を慎重に進む三人。

 街灯も届かぬ裏道。月明かりが、彼らの輪郭(りんかく)(かす)かに浮かび上がらせている。

 

『ジェイク殿、これを。この魔動機にはテレポートの魔法が込められています。いざとなれば、握りつぶし破壊すればお二人をテレポートの魔法で市外まで一瞬で瞬間移動させることが出来ます。そうなればラファエラは(あきら)めねばならず、案内役にも気の毒ですが……信彦殿とジェイク殿は王国に欠かすことの出来ない宝。いざとなれば、躊躇(ちゅうちょ)なく』

 

 ジェイクはこれより先のラファエラ奪取作戦の工程を頭で再確認するなかで、アルフレッドの言葉を思い返す。

 (ふところ)に忍ばせた魔動機の表面に軽く指を走らせながら、心中でその重みを噛み締めた。

 

「(アニキは勇者だ。きっとどんな絶体絶命の事態に(おちい)っても、悲劇を、凄惨(せいさん)な市街戦を避けるため、平和的な交渉による解決を諦めはしねぇ……だからこそ、俺が……! たとえ汚名を被ったとしても……!)」

 

 『勇者(アニキ)の道は、俺がぜってェ守るッ!』。

 

 屋敷の裏口まで来ると、ここまで信彦達を案内してきた男が、裏口から出て来た別の案内人にバトンタッチした。

 

「ここが寝室です。ラファエラは睡眠薬で眠らせました。深い眠りに落ちているはずですが、物音には気をつけてください」

 

 ()せたメイドのレジスタンスが、低い声で囁く。

 頷く信彦とジェイク。

 メイドが扉をそっと開ける。

 薄暗い部屋の中で、ベッドに静かに眠る少女の姿。

 一〇歳前後だという。幼く、奇跡の技を操るという風説が信じられないほど無垢(むく)で無力な存在に見えた。

 信彦とジェイクは少女の手足を縄で手早く(しば)り、一瞬の内に捕縛を完了させた。信彦が(かつ)ぐ。

 さあ、脱出だ。

 

 

 

 信彦とジェイクを屋敷の裏口扉まで導くと、メイドは屋敷の内へと消える。

 屋敷の外では、二人をここまで導いてきた細身のレジスタンスの男が待っていた。

 人通りのない裏道を、狭い路地を、行き道を戻っていく。

 

「警備がいつもより多くなってる。こちらの動きに気づいていないとは思うが……」

 

 途中、信彦達に別のレジスタンス、しかしやはり痩せた男が一人急ぎ足で近づき、告げた。(こら)えきれずわずかに息を切らしながら。

 三人は警戒を強める。案内役はやってきた男と相談し、『行き道とは別のルートを進む』と信彦たちに告げた。

 

「クソっ……!」

 

 余分に時間はかけたが、三人は無事誰にも見つからずに、街を脱出する秘密通路の入口に辿り着いた。

 

「何でバレた……」

 

 しかし、行き道はひっそりと無人に佇んでいたその通路の入口は、今や十数人の警備の下に置かれていた。

 冷たい風が、三人に容赦(ようしゃ)なく吹き付けている。

 戦いの予感。

 

「後は俺達二人に任せてくれ。君は今すぐここから去りなさい……後これを、皆さんで」

 

「すみません……ありがとうございます」

 

 信彦は案内役にそう告げると、懐から銀貨を数枚取り出し、案内役に渡した。

 『戦いはまもなく終わる。終わらせてみる。だが、兵糧攻めは思っていた以上に効果をあげていたようだ』。信彦は今までに接触したレジスタンスの面々を思い出す。みなやせ細っているように見えた。『何かの足しになればと良いが……』。信彦は思う。

 レジスタンスの男は闇に紛れ、その場を後にした。

 

「ジェイク、行けるか?」

 

 信彦はゆっくりと深呼吸して。

 

「おうよ、アニキ」

 

 二人は同時に動き出した。

 ジェイクが先行して飛び出し、警備兵達に向けて素早く走る。信彦は身を低くして、後に続く。

 警備兵の一人がジェイクの拳に打たれた。断末魔を漏らし倒れる。信彦がジェイクの背後から飛び出し、右手に握った剣で別の警備兵を斬り付ける。警備兵は血しぶきをあげて、地に倒れ込んだ。

 信彦とジェイクは、動揺する警備兵たちの隙を付いて、次々と兵たちを戦闘不能にしていった。

 鈍い衝撃音と金属音が闇夜に響く。




・あとがき

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 それでは、またお会いしましょう。
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