【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~ 作:北条 ゆう(いすわーる)
執政暦一三一四年六月。
王都ルテティアの静謐な聖堂。国葬を終えて、信彦の個人葬が執り行われている。
朝霧が立ち込める中、白亜の石造りの聖堂はさながら天界を彷彿とさせるような幻想的な静けさをまとっている。聖堂を囲む木々は、深い緑の影を落とし、湿り気を帯びた初夏の風が故人の魂を運ぶように吹き抜けていく。
「これより送火の儀を執り行う」
聖堂内部。高い天井から差し込む朝の光が、ステンドグラスを通って淡い青と紫の
ミスリルの剣盾。遺品が棺の上に置かれている。
「信彦さん……」
喪服姿の美香子。
顔を覆う透け感のある黒のベール。同じく黒のドレスは喉元までを隠す
肌の露出を一切排した漆黒の布地。この世界で《
参列者には駆やレオンを始めとした親族・ウォーリアーズの面々はもちろん、エドアルト国王にエレアノール王妃、アルフレッド王太子やマリア王女ら王族の姿も。
「愛の灯、祈りの灯、そして記憶の灯」
祭壇に置かれた三つの燭台。
葬儀を執り行う神官の厳かな声。
神官が
「信彦さん……貴方は王国に生きる全ての民の剣盾となり、わたしたちの誇りとなりました」
『愛・祈り・記憶』
その三灯が灯ると、美香子は席を立ち、静かに棺へと歩み寄っていく。震える手で、棺の上に置かれたミスリルの剣と盾に触れる。
冷たく硬い感触が、もう彼が彼女の隣で笑うことはない現実をまざまざと突きつけてくる。
「私はあなたを、あなたの愛を忘れません」
美香子は神官より、聖水の満ち満ちた杯を受け取る。
亡き夫への手向けとして、聖水を飲み干していく美香子。
『偲びの杯』。
これから一年、彼女は《深喪》に服し、亡き夫を偲ぶ。亡き夫の生前の姿を思い描き、愛を抱き、死後の世界での平安を祈るのである。
団長:桐島 信彦、副団長:
双璧を失ったウォーリアーズ。まさしく傭兵団存続の危機の
団運営を担うのは、新団長:桐島 美香子、新副団長:サンチャゴ・デ・コンボ。
「サンチャゴさん、キャラバン隊護衛の件ですが……この見積もりでは満足な護衛の数が揃えられないわ。いつかのわたしの時みたいに、万が一と言うこともあるわけだし……最低限もう二人は配置したいと思うのだけれど」
「ご懸念承知いたしました団長。先方のご予算に合わせた見積でしたが、再調整いたしましょう」
悲しみに暮れる《未亡人》ではなく、鉄の意志を宿した《団長》として。
王都ルテティアの支部、執務室の窓から差し込む午後の陽光は、美香子が纏う漆黒のドレスに吸い込まれて消えていく。
「見てごらんよ」
傭兵団運営の一方で、上流階級の夜会にも顔を出す際の美香子。ウォーリアーズのパトロンたる貴族や大商人達との交流を欠かすことは出来ない。
「夫を亡くし、あのような禁欲的な装いをしているというのに、どうしてあんなに……」
美香子を横目に囁くのは、良家の子弟たち。
社交界での美香子、桐島伯爵夫人は、傭兵団長としての美香子とはまた異なる空気を纏っている。
深喪の決まり通り、肌を一切露出させない黒いドレス。しかし、それがかえって彼女の成熟した肉体の輪郭を、ありありと物語る。
「深喪が明けるまで、およそ一年余り……」
喪に服し、悲しみを押し殺して毅然と振る舞う美香子。
「あの黒きベールが解かれしその日……誰が夫人の心を射止めるのであろうな」
かつての華やかなドレス姿よりもなお一層、征服欲と
青年たちは、美香子の瞳の奥に宿る孤独を見逃さなかった。
「「「(《
美香子の、今や
・あとがき
作者の北条 ゆうです。
本日2026年9月21日より、第五章の連載を開始させて頂くことになりました。
毎週日曜、昼12時40分ぐらいに最新話を投稿する予定です!
よろしくお願いします。
高評価、お気に入り、感想など頂けると、嬉しいです(≧▽≦)
それでは、またお会いしましょう。