【第四章 完結】異世界かぞく! ~人妻と不倫(こい)するNTR冒険譚~   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第八話:おとぎ話》

「なるほど……」

 

 レオンの告白を受けて、信彦は(つぶや)く。少年の瞳には、深い悔恨(かいこん)苦悩(くのう)が浮かんでいた。

 その瞳を見つめ、信彦は続ける。

 

「つまり、君は《妖精を名乗る魔物(ゴブリン)》と商取引をするために、オークの一団を村に引き入れた」

 

 設営された野営地で、信彦は

 

「だが、ゴブリンは君たちグリーンヒルズ村の人々を(だま)し、オーク達を使って村人を皆殺しにした……しかしどういう訳か、毎日毎日、村人は復活し、その度にオーク達による虐殺(ぎゃくさつ)が繰り返されている。そういうことだね?」

 

 今まで聞いたレオンの話を自分なりにまとめてみた。

 しかしレオンは浮かない様子。顔色は暗い。

 

「おらも最初……そう思ったずら。それで、近くの街に行って、冒険者ギルドに討伐依頼を出したずら」

 

 依頼費用は村に戻った際に、村長の家から拝借(はいしゃく)したとのことであった。

 火事場泥棒だが、緊急事態。仕方のないことだろう。

 

「《時間が巻き戻っている》とか、そんなバカみたいなことを考えていたずら……もしかしたら……もしかしたら、おらがこの村を救う勇者で、その悲劇を救うために、何度も何度も同じ時を繰り返しとる、とか……」

 

「でも……違った」

 

 駆が受ける。

 

「そうずら」

 

 レオンは沈痛(ちんつう)の面持ち。

 

「……最初に来た傭兵団の人たちは、オーク達を撃退してくれたずら。だけど、やっぱり次の日には再び村は襲撃されて……そのあと何度倒しても、やっぱりオーク達は次の日には襲撃してきて……それで、傭兵団の人たちは街に帰ってしまったずら」

 

「苦しかったでしょう。可哀(かわい)そうに……」

 

 美香子が涙ぐんだ声で。

 

「でも……それで気づけたずら」

 

 レオンは覚悟(かくご)を決めた顔で続けた。

 

「グリーンヒルズの村の皆は、ゴブリンに《騙されたんじゃない》……たぶん《(ばつ)を受けとる》んだって」

 

 

 

「罰?」

 

 レオンの発言の意味が分からない信彦。聞き返す。

 

「そうずら……お金に目が(くら)んでしまった、その罰を受けているのずら……」

 

 (うつむ)くレオン。

 再びレオンの言葉の意味が分からないという様相の信彦。ただ、今回はニュアンスが異なる。

 

「レオン君、それは違う。悲劇が起きたとき、人は自分に非があったのではないかと、何か出来ることがあったのではないかと、そう自らを責めてしまうものだ……だがそれは違う。君は、君たちグリーンヒルズ村の人達はゴブリン達によって騙された被害者。悪いのは、騙してきたゴブリン達。そこを取り違えてはいけない」

 

 信彦は力強く言った。彼は少年の心の傷を癒そうとした。

 

「……」

 

 だが、レオンは納得がいった風ではなく、(だま)って首を横に振り、それきり俯いている。

 

「……ゴブリンは妖精の一種。容姿はオークの子供に似ているが、知能は高く、高度な魔法を使いこなす。オークの群れを導くことを使命とし、ゴブリンに率いられられたオークの一団は次第に温厚な性格へと変化してい――」

 

「駆、何をぶつぶつと呟いているんだ?」

 

 魔動機片手にそんなことを呟いていた駆に、苛立(いらだ)ちを帯びた声色で信彦。

 

「アルカナ大百科――《魔動機に搭載(とうさい)されてる辞書》の記述だよ。ゴブリンがどんな生物なのかと思って」

 

「駆……お前ももう二〇歳を超えているんだぞ?」

 

 信彦は呆れた声色で、

 

「ゴブリンや妖精は、おとぎ話の世界の生き物だ。そんなもの、現実にはいないんだ」

 

 そう(さと)すように続けた。

 場を沈黙(ちんもく)が支配する。

 

「……どうして罰だと思うの?」

 

 美香子がレオンに問いかけた。

 彼女は心配そうに見つめていた。

 

「……違ったずら……」

 

「えっ?」

 

 呟くレオン。聞き取れなかった美香子。

 顔をあげるレオン。覚悟を決めた表情。

 

「広場にいたのは、村の人達じゃなかったずら……見た目はそうでも、中身が……」

 

「どういうこと?」

 

「たぶん……広場で磔にされているのは……《エルミン様の仲間達》ずら……」

 

「? ゴブリンの仲間はオークだと聞いていたが?」

 

「村の人達は、おらと同じで訛っているずら……村長はそうでもないけど……でも広場にいた人達は皆流暢にルーサ語を喋っていたずら……」

 

「でも見た目は、君の村の人達だったんだよね?」

 

 頷くレオン。

 

「そう……ずら。おらも良く分からないずら……実際、前に来てくれた傭兵団の人達には、話せなかったずら。確信を持てなくて……」

 

 そして続ける。

 

「もちろん今も確信はないずら。間違っているかもしれないずら……でも、もしこれが《エルミン様の村人への罰》で、その贖罪(しょくざい)をすることで、この悪夢を終わらせる事が出来るんなら……ほんのちょっとでも、その可能性があるんなら、()けてみたい……エルミン様達に謝って、この呪いを解いてもらいたい……そう思っているずら」

 

 言い終えると、レオンは自分が何故今の村の状態がエルミンの罰だと思うのか、その根拠(こんきょ)をより具体的に話し出した。

 

「……信じられない話だ」

 

 信彦は呟く。

 信彦は呆然とした表情で言った。彼はレオンの話を疑う気持ちを拭い去ることは出来なかった。

 だが同時に彼の話に真剣さも感じていた。

 

「そうね。まさしく、おとぎ話」

 

 美香子はレオンの手を握りしめ、頭を優しく撫でながら。

 レオンの手は冷たくて震えていた。美香子はレオンの苦しみを感じ取る。

 

「だけど、僕はレオンの提案に乗ってみたいな。どうにもならないかもしれないけど、もしそれで解決出来たとしたら『めでたしめでたし』だもん。パパ、ママ、やってみようよ。レオンの作戦、乗ろうよ」

 

 自信に満ちた声。若者らしい、楽観的な駆。

 

「……」

 

 レオンの瞳から涙がこぼれた。彼は駆に自分の気持ちを伝えようとしたが、言葉にならなかった。

 それは《感謝の言葉》。

 年の頃で言えば、駆の方が大分年上ではあったが、通じる所があったのかもしれない。

 

「信彦さん」

 

「……あぁ。そうだな」

 

 信彦と美香子は駆とレオンに心動かされた。未来を、善意を信じる二人の若者の姿に。

 彼らはレオンの作戦を実行することを決めた。

 危険な策。だがそれでも、彼らは希望の光を見る。

 ハッピーエンドのおとぎ話のような幸せな結末を。




・あとがき

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 それでは、次話でまたお会いできると信じて!
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