水没廃墟の海鮮娘が魚介の異能で百合色ディストピアを死守する話   作:田地町 待乃

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やっと掲載できた世界観の説明……
この部分の内容を、読み続けるかどうかの「最初の判断材料」にしていただけたらと思います。


水着の胸に抱かれて

 窓があるもののどこか薄暗い、グレートーンの部屋(キューブ)

 そこで、地味で端正な顔立ちをしたシャチ少女を、明るい美顔のイルカ少女が抱いているという情景が続いていた。

 窓の外から届く悠久の波音と、電源を切りそこねた流しそうめん(オモチャ)の持続音による、途方もない二重奏を劇伴にして。

 

 シャチ子は消してほしかった。先ほど味わってしまった、『オトコ』の手の感触を。自らの性的な部分を、望まぬ者によって弄ばれるという、あの絶望的な屈辱を。

 イルカの飾り気ない優しさと、濡れた水着が伝えてくる胸部の慈愛と、ほのかに漂いくるオレンジめいた体臭が、今のシャチ子には何よりの治療薬となっていた。

 

「────そんな体験するの、この世界になってから初めてだったから、なんかすごいショックで」

 

 シャチ子は、イルカの心地よい谷間に顔をうずめたまま、今しがたの一部始終をほとんど話していた。

 ……“ある人種”による“ある悪だくみ”に腹を立てていた自分(シャチ)は、その証拠を撮影しようと、あのタワーマンションへ赴いたこと。

 そこで、ヤツメウナギの特性を持ったギャルと出会ったこと。

 同時に、絶滅したはずの“人間の男”らしき者に襲われたこと。

 そして、あのギャルが、世にも恐ろしい方法で男を成敗したこと。

 

「ちょっと、なんでギャルが生き残ってんの?」

 

 イルカが、シャチ子の話を聞いて初めて吐いた言葉が、それだった。

 シャチ子が求める“証拠”とは何なのか、とか、男がなぜ生き残っているのか、とか、そういうことではなく。

 

 シャチ子もその違和感に気づき、思わずイルカの朗らかな顔を見上げる。

 

「ああ、そういえば。……っ」

 

 言ったとたんにシャチ子の表情が翳ったのは、水着(ブラ)ごしの桃源郷から離れてしまった顔面が、部屋の空気をやたら冷たく感じたため。

 イルカもそれに気づいていながら、あえてそこには触れない。

 

「……やっと気づいた?」

 

「うん。()()()()()()()()()だなんて、ありえないよね、そんなの。ギャルって、社交性の象徴みたいなものでしょ」

 

 壁際に置かれた姿見に映る、自分とイルカのルックス。どちらも“微ぽっちゃり”でありつつ、小綺麗で色白く、重い陰りを帯びている。

 少なくとも、明るく能天気に学校生活・社会生活を送ってきた人間の容姿ではない。

 

「男が生き残ってたり、引きこもりと思えない女が生き残ってたり……なんかヤだ。引きこもり少女だけが生き残った世界だと思うから、外にも出られるようになったのに」

 

 シャチ子もイルカも、世界が崩壊する前までは、いわゆる引きこもり少女であった。

 イルカの言うとおり、引きこもり少女だけを残して世界が滅んでしまったのでは、もう彼女たちにとって、中も外も大して変わらない。

 

 体が離れた後も、シャチ子とイルカの手と手だけはしっかりと握られていた。

 このような世界で過ごすうち、少女たちの心には、特異な一体感が芽生えだしてきたのである。

 ここに住む全人物がみな理解者であり、誰と誰が深い仲になっても何の問題もない、と。

 地球全体が、百合の色をした箱庭ディストピアとなったのである。

 おお、早々にタイトル回収!(メタい)

 

 箱といえば。今二人がいる部屋……これは彼女たちの間で『キューブ』と呼ばれ、少女のこもっていた部屋が切り取られ、そのまま浮上したものに他ならない。

 世界崩壊の際、人類の文明は総て海底に沈められたわけだが、反面、人間社会に背いて生きていた引きこもり少女の部屋は、ぷかぷかと海面へ浮かび上がってきた。

 まるで、社会や文明に対して皮肉を云うかのように。

 大袈裟に発展・肥大化する反面、大量の犠牲や腐敗を生み出してきた、あの人間の歴史のこと。当然といえば当然の結果といえよう。

 

 それにしても、このシャチ子の部屋は女子らしい装飾が皆無であり、それが彼女の孤独を表しているようでもあって何とも痛い。

 イルカの部屋など、可愛らしい縫いぐるみや洒落た小物で埋まっているというのに……。

 

 イルカの明るい顔は、にわかな胸騒ぎにより翳っていた。

 一方シャチ子のほうは、事実をあらかじめ知っていたからか、いくぶん冷静である。

 

「それは私もおんなじ。自分と同じタイプの女の子たちだけが生き残ってるって思ったから、外に出られたっていうか……外も中も一緒だと思ったもんね、こんな世界じゃ」

 

 ただしやはり、“外も中も一緒”とは思えず、今もキューブから全く出られない、()()()()()()()()である少女も少なくはない。

 

「うん……あたしもカミサマからそう聞いたよ。引きこもり少女以外の人間はみんな抹消したって」

 

 嗚呼……。

 

「嘘ついたのかな。このデンチ式のカミサマは」

 

 シャチ子はアンニュイな様子で、ポケットに入ったスマホ……こと……この()を、パーカーごしに指でつついてくる。

 

「あーもう、カミサマつっつくかね……?」

 

 私は小さなスピーカーから不満の声を漏らした。

 そのとおり……メタなことばかり言っているこの私は、“カミサマと化したスマホ”のことに他ならない。

 

 思えば二十一世紀、人間たちは私たちスマホを肌身離さず持ち歩き、生きるのになくてはならぬ存在にまで崇めていった。

 私が神となる必然性は、人類が滅ぶ必然性以上に大きいだろう。

 まあ、私が神となった理由は、それだけではないけれど。

 

 ともあれ、という様子で、イルカはシャチ子に平明な目を向ける。

 

「でもシャチ子のこと助けてくれたんでしょ? そのヤツメウナギのギャル。悪い子じゃなさそうだし、もしかしたら、ギャルの姿でいなきゃいけない事情があるのかもしれないし」

 

 なるほど確かに、イルカは引きこもっていても常に頭上の『お団子髪』をセッティングしていたし、シャチ子はシャチ子で、自室の中でも髪をしっかりと三つ編みにしていた。

 外見は必ずしも内面と比例するものではないし、稀に反比例することも……。

 

 さて、イルカの言葉を聞いたシャチ子は、軽く感電したような動揺をみせていた。

 

「そうだった……助けてくれたの。あの人、私のこと。どうしよう……お礼言ってない」

 

 イルカはドンッと、シャチ子の濡れた背を叩いた。

 

「じゃあ行ってこい! あたしはここで流しそうめん楽しんでるから」

 

「うん」

 

 部屋を出た彼女は、またシャチ特有の高速で泳いでゆく。

 ヤツメギャルは、まだあの場所にいるだろうか。

 いささか不安ではあったけれど、きっと会えるだろうと、シャチ子はどこか安心してもいた。

 なぜならばこの世界にいるのは全員が引きこもり少女。思考・思想に似通った面が多いため、物理的な以心伝心が起こりうるのである。

 

 その結果は、予想の真上をゆくものだった。

 くだんのタワーマンション群あたりまで着くなり、突然ヤツメがシャチ子の前に参上。

 

〈シャチ子、ちょっとソコの店に隠れよう! な?〉

 

〈何っ……〉

 

 ~おことわり~

 今後、彼女たち海鮮娘が鼻孔の超音波によって会話する場合は、「」ではなく〈〉を使わせていただきます。

 ああ、メタメタのメタだ私。

 

 閑話休題、がしっと胴をつかまれ、再びの連行をされるシャチ子。

 

〈あそこでいっか〉

 

 ドアの開け放たれたファッションモール目がけて、ヤツメは泳ぎにブーストをかけていった。

 

 ここは水中であり、当然空気など存在しないのだけれど、暗いモール内に入れば、やはりどこか空気感が違っているように感じる。

 誰にも着られることのなかったドレスやワンピースが、ただ虚しく海水を漂う様子は、不気味でありどこかファンタジックでもあった。

 その肉体なき舞踏会を尻目に……ヤツメに背を抱かれたシャチ子は、首を曲げて彼女の顔を見上げる。

 

〈どうしたのヤツメ〉

 

〈シャチ子、あんたも知ってんのかもしれないけど……この地帯、危ないよ。あんた、それ関係のこと調べてるんでしょ? さっきも、なんかの証拠、録ろうとしてたんでしょ?〉

 

〈うん……〉

 

 これが、引きこもり少女同士の物理的以心伝心である。

 ヤツメは高い地点にある窓を眺めていた。例のタワーマンションが建っている方角を。

 

〈誰かがあのタワマンから、さっきアンタを襲った“オトコ”を撃ち殺した〉

 

〈えっ……えっ!?〉

 

 要するに、自分(シャチ子)たちの味方があのタワマンに居て、ヤツメを助けるために撃ったということか。

 だが、ヤツメが次に吐いた言葉により、その線は打ち消されることとなった。

 

〈そいつ、あぁしのことも狙撃してきた。だから撃ち返してやったさ。命中したかどうかは不明だけど~〉

 

 撃ち返した……とはどういうことか。ヤツメは何か武器を持っているのか。

この小説、小説家になろう様よりもノクターンノベルズ様でのほうが受けている現状があります。ハーメルン様においても、露骨な性描写を含んだR18作品化して投稿すべきでしょうか? あえてキッパリとした二択で!

  • 今すぐにでもR18化すべき
  • このままR15で連載してほしい
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