水没廃墟の海鮮娘が魚介の異能で百合色ディストピアを死守する話   作:田地町 待乃

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やっと始まりました小説が。じゃあ今までの15000字は何だったのか!?
ともあれ、今回は敵キャラ群が華やかに登場してのバトルがある上、ヤツメ×シャチ子の微エロもあります。
ようやく物語の基本的な調子が定まったという感じですね。


引きこもりギャルは銃撃戦が御上手!?「ヤらせてくれるなら、一緒に戦ってやってもいいよ」

〈魚雷よけるかもねBダッシュぅ~!〉

 

 威勢良いヤツメに抱きかかえられて上昇してゆく、水没ファッションモールの停まったエスカレーター。

 ヤツメはシャチ子を抱えている影響で腕を使えないため、泳ぐという行為がままならず、足で段を蹴ることを動力に進んでいた。

 

(永久ブランコ……)

 

 混乱を極めて真っ白になった頭の中で、シャチ子はそのように感じていた。

 これは幼少期によく味わった“勢いをつけすぎたブランコ”のスリリングさを、持続的なものに変換したような感覚だと。

 

 それにしてもヤツメの、この人間離れしすぎた身体能力は……?

 

(そっか。この子の場合、()()()()()されたから……)

 

 少女ヤツメの原型(オリジナル)となった『スナヤツメ』は、体長が最大で二十センチほどにしかならない。

 それが百六十センチを超える少女(ヤツメ)へ、なんと八倍──ちょうど8!──にもリサイズされたのだから、身体能力ならびに反射神経もまた八倍くらいに拡大されてしまうのである。

 

 例えば、蚊やハエを手で叩こうとするも、目にもとまらぬ速さで逃げられてしまうというケースは、多くの人間が経験しているのではないか?

 その蚊やハエが、“身体能力および反射神経ごと”人間サイズに拡大されたら……などと想像していただきたい。

 したがってヤツメからすれば、例えば銃弾であっても、せいぜい野球のホームランボールくらいの速度に見えるのである。

 

 水中を移動する中でも絶えず聞こえてくる爆発音。

 まるで夏の夜を彩る花火のようだと、シャチ子は呑気に考えていた。

 いや、心を呑気にすることでしか、今の非日常を割り切ることができなかった。

 

 そして魚雷の炸裂する音が、なぜかフェードアウトしていかない。

 敵は、追いかけてきているということなのか。

 

 三階から四階へ移ろうかというとき、

 

〈だぁぁー動きづらっ!〉

 

 ヤツメが先ほど盗んだワンピースを脱ぎ捨てると、数秒後、それが衝撃によって儚く飛ばされていったのを、シャチ子の目尻はとらえた。

 間違いない。敵は追尾攻撃をしてきている。

 

 やがて二人は、『8F/部屋着コーナー』と書かれたパネルの前で、大きなスプラッシュとともに水上へ出ることが叶った。

 海面直上の、それも衣類だらけの空間であるため、このフロアはカビ臭さと磯臭さの混じった、なんとも不健康な空気に満たされている。

 魚雷の攻撃音は、もう聞こえてこない。

 

「諦めたぽいね。ここまで来れば魚雷は撃てねっしょー」

 

 ヤツメの腕から降りると、シャチ子は改めて頭を深々と下げる。

 

「ヤツメ、本当にどうもありがとう。助けてもらってばっかりで……」

 

 礼を言うシャチ子を視界の隅に感じつつ、ヤツメは腐れた部屋着の群れをあさっていた。

 

「どんどん借りが増えてイイ感じー。んー、あ、シャチ子ってさ、引きこもってた頃にこういうの着てたイメージ」

 

 彼女がハンガーごと取り上げたのは、なんの模様も飾りもボタンすらも見られない、質素な白いワンピース。

 同じパフスリーブでも、先ほどまでヤツメが着ていた逸品とは風情が全く違う。

 ともあれシャチ子は静かに目を輝かせた。

 

「着てた! それとおんなじようなの! ヤツメすごい……」

 

「すごいと思うなら、さっきの条件、呑んでもらうよ~」

 

 得意気さに一抹の邪悪さを上乗せしたヤツメの笑顔。

 シャチ子にしては珍しい、試すような眼をして、

 

「条件って、何?」

 

 尋ねると、ヤツメはカビた部屋着をぐっと抱きすくめた。

 引きこもり時代のシャチ子を意味する、この素っ気ないワンピースを。

 

「ときどきヤらせてくれるなら、一緒に戦ってやってもいいよって、話。一人でも多くの女とヤらないと、あぁしの心と体は救われないんだ」

 

 ……これ以上、返答に困るセリフがこの世に存在するだろうか。

 それはとても、()()()()()が、遊び半分に言っているような口調ではなかったし、実際“一人でも”以後の深刻なフレーズが、そのことを裏付けてもいた。

 何より今、シャチ子を真っすぐに見つめるヤツメの瞳には、シャチ子やイルカにはない底なしの暗闇が宿っていて……。

 

「ヤツメ……」

 

八重子(やえこ)って、呼んでよ」

 

 柄にもなく顔を赤らめて、ヤツメは自らの本名を告げてきた。

 言うまでもなく彼女たちには、海鮮化する以前の人間としての本名がある。

 それは当然、シャチ子にも、イルカにも……。

 

 シャチ子は、そっとパーカーをずり下ろす。

 今すぐに抱かれても構わない……そう思った。

 ヤツメを助けてあげたいと。

 なぜなら、女性がそういう精神状態になる原因といえば、考えられうることは、異性から受けた辱め……まずそれしかないだろうし、実際ヤツメは、

 

≪せっかく念願の“女しかいないセカイ”になったってのに≫

 

 などと発言してもいた。

 

(ショックなことばっかりだった後で、カラダが持つかどうか分からないけど、ヤツメ、いいえ、八重子のためなら……)

 

 そう。彼女のためであるのなら。

 ヤツメもまた、セーラー服のスカーフに手をかけようとした。

 

 だが、そのマニキュアだらけの華やかな手は、ふっとスカーフから離れ、手に抱えたままのワンピースのなかへと潜る……

 

 せつな、朽ち果てたモール全体を震わせる発砲音!

 

 にわかに立ち込めた硝煙の中。ヤツメが目を細め、

 

「ニブいんだよテメェら。あぁしを狙撃するなんて八百八十八年はえーわ」

 

 と吐き棄てる。

 その手には、正真正銘の黒いピストルが握られていた。

 

「どうしてそんなもの持ってるの!?」

 

 シャチ子が目を見開いて叫ぶ。

 ともあれ、ヤツメの銃口が向かう先には、同じように銃を手にした少女と、背中に魚雷砲を抱えた少女。

 

「コイツ銃弾で銃弾はじいた!」

 

 片や、スナメリを模した真珠色の水着をまとい、

 

クモ(こま)っちゃーうーナぁー!」

 

 片や、クモヒトデ型の被り物を乗せている。

 

 この『壁に耳あり障子に目あり』の状況下。ヤツメはワンピースで手を隠したまま、(ふところ)──セーターとセーラー服の間?──から拳銃を取り出したのだった。

 彼女とスナメリそれぞれの足元には、はらりと舞い落ちた防水袋。

 なるほど、これに拳銃を入れていれば、水中を泳いでも銃が濡れることはないだろう。

 

 すかさず、ヤツメは銃口を敵に向けたまま、サッとシャチ子の前へ移動。

 敵二人に不敵な含み笑いを向けた。

 

「いっぺんでも、このシャチ子(おんな)に銃口向けてみな? その一時間後にはアンタら二人とも刺身にして海鮮丼に乗っけてやっから」

この小説、小説家になろう様よりもノクターンノベルズ様でのほうが受けている現状があります。ハーメルン様においても、露骨な性描写を含んだR18作品化して投稿すべきでしょうか? あえてキッパリとした二択で!

  • 今すぐにでもR18化すべき
  • このままR15で連載してほしい
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