水没廃墟の海鮮娘が魚介の異能で百合色ディストピアを死守する話 作:田地町 待乃
パンチラを心情描写・内面描写に利用するという奇天烈なアイディアです!
私信(?)となりますが、10月の「R18化するかR15のままか」のアンケートにご回答下さった方、どうもありがとうございました。
このままR15で書き続けることにします!
〈ねえシャチ子、敵が魚雷を持ってたって、持ってなくたって、これって、あぁしら二人じゃどうにもなんない。それでちょっと、会ってほしい子がいるんだけど〉
〈ん……〉
ファッションモールを抜け、海中を泳ぎながらの会話だった。
だがそれは、果たして会話と呼べるのかどうか。
ヤツメが一方的に語り、シャチ子が空虚な相槌を返しているだけの、実に不穏なやりとり。
しびれを切らしたヤツメから、
〈今んなってビビるとかさ、ちょっと情けないんじゃね?〉
とのダメ出しが飛ぶ。
くだんの『引きこもり少女同士の物理的以心伝心』が起こっている以上、自らの心を隠すとか誤魔化すといった芸当は不可能。
シャチ子のほうもそれを熟知しているため、無用な取り繕いは避ける。
〈だって、さっきの二人、見たでしょ? あんなふうにお互いのこと……〉
クモヒトデを必死に気遣うスナメリの姿が、シャチ子の心に哀しみの影を落としていた。
〈敵に情けかけて、それでどうなる? そんなことしてたらキリないっしょ〉
〈でも私たちだって、世界がこうなる前は、変な目で見られたり、疎外感ばっかり味わったり、だったでしょ? でも、そんななかで、理解者に出会えたりすると、嬉しかったじゃない?〉
静かな抒情を含んだシャチ子の訴えを、ヤツメの鋭い反論がつんざく。
〈ねーよ! あぁしには、そんなのなかった。目に入る
“みんなに”と、“傷つけられた”の間に潜む、切羽詰まった
シャチ子はただならぬものを覚えていた。
〈ヤツメぇ〉
同じ、不登校に起因する引きこもり経験者である二人。
ただし、そんななかでも理解者がいないことはなかったシャチ子と、世界ないし人間から理解されることのなかったヤツメとでは、やはりものの見方が違うのだろう。
シャチ子の動揺にブーストをかける要領で、ヤツメはサクッと人差し指を立てる。
〈ここでお役立ち情報を一ぉつ! クモヒトデって
トカゲのシッポと同様、クモヒトデの腕というのは、切り落とされても即座に再生する。
〈じゃあ、さっきのって〉
〈たぶんアレ、演技だよん。あんたみたいなアホに同情させるためのね。なんか、まさに旧人類ってカンジ。テレビもSNSもそればっかだったじゃん?〉
シャチ子は泳ぐのをやめ、重いルアーのように静止した。
〈そういえば、そうだったね。視聴者とかフォロワーの同情をかって、“この人たちによって私たちはこんな目に遭わされました~”って、憎しみの輪を広げて、それによってエラい人たちが得をする……ただそれだけ〉
次いでヤツメも進行を止め、首だけをシャチ子へ向ける。
〈でしょ? それとおんなじなんだよ、あのスナメリとクモヒトデも。間違いなくデキてる
ふたり組、ではなく、ににん組……と彼女らを呼ぶヤツメ。
ニュース番組などにおいても、犯罪者を呼ぶ際は後者の読みが使われる。
シャチ子は底なしの沼を見下ろす気分だった。自分よりも徹底した形で旧人類を憎むヤツメの闇に。
ヤツメの少し後方へ、シャチ子は静々とバックした。
〈とりあえず、案内して。その、“会ってほしい子”っていう人のところに〉
〈ぉk~ぃ〉
〇
長らく泳いでたどり着いたのは、古びた木造の『キューブ』の前。
中規模な水しぶきとともに海面に出た二人は、キューブに接する
お断りを入れておくと、キューブはいちいち綺麗に四角く切り取られるのではなく、こうした“部屋周辺の残骸”が残っている場合が非常に多い。
いかにもな“やっつけ”の浮上を、私は行な(うしかなか)ったのである……。
潮風が強い。
ヤツメは短すぎるプリーツスカートを手で押さえつつ、ドアの向こうへ声を飛ばしだした。
「やっほークラゲちゃぁん! ちょっと話したいことがあるからさー、開けてくんないかな?」
…………。
ただ波音だけが二人の耳を満たす。
「…………」
意味深なシャチ子の沈黙。
ヤツメは構わずに呼び出しアナウンスを続ける。
「ねえ、今ね、クソクソのクソな旧人類たちがこの世界を────」
ヤツメは文字通りアナウンサーのごとく、自分とシャチ子とが目の当たりにしてきた現実のことを語り尽くした。
「────そういうことなんよぉ。ねえ聞いてる? このまんまじゃ元のモクアミ、もしかしたら、そう……『引き出し屋』、みたいなっ、
引き出し屋……その言葉を吐き出す折、このヤツメギャルのチャラチャラした全身が、古事記にでも描かれる女怪のような妖魔を放つのを、シャチ子は見逃さなかった。
が、やはりドアの向こうからの返答は皆無。
ドンドンドン、ヤツメはドアを叩きだす。
「ねえお願い!
「ヤツメ、ダメ! それはダメ! 私たちのこと誤解されちゃうよ! 今の彼女には、何言っても多分……」
要は、前にも話題にのぼった、引きこもりには大きく分けて二つのタイプがある、という話だ。
すなわち、人間社会さえ消滅すれば易々と外へ出て行けるタイプと、外の世界そのものに怯えるタイプ。
クラゲは後者だということだろう。
さて、外へ一歩も出られない彼女は、どのようにして食糧を得ているのか。その答えは、ややあってから判明することになる。
「だけど……だけどさ、
「だからって! 今のヤツメがしてることって……」
そこで初めて、ドアを叩くヤツメの手がハタと静止した。
その腕を、ひしとシャチ子がとらえる。
「私も毎日毎日、こうやってドア叩かれてた……学校の、先生に。すごいつらかった……。叩いてる側にも追いつめられた気持ちがあるんだとしても、これじゃ本末転倒だと思う」
「ぁ……ああぁ」
ヤツメはすくみ上がり、シャチ子につかまれていないほうの手で、左目から額までを覆う。
その様子にギャル的なムードは皆無であり、紛うことのない、悩み多き少女の風情でしかなかった。
「ヤツメ……」
「わ、
あぁし、ではなく、私……。
ひときわ強い風が吹くと、
それはそのまま、痛いところを突かれたヤツメの心情を表す標識のようでもあったし、この世界に住む海鮮娘全員に共通する脆弱性の象徴に見えなくもない。
静止する二人の足元へ向かって、巨大なクラゲが泳いできた。
……かと思うと、それはクラゲ型の透き通ったレインコートをまとう美熟女だった。
廊下(の残骸)に上がり、ドアノブに手をかけると、女性は重く落ち着いた声を発し、
「ごめんなさい、今日は帰って」
透明なコートの下には、そのグラマラスな肉体とは相反するような、白い清楚な水着をまとっている。
立ち去る所作を見せつつも、シャチ子は女性に対し、
「あなた方は、
と小さく訊いた。
引きこもり少女を持った家庭において、その母親もまた娘と同様の状態だった場合、母娘ともども生き残るというパターンが起こるのである。
開かれたドアの向こう、少女の真っ暗闇から漂ってくるのは、世界がこうなる前のシャチ子やヤツメの部屋と同じ匂い。
そして、
「
倭文子という名のクラゲ娘に食事を運んでゆく母の声を聞いて、
「っ……」
シャチ子は、イルカがそうめんを用意して迎えた折と全く同じ眼をした。
この世界、全員が全員、
この小説、小説家になろう様よりもノクターンノベルズ様でのほうが受けている現状があります。ハーメルン様においても、露骨な性描写を含んだR18作品化して投稿すべきでしょうか? あえてキッパリとした二択で!
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今すぐにでもR18化すべき
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このままR15で連載してほしい