拝啓、  。今日も元気にキヴォトスでニートやってます。   作:桜ナメコ

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 唐突に書きたくなった日常回です。
 時系列はエデン3章終了後想定。






Ex-02 Burn it's color into the eyes

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、アリカ!」

「あれま、随分と元気ね。何かいいことでもあったの、先生ちゃん?」

「うぇ、い、いや別に? 私はいつでも元気だけど……」

「すっごいわかりやすく目を逸らした……絶対、何かあるじゃんね?」

 

 いつも通りシャーレに出勤した私は、やけにテンションの高い先生ちゃんにお出迎えをされて首を傾げていた。

 

「そ、そんなことより、今日はいい天気だと思わない?」

「まさかの天気デッキ……!? え、まぁ、確かに雲一つない快晴だけど……それがどうかしたの?」

 

 いきなり何を言い出すかと身構えていた私がバカみたいじゃないか。

 先生の言葉に釣られて窓の外を見る。

 暑過ぎることもなく寒過ぎることもないぽかぽかとした陽気に、時折心地の良い涼やかな風が通り抜ける。

 小春日和なんて表現が似合いそうなお外の空気感は言われてみれば、確かに日向ぼっこが気持ち良さそうだ。ピクニックをするにはベストコンディションなのかもしれない。

 物凄くどうでもいいけど、小春日和って言葉が秋終わりから冬までの天気に使う表現なの何度考えても罠だと思います。私の脳内コハたんが何度も首を縦に振って賛同してくれるぐらいには詐欺言葉だよね。

 

「ぴ、ピクニックしよう!」

「しないよ。最近忙し過ぎて、書類作業溜まってるんだからね」

「真面目だ!?」

「アリカさん割といつも真面目なんだけどなぁ」

「知ってるよ! いつもありがとね!」

「どういたしまして?」

 

 どう見ても先生ちゃんの様子がおかしい。何か悪いものでも食べたのだろうか? ジュリちゃん級の料理人が何人もいるとは思いたくないけど。

 

「さて、じゃあ今日もお仕事始めましょーか」

「うぐ……こ、このままだと、いつも通りに……」

「先生ちゃん?」

「ひゃいっ!? な、何?」

「いや、ぼうっとしてたから大丈夫かな? って。もしかして体調悪かったりする?」

 

 だとしたら、中々に珍しいバグり具合をしている気がするが、先生ちゃんの一大事とあればそれはシャーレそのものの危機と同然だ。

 

「ちょっとじっとして。んー? お熱はなさそうかなぁ……あれ、なんだかほっぺ赤い?」

「!?!??!?」

「先生ちゃん!?」

 

 コツンとおでこをくっつけてお熱チェック。

 何故か先生ちゃんが本格的にバグり始めた気もしたが気にしない。

 うーん、体温は問題なさそうだね?

 

「は、はしたないですよ、アリカさん!?」

「敬語が出るレベルで?」

「敬語が出るレベルで!」

 

 自分の行動を冷静に振り返ってみる……あ、確かにちょっと距離近かったかも?

 脳内コハたんも『エ駄死』と書かれた看板を元気に振り回しています。この前、ハナコちゃんに弄ばれて(一応の補足だけど言葉遊びで)へにょへにょになったコハたんが『しけぇ……』って涙目で言ってたの超可愛かった。

 

「反省、反省……でも先生ちゃんも先生ちゃんじゃない? ゲヘナだと未だに足ペロ妖怪とかいう意味不明な呼ばれ方されてたりするよ?」

「あれはイオリが悪いと思う」

「そんな澄んだ目をして言うでない。紛うことなきセクハラなんだよね……」

 

 まぁ、足を舐めて誠意を見せろは割と問題発言ではあると思うけど。

 イオリちゃんアレで結構調子に乗りやすいタイプだからなぁ……その点に関してはアコと同じである。二人とも、そこが可愛いところでもあるんだけどね。

 

 ひとまず体調に問題はないみたいなので、仕事を始めることにする。

 なんだかんだで私もシャーレに勤めてかなりの時間が経っている。ユウカちゃんやヒナちゃんほどではないにせよ、書類作業にも慣れたものなのだ。えへん。

 

「はい。ここの山確認よろです」

「し、仕事が速い……」

「ふふん、頼りになるでしょ?」

「頼りにしちゃってるんだよね……」

「何でちょっと嫌そうなのさ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で書類の山を受け取る先生ちゃんに、ジト目でツッコミを入れる。まったく何を悩んでいるのやら。

 

「今更、私に遠慮でもしてるの? 実は友達付き合い苦手だったりします?」

「サラッと刺しに来るのやめようね? じゃなくて、別に遠慮とかじゃないんだけど……」

「じゃ、何さ。こんなに仕事に手がつかない先生ちゃんを見るの久しぶりだよ。ぽんぽん痛い? アリカちゃんがお腹撫でてあげよっか?」

「絵面的にアウトだよ……アリカって私のこといじめるの好きだよね!?」

「まぁ、嫌いではないかなぁ」

 

 叩くと音のなる玩具。

 そんな表現はちょっとばかり大袈裟だが、先生ちゃんとの小気味良い独特のテンポの会話がかなり好むところにあるのは事実である。

 

「先生ちゃんだっていじめられるの嫌いじゃないでしょ?」

 

 なんて反撃の言葉は、脳内コハたんにエッチ判定を頂いたので呑み込むとして。

 

「で、話がいつになっても進まないんだけど?」

「…………わかった。白状するよ」

 

 うん、よろしい。

 頷いて先生ちゃんの言葉を待っていると、彼女は何やら一冊の細長い手帳のようなものを渡してく――って、これ通帳?

 

「うっっっわ、超お金持ちだね、先生ちゃん。毎月、ユウカちゃんに正座で説教されてる人とは思えない貯金額だよ……え、趣味で正座してたんです?」

「してないよ? なんでアリカは一々、私のことを茶化さないと気が済まないのかな?」

「愛故だよ。愛故。すきすきだいすき、ちゅっちゅっちゅっー」

「アロナ今の録音できてる?」

『バッチリです!』

「この卑怯者!?」

 

 アロナちゃんはズルでしょ。アロナちゃんは!

 

「で、この通帳がどうしたの?」

「それ、アリカの」

「――は?」

 

 ――は? って待て待て、思考まで完全に停止させてんじゃないよ。

 え、何? このお金、私の貯金なの? 

 

「……なんか多くない?」

「シャーレって実はお給金が結構良いの」

「へぇ……って私、お金使えないから貯めてあっても意味ないよ? というか、そもそも私ってお金を稼げない体質のはずだけど」

 

 お金を稼げない体質ってなんだ?

 今更、そんな疑問は口にしてはいけない。私が悲しくなります。

 

「……これは私が勝手に作った口座だからね」

「なるへそ……じゃあ多分だけどコレを私の財産だって認めた瞬間、この通帳消えちゃうんじゃないかな? ……うん。先生ちゃん、これ食費とかに回していいんだよ? お金がなくて栄養不足になる先生ちゃんとか見てられてないし」

「半分ニートな生徒のヒモになる先生の方が余りにも見てられない姿なんだよね。気持ちは嬉しいけどさ」

 

 妙に気を遣おうとしてくれた理由はこれか。

 わざわざ私に言われなくても先生ちゃんは理解していたはずだ。

 この通帳が物理的に私へ利益をもたらすことはないのだということを。

 

「給料を渡せないのが申し訳ないってとこ?」

「あとは何もしてあげられない自分への不甲斐なさ、かな……この分だと、何かしらの手段が得られるまでは貯金になりそうだね」

「お母さんにお年玉を管理されてる小学生の気持ちをもって全面的に任せる所存だよ」

「絶妙に信頼されてないんだよね……」

 

 というか、急に今日になって罪悪感が湧き出てきたということは、先生ちゃんも私にお給料が出てるの知らなかったのでは?

 

「因みに何故にどうして今日だったの?」

「ずっと忙し過ぎて、シャーレ稼働直後くらいにアリカ用の口座を用意したのを忘れてまして……昨日、ユウカにお金の管理について叱られてたときにふと思い出しました」

「…………先生ちゃん、私じゃなかったら殴られても文句言えないからね?」

「反省してます」

「ならよろしい」

 

 給料未払い事件にならなくてよかったです。

 相手がシャーレの活動でお給料が出るって知らない私で尚よかったよね。実害ゼロだし。

 

「……まぁ、有事のときに使えるように取っておいてよ。給料を受け取れない点については完全に私の問題なんだから、先生ちゃんが気に病むことじゃないでしょ?」

「…………頭ではわかってるけど、私が嫌なの」

「優しいねぇ、先生ちゃんは」

 

 労働には対価があって然るべし。

 そんな考えがあるのなら、彼女は大きな勘違いをしているだろう。

 シャーレという居場所を与えて貰っているだけで、私は既に返しきれないぐらいの恩を、対価を受け取っているわけなのだから。

 

 コホン、と咳払いが聞こえた。

 

「だから、これは上司命令です!」

「……?」

「今日は二人でゆっくりしようよ。せっかくなら我儘も沢山言って欲しいな。お礼なんてつもりはなくて、単純に私がアリカのことを労ってあげたいの…………実は、自信はないけど、お弁当も用意してたんだ。フウカに教えて貰いながら、だけど」

 

 特別に背丈が高いわけじゃない。

 お酒を飲んでいる姿を見たことはないし、タバコを嗜んでいないことも知っている。

 どこか幼さも残るような可愛らしい顔をしていながらも――それでも明確に大人であると、どうしてかそんな印象を与える先生ちゃんの雰囲気は独特なものだ。

 根っからの先生気質なのかな、なんてこれまでは呑気に考えていたが、その一瞬だけは、先生ちゃんがただの女の子のように見えた。

 

「……先生ちゃん、私のこと好き過ぎでしょ」

「うるさいなぁ、もう!」

 

 照れ隠しの軽口。

 席から立ち上がって、子供のように頰を膨らませて抗議していた先生ちゃんに言う。

 

「……ほら、外行くんでしょ? ちゃんとエスコートしてよね」

「――! うん! ふふっ、お手をどうぞ、お姫様」

「……夜道で刺されても知らないから」

「急に怖いこと言わないで!?」

 

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 

「…………のどかだねぇ」

「…………そうだねー」

 

 日向ぼっこ最高。

 もうこの場所から動きたくないです。

 

「先生ちゃん、ほんとにこれ重くない?」

「全然重くない! むしろ、こっちの方が寝心地悪くないか心配かも……」

「意外とむちむちで気持ちいいです」

「複雑だけど、問題ないみたいで良かったよ」

 

 じんわりと温かい全身。

 頰を撫でる涼風。

 ほんのりとした土の匂い。

 サラサラという葉擦れの音。

 

 寝転がった瞬間だけはチクっとした芝の感触は、気がつけば、ふかふかと背中を受け止めてくれる天然のベッドへと変わっていた。

 そこに加えて先生ちゃんの申し出に甘えて、膝枕なんてものをして貰っているのだから、眠気というものが出てこないはずがない。

 フウカちゃんよりむちっとしていて、ハルナちゃんよりあったかい太腿の感触……これ、もしかして私の方が夜道に気をつけないとマズいかなぁ?

 

「ねちゃいそー」

「寝てもいいんだよ?」

「流石のアリカちゃんも、そこまで自堕落じゃありませんとも。お話相手がいないとつまらないでしょー」

「寝顔を見てるだけでも満足できるかな」

「わぁ、セクハラさんだー……まぁ、私顔だけはいいからね。あとおっぱい」

「ド直球やめようね? 否定できないのが癪だけど」

 

 私が容姿について完敗宣言する相手なんてハルナちゃんぐらいだからね。実は結構自信ありなのです。

 目一杯におめかしをしたアリカちゃんの魅力を舐めてはいけない。先生ちゃんなんてイチコロなんだから。

 

「…………」

「………………」

 

 あ、こら、無言で頭を撫で始めるんじゃないよ。普通に心地よくて眠くなってきちゃうでしょうが。

 

「…………お昼まで、寝ます」

「ふふっ……いいよ。いつも頑張ってくれてありがとね」

「………………お弁当食べたら、立場逆にするから覚悟しといて」

「――ぇ? ちょ、アリカ? アリカさん? 本気!?」

「先生ちゃん、うるさい」

「だ、だって、アリカが――」

 

 わたわたと目を泳がせて、面白いぐらいに先生ちゃんが慌てている。

 静かに、と人差し指を口元で一本立てながら、片目だけを閉じてちょっと意地悪に笑ってやった。

 

 

「皆には内緒、だからね」

「…………ッ!」

 

 

 ふはは、顔真っ赤にして黙ってやんの。

 私の完全勝利です。見たか、こんにゃろう。風呂食って寝ます。なんで負けたか起床までに考えといてください。

 

「………………あ、アロナ、今の録音――」

『勿論です!』

「ちょ、流石に卑怯だよねぇ!? 眠気、一瞬で吹き飛んだんですけど!?」

 

 その後、お弁当を食べてから二人でのんびりして、バドミントンをやってから先生ちゃんを膝枕して、夕暮れ時まで休んだ。

 

 先生ちゃんが作ったというお弁当は、所々が不格好だったりもしたが、温もりを感じる優しい味がした。

 

 何事もない平和で、ありふれた一日。

 けど、それはきっと忘れられない思い出が沢山生まれた大切な一日だった。

 

 

 

 






 

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 いつもありがとうございます。
 非常に励みになっております。





 以下、駄文。

 まさか一話まるごと先生とイチャイチャする()だけとは思わなんだ。
 実はこの二人の会話が一番書きやすいです。
 エミュが必要ないので放っておくと一生喋り続けています。
 本題は給料について、でしたが気づいたときにはイチャコラしてました。なんだコイツら仲良いな。
 Exシリーズも適度に不定期更新致しますのでよしなに。



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