拝啓、  。今日も元気にキヴォトスでニートやってます。   作:桜ナメコ

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 ACT.9 突入。シリアスは置いてきた。






ACT.9「姉戦争 ♯陰謀 ♯本能 ♯癇癪持ち」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、もう家を出るの? 随分と早い出発だね、ヒナちゃん」

 

 小さな物音。

 

 既に覚めかけていた眠りから、意識ははっきりとした覚醒を迎えた。

 時計を見れば時刻は午前5時を示していた。

 目を擦りながら、隣で寝息を立てるハルナちゃんを起こさないように寝室の外へ出る。

 そこには昨日、夕食を食べるついでにお泊まりをしていった妹の姿があった。

 ブラックマーケットで濃過ぎる半日を過ごしたことで、つい忘れかけていましたが……午前中に彼女らと一戦交えたことについて軽くお説教されたよね。お土産のエッグタルトを渡したら、複雑そうな顔で怒りを収めてくれたけど。

 

「……おはよう、アリカ。今日は面倒な用事があって、外に出るの。朝ごはんにパンとスープだけ頂いたわ。リビングにメモ書きは残したけど、フウカにご馳走様と伝えておいて」

「ん、りょーかい。気をつけていってらっしゃい」

「…………うん。行ってくる」

 

 ふりふりと手を振ると僅かに頰を朱に染めながら、妹は素直に出発の挨拶をしてくれた。可愛いものである。

 リビングにてヒナちゃんが残した手書きのメモを眺めながらぼんやりとしていると、やや少しして足音が聞こえてくる。

 

「…………あれ、アリカ? いつもは最後なのに珍しいね」

「おはよう、フウカちゃん。フウカちゃんは毎朝、偉いねぇ……偶にはお寝坊さんでもいいのよ?」

 

 まだ髪を結んでいないちょっと眠たそうなフウカちゃんのご登場だ。可愛いさから綺麗さへと魅力の方向性をシフトチェンジしているラフな格好のフウカちゃん…………端的に言って、ママ味がすごい。

 どこか幼なげなのにそれでも大人びているような、これぞ幼妻といった雰囲気の美少女は雑談をしながらも台所へと向かっていく。

 その背を追いかけながら、早く私とハルナちゃんと結婚してくれないかなぁなんていつも通りに考える。

 

「ふふっ……そのときがあれば、朝ご飯は任せるわ。それじゃ、一緒に準備してくれる?」

「もちろん! えへへっ、二人で台所に立ってると気分はまるで新婚さんだね……早起きは三文の徳って感じ?」

「はいはい。確かにね。まぁ、そろそろ慣れても良い頃合いだとは思うけど」

「まさかの倦怠期!? アリカさんとハルナちゃんの美少女力で満足できないとは、フウカちゃんも中々の強欲だねぇ」

「人聞きが悪い……!?」

「仕方ないから、アリカちゃんもそろそろお化粧とやらに挑戦してみるとするよ」

「それ、他の女の子には言わないように」

 

 のんびりとした会話。

 学食でのお手伝いと違って、私も食べる料理であるため、それほど沢山のお手伝いは出来ないが……まぁ、お皿洗いとかは頑張りました。

 

「あ、そういえば、ヒナちゃんが食パンとインスタントのコーンスープ食べたって」

「……昨日の内に言ってくれたら、朝ご飯くらい用意したのに」

「甘え下手なんだよねぇ、私の妹」

「そこはお姉さんと同じなんだ」

「んん?? え、私、すっごい甘えん坊だと思うけど!?」

「はぁ……本気で言ってるから余計に性質が悪いんだよね」

 

 ジト目のフウカちゃんが可愛い。

 何について呆れられているのかは、割と本気で心の底からわからないのだが。

 

 え、どれだけ私が贅沢な生活をさせて貰っているのかわかってないのかなぁ? 「ハルナちゃん共々、優しくし過ぎだよ!」ってお説教しても良いレベルなんだからね?

 

「よし。お手伝いありがとう、後は私がやるから、ハルナを起こしてきて」

「はーい! 承りましたー!」

 

 ハルナちゃんが最後に起きてくるのは何気に珍しい。昨日、破茶滅茶にビームとか撃ちまくっていたので、疲労が抜けきれていないのかもしれない。

 とてとて、と足音を気持ち小さめに、こんこんと寝室をノックしても返事がないことを確認してから、私はドアを開けてベッドの中にいるハルナちゃんへと声をかける。

 

「はーるーなーちゃん! 起きて、朝だよ?」

「…………?」

 

 薄らと瞼が持ち上がり、閉じる。

 まつ毛なっがい、ビジュ神すぎ、寝顔かわい――なんて思考の数々が一瞬にして脳裏を過ぎたが平常運転。特に気にせず、サラサラの髪に手櫛をかけながら、呼びかけを続ける。

 

「朝ご飯出来ちゃうよー? 冷めちゃうよー? 先に食べちゃうよー! 勿論、嘘だよー!」

 

 あっ、明らかに反応が変わった。

 流石というべきか、無意識下でも美食への執念は変わらないらしい。

 

「……ぁ、りか、さん?」

「はいはい、アリカちゃんですよ」

 

 まだ少しだけ、ぽやっとしていたハルナちゃんの瞳の中に私の姿が映り込む。

 ぱちぱちという瞬きの後、ほんのりと彼女は頰を色づかせた。

 

「…………顔が、近いですわね」

「えへへっ、モーニングコール(物理)なアリカさんですから! おはよ、ハルナちゃん」

「ええ、おはようございます。朝からお元気そうで何よりです」

「ハルナちゃんの方こそ、お体大丈夫そ? 疲れてない? ぎゅってしてあげよっか?」

「あら――では、このぐらいで。ふふっ、体調に問題はありませんわ。さ、朝食の時間としましょう。フウカさんが待ちくたびれてしまいます」

「――ッ!?!?」

 

 冗談で言ったら、すんごいスマートにハグされちゃったんだけど!? 実は、私とハルナちゃんってもう結婚してたんじゃないかなぁ!?

 

「アリカ、顔が赤い気がするけど何かあった?」

「にゃ、な、何もないですけど???」

「せめて、こっちを見て言いなさいよね……」

 

 穏やかな朝食の時間。

 ご飯を食べた後は、食後のコーヒーなんてものを皆で楽しんだ。

 毎日、朝から素敵な1日になるのが確定してるとか、さては私ってば無敵なのではないだろうか?

 

 そんなこんなで迎えた本日は、ブラックマーケットで騒動が起きたその翌日。

 のんびりと、けれどもしっかりお勤めをするために私もそろそろ出勤の準備をしないと。

 

 

 ✳︎

 

 

「よいしょっと。到着しました! うん、ばっちり予定通りの時間だね! 下ろすよ、先生ちゃん」

「あ、ありがとう、アリカ。お疲れ様」

「どういたしまして。まぁ、遠慮抜きで先生ちゃん送迎用のスピードなら、苦でも何でもないから気にしないで大丈夫だよ。多分、後5往復は休憩なしでも行けるね」

「流石すぎる……!?」

 

 現在、私はシャーレに出勤後、先生ちゃんをお姫様抱っこしたまま、アビドス高校の正門前へとやってきていた。

 先生ちゃんからはアビドスでの現地集合を提案されていたのだが、どう考えても電車を使うより私が運んだ方が早い上に安全である。

 キヴォトス内でのトレインジャック率を侮ってはいけない。過疎地域行きが確定しているアビドス方面の電車でも同じことが言えるかは、正直言って定かじゃないが……まぁ、避けられるリスクは避けるに越したことはない。

 

 移動の最中、先生ちゃんから昨日あった出来事について詳しい話を聞くことができた。

 ブラックマーケットでも簡単な説明は聞いてたけど、時間に余裕があったわけでもなかったからね。

 

 そういえば、昨日一人で豚汁パーティーに参加していたヒフミちゃんについては先生がトリニティ自治区まで送って帰ったそう。アビドスの皆は他に確認事項があったから、パーティーには参加することなくそのまま帰路についたのだとか。

 送り狼になっちゃだめだよ? なんて冗談で言ってみたら、先生ちゃんに頭をぺしりと叩かれました。

 

「カイザーローンがヘルメット団への援助金をね……ふーむ……」

「何か気になることがあるの?」

 

 現在、先生ちゃんが話してくれていたのは、彼女もまだ自分の目では確認していないという件の書類についての詳細。つまりは、あの大強盗の成果である。

 

 私の前で首を傾げる先生ちゃん。

 話を聞いている中で、ぼんやりと感じていた違和感を私は口に出す。

 

「……目的は、どこにあるのかなって」

 

 目的。

 反芻するように、彼女はそう呟く。

 

「……それは、カイザーコーポレーションの?」

「うん。私たちが初めてアビドスに来たとき、アビドスの皆は弾薬不足で困ってたって言っていたけど……やっぱり何度考え直しても、あのヘルメット団の攻撃だけで皆が敗北するとは、思えないの」

 

 苦戦ぐらいはするかもしれないが。

 キヴォトスにやってきてそう長くはない私だが、風紀委員会の皆や美食研究会の皆と過ごしている内に、その人の『◽️◽️』を肌で感じ取れるぐらいにはなってきた。

 ぞわり、と背筋にはしる悪寒。

 或いは、気圧されそうになるほどの威圧感。

 ヒナちゃん、ワカモちゃん、そして蒼の輝きを銃に宿したあの瞬間のハルナちゃん。

 私が遭遇した中では、分かりやすく抜きん出た戦闘能力を持っていた彼女たちは皆、ある一定以上の風格を携えていた。

 

 そして、もう一人。

 その中で誰よりも強く鋭く、ともすれば殺気とも言えるほど別格の圧を私のすぐ隣で放った少女が、もう一人いた。

 

 今でも簡単に思い出せる。

 

『……お前、その子に何するつもり?』

 

 冷たい声。

 遊びも油断もない絶対的なまでの強さを孕んだその一言は、確かに私を守るために放たれたものだった。

 

 確認の意を込めて、小さく頷く。

 きっとこの推論に間違いはない。

 

 あのヘルメット団がどれほどの軍資金を用意したとしても、小鳥遊ホシノが健在である限りアビドス高校に敗北は有り得ない。

 

 だからこそ。

 

「あの襲撃には別に狙いがある、はず……それも、アビドスの皆の戦力を削ぐ以外のものが」

「言われてみれば確かに……となると目的は妨害……それとも、陽動?」

「そこまではまだなんとも。カイザーなんとかさん、だっけ? そこの情報がないことには始まらないってとこじゃない?」

 

 底の見えないような不快にも感じられるほどの違和感。現状の停滞が既に相手側へと何らかの利益を与えているのだろうか? 

 これ以上は考えても無駄だと自分で口に出しておきながら、まだ悪足掻きを続けようとする自分勝手な頭を横に振ってから、そっと息を吐き出した。

 それから努めて明るい声で、まだ何かを考えている先生ちゃんへと声をかける。

 

「さ、そろそろ行こっか。難しい顔してると、皆に心配されちゃうよ!」

「――! うん、そうだね。行こう」

 

 思いの外小さい彼女の手をとって、部室のある校舎を目指す。ぱちくりと瞬きをした後、先生ちゃんはいつも通りの素敵な笑顔を浮かべて歩き出した。

 

 

 ✳︎

 

 

 

「おはよう、皆! ――っと、あれ? ホシノのおじさまってば、今日は随分とリラックスモードだね」

「ん〜? おはよー、アリカちゃんに先生。ノノミちゃんのお膝はおじさん専用の特等席だからねー。こればかりは、アリカちゃん相手でも譲れないかなー」

 

 部室に入ると、ほにゃほにゃの笑顔でノノミちゃんのお膝を枕にしたおじさまが挨拶を返してくれた。二人以外の皆の姿は見当たらない。

 

「もう、また先輩はそんなこと言って……先生、アリカちゃん、おはようございます。二人とも今日はお早いですね」

「アリカに送迎をお願いしたからね……おはよう、ホシノ、ノノミ」

「私が送迎しました! どやぁ……!」

「ふふっ、流石アリカちゃんですね! よしよし、しちゃいます」

「えへへっ、それほどでも〜」

 

 相変わらずの撫で撫で上手!

 今日も今日とて気を抜いたら赤ちゃんにされてしまいそうなママ味を感じるノノミちゃんです。一日の間に二人の女子高生からママ味を感じてるとか何その事案、超恐ろしい。

 話を聞くと、どうやら今日は自由時間ということになっていたようで、シロコちゃんはトレーニング、アヤネちゃんは図書館で勉強をしているのだとか。ノノミちゃんが校舎のお掃除&おじさまのお世話をしていたようで、おじさまといえば休暇を満喫していたらしい。その割にいつ見ても疲れが溜まっている気がするのは何故なのだろう。

 

「よいしょっ、と。さて、それじゃおじさんはこの辺でドロンとさせてもらうよ。二人が来たなら、皆もすぐに来るだろうしねー」

 

 起き上がったおじさまは、なんてことのないようにそう言って、スタスタと出口へと歩いて行く。

 

「何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん。おじさん、その辺でてきとうにサボってるからさ」

 

 ぱたん、と音がして。

 

「あっ、本当に行っちゃった」

「おじさまも気まぐれだねぇ……」

「えっと……ホシノ先輩は、またお昼寝の時間、でしょうか?」

 

 困ったように笑うノノミちゃんと、呆気に取られて声をかけることすら出来なかった私たちだけが部室には取り残された。

 

「…………先生ちゃん。私、お手洗い行ってくる」

「え、うん……場所わかる?」

「多分、おっけー」

 

 やや少しして、部屋を退出する。

 

 ノノミちゃんは、気を張り過ぎていた気質のあったおじさまの雰囲気が柔らかくなってきている、なんて話を教えてくれた。

 きっと先生を、シャーレのことを信用してくれているのだと。

 良い話であるはずのその話を聞いて、私はつい先程のおじさまの言葉を何故か思い出していた。

 

『二人が来たなら、皆もすぐに来るだろうしねー』

 

 勘違いならそれでいい。

 カイザーの企みについて考えていたせいで、思考が疑り深くなってしまっているという可能性は十二分に考えられる。

 けれどこの推測が正しければ、きっと彼女は昼寝などしていない。

 

「二人が来たなら、は確認のため。私たちを信頼してくれているからこそ――あの子は自分が離れても問題ないことを、確認する必要があった」

 

 窓を開けて、外に出る。

 砂が入り込まないようにきっちりと窓を閉めてから翼を広げた。

 砂を蹴りつけ、空中へと向かう。

 

「校舎を迷ってたことにするとして……長くても10分で切り上げようかな」

 

 正直、理性は言っている。

 これは私の考えすぎだと。大した根拠はないはずだと。

 反面、本能が……この身体に眠る衝動にも似た何かが言っているのだ。

 あの子から――ホシノちゃんから目を離すなと。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

「……準備は完璧。今日を逃せば、次の機会がいつになるのかはわからない……! ええ、そうです! これは、あの悪女を委員長から引き剥がす最大のチャンス……!」

 

 どこか焦点の合わない澱んだ目をした彼女は、乱れた呼吸を繰り返した。

 その度に彼女が悪女と呼んだ相手から『防御力どーなってんのさ、それ』と称された服によって強調された豊満な胸が上下に揺れ動く。

 

「イオリ、今伝えた通りです。作戦通り、便利屋を捕らえてください……邪魔をする者がいれば、構わず身柄を拘束して結構です。それが、誰であっても、です」

 

 手に持った資料で潜在的な危険分子と評価を下されている美少女の写真には、赤ペンで丸がつけられていた。そのすぐ隣には補足の注意書きとして、丸をつけた彼女自身によって密かに書き込まれた情報が※をつけて記載されている。

 

 夢語アリカ 

 経歴不明。所属学園なし。

 連邦捜査部シャーレ(『先生』が主導する連邦傘下の組織。不明点多数)に所属。

 美食研究会との繋がりが強く、給食部部員の誘拐に実行犯として関与する。

 ※空崎ヒナを相手に無傷の逃亡を成功させている数少ない事例。脅威度は未知数。可能な限り早くの拘束、尋問を要する。

 

「……絶対に逃しませんよ、夢語アリカ!」

 

 どう見ても、視野が極度に狭まっているゲヘナ学園の行政官――天雨アコを眺めながら、雑務を処理していた他の風紀委員は、皆同じことを考えていた。

 

(((今度、アリカちゃんに渡す用の菓子折り用意しておこう)))

 

 夢語アリカ――今や、丹花イブキにも引けを取らないゲヘナ学園のアイドルである。尚、なぜ、彼女がゲヘナ学園所属でないのかは誰も知らない。

 

 

 







 感想評価誤字脱字報告、いつもありがとうございます。
 本当に、忙しさの合間を縫って小説を書くモチベになります。

 月に一回はなんとか……って感じです。筆が乗ればもしかしたら? びっくりするほど忙しい。亀更新ですが、許してクレメンス。


 以下駄文 メタ要素あり


 
 アリカ:気づけばアイドル。アホだがバカじゃない。感情面に寄り添う推察が殆どで、スピリチュアル要素あり。恐らくリオと真反対に近い理論で予測を立てている。
 
 ハルナ:ちゃんと目を覚ました後に、大胆なことをしたと悶絶。先日の無茶の反動で肩こりが強くなった。
 
 フウカ:ヒナが不摂生の子供に見えてきた今日この頃。

 ヒナ:ただ今出張中。温かいごはん、美味しい。

 先生:何とは言わないがお姫様抱っこのときすごかった。胸が。
 
 おじさん:心が汚れちまった17歳。手加減がデフォの人。

 ノノミ:この後、膝枕をする。メモロビまで待たない。

 アコちゃん:ただいま暴走中。可愛い。



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