拝啓、 。今日も元気にキヴォトスでニートやってます。 作:桜ナメコ
お久しぶりです。
お仕事しながら小説書くのってこんなに大変なのですね?
改めて、社会人の方々尊敬する気持ちでいっぱいです。
リハビリがてらに文字数少なめですが、どうぞ。
アビドス二章編 最終ACTの予定です。
序だけめっちゃ短いとか普通にあり得ますが、気にせずどうぞ。
時を少し遡り、場面はこの白鯨騒動の発端へ。
その日、当初の予定通り砂漠の調査へ出向いた私たちを出迎えたのは、何やら採掘場のような物々しい拠点を構えたカイザー何某理事様の御一行であった。
「ほう、一報を聞いて来てみれば……まさか、本当にバカ正直に現れるとは。先生というのも名ばかりの愚者に過ぎなかったか。実に嘆かわしい」
機械頭。
嗜虐の色を無機質な赤の瞳に載せた、肩幅の広いスーツ男は、そんな不躾な言葉を投げ飛ばしてくる。
「……わーお、お手本のような悪人顔だね」
「アリカ、そういうのは思っても言わないのがマナーだよ」
「それこそ口に出したらおしまいなんだよね、先生ちゃん」
さては、意外と頭にきてるなこの人も。
アリカさん的には人間らしくて素晴らしくよきだと思いますが。
じろり、とこちらへ視線が向けられる。
「……貴様は、いやいい。私にはもう関係のないことだ。さて――君たちの用件を聞いてやろう。義理も道理もないが、この先、ただ終わりを待つだけの哀れな学生諸君に、これ以上の追い討ちをかけるほど、私も大人気なくはないのでね」
アビドス側としては不法と見える砂漠地帯の占拠、及びその下手人の正体。
勿論、それは想定済み。
直情的な面のあるセリカちゃんや、見た目に似合わず喧嘩っ早いシロコちゃんが冷静に状況を伺っているのを横目に、先生ちゃんの脇腹をつつく。
手筈通り、まずは下手に刺激を与えずに彼らの目的を探るところから、そのプランで問題ないかを確認しようとして――
「――終わってなんかないよ」
呼吸が止まった。
次の瞬間、仕方ないなぁ、なんて呆れで頬が緩むのを自覚する。
「まだ、何も、終わってなんかない。訂正してもらえる?」
「……期待ハズレも良いところだな」
「勝手に期待されてもね。私は、ただの一人の大人でしかないよ」
冷静に、堂々と。
きっと◽️◽️たちの前だからと、この先も彼女は彼女であり続けるのだろう。
アビドスの皆が思い思いに笑顔を浮かべる様をみて、困った人だと息を落とした。
「……もういい。私の間違いだった。貴様が裏についたと聞いたからと、こうも回りくどく計画を進めていたが、もう十分だ――端から、あの男の言葉など信じるべきではなかったというわけだ」
わかりやすく苛立ちを露わにしたカイザー理事が、携帯を取り出す。
「終わっていない、か。よほど現実が見えていないらしい。資金がなければ、土地もない。まともに生徒すらいない。君たちがまだ終わっていないと錯覚しているのは、単にその必要性がなかったというだけの話だということが、何故わからない? いつでも、好きなようにできるだけの力がこちらにはある……どうやら、一度身をもって味わって貰わねば理解できないようだな」
カイザー理事がたった数十秒、どこかへ電話をかけた後に嘲るような笑みを浮かべて、彼の信じる力とやらを披露してくれる。全くもって嬉しくないことこの上ない。
「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ。ふはは、計画通りでは、あるのだがね」
機械頭のくせに、随分と粘着質な笑い方をするものだ。久しく忘れていた他者への嫌悪という感情を思い出した気がする。
「――ッ、お前」
「まさか……!?」
カイザー理事の発言の意図を瞬時に理解したのは、ホシノちゃんとノノミちゃんの二人だった。
彼女らは直ぐにアビドス高校で通信支援を続けてくれていたアヤネちゃんへと、確認の連絡を入れようとして。
『……ぇ? うそ、なんで!? どうして、ま、待ってください!』
普段は冷静な、少女の叫び声を聞く。
ガチャリと重なったのはリロードの音。
シロコちゃんとセリカちゃんが今直ぐにでもと、臨戦態勢をとっており、私たちを囲んでいたカイザー何某の兵隊たちも呼応するように、応戦の構えを見せていた。
「くっくっくっ、無駄な抵抗はよせ。ふむ、カイザーローンの信用ランクが最低となれば、変動金利は3000%を超えてくるはず。来月以降の利子は、幾らだろうな? 九千万か、或いは一億か。こんな所で遊んでいる暇はあるのかな?」
上機嫌に彼は告げる。
これが、大人の力なのだと。
決着は既に着いているのだと。
故に、それはこの場に居た誰もが予想だにしなかった衝撃の事実として明かされた。
『――ろ、です』
「……? アヤネちゃん、今なんて――」
『そ、その、私たちの、アビドスの借金が……既にゼロだと』
「「「…………え???」」」
「な、ん、だと?」
一同の困惑による沈黙を間に敷きながら、心当たりしかない二人はついと目を合わせ、
「……! ふふっ、粋なことするじゃん」
「うへー、自分勝手なやつだなぁ……半分くらい、マッチポンプな気はするけどさ」
砂漠のどこかで、異形なる紳士のくしゃみが聞こえたような気がしたが、流石に気のせいに違いない。
とはいえだ、流石というべきか、カイザーの理事が正気を取り戻すまでに要した時間はそれほど長くはなく、
「……借金が返済されている、だと? 待て、何故そのような重要事項を私に伝えなかった! いや、そもそも誰が、どうやって――貴様か、先生」
「……え?」
見当違いの考察で、彼が再びヒートアップしたのは、その直後のことだった。
うん、ぜんっぜん正気じゃなかったね?
「なるほど、一杯食わされたのはこちらの方だったというわけか。確かに、貴様の力をもってすれば、たかだか高校一つの借金返済など容易だろう。なんせ、このキヴォトスにおける生徒の全てを統べていると言っても過言ではないのだからな――道化は私の方だったか。良いだろう、今一度、貴様を私の敵と認めよう」
「…………えぇ?」
一度、平常心を乱したカイザー理事の暴走が止まらない。
完全に訂正の機を逃した先生ちゃんが、困り果てている様子を、こっそり面白がっていると頰を引っ張られてしまう。いひゃい。
「ホシノちゃん、統率よろ」
「ん、そっちは可能なら、目的だけでもお願い」
「はいはい、りょーかい」
多少なりとも混乱しているのは、こちらも同じ。アビドスの皆を落ち着かせるのは、ホシノちゃんに頼むとしてだ。
いい加減、本来の用件を果たさなくては。
「理事さんや、理事さんや」
「……なんだ、夢語アリカ」
「おっと、自己紹介はいらない感じだね? 話が早くて助かるよ」
さては黒さんってば、勝手に人のことペラペラ喋ったなぁ?
成果としては、実際の位置と規模を把握できただけでも上々だ。正直、大人しく撤収でも良いのだが、折角ならば相手の意図ぐらいは盗んで帰りたい。
「用件を聞こう、ってさっきどしっと構えて言ってくれた話ってまだ有効です? 純粋な好奇心からで悪いんだけど、私、こんなに辺鄙なところで理事さんたちが何してるのか気になります!」
「緊張感のないやつだな、貴様は」
「ん、場を朗らかにする天性の才だって? 先生ちゃん、この人褒めてくれてるし、意外と話せる人かもよ?」
「全くもって、言ってないが」
「こら、懐かないの」
あらま、珍しい。
先生ちゃんからのバックハグとは、役得ですね?
ここから離れないようにと、引き止めるように抱え込まれる。仕方ないので、先生ちゃんの腕の中でぬくぬくするとしましょうか。
「……生憎と時間がない、が簡潔な答えぐらいならば良いだろう。邪魔をするな、という警告と受け取ってくれても良い」
そして、男は言う。
「私たちはね、この砂漠に眠る『宝物』を探しているのだよ」
「ほえー、タイムカプセルオチだったりしないといいね?」
「貴様、本当に緊張感がないな」
「えへへ、それほどでも」
「断じて褒めてない」
✳︎
「…………で、金じゃ脅せなかったから、次は土地ですかい。強制立ち退きに、強行して再開発開始とか、完全に挑発してきてるじゃんね?」
「……ただでさえ少なくなっていたアビドスの市民たちが、どんどん街から離れてしまっているようで――皆さん、ここが引き際だと」
やっぱり、私あの機械頭のこと好きになれないかもなぁ。根っこの腐れ具合はともかく、泥臭さとか執念とかは悪くないとは思うのだけど。
学校に戻った私たちを待っていたのは、何やら複雑そうな渋面を浮かべたアヤネちゃんだった。
長年の悩みの種であった借金問題があっという間に解決したと思えば、今度はカイザー何某が物理的にアビドス自治区の追い込みに注力し始めたのだ。無理もない。
「困りましたね……うーん、もう一度、連邦生徒会に相談してみるのはどうでしょう?」
「ノノミ先輩には悪いけど、私は反対。期待するだけ無駄よ、無駄! これまで散々、助けを呼んだのに今更、助けてくれるなんて思えないわ」
「……んー、私もセリカちゃんと同じかなー。それに今回は、向こうの言い分が完全に正しくないとも言い切れないからねぇ」
土地自体の所有権が、合法な手続きを経てカイザーの手に渡っているのは事実である。
倫理観どーなのさ、とか、キヴォトスでは曖昧な面もある法的観点を差し置けば、大義を掲げてカイザーに歯向かうというのも難しい現状だ。
時は既に夕日が沈もうかといった具合。
疲労からか、絶妙に回りきらない頭を悩ませながら、ポケットからラムネを取り出し、一粒、口に運ぶ。
この前、アコから「別にあなたが疲れてそうだったから、とか思っていませんからね! ただの余り物です!」と何故か怒られながら押し付けられた未開封のものだった。
「自治区を守る、それがアビドス高校としての権利……義務、なのかなこれ? で、今回のケースだと、その『自治区』がどこまで適応されているのかが不透明な限り、強引に攻め込むなんて手段は向こうの思うツボだよねって話か……違法行為だ、何だかんだと賠償金とかふっかけてきそうだし」
そこら辺どーなのさ、なんて先生に目線を送れば、苦い顔。どうやら分が悪いのはこちらの方らしい。
コホン、と咳払いしたのはアヤネちゃん。
純粋な知識量、という点でこの場にいる誰よりも優秀な彼女に全員の視線が集中する。
「ひとまず、こちらからのアクションは置いておきましょう。まずは向こうからの要求についてです」
空気が一段階、張り詰めたものになる。
ただひとり、にへらと笑った少女へと釘を刺すように、シロコちゃんが言葉を繋ぐ。
「――小鳥遊ホシノの身柄、及び所属権をカイザーに引き渡せ、だよね」
「えへへ、おじさんってば人気者で困っちゃうなぁー」
「ふざけてる場合じゃないでしょ!?」
「うん。これはホシノ先輩に見張りを付ける必要がある」
「そうですねー、しばらくは毎日誰かとお泊まりするのがいいかもですね♣︎」
「あれ、おじさんってそんなに信用なかったかな?」
すっごい勢いで詰められているおじさまから、無言でSOSの訴えを送られたので、素知らぬ顔でラムネを摘んだ。ん、美味しい。
「この裏切り者ー!」
「自業自得ですー、人のバッグは漁ったらダメだよって、きちんと後輩ちゃんに教えとかない方が悪いと思うかな」
「……へ???」
あ、先生ちゃん、多分今から騒がしくなると思うから、アリカちゃんとお外デートしましょう。砂漠の星は綺麗だからね。
「いい性格してるよね、アリカ」
「よく言われるなぁ」
いや、うん、ほんと。
これに懲りたら、反省しといて貰いたいよね。
感想評価、誤字脱字報告
いつもありがとうございます!
小説自体はすこーしだけ書いていたのですが、どこまで端折るかで難産してました。生存報告半分の更新です。
以下、いつもの駄文 メタあり
久しぶり&アビドスサイドの話で、アリカさんの真面目モードが中々解けなくて違和感でした。まあ、前から割とこんなもんだったはず。
退部届けについては白紙だとは思うけれど、ホシノの自罰的な面考えると、ある程度前から、現物で選択肢として用意していそうだなぁって妄想と、ぶっちゃけここでホシノの面倒なところアビドスの皆にちゃんと認識しといて貰わないと、後々に響きそうだなって脚本的都合も少しあって投入。シロコちゃんから相談あったってイメージかな。わざわざ、書かなくても良い文脈な気がして、ここで回収。
便利屋周りとファウストさん助力あたり回収するのむずくなーい?とか思っているのは内緒です。雑プロットがよぉ。
アリカ:ラムネ美味しい
アコ:ラムネを渡した後、丸一日は絶好調だった
シロコ:やっと文句言える 実はキレてる
ノノミ:共有はされてた 多分一番キレてる
セリカ:共有された時に爆発済み まだキレてる
アヤネ:カイザーからの要求聞いて、絶対に一人にさせないようにとだけ考え続けてた人。たぶん、監禁とか束縛とかに適性ある(偏見) 普通にキレてる
ホシノ:処される人
先生ちゃん:まあ妥当。三分後にラムネあーんして貰う人