拝啓、 。今日も元気にキヴォトスでニートやってます。 作:桜ナメコ
気づけば評価がビックリすることになっていて、困惑。
遅筆なりに評価、感想の応援ブーストに背を押されて頑張れています。
書き溜めがない上に、プロットは結末しか決まっていないので気合いで書きました。
気軽に応援よろしくお願いします!
誤字報告もありがとうございます。非常に助かっています。
「わーい、アカちゃんってば太っ腹〜! 本当に挑戦してもいいのー? 後で怒るのとかナシだからね?」
「ふふっ、そんなつまらないことはしませんよ。リカさんの勇姿、しっかりと目に焼きつけちゃいますから」
アカちゃん、リカさんと互いを呼び合うその仲良し美少女コンビこと鰐渕アカリと
ゲヘナ自治区で無事に経営が出来ているという時点で、その店がある一定以上の水準に達していることは言うまでもない。
そこは大食いの挑戦は一人につき週に一度までという基準を設けていたことで、どこぞの大食い金髪娘の被害に遭うこともなく、寧ろ良い顧客として付き合うことのできている稀有な食事処の一つでもあった。
「おっと、アカリちゃんじゃないか。珍しく、今日は連れが居るんだな」
「ええ、こんにちは。本日はこの子と二人でいつもの挑戦メニューをお願いします、店長さん」
店長さんと呼ばれたモッフモフな黒柴系の獣人さんは、慣れた様子でリカさんと挨拶を交わした後、驚いた顔で私を見る。
「嬢ちゃん、そんなに食べれるのか? 小さい体でよく食べるもんだ」
「食べれる時に食べておくことの大事さを学んだばっかりだからね……お腹いっぱいご馳走になります!」
「食べきれなかったときは私が代わりに頂いてしまいますから、心配はご無用です」
「ははは、確かに。当然、そのときの挑戦は失敗だが、アカリちゃんがいれば後始末には困らないな」
さてはて、いい加減、この現在に至るまでの事情説明でも挟んでおくべきか。
まぁ、会話の流れから私が今アカちゃんとデートをしている件については把握して貰っているとして、気になるのはその経緯――ゲヘナ学園の学食にてアカちゃんが私を颯爽と助けてくれた直後辺りの出来事だろう。
ということで早速、回想へとGO!
…………その間、私は想定の5倍以上の量で提供された特盛天ぷら蕎麦への対処法でも考えることにしよう。
やっばい、これ早まったかなぁ!?
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「多少潔癖な性があるとはいえ、私はハルナと比べてそう神経質な方ではないですけど……」
「……ッ、何でお前が――邪魔をするな、鰐渕アカリ!」
「やっぱり、少しだけ騒ぎ過ぎですかね★」
銃声が二つ。
程なくして、一人の生徒が食堂を去った。
「二人とも、怪我はありませんか?」
纏っていた威圧感を消して、彼女は私たちに朗らかな笑みを向けた。
瞳の色がピンク色から青色に変化したような気がしたのは恐らく気のせいだろう。
「……えっ、アカリ? 何で?」
背後に居たフウカちゃんが私の背中越しに驚いた顔を覗かせる。
正確に言えば、フウカちゃんの方が私よりも背が高いので、私が広げていた翼を避けるようにしてひょっこりと顔を出したような状態である。この子、何やっても可愛いよなぁ。スーパー美少女な私が言うのだから間違いない。
「えっと、アカリちゃん……で合ってるのかな? 助けてくれてありがとう」
「ふむ……なるほど。ふふっ、どういたしましてです」
どこか含みを感じさせる小さな頷きを挟んだ後に、彼女は名前を尋ねてきた。
どこかで会ったことがあるのだろうか、なんて考えてはみたのだが、ハルナちゃんに拾われる前の記憶は割と朧げなので思い出せそうにない。
とりあえずは初めましての挨拶を済ませてしまうことにしよう。
「私は夢語アリカ。ここの生徒……というわけじゃないんだけど、仲良しのフウカちゃんが大変そうだったから勝手に手伝ってるとこです」
「フウカさんの知り合いの方でしたか……とりあえず、無事ならば良かったと言いたいところなのですが……フウカさん、アリカさんをお借りしてもいいですか?」
「あれま、大胆なアプローチだね。仲良くしてくれるの? 私としては嬉しい限りだけど」
何といっても友達が少ないからね!
友達どころか知り合いすらまともに居ないのだから、話し相手が増えることに歓喜以外の念はない。もちろん、友好的な相手に限るが。
「急にそんなこと言われても……ああ、確かに。これだけ騒げば…………うーん、私はここを動けないし……それじゃあアカリ、アリカのこと任せてもいい?」
保護者役のフウカちゃんは何かに気がついたのか、始めに見せた迷いなど無かったかのような素早い判断で、私の身柄をアカリちゃんへとぶん投げた。
もう少し渋ってもいいんだよ? なんて冗談を口にしたいところだったが、我慢である。割と真剣な顔してたし。
「はい、任されました。では風紀委員会が到着する前に失礼するとしましょう。アリカさん、着いてきてください。フウカさん、トラックを借りますよー」
「……え? ちょっと? 本気!?」
「トラック!? 初めて乗るかも! アカリちゃん、運転できるの? 私も出来るらしいから、大変そうなら代わってあげるね!」
「うーん、そこはかとなく不安なので、今回は遠慮しておきますね★」
「…………あー、もう! 乗ってもいいけど壊さないでよ! はぁ……私、アリカに弱いわね」
斯くして、私とアカリちゃんは給食部所有のトラックに乗って二人でデートを始めたのである。
え、何? デートというより逃走劇の方が近い? 正論とか聞きたくないからやめて。
冷静になると風紀委員会から逃げるっていうのも変な話だよね? 確かに私やアカリちゃんが、風紀が乱れてもおかしくないくらいの美人さんなのは否定しないけどさ。
呼び方について?
アカリとアリカって構成材料が100%一致してるから、わかりやすくしたいよね!って話をしたら、いつの間にか変わってました。
友達みたいでいいよねっ! なんだか、ちょっと照れちゃったぐらいだもの。
✳︎
「…………! …………!!!」
小さなお口で蕎麦を啜ると、その少女は目を輝かせて何度も頷きを繰り返した。
ぴょこぴょこと翼が小さな羽ばたきを繰り返しているのは、きっと無意識のことなのだろう。
見ているだけでお腹が膨れてくるようなそんな少女の食事姿を見て、アカリはこっそりと頰を緩めた。
美食研究会の中で、最も美味しそうに食事をするのはジュンコだろう……いや、ゲテモノに関してはイズミが圧倒的なのは別としてだ。
何かと不運なジュンコは、他のメンバーに比べると無事に美食を堪能できる機会に恵まれていない。
だからこそ、その機会が与えられると彼女は満面の笑みでその美食を享受する。アカリやハルナと比べて、感情が表に出やすい性格をしているということもあるのかもしれない。
そんなジュンコと比べても、だ。
「……本当に、幸せそうに食事をする人ですね」
「…………? ……ん、何か言った?」
夢語アリカという人間は、心の底から食べる喜びを最大限に味わっているように見えた。
これまでに会った誰よりも。
この先、彼女の上を行くものは現れないと断言したくなるほどに。
「あっふはふ…………! 美味しい! すっっごく美味しいよ、この天ぷら! 特に白身魚の天ぷら! こんなにふわふわなの、初めて!」
「茄子天! 茄子天も好き! あっ、ピーマンも! もちろん、海老も!って、これじゃ全部になっちゃうね……? えへへ……でもでも、本当に全部美味しい! もっと私に語彙力があれば、この感動を余さず伝えられるのに……!」
「お蕎麦も風味が立ってて美味しいね……普通に全部食べきれちゃいそうで、びっくりしてるアリカちゃんだよ。ちゃんと蕎麦湯まで楽しめちゃいそうな勢いだね? 我ながら驚きです」
この子、フウカさんに返さずに手元に置いておいちゃダメでしょうか?
そんな思考が脳裏を過ぎる程度には、アカリは心地の良い時間を過ごすことができていた。
ハルナが美食の追求において最も重視している観点でもある「誰と食べるか」の理想を体現しているような存在が目の前にいるのだ。
多少の欲が出てしまうのは仕方のないことである。
「ご馳走様でした。店長、少しお話が……」
「わかってる。あんだけ、味わって食べられちゃ仕方ない……制限時間については見なかったことにしてやるさ」
「あら、いいのですか? お代の用意はありますが……」
「いいんだよ。料理人冥利に尽きる……そんな風に思わせてくれる客ってのも、中々貴重なものだからな」
店長さんと会話をしていると、こちらに気がついた彼女が食事の手を止めて首を傾げてしまっていた。
「あ、アカちゃん、食べ終わるの早くない!? えっと、ちょっと待っててね。私も出来る限り急いで味わって食べるから――」
「大丈夫ですよ、リカさん。ゆっくりと召し上がってくださいね。店長、大盛りの天ぷら蕎麦、追加で注文です」
「ほぇー……アカちゃん、いっぱい食べるんだねー? いいじゃん。私、好きだよ。たくさん食べる女の子」
「あら、そうですか? なら、良かったです」
とても嬉しいことを言ってくれる少女だったが、流石に、既に昼食は学食で済ませたつもりであったとは伝えないことにしたアカリであった。
✳︎
美味い。美味すぎる。何これ、美味しい。
外食でフウカちゃん並みのご飯とか、感動ものなんだけど!? というか、美味い。ビックリするぐらい美味い。それしか言えんのかとツッコミたくなるぐらいには美味い。
で、多分、この店めちゃくちゃお値が張る。
店内のどこを見ても値段書いてないし。
器とか箸とか全部やけに質が高そうだったし、粗野な風な態度を取っている黒柴店長もよく見たら毛並みツヤッツヤだし!
「美味しかった、美味しかったけど……これだけ食べといて今更って感じなんですけど……本当に、奢って貰ってよかったの? いや、他に選択肢があるかと聞かれたらないんだけどね?」
特盛天ぷら蕎麦を完食した私は、満腹になったお腹を摩りながら何故か上機嫌なアカちゃんに疑問を述べた。
何か他に目的があるのでは? 手伝って欲しいことがあるなら断らないよ、と。
暗にそう伝えたつもりだったが、アカちゃんはニコニコしたまま「遠慮しなくても大丈夫ですよー」と私の頭を撫でてくるのみである。
くそぅ、せめてお金稼ぎが出来る身体だったなら、そんなn回目の文句をボヤきつつ、何かできることがないかを考える。
「では、また私とのデートに付き合ってください。それで如何です、リカちゃん?」
「何そのご褒美、本気で言ってる?」
「…………ふふっ、あまり簡単に冗談を言っちゃダメですよー? 油断してると、直ぐにパクッとしちゃいますからね?」
あ、なんか今ゾクってきた。
何一つ冗談なんて言ってないけど、気をつけよ。
別に嫌な感覚ではないけれど、多分軽い気持ちで慣れちゃいけない感覚である。
「……おや、ジュンコさんからですか」
「あれ、用事でも入った? 学園に戻る?」
「……そうですねー。知り合いが足を探しているみたいなので、ちょっとだけ寄り道をしてから帰りましょうか。お会計いいですか、店長さん」
「あいよー」
金額については深く考えないことにした。
貰った厚意は、態度で返す。
多分、その方が遠慮なんかするよりはよっぽど喜んでもらえるはずだから。
受け取った分以上の何かを彼女に返してあげられるといいのだが、まずはそれを見つけることからになりそうだった。
そうして店を出た。
給食部のトラックに乗り込んで、アカちゃんの運転で目的地へと向かう。
何でも、付き合いの深い同好の友人たちを迎えに行くとのことだった。
友達を増やす大チャンスの到来だ! なんて意気込んでいると、アカちゃんに笑われてしまった。
「……うーん、この辺の洋食レストランのはずなんですけど」
十数分ほど車を走らせた頃。
もう少し詳しく話を聞いてみましょうか、とアカちゃんがスマホを取り出したときだった。
チュドーンッ! という爆発音が近くから聞こえた。
直後、地面に振動が伝わり、周囲から叫び声が上がる。
「なるほど、あそこですか!」
アカちゃんはハンドルを豪快にきって、進路を爆発の起こった方向へと切りかえた。
「え? え? なんで? 危ないよ、アカちゃん!?」
「ふふっ、大丈夫です。一応、車体に身を隠せるように心の準備だけしてくださいねー」
「それ、全然大丈夫じゃないよね!?」
アカちゃんは穏やかそうな笑顔の割に、かなりアグレッシブな性格をしている。
食堂で助けられたときからそれは知っていたつもりだったが、所詮その認識はつもりであったに過ぎなかったことを思い知る。
推定テロリスト犯が暴れているであろうその場所に迷いなく突っ込んでいく精神は、見習って良いものか正直判別に困るところだった。
トラックが止まる。
私が怯えながら車体の陰に隠れようと車の中で縮こまっていたときだった。
「もう、遅かったじゃない! 早く逃げないと風紀委員がやってきちゃうわ!」
「そうだよ! 早く逃げないとー!」
勝気そうな女の子と、どこかのんびりしている女の子の声が聞こえてくる。
話の流れ的には彼女らが爆発を引き起こした張本人ということになりそうだが……アカちゃんって、割とヤバめな人だったりする?
「ほら、ハルナも! いつまで、ぼうっとしてるのよ!」
「…………そう、ですわね。わかっていますわ」
勝気そうな女の子がハルナちゃんを急かす。
その声に応じるハルナちゃんの声音からは何故か活力が感じられない。
何かに戸惑っているような、そんな印象を受ける反応――って、ハルナちゃんだって!?
「アカリさん、お迎えありがとうございます」
「いえ、私も丁度、フウカさんから車を借りている所でしたから」
聞き覚えのない声の二人は荷台の方へ。
となると助手席へとやってくるのは当然――
「…………あ、アリカさん!?」
「あ、あははは……ど、どうも?」
……あれ? もしかして、ハルナちゃんってただの聖人様じゃない?