目が覚めたら、優しい人に拾われた 作:とくめーってべんりだよね
目の前が真っ暗になる、ああ、またこの感じか。何度目になるんだろうか。死にかけるの。
体に力が入らない。うーん、今回は本当にやばそうか?
《確認しました。神経不要な身体を作成……失敗しました。代行案として、ユニークスキル
……そうだ、三度目だ。ははは、二度あることは三度あるって言うし、案外今回も生き返るかもしんないなぁ!
《確認しました。ユニークスキル
………………。
そうか、死ぬんだなぁ……最後くらい、やりたいことがしたかった。つっても何がしたいとか覚えてねぇんだけど。
仕事に追われ過ぎて全部全部忘れちまったよ! 泣けてきそうだ!
《確認しました。ユニークスキル、
あっはっは、忘却者で消え去る者ってか、座布団一枚……って誰だなんだ今の。……まいっか、どうせ死ぬんだし。
何がしたかったんだっけ、俺。仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事……んで、倒れて、迷惑かけて負担増えてを繰り返して。
……ああ、腹減ったなぁ。なんでもいいから沢山食べてぇなぁ。時間も、他人も気にしないで。
《確認しました。ユニークスキル捕食者を獲得……成功しました》
焼肉、寿司、ピザ、ラーメン……ああ、ダメだダメだ。想像すればするほど腹が減ったように感じちまう。どれも食べられないってのに。
……うちの床って、食えるか? ワンチャンいけるかもしんねぇ。
《……確認しました。ユニークスキル捕食者を変成……成功しました。ユニークスキル
ははは、悪食ってなんだよ、笑えねぇ。ハイエナかよ、俺は。
ハイエナなんかより、狼の方が俺は好きだっての、かっこいいし。
《確認しました。該当する生物の身体を作成します》
……やっぱり気になるな、どちら様?
《……》
あ、そう事務的なのね。知ってた。
俺みたいな陰の存在にゃあ、こういう人は触れ難いものである。
《確認しました。該当する生物の身体に、影の特性を付与……成功しました》
あー……意識が消えていく感覚……これが死ぬって……こと……なの……かぁ……。
『……ゥ』
目を開けると、人間がいた。
「目が覚めた?」
『……!? ウゥッ!!』
そいつは、見た目からじゃ想像できないほど大きく見えた。
「……大丈夫だよ。私は敵じゃない」
『ゥ……?』
……でも、とても暖かかった。
「私は、あなたの味方だよ。■■」
……? よく聞こえない。誰のことだろう。
「……やっぱり、私じゃダメなのかな?」
『ウ』
「……ごめん、わからないよね」
なんだか、すごく悲しそうだ。顔が見えないのに。
「ねぇ、私は今、旅をしてるの」
そうなのか。そんなヘンテコな仮面を付けてるのに。
「……仮面のこと見てる? 大丈夫、私これでも有名人だからさ」
……仮面を付けたまま有名になったのか、変な人間だ。
「……まぁ、厳密には違う人のお話なんだけどね」
『……ゥ?』
「んー、そうだなぁ」
「私、一度死んだんだよ?」
『?』
なるほど、ここはあの世なのか。
「……って、絶対勘違いしてるよねその表情。そうじゃなくて」
「死んだ人の魂が、時間を経てそっくりさんの体に生まれ変わった……と言えば良いのかな」
『???』
「どうしよう……この辺りは、あの子達の方が詳しい筈なんだけど……」
「とりあえず、今は厳密には違う本人だって、覚えててくれたら良いと思う」
どうやら、言語化の難しい事情があるみたいだ。
『ゥ』
「それで、話を戻すけどさ。小さな狼さん」
……話。ああ、旅をしているとか、言ってたな。
「あなたも一緒に来ない?」
『……?』
何故だ。
「あ、なんでだって顔してる。……理由は簡単だよ?」
『……』
「私がそうしたいから。そうして欲しいから」
「……どうかな?」
……どうするべきなんだろうか。前提として俺は弱い。そして何も知らない。
「弱いとか、何も知らないだとかは、全然気にしなくて良いよ」
「私、これでも先生をしてたこともあるから」
だそうだ。なんだか逃げ道を潰されていっている気がする、野性の勘だが。
「ふふ」
……俺という個体として、この人間について行くことは得しかない、筈だ。
『……ゥ。ウゥ』
「……良いの?」
『ゥ』
首を縦に振る。しかしこの人間、なぜ俺のことを知っているのだろう。
そもそも、俺は何なんだろうか。狼らしいが。
「……ありがとう、狼さん」
……こうしてこの、よくわからない一人と一匹の旅が始まったのだ。