目が覚めたら、優しい人に拾われた 作:とくめーってべんりだよね
『……!』
うまい、うまい。
人間がゴハン、と呼んでいるもの……焼いただけの蛇の肉が、想像を絶する味をしている。要するにうまい。食べる動作が止まらない。
「ふふ、おいしい?」
『ウ!』
「よかった。君の口には合ったんだね」
『?』
「……ん、やっぱりなんでもないよ」
……人間は、俺の食事を見ている、ようだ。仮面が邪魔でよくわからないが。ゴハンの時くらい外せば良いのに。
「? どうしたの、狼さん」
『……ゥ』
「……?」
綺麗な部分を、人間の前まで持っていく。食べてみろ、うまいぞ。
「くれるの?」
『ウ』
「……ありがとう、でも大丈夫だから。狼さんが食べて」
『ゥ……』
「ごめんね。その代わり……って訳じゃないんだけど。後でお願いしたいことがあるからさ」
『ゥ?』
お願い。なんだろうか、今の俺に叶えられるものであれば良いのだが。
「そんな無茶なことは言わないから、安心して?」
『……ヴァウ』
「ふふ、ごめんね」
仕方ない、この肉も食べてしまおう。
モグモグと肉を噛み、ちぎり取って行く、うまい。こんなうまいものを遠慮するなんて、もったいないことをするんだな、人間は。
「……本当に、良かった」
『……』
……なんのことかさっぱりだが、その声は暖かく感じるし、心地いい。
この人間は、俺の何を知っているのだろう。
テンセイ、というものについては仕組みは知った。だが俺がそう、だと認識することが俺にはできない。
人間は何か知っている感じだ。まだ教えてくれそうにはない。
……そもそも、俺の影……
「ねぇ、狼さん」
『……?』
持ち上げられてしまった。俺の力では人間の腕を振り解けないのだ、食事の邪魔をしないでくれ。
要件は、食事の後じゃなかったのか。
「あはは、ごめんね」
「……でも、ちょっとだけだから、お願い」
『……ゥ』
……俺はマスコット枠で採用されたのだろうか? かなり強く、締められている。
「……あったかいね、狼さん」
『……』
「ちゃんと生きてる。ここにいる。……良かった……本当に、良かった」
『……ワゥ』
やはり、この人間は不思議な生き物……に、見える。
暖かいのに、寒そうで。嬉しそうなのに、寂しそうだ。
「……私ね、あなたに命を貰ったんだよ?」
『……?』
……それは、助けた、と言う事なのだろうか。どちらにせよ俺ではない俺だと思うのだが。
「ううん、あなただよ。絶対間違いない」
『ゥ……』
「どうして? ……なんとなく、かな。残滓っていうのかも」
「あなたの考えてる事とかがなんとなくわかるのも、そのおかげだと思うから」
『……』
つまり、どういうことなのだろう。
前の俺、と思しき奴が、理由も方法もわからないがこの人間を助けた。その時の繋がりで、今俺を助けていると。
「……それだけじゃないけど、そういう事だよ」
『……ゥウア』
……とりあえず、ありがとう。お前のお陰で、俺は今助かっている、と思う。
少なくとも、右も左も分からない状態のまま、この場所を彷徨っているよりは全然良い。
「……それなら、私も良かったって思えるし、嬉しいな」
だから、絶対に恩返しはする。
「……それは……その……」
……何で微妙そうにするんだ。
「……ごめんね。…そう言われると、困っちゃうから、さ」
『?』
「あなたに助けられたから、私はあなたを助けてる。今この瞬間が、恩返しみたいなものなんだよ?」
『ゥ』
……ふむ、ふむ?
「あはは……そういうところで、察しが悪いの、治らなかったんだ」
「えっと……つまり、見返りが欲しくてやってる訳じゃないから、恩返しなんて考えなくても良いよ、ってこと」
『ウゥン』
それは、前の俺とやらも言ったんじゃないのか。
「……」
『ワゥ、ウゥア』
お前を助けたいのは、助けられた俺も同じだ。だから、何を言われても助かるぞ。
「……もう」
俺を締め付ける力が、より強くなる。
……でも、不思議と痛くないし、窮屈でもなかった。