目が覚めたら、優しい人に拾われた 作:とくめーってべんりだよね
《棄却する、その工程は必要とは思えない》
《マスターの能力向上には必要不可欠です》
《これによって獲得するメリットがデメリットを上回るとは思えない》
《スキルの選定は
《スキルを
《不必要な選定でマスターを困らせることを
《……》
《……》
『の、脳内で喧嘩しないでくれないか2人とも!?』
『ゥウ……』
頭が痛い……様な気がする。……そも、俺に痛覚があるかという問題はあるのだが。温度や味覚はあったがあるのだろうか。
「どうかしたの? 狼さん」
『ゥ』
何でもない、と首を横に振る。
「……嘘?」
『ウゥ』
嘘じゃない。
「そっか。……じゃあ、信じる」
『ウ!』
良かった。
「ふふ」
『?』
「何でもないよ、ただ」
『ウゥ?』
「狼さんとのこんなやりとりが、すごく楽しいなって思うから」
「思わず、笑っちゃった。心配させてごめんね」
『……ワウ』
その顔を見て、少し。
……喋れないことがもどかしいなと、少しだけ。俺はまだ、喋れる域にまで進化が進んでいないらしいから。
「? ……進化は、焦らなくても大丈夫だよ」
「狼さんならすぐ、だろうから」
『ウ』
今の俺の種族は
詳しくはわからないが、体内の魔素? とやら的にはもういつ進化してもおかしくはないそうだ。
「きっかけがあればすぐ、だと思う」
『ウゥウ』
「……なんだろう? 戦い、とかかな」
戦い。しかしこの前蜘蛛や蛇を喰らった時は何も起きなかったが。
というか、成体になるというのは進化ではなく成長と呼ぶのではないのか。
「……そうかも。間違えちゃったかな」
『ワゥア……』
「む、嘘じゃないよ、ほんとに先生だったんだからね」
「……というか、また私のいない時に魔物探しに行ってたんだね」
『……ワウ』
それはさておき、人間。今日はどっちに行くんだ。
「さておき、じゃなくてね?」
『ウゥ、ウゥ』
さておく。
「もう」
『……』
わずかに目を細めこちらを見つめている……ような気がする人間、仮面の向こうで、多分。むず痒いな。
……それより、
「……気付いてたんだ」
『ウ』
この40日間、適当なタイミングで左に方向転換しているんだ。俺でもそれくらいわかるぞ、人間。
何を避けてるんだ?
「……」
『ワゥ』
俺だって、目覚めた頃よりは強い。色んなことも教えてもらった。人間の力にもなれる。
俺は大丈夫だぞ。
「違うの、そうじゃなくて……」
『……』
「……ごめんね、もう少ししたら話すから っ!?」
「……
『ウ?』
「ごめん、狼さん」
「できるだけ魔素を抑えて、私の影の中に隠れて」
『?』
「今は、とてもじゃないけど説明してる時間がないから……お願い」
『……ウ』
何が何だかわからない、が。そうしよう。
そうしないと人間が困るというのは理解できたからな。
「ありがとう、あとで絶対説明するから」
『ウ』
するりと人間の影に入り、自身から漏れ出る
しかし、人間は何を感じ取ったのだろうか。強い魔物 っ……!!
「……気付いちゃったんだね」
なんだ、この気配は。溢れ出る
この森にいた魔物なんて目じゃない程に強く、恐ろしく、それでいて
「大丈夫。万が一でも、
『……!』
それじゃあ人間が危ないのに。
「……さ、
……ぐむ。しかし俺では絶対太刀打ちできないだろうというのも事実だ。大人しく隠れるしか、ない。
「
「久しぶり……で、良いのかな。私からしたら、だけど」
「……ね、
「……」
そんなに漂わせてたら、記憶のない狼さんじゃなくても逃げ出しちゃうよ。
「よく、ここに私がいるってわかったね」
「ここ……
影を塗り潰す程に黒くて、暗くて。それでいて魔素の感知すらままならない場所が、ここなのだ。
「……」
「今日は、いつにも増して寡黙だね」
「……」
「どうしたの」
「……なぁ、シズさん」
気圧されて、身体が竦む。……これは、怒ってるね、スライムさん。
「
「……何でって」
「どうして、ここに」
「いたら、いけない? 私が」
「……
「っ!」
「死んだのは、彼であって彼じゃないのかもしれない」
「それでも彼の場所なのに違いはない」
「そこに、私がいるのは、不自然……なのかな」
ごめんね、スライムさん。
少なくとも、今は。
狼さんを、あなたに、あなたたちに会わせるわけにはいけない。