墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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目指せ!裏霊界

 

 冥という太陽に当てられて、静まり返る会議室。その静寂をギキョウが静かにカーテンを開けるように言葉を発する。

「・・・冥君・・・君の意見は聞かせてもらった・・・なぜだが、我々の心揺さぶる君の言葉なのだが、大人としての冷静さが邪魔をしてしまう・・・敵の本拠地とも言える裏霊界に乗り込むのは良いとして、我々、矮小な人間がそこに行って、どうするのかね?」

 ギキョウは組織の長として、部下達の命をちゃんと天秤に掛けて話をする。

 

 ギキョウが言えば、全員とは言えないまでも、相当数の人間を死地に向かわせる事ができる。だからこそ、ギキョウは慎重でならなければならない。自分の言葉で死んでいく者達が満足して逝ける様にしなけらえばならない。

 

「・・・我々?・・・足りないわっ!・・・掛かっているのは霊界の命運・・・その先に、私達の命運もあるんだもの・・・私達が動いて、さらに霊界も動かなくてどうするっていうですか?」

 冥はかわらず自信満々の表情で、仁王立ちに胸を張って、そうギキョウに声を高らかに答える。

 

 

 

「・・・その言葉、しかと受け止めました。」

「っ?!」

 冥に対して言葉を発したのは他でもない。死神ナナシだった。その姿を捉えた全てのものが言葉を失い、口を開けて目を丸くする。

 

 

 

 〔ガタガタガタッ!〕

 そこにいた冥を除く、全ての者が一斉に席という席から立ち上がり、一斉に正座をして、頭を垂れる。もちろん、全ての人間の頭は死神に向けられている。

 

「冥さん・・・あなたもまた、善朗君に引き上げられて、容認しがたい存在へと近付いている。しかし、だからこそ、貴方にしか見えない景色がある・・・そこに導く貴方の邪魔を私はしません・・・私は直接手を出せませんが、私の出来る限り、霊界を動かして、協力させて頂きます。」

 紳士ナナシはシルクハットをゆっくりと脱ぎ、胸元へと持っていくと、冥に静かに丁寧にお辞儀をする。

 

「死神様・・・まことに寛大なお言葉っ・・・我々も人間の代表として、救霊会一同、全力でことに当たらせて頂きますっ!」

 ギキョウが正座をして、頭を垂れたまま、死神ナナシに対して、礼儀を尽くす。

 

「死神様っ・・・申し訳ございません・・・その中に絶対に入れたい人物が居ますっ・・・私を霊界に連れて行ってはくれませんか?」

 冥は立ったまま、死神と真剣に向き合い、深々と頭を下げて、そう頼む。

 

「・・・・・・わかりました・・・容易い事です。」

 ナナシはそう言うとスッと左手を冥に伸ばす。

 

「・・・ギキョウ様っ、差し出がましい事をお詫びした上でお願いします・・・私が来るまでに裏霊界に向かう準備を整えて、待っていてくださいっ・・・私が責任を持って先陣を切って、向かいますのでっ!」

 冥はナナシの手を取ると、ギキョウの方に振り返って、元気いっぱいにそうギキョウに話す。

 

「・・・わかりました・・・服も準備しておきますね。」

 ギキョウは年端もいかない少女の指示を快く引き受けて、笑顔で応える。

 

 冥はギキョウの最後の言葉にふっと我に返り、自分の服装に目を向ける。

「えっ・・・ああああああああああああっ?!」

 そこにあったのは病院の服装のままで、足元も病院のスリッパのままだったのだ。あまりの恥ずかしさに身を縮こまらせるも後の祭りだった。そのまま、光に包まれて、冥は霊界へと姿を消す。

 

 

 

 

 

 そこは締め切った和室。10畳ぐらいの広さに段差のある部分が部屋を分けている。その段差の部分に腰を下ろして、畳をジッと見る青年菊の助の姿だけがその部屋にポツンと存在していた。部屋は締め切ってはいるものの、光は程よく差し、ジメジメした感じはない。が、そこには誰も近づけさせない鋭い覇気が張りつめていた。

 

 〔ドスドスドスドスドスドスドスドスッ!〕

 菊の助の閉じこもる和室に繋がる廊下を誰かが大きな足音を響かせながら近付いてくる。

 

「・・・・・・。」

 いつもとは違うその嫌悪するような事にも、眉一つ動かさない菊の助。

 

 

 〔ピシャンッ!〕

「菊の助さんっ!」

 菊の助が居る和室の障子を激しく開けて一人の少女が入ってきた。少女にとっては過剰な人払いとも言える菊の助の凄まじい霊圧も全く意味を成さなかったらしい。少女は部屋に入ってくるなり、大きな声で菊の助の名を叫び、部屋をくまなく調べるように目を動かす。

 

 

「何してるんですかっ!?」

 病院の入院患者の服装のその少女は部屋にこもっていた菊の助の姿を見つけるや否や、菊の助を怒鳴り上げて、ドスドスと近付く。

 

「・・・・・・。」

 それでも菊の助は畳から目を離さずに黙っている。

 

 

 

「自意識過剰もいい加減にして下さいっ!」

「っ?!」

 冥は菊の助の胸倉を掴むと力一杯自分の方に引き寄せて、鬼気迫る表情で菊の助に向かって、声を荒げる。さすがの菊の助も冥に掴まれて、視線を冥に向けざるを得なかった。

 

 

 

「なんなんですかっ?なんですか?私や善朗君は貴方の駒ですか?貴方の手の平の上で踊っていないと気がすまないんですかっ?・・・勘違いも甚だしいですねっ!私や善朗君は自分で決めて、そして、ここに立ってるんですよっ!!貴方の口車に乗ったとか、導かれたとか・・・貴方達大人なんかに余計な責任を感じて欲しくないっ!」

 冥は思いの丈を余す事無く、大きな声に乗せて、菊の助にありったけぶつける。そして、

 

 〔ドシンッ!〕

 菊の助をバッと乱暴に離して、畳に叩きつける冥。

 

「私達は、自分の足で歩いてるんですっ!」

 冥は尻餅をついたまま冥を見上げる菊の助にそう胸を張って見下ろす。

 

「・・・冥・・・ちゃん・・・。」

 菊の助が何年ぶりかに口を動かすようにたどたどしく声を発する。

 

「菊の助さんっ、今、善朗君達は『ぬらりひょん』とかいう妖怪に裏霊界に連れて行かれてるんですっ!今から、迎えにいきますっ・・・しっかりと、その目で善朗君を見て・・・笑顔で向き合って下さいっ。」

 冥はそういうと、スッと右手を菊の助の方に差し出す。

 

「・・・ぐっ・・・・・・すまねぇ・・・。」

 菊の助はグッと涙を我慢して、冥から視線を外すが、その差し出された手をしっかりと掴む。

 

「・・・・・・。」

 二人の様子を見ていた死神と菊の助一族の面々。静かに二人の輝かしい姿を黙って眺めていた。

 

 

 

「・・・それにしても、冥ちゃん・・・そのふくそっ・・・。」

「言わないで下さいっ!急いでたんですぅっ!!」

 菊の助がいつもの調子に戻ってくると、ハッと視線に入るのは、もちろん冥の服装だった。その事を菊の助が尋ねると、両手で精一杯服装を隠すようにモジモジと身を動かす冥だった。

 

 

 

 

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