墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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煉獄の男達

 

 

 霊界のネオ大江戸で行われた武術大会。12人衆・未区筆頭ナルキの反乱による妖怪の霊界襲撃という最悪の結末に終わった数日後。現在、ナルキとイワクサが除籍となった元12人衆達は、ネオ大江戸の中心であり、霊界の中枢でもある五重の塔に集まっていた。連日の会議と同調するかのようにネオ大江戸中も大騒ぎとなり、これからの霊界を憂うものも多かった。12人衆の緊急会議の目下の議題はもちろん『12人衆の穴を早急に埋める』ということ。しかし、武術大会での騒動の中で、多くの猛者達が滅消してしまい、その穴を誰で埋めるかで紛糾していたのだ。

 

 そんな事など露知らず、

 それとはまったく関係ない賢太が辰区の街並みを見回すことの出来るお気に入りの丘に来ていた。いつも賢太は頭の整理がつかない時にはここを良く訪れて、自分なりに気持ちを落ち着け、見詰め直しに来る場所だった。町の喧騒からは遠く離れた考え事をまとめるには最適な空間。そんな場所で、賢太は今日も寝転がり、空を眺めながら考え事をしていた。

 

 そんな賢太に声をかける人物がいる。

「どうするんだい?」

 佐乃が寝転がっている賢太の隣に立ち、腰に手を当てながら、賢太に今後についての事を聞いた。

 

「よう分からんよ、師匠・・・俺にはよう分からん・・・。」

 賢太はゆっくりと上体を起こして、三角座りをしながら、膝にアゴをおいて、佐乃に弱弱しい返事をする。

 

「くやしいかい?」

 佐乃が賢太の心の内を見抜くように一言賢太にそう呟く。

 

 賢太は佐乃の言葉に反応するように三角座りした内側に顔を埋める。

「くやしい~わぁ・・・なんでや・・・善朗に追いつけんのも腹立つけど・・・それ以上に全部あいつがなんもかんも背負いこんどるのが腹立だしい・・・拳一つで解決せんことがこんなにあるんか・・・。」

 賢太は三角座りから勢い良く大の字になって地面に倒れこみ、空を見上げ、言葉を息と共に天に向かって吐き出すようにそう言い放つ。

 

 賢太が大の字になると佐乃は隣にゆっくりと座り込み、賢太に微笑みかける。

「高天原に殴りこみに行くわっ・・・って言わないだけ、あんたも成長したんじゃないか?」

 佐乃は母が子を褒めるように賢太の成長を認めて、優しく声を掛けた。

 

「ちゃかさんといてや師匠っ・・・俺かて、領分弁え(わきま)とるよ・・・大体、高天原っちゅうところへの行き方分からんしな・・・。」

 賢太は恥ずかしくなって、大の字から佐乃へ背を向けるように横になり、少しふてぶてしく返答した。

 

「ふふふっ・・・そうだな・・・すまん。」

 佐乃は賢太から目線を外して笑い、素直に賢太に対して釈明した。

 

「俺には善朗の素直さも気に食わん・・・なんでもかんでも、波風立てんように縮こまって、あないに強いくせに・・・。」

 賢太は悔しさで身を縮めこめながら、そう言って下唇を噛む。

 

「・・・だからこそ、強いんだろうね・・・あたしでも善朗があれ程だとは思いもよらなかったよ・・。」

 佐乃は裏霊界での善朗の圧倒的ともいえる強さを思い出しながら、空を見上げて、高天原にいるであろう善朗を思う。

 

 佐乃は裏霊界で賢太の援護という形で曹兵衛達が築いた円陣の外にいたからこそ、善朗の鬼神のような無双を目の辺りにしていた。何千とも言える悪霊達の群れを前にまったく(ひる)まず、自分達では到底敵わないと思えた妖怪を結果的には一人で4人も斬り伏せたのだ。その一部始終を佐乃は賢太の戦いを見守りながらも目を奪われるように見ていた。

 

 

 

「善朗はこれからどうなるんや、師匠?」

 佐乃が空を見上げている横から上体を起こした賢太が真剣な眼差しを佐乃に向けて、そう尋ねる。

 

 

 

「・・・・・・どうなるんだろうねぇ・・・このまま神になっちまって、もう戻ってこないかもね・・・。」

 佐乃は空を見たまま、少し諦めたような表情で、そう囁く(ささや)ように話す。

 

「勝ち逃げとかゆるされんっ!・・・やっぱ高天原にっ・・・。」

 賢太は佐乃の言葉に怒りが爆発したようで、勢い良く立ち上がり、腕まくりをして、高天原を睨むように空にガンを飛ばした。

 

「ハッハッハッハッ・・・何言ってんだいっ・・・心配しなくても、あんたも遅かれ早かれ呼ばれるんだよ?」

 佐乃は天を睨む賢太を見て、あまりにも、その姿が滑稽に見えて、思わず腹を抱えて笑い出す。

 

「あっ!?・・・そないな場所に誰が行くかっ・・・今まで散々無視しといて、自分達が煩わ(わずら)しくなったら、人を飛び回るハエを叩くようにしよってからにっ。」

 賢太は天から佐乃に視線を変えて、天につく悪態を包み隠さず、佐乃にぶつけた。

 

「行きたいのか行きたくないのか、アベコベじゃないかっ・・・ハッハッハッハッ・・・あんたって子は本当にしょうがないねぇ~・・・。」

 佐乃は賢太のワガママな駄々っ子の姿を目にして、更にお腹を抱えて涙を流し、丘の上を笑い転げる。

 

「納得出来んのやっ・・・ふんぞり返って、えらそうにしとるのがっ!」

「あんた高天原の神様に会ったことあるのかい?」

「ないっ!でも、そんな感じがするんやっ!!」

 賢太はダムが決壊するように次々と怒りが流れ出し、地団駄でその怒りを地面にぶつけるように何度も地面を踏みつける。佐乃との会話のキャッチボールも夫婦《めおと》漫才に近くなりつつあった。

 

 佐乃はそんな賢太とのやりとりをした後に、ふと表情を引き締めて、賢太を見る。

「ところで、あんたの契約者・・・美々子ちゃんは大丈夫なのかい?」

 佐乃は当然善朗の件から、賢太とその契約者のことを連想して、今まで聞けずにいた事を賢太に尋ねた。それはまさに賢太も裏霊界で、妖怪となったササツキと妖怪エンコウに真っ向から戦い打ち勝ったからこその心配だった。

 

「・・・・・・。」

 賢太は佐乃に美々子のことを聞かれて、口をつぐむ。

 

「あんた・・・まさかっ?!」

「寝取った。」

「えっ?!」

 賢太の反応に佐乃が思わず身を乗り出すと、それをとめるように賢太が呟く。その呟きに佐乃は意表をつかれて、目を丸くした。

 

 

 

「・・・太郎も心配しとったから、この前二人で見に行ったんや・・・そしたら、あいつ腹出して寝取ったわ・・・。」

 賢太が現世に美々子の様子を見に行ったことを思い出しながら、さらにふてぶてしく腕組みをして、佐乃に正直にその時の状況を話した。

 

 

 

「そっ・・・そうかい。」

 佐乃は賢太から聞いた美々子の状況にどこか善朗と同じような呆れるぐらいの力量を目の当たりにして、力が全身から抜けるような気がした。

 

「美々子の姉ちゃんに、その時あったんやけど・・・『あの子は私達とは次元が違うから』って、呆れとったで。」

 賢太はそういって、さっきとは別の意味を込めて、天を仰いだ。

 

「・・・・・・。」

 そんな和やかな会話をする賢太達に徳利を担いだ一人の男がゆっくりと近付いてきていた。

 

 

 

 

 

 〔バンッ!〕

「どうして、あの二人はいないんですかっ!」

 静まり返った会議室。曹兵衛が珍しく怒りを露わにして、テーブルを両手で叩き、空席となった二つの席を睨みつける。

 

「・・・・・・。」

 曹兵衛以外の元12人衆は誰一人口を開かずに曹兵衛の様子を伺っていた。

 

 曹兵衛はその場にいる他人の事などお構いなしに、怒りを隠さず、さらに眼光を鋭くしていく。

「12人衆が欠けて、霊界の秩序が乱れている中で・・・さらに二人も会議にも顔を出さないとは・・・一体何を考えているんですっ・・・。」

 曹兵衛は頭を横に大きく振って、ドカンと席に腰を下ろした後、頭を抱える。

 

「武城とガカク、両名は目下行方を捜索中です・・・あの一件以来、霊界にも帰って来ておらず・・・裏霊界からは帰還した事は掴んでおりますが・・・。」

 曹兵衛の怒りが一通り収まったのを見て、副長であるゴウチが現在の更に欠けた12人衆の二人についてを話した。

 

 ゴウチが含みを持った言い方で話を区切った事に、敏感に反応したのは曹兵衛。

「まだ何か?」

「・・・菊の助殿も、あれ以降姿を見ていないと・・・。」

「・・・ッ・・・。」

 ゴウチは曹兵衛に聞かれると、素直に今回の更なる騒動の黒幕であろう人物の事も話した。その名を聞いた曹兵衛は塞ぎこんだ頭をテーブルに打ち付けるように下げて、それ以上何も言わなかった。

 

 

 

 

 

「4人とも・・・覚悟は出来てるんだな?」

 ある森の中、菊の助が腕組みをしたまま、誰かに向けて、ニヤつきながら、何かについて尋ねていた。

 

「ねぇ~、ホントに楽しい事いっぱいあるんだよね?」

「おぅ、たくさんあるぜっ・・・これからたくさん遊ぼうやっ。」

「あはっ、うれしいっ!」

 菊の助の視線の中に、チャイナドレスの良く似合う可愛い少女を肩に乗せた武城がその少女と微笑みあっている。

 

「・・・・・・。」

 その武城の隣には、肩に立派な鷹を乗せたガカクが腕組みをして目を閉じていた。

 

 さらにそのガカクの隣には思いも寄らない人物がいる。

「菊の助っ・・・もったいぶってないでさっさと連れて行けっ・・・俺たちを桃源郷にっ!」

「流さん・・・そんな言い方だめですよ。」

 ガカクの隣には馬にまたがる流とネヤの姿があった。

 

 

 

 4人のそれぞれの意志を聞いた菊の助。

「あぁっ・・・連れて行ってやる・・・桃源郷にな・・・。」

 菊の助は流に睨まれるも、それを鼻で笑うように答えて、自分の背後にある桃色のモヤに視線を流した。

 

 

 

 

 

 

 

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