墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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生を謳歌する

 

〔チーーーン・・・〕

 誰か知らない男が、鈴を鳴らす音が部屋に木霊する。

 

「・・・・・・。」

 玉藻は部屋の片隅で、ジッと今は冷たくなってしまった命の恩人を見ている。

 

 川から助けられた後、玉藻は少年の生前の家で飼われる事になった。

 今は少年の名も知っている。

 

「にゃ~~~っ・・・。」

 玉藻はトコトコと歩き出して、一人の子供の傍で優しく鳴く。

 

「・・・・・・。」

 少年は玉藻に反応して、微笑むもその生気のない顔は玉藻の胸を突き刺した。

 

 

 玉藻を助けた少年の名は『善湖善朗』、年齢的には元服したばかりの子供だった。

 

 

 玉藻が予期せず命を奪ってしまったその少年の弟が今、玉藻の目の前にいる少年『善湖善文』、その腕に抱かれて、その魂の暖かさに何故か心地よさを感じた杞憂(きゆう)な存在だった。

 

 

(ごめんなさいね、善文・・・今、私に出来る事は貴方の傍に居てあげる事だけ・・・。)

 玉藻は初めて抱いた罪悪感に、善文を癒そうとずっと傍にいた。そうすることを、己自身がそう定めた。

 

 

 玉藻はソッと善文の太ももの上に乗り、丸くなる。

 善文は玉藻の暖かさに絆されて、涙を流す。

 その涙を感じる度に玉藻の心の底が痛み出した。

 

 

 

 

 

 

 善朗の弔いを終えて、しばらくしてから、善文の背後に邪気がまとわりついていることに気付く玉藻。

 

(・・・どういうことなの?・・・昔の私なら、こんな雑魚、手で払いのけるだけなのに・・・。)

 玉藻はイライラした気持ちを邪気にぶつけるも、鳴こうが喚こうが、今の玉藻にはどうする事も出来なかった。

 

 ただ、今出来ることは出来る限り、善文の近くにいて、その邪気の影響を弱らせる事だけだった。

 

 

 

 

 

 ヤキモキした日々を過ごす中で、ある日突然、善文にまとわりついていた邪気が姿を消した。

 

(あらやだ・・・私の力、少しずつ戻ってるのかしら?善文の元気な顔ってこんな顔なのね。)

 兄を亡くしたあの日から、玉藻が見ていた善文の顔はどこも光が無いくすんだモノだった。しかし、その日、少女を連れた男が善文を抱えて戻ってきてから善文の顔はみるみる明るさを増していった。

 

 今では、玉藻と善文は学校で居ない時間や遊びに行っている時間以外は殆ど片時も離れずに過ごしていた。

 

 二人の(つつ)ましい穏やかな日々。

 そんな時間が、このままだとは誰しも思わない。

 

 

 

 

 

 

(なんなのよ、この女・・・。)

 善文に光沢が蘇ってから、時々、玉藻の心をざわつかせる女が家に現れるようになった。

 

 その邪魔者の名は『鼓條(こじょう)美々子』。

 

 度々、善文の家に現れては善文と仲良く遊んでいる。

 玉藻は愛猫(あいびょう)らしく、ジッと美々子を家に居る限り、善文の傍に居る限り、睨みつけて、美々子の傍には決して近寄らせない。

 

 美々子も何度か玉藻を撫でようと試みるも、全て玉藻は交わしてきた。

 

 

 

 

 

「えへへっ・・・やっと掴まえたっ!」

 その日は一生の不覚だった。

 

 玉藻が善文に見惚れている事をいいことに、背後から近寄ってきたその女は、玉藻をガッシリ掴んで離さなかった。

 

(なんてことっ・・・私としたことがっ!)

 玉藻は自分を掴む美々子を一生懸命睨みつけ、身体をよじらせる。

 

「えへへへへっ、ちゅ~るの時がチャンスだと思ったんだっ!」

 美々子は善文に頼んで玉藻をおびき寄せるように裏で計画していたのだ。

 

 

(ちょっと離しなさいよっ!あんた、善文に色目使ってんじゃないわよっ!)

 玉藻は精一杯の抵抗で美々子から離れようと試みて、耳を寝かせて、威嚇する。

 

 

 

「ミィちゃん、善文君を護ってあげてねっ。」

「っ?!」

 美々子がそういって、玉藻に笑いかけた時だった。

 

 

 

 今まで、何も感じていなかった内から湧き出るマグマを玉藻は感じた。

 それ以降、美々子は玉藻を是が非でも抱こうとはしなくなった。

 

 

 

 

 

 あれからどれほどの年月が過ぎただろうか。

 夏に善朗の成長した姿を見て、その姿に微笑ましく思う玉藻。

 

 なぜか、善文を執拗に狙ってくる悪霊達。

 全て玉藻が取り戻しつつある力で秘密裏に消し去っていたが、街中で遭遇するには少し数が多いように思えた。が、玉藻にとっては蟻にも等しい存在となった悪霊は物の数にも入らなかった。

 

 

 

 しかし、そんな日々が平和だったと思える日が玉藻にやってきた。

 大妖怪として、名を連ねていた腐れ縁。

 大嶽丸が起こした百鬼夜行が現世に降りかかろうとしてた。

 

 

 

(・・・大嶽丸・・・あんたも抗ってるのね・・・でも、私の善文に手を出そうとすれば・・・貴方であっても、許さない・・・。)

 玉藻はいつもの指定席である善文の部屋の窓際から外を睨みつける。その方向は大嶽丸が姿を現したスカイツリーの方向だった。

 

 

 

 

 

 

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