墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~ 作:葛屋伍美
〔ドゴォーーーンッ!〕
賢太の渾身の右ボディが酒呑の左わき腹にめり込む。が、
「ッ!?」
賢太は腑に落ちない。渾身の一撃を常に酒呑に放ちつつも、酒呑の笑みが全く消えない、歪まない。
「賢太・・・いいねぇ・・・お前、気功が使えるのか?」
賢太の渾身の右ボディを喰らって、よろめく様なポーズをした後に、ニヤニヤと酒呑が賢太にそう尋ねる。
「・・・・・・あっ?・・・なんのことや?」
賢太は臨戦体勢を取ったまま、酒呑の的を得ない質問に
「ほほぉ~~・・・無意識か・・・誰に習ったって訳でもないらしいな・・・。」
賢太の回答に益々顔が緩むのは酒呑。
「・・・さっきの鬼が話してたことを自分なりにしとるだけやぞっ・・・あいつの一撃はおもろかったからな・・・。」
賢太が酒呑のニヤニヤにも揺さぶられずに、素直にそう答え、酒呑に対抗するように最後にニヤリと笑みを浮かべる。
「ッ?!・・・なるほどなるほど・・・益々気に入ったぜ、賢太・・・あいつに食わせるのがおしいな・・・。」
酒呑は賢太の言葉にピッと背筋を伸ばして、その大きな体の全貌を賢太に覗かせた。
賢太は酒呑の変貌に笑みを一瞬で消すと、ギラリと酒呑をにらみつけた。
「グダグダ言っとらんで、本気でこいやっ・・・さっきから手抜きしよってからにっ。」
賢太は身体を深く沈めて、酒呑の次の行動に眼光をギラつかせる。
「・・・なら、遠慮なくっ。」
「ッ?!」
酒呑がそういうと、スッと賢太の視界から姿を消す。そのスピードに賢太は目を丸くした。
〔ドッ!〕
「カッ?!」
次の瞬間、さっきのお返しといわんばかりの酒呑が放つきれいな左ボディが賢太の腹のど真ん中に入った。その一撃が如何に凄まじいものかを賢太の身体が体現する。賢太の身体はその一撃で床から1m浮き上がり、酒呑が左ボディを降りぬくと、あっという間に外壁へと賢太は飛んで行った。
〔ウグッガハッ?!オェーーーッ・・・〕
賢太は外壁に叩きつけられる痛みよりも内から来る大地震の揺さぶりに全身を震わせて、吐き気を催して、その場でウズクマってしまった。
「賢太、お前ならこの一撃でさらに磨きがかかるだろ?霊体なら大丈夫だ、さぁ立ち上がれっ。」
酒呑童子はピッと背筋を伸ばして、賢太の方を凝視し、口角を上に裂けさせた。
(なんちゅうきれいな一撃なんや・・・見えへんかった・・・こないなやつがまだこいつの後ろにおるんか・・・)
賢太は酒呑の大きな凄まじい鬼気とその後ろからもビンビン感じる鬼気とを比較して、他の者が感じない絶望感と戦っていた。
〔ズドンッ!〕
賢太が酒呑の攻撃の痛みからスッと立ち上がって、酒呑を睨みつけると同時だった。
〔ザシュッ、ドドドッ、ズバンッ!〕
一撃目、ゴウチの大槌が酒呑の脳天にめり込む。それに続けと、流の一突きが左わき腹、胸部へ武城のトンファーの連撃が、最後の仕上げにガカクの左の
〔ゴオオオオオオオオーーーーーッ!〕
ネヤの業火が酒呑を盛大に焼き上げた。
「ふっ。」
全ての攻撃を受けきった酒呑が鼻で笑う。
〔パパパパンッ〕
虫を払うかのような酒呑の裏拳が流、武城、ガカクに入る。ネヤに迫った攻撃は流が身を呈して防いだ。そして、酒呑は流れるような動作で次に移る。
〔ガシッ〕
「ッ?!」
酒呑が脳天に入っていたゴウチの大槌を手で払いのけて、そのままゴウチの頭蓋をムンズと掴む。その行動にゴウチの背筋が凍った。
〔ズガーーーンッ!〕
酒呑がゴウチの頭蓋を片手で軽々と持ち上げて、上にスッと浮かした後、床へと盛大に叩きつけた。酒呑は次の目標を定めようと視線を流す。しかし、
〔ビシーンッ!〕
酒呑がゴウチを地面にめり込ませて、立ち上がろうとした瞬間、曹兵衛の張り巡らしていた糸が酒呑の全身を絡め取り、宙へと縛り上げた。
「大丈夫ですかっ?皆さんっ!」
曹兵衛はまずは賢太の方に近付いて、酒呑の攻撃を受けた全員に声をかけ、無事を確認する。
「・・・・・・。」
酒呑はこの時だけは今までの時とは違い、初めて表情を変えた。
酒呑の張りつめた嫌悪の顔。
「・・・だいっ嫌いなんだっ・・・こういう影でコソコソしてるような奴が・・・。」
〔ブチブチブチッ〕
酒呑は眉間にシワをよせて、意図も容易く曹兵衛の糸を力任せにぶつ切りにした。
「くっ!」
「馬鹿ッ、にげぃッ!!」
曹兵衛も酒呑が自分の糸で止められるとは到底思っていなかった。だが、
「ッ?!」
〔ドゴオオオオオオオオンッ!〕
賢太の目の前で物凄い鬼の形相の酒呑が忽然と現れ、曹兵衛に対して、今までみた事のない一撃を繰り出した。その凄まじいスピードとパワーに思わず、賢太ですら、少し身を引いてしまった。
酒呑の一撃は曹兵衛を捉えたかに見えたが、いち早く察知して動いたゴウチが身を呈して間に割り込む。それも気休めでしかない・・・凄まじい鬼の一撃が二人を飲み込み、フロアの床を何mも滑る様に二人を吹き飛ばしていった。
「・・・・・・。」
吹き飛ばされたゴウチと曹兵衛は意識を失いピクリともしなくなった。霊体が消えていないので、魂が滅消するようなダメージではないようだった。だがしかし、意識が回復しないほど、霊力を削られたのは間違いが無かった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
仲間をやれて、黙っていられるほど、煉獄の男達は殊勝ではない。
まず、酒呑に飛び掛ったのは流。
〔ガキンッ、ボゴオオオッ!〕
流の攻撃を先読みした酒呑が手で流の剣を叩き落し、空いた手で一撃をきれいに流に入れる。
「ぐはっ!」
「キャッ!」
盾でネヤを守るが、その余りにも大きな力に二人は外壁に叩きつけられてまま、気を失う。
「はああああああああっ!」
「ぬおおおおおおおおおっ!」
〔ズドンッ!ズバンッ!〕
武城とガカクは攻撃すら、許されない。酒呑は武城を一撃で床にめり込ませ、ガカクはそのガカクの一刀ごと手刀でねじ伏せた。
「チッ・・・
酒呑は倒れた面々をグルリと眺めながら、少し納得しない表情を浮かべる。
酒呑は周辺を一通り見た後、ニコリと笑みを取り戻した表情で賢太を見る。
「さて・・・賢太よ・・・準備は出来たか?」
酒呑は体ごと賢太に悠々と向けて、胸を高鳴らせるように、言葉を
「・・・・・・。」
賢太は臨戦体勢を取って、黙って酒呑を睨む。
フロア340。
「ッ?!」
目を閉じていた冥はその男の気配をいち早く察知して、両脇の少女を守るように身を前に出す。
「冥さんっ!」
「任せてっ・・・乃華さん達は結界を絶やさないでっ・・・戦闘なら私が一番場慣れしてるっ。」
冥は自分達の前に現れた相手を睨みつけて、数珠を両腕にスルリと巻き付かせた。
「ふはははははっ・・・これはたのもしい・・・食いガイがありそうな活きの良さだ・・・。」
舌なめずりをして冥を見る男。
もちろん、そんな男は酒呑童子以外、いるわけはなかった。
フロア350。
(指すらピクリとも動かん・・・なんでなんや・・・なんで俺は・・・。)
壁に身体を預けて賢太はモガく。
しかし、身体は霊力を使い果たして、指すら動かなくなっていた。誰も滅消させなかったのは酒呑の気まぐれなのか。それすらも賢太にはどうでもよかった。
(・・・・・・俺は・・・なんでこないに弱いんや・・・あれだけ、あれだけしたんに・・・。)
賢太は何も出来なかった自分に腹を立て、一筋の涙を流す。