墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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力の使い方

「ぐぬぬぬぬぬぬっ・・・。」

 善朗が目の前に立てられたロウソクを睨んで、力んでいる。

 

 

 ロウソクはゆらゆらと揺らめくだけで変化はない。

 

「ぬおおおおおおおおおっ・・・。」

 善朗はさらにロウソクを睨みつけて、何かをロウソクにぶつけている。

 

「主よっ、その意気だぞ!しっかり、ロウソクに思いをぶつけるのだっ!!」

 善朗が力んでいる隣で、豊満な胸を揺らしながら大前が善朗を応援している。

 

「ふわ~~~・・・潜在的な力はあるんだがな・・・きっかけがわからん・・・。」

 善朗の修行を見ている佐乃が退屈の余り欠伸をした。

 

「・・・あれだけの力があれば、造作も無い様に思うのですが・・・。」

 佐乃と同じく、善朗の修行を見ていた伝重郎が率直な意見を言う。

 

 

 〔・・・フッ・・・。〕

 

 

「ヤッタッ!」

 目の前のロウソクの火が見事に消えて抱き合って喜ぶ善朗と大前。

 

「ふわ~~~・・・金太、お主邪魔をしてやるな・・・。」

「・・・・・・。」

 佐乃が少し離れた所に現れた金太に欠伸をしながら注意した。

 その言葉に抱き合ったまま固まる善朗と大前。

 

 

「・・・おぅおぅ・・・すまんすまん・・・何かしておったのか?」

 金太がそう言いながらニヤニヤと近付いてくる。当然、何をしていたかを知っていたのだが、ちょっとした悪戯をして、大きなおにぎりを頬張っている。

 

 

「・・・なんのようだい、金太・・・うちも家計が火の車なんだ・・・あんたに出す飯なんて一粒もないよっ。」

 あぐらをかき、肩肘をついた手にあごを乗せて、眠気眼で佐乃が金太に言葉だけを向ける。

 

「・・・なぁ~~に、殿にちょっと様子を見て来いと言われたもんでね・・・飯が食えないのは残念だが、実家の飯ほど、俺はうまい飯を知らんから、気にするな・・・。」

 金太が大きなおにぎりを腹の中に魔法のように消して、善朗の前にどっしりと仁王立ちをした。

 

「・・・なにしてんだい?」

 金太の善朗を見る目に何かを感じた佐乃が声を掛ける。

 

「・・・うちにはうちのやり方が合うんじゃないかってね・・・秦兄ィの助言をな・・・。」

 善朗を見て、ニヤニヤする金太。

 

「待て待て・・・あたしに預けた以上はこっちのやり方でやらしてもらうぞっ。」

 勢い良く立ち上がった佐乃が語尾を強めて、金太に言葉で迫る。

 

「・・・善坊ぉ・・・お前は今、何をしてたんだ?」

 金太が佐乃の怒りをスルーして、善朗に質問した。

 

「・・・・・・えっ・・・いや、ロウソクに消えろって念じたら、消えるから試してみろって・・・。」

 佐乃の顔を伺いながらも素直に金太の質問に答える善朗。

 

「・・・なるほどな・・・良い基礎錬だ・・・悪くない・・・。」

 金太が善朗の顔をニヤニヤ見ながら言う。

 

「・・・そう思うなら、邪魔すんじゃないよっ。」

 佐乃が腕組みをして金太に文句を言う。

 

 

 

「・・・善朗・・・殿特製のおまもりが焼かれた・・・思った以上にこっちに余裕がない・・・。」

 顔は笑っているが、金太の瞳は鋭く光る。

 

 

 

「・・・・・・。」

 いまひとつ伝わりにくい表現だが、善朗には胸に締め付けられる何かがあった。

 

「・・・殿としても、丁寧に段階を踏ませたいから佐乃にまかせたんだが・・・ちょっと荒療治と行こうかとな・・・っ。」

「・・・むっ?!」

 金太は善朗に理由を説明しつつ、左拳に力を入れて、下段から善朗目掛けてアッパーを放つ。

 その金太の行動を近くに居た大前が素早く感じ取る。

 

 〔バキンッ!〕

 

「ッ?!」

 善朗は気付くと大前の刀身で金太の一撃を防いでいた。

 

「オイッ!何しんてんだいッ!!」

 金太の行動に佐乃の周囲がピリつく。

 

「・・・善坊っ、戦い方は今は大前に手取り足取り教わるが良い・・・だが、ロウソクで教わったように、霊に例外はない・・・思えば何だって出来るんだぜっ・・・それを忘れずに向かって来いっ!」

 金太はそういうと後ろに飛んで、そのまま善朗の目の前で空中に浮いて見せた。

 

「・・・ッ?!」

 巨漢の金太が重力を無視して軽々と宙に浮いている事に未だに驚く善朗。

 

(主よ・・・ここは金太の胸を借りようぞ・・・攻撃はワシがなんとかしようっ・・・今は霊の戦いと言うのを学ぼうぞっ。)

 善朗の頭の中で大前の声が響く。

 

「・・・あいつらっ・・・ッ?!」

「まぁまぁ、佐乃殿・・・ここは穏便に・・・。」

 佐乃が怒って二人を止めようと動こうとした時、隣にスッと秦右衛門が現れて声をかけ、その動きを制した。

 

「・・・秦右衛門・・・あんた達・・・いや、菊の助は何考えてんだいっ。」

 佐乃は握りこぶしに力を込めて、返答によっては力付くで事を収めようという姿勢を秦右衛門に見せる。

 

「・・・善文君を守る為に渡したおまもりがつい先日突破されましてね・・・時間稼ぎも敵に主導権を渡した形になったもんで・・・まだ、色々と考えてはいるんですが・・・善朗君の様子を見た感じ・・・きっかけはこっちの方が作りやすいんじゃないかと・・・殿が言われまして・・・。」

 秦右衛門も佐乃に淡々と失礼の無い様に丁寧に説明するが、力でくるなら受けてたつといった雰囲気を出す。

 

「・・・荒事はうちでは困るね・・・従えないなら・・・ッ?!」

 佐乃がいよいよ動こうとしたその時だった。

 

 

 〔ドンッ!!!〕

 

 

 凄まじい音が佐乃の道場の上空で周囲に響き渡る。

 

「・・・くぅ~~~・・・。」

 金太はクロスアームブロックをして、何かを受け止めたようだったが、それを受け止めた腕は赤く腫れて、湯気が立ち上っていた。

 

「・・・・・・。」

 もちろん、その音の発生源は善朗だった。

 善朗は大前に攻撃を任せていたが、その一瞬、無意識に口角を上げて、笑みを浮かべていた。

 

「・・・あらあら・・・丈夫だけが自慢の金太が防御させられるとは・・・。」

「秦兄ッ!聞こえてるぞっ!!」

 金太の様子を見た秦右衛門が失言すると、地獄耳の金太が秦右衛門に叫ぶ。

 

「・・・チッ・・・。」

 佐乃は善朗の様子を見て、舌打ちをする。

 

「・・・・・・。」

 佐乃のその舌打ちに横目で反応する秦右衛門。

 

 

「こらっ、善坊ッ!・・・何ぼ~っとしてんだっ。」

 凄まじい一撃を放った善朗がそのまま固まっていた事に不満を漏らす金太。

 

 

「・・・アッ・・・すっ、すみませんっ・・・。」

 固まっていた身体を解いて、頭をかく善朗。

 

(・・・主よっ、その調子だ・・・思いと力を込めて、敵に立ち向かえば、悪霊とてひとたまりも無いぞッ!)

 大前が主を信じて、揺ぎ無い言葉をかける。

 

「・・・・・・行きますっ。」

 善朗は大前の言葉に背中を押されて、目の前の金太を倒したいと強く思い、まずは声を飛ばす。

 

「よし来いッ、善坊ッ!」

 金太は善朗の声で臨戦態勢を再び取り、迎え撃つ。

 

 

「・・・あの子は大事に育てるべきだよっ・・・。」

 佐乃が善朗を見つつ、握りこぶしにさらに力を込める。

 

 

「・・・・・・神の悪戯ってやつでしょう・・・周囲がそうさせてくれないのかもしれません・・・なんなら、あっしらなら直接文句も言えるかもしれませんよ・・・。」

 腕組みをして、善朗を見て、秦右衛門がそう言って最後に茶化した。

 

「・・・出来るなら、それについては神様と問答したいもんだね・・・。」

 善朗を見たまま、佐乃が秦右衛門の茶化しに答える。

 

 

 

 

 

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