墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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霊界のお役所仕事

 〔ドンッ、ドッ、ドドンッ!〕

 善朗が斬撃を放つ度に爆音が周囲に放たれる。

 

 

 

 金太は防御に徹して、善朗の斬撃を両手であしらって行く。

 金太の両腕には霊力が込められており、善朗の斬撃も霊力で出来ているため、霊力と霊力のぶつかり合いで相殺されている形となる。

 

 〔ドドッ、ドンッ、ドゴンッ!〕

 霊には身体的な疲れという概念はない。

 

 つまり、霊力が切れるまでは延々と息切れせずに闘いが続いていく。

 

(・・・こりゃ・・・思った以上にきつい・・・。)

 金太は指示で防御に徹するように言われていたが、その防御自体が今となっては辛いものになってきていた。

 

「・・・・・・。」

 善朗は闘いに集中するあまり、最早金太しか見えていない。口角は少しずつ上がっていく。

 

(・・・善坊・・・どんだけ霊力量があるのやら・・・底が見えんぜ、秦兄ぃ・・・焼肉じゃ割が合わんぞ・・・。)

 金太は善朗をジッと見つつ、下で二人を見ている秦右衛門に心の中でグチを零した。

 

 

 

 〔ジリリリリリリリリリッ!ジリリリリリリリリッ!!〕

 事務所に設置してある電話が一斉に鳴っている。

 

 

 

「あわわわっ・・・乃華ちゃん、苦情の電話が収まんないよぉ~~・・・。」

 泣きべそをかきながら伊予が電話の対応に追われていた。

 

「佐乃って・・・たしか、菊の助さんのところであった人・・・。」

 スラスラと電話の対応をしつつ、乃華が苦情の発生源の名前を口にする。

 

「乃華ちゃんっ、佐乃さんの知り合い?・・・ちょっ、丁度よかった・・・騒ぎがこれ以上大きくなる前に行って来てくれないっ?」

 所長も電話の対応に追われながら乃華の言葉を聞き逃さず、ここぞとばかりに乃華に対応を押し付ける。

 

「・・・えっ・・・私が行っていいんですか?」

 電話の対応を少しやめて、上司のお伺いを立てる乃華。

 

「・・・・・・。」

 事務所の面々は乃華と目が合わないように避けながら、電話の対応に追われている。

 

 どうやら、佐乃というのは区役所内でも、恐れられているようで、苦情の発生源が佐乃の道場だと分かると苦情を聞くだけで誰も対応に乗り出そうとは思っていなかった。そこに佐乃との知り合いで、そのことをしらない乃華の存在は区役所の面々としては、願ったり叶ったりだった。電話口の向こう側も、佐乃とは極力関わりたくないと言う者も多いので、区役所に苦情が殺到していると言う仕組みだ。

 

 

「・・・わっ・・・わかりました・・・新人でお役に立てるなら、行ってきますっ。」

 乃華は上司からの頼みを受け入れて、出かける支度をする。

 

「あぁっ・・・ありがとう、助かるよ乃華君・・・君が来てくれてよかった・・・。」

 電話の応対をしながら上司が満面の笑顔で乃華を送り出す。

 

「・・・それでは、行ってきますッ!」

 乃華がお辞儀をして、事務所を出て行く。

 

「頑張ってね、乃華ちゃん!」

 事務所内の面々はそれぞれ笑顔で乃華を送り出す。

 

「あっ、乃華ちゃん、私もっ!」

「あ、伊予君っ。君まで行ったら・・・。」

 伊予も面白そうだと急いで支度をして乃華を追いかけた。

 上司はそんな伊予を見て、止めようとしたが時既に遅し・・・そこには、もう伊予の姿はなかった。

 

 

 

 〔ドンッ、ドンッ、ドドドンッ!〕

 

 

 

「・・・まったく・・・なんて近所迷惑な騒音・・・。」

 乃華はスタスタと歩きつつ、まだ見えない音源の方を見て、文句を吐き出す。

 

「・・・すごい音だね・・・何してるのかな?」

「・・・なんで、あんたまで来てんのよ・・・。」

 伊予がワクワクしながら乃華と違って、野次馬感覚でついてきていた。

 

 〔ドゴンッ、ドガンッ〕

 佐乃道場に近付くにつれて、音は次第に大きくなり、お腹に響いてくる。

 

「・・・ここね・・・。」

 乃華が佐乃道場の玄関の門まで来て、生唾を飲む。

 

「・・・すいませ~~ん、区役所の者ですぅっ!」

「ちょっと、伊予ッ!」

 乃華がきちんと挨拶をして入ろうとした矢先に、伊予が駆け足で挨拶をしながら中に入っていった。それを慌てて、追いかける乃華。

 

 

「すいませ~~んっ、周辺住民から苦情がきてますぅ~~っ。」

 伊予がどこか力が抜けた口調で庭をスタスタと歩きつつ、音源の方に向かっていく。

 

「・・・オッ、可愛い子だね・・・。」

 女好きの秦右衛門がいち早く伊予に気がついて、伊予を呼び込むように声をかけた。

 

「えぇ~~~っ、ありがとうございますぅ~~。」

 テレ顔を作りながら伊予が秦右衛門の方に近付いていく。

 

「ゲッ・・・バッ・・・秦右衛門さんもいらっしゃったんですか?」

 伊予の後を追ってきた乃華が秦右衛門の姿を見つけて、身じろぐ。

 

「あららっ、美女が二人とは今日はついてるっ。」

 乃華も見て、にっこにこな秦右衛門。

 

「・・・なんだい?・・・案内人が何かようかい?」

 佐乃が乃華の姿に気付いて、乃華に声を掛けた。

 

「あっ・・・佐乃さん・・・何をやられてるんですか?ご近所から騒音の苦情が区役所に殺到してるんですよっ。」

 乃華が佐乃に自分達が来た理由を説明する。

 

「あら~~・・・乃華ちゃん、案内人やめたの?」

 乃華が区役所からの使いだと知ると秦右衛門がそのことに驚く。

 

「なんだかぁ・・・いい物件があるってぇ~・・・乃華ちゃんが独り占めしようとしてるんですよぉ~~。」

「こら、伊予ちゃんっ、勝手にそんなこと言わないっ!」

 伊予が乃華が案内人をやめた理由をばらすと、乃華が慌てて伊予の口を塞ぎにかかる。

 

「・・・ふぅ~~~ん・・・なるほどぉ~~・・・。」

 察しのいい秦右衛門がその話を聞いてニヤける。

 

「・・・そのいい物件が、騒音の元だよ。」

 佐乃がアゴで騒音の元凶を導く。

 

「えっ?!」

 乃華が佐乃の導きに従い、その方向に視線を流すと、そこには金太と戦っている善朗の姿があった。

 

 〔ドンッ、ドガンッ!〕

 

「しまっ!?」

 乃華達が善朗達の戦いに目を向けたその時、善朗の斬撃が金太のガードを弾く。

 金太はがら空きになったボディに焦って、思わず言葉が口から零れる。

 

(主っ!イマダッ!!)

 大前が勝機を見たりと頭の中で叫ぶ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 大前の導きに身体が自然と動くが、その動きに善朗は思いを乗せて刀を振る。

 

 〔ズバンッ!〕

 大前の刀身が右下から切り上げるように金太の腹部を通過した。

 

「ぐおおおおおおおおおおっ」

 金太は切られた勢いで後方に飛んで落下していく。

 

「・・・あっ・・・。」

 笑みを浮かべていた善朗が、金太を切ったと言う現実に正気に戻って、冷や汗をかく。

 

 〔ドゴオオオオオンッ〕

 金太が飛ばされて、住宅街に大きな音を立てて落下した。落下した場所から土煙が立ち上る。

 

「・・・・・・。」

 金太を切ったと言う現実に善朗は完全に放心状態となり、固まる。

 

 

「・・・すごっ・・・。」

 伊予がその光景を見て、思わず言葉を漏らした。

 

 

 

 

 

 

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