墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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乃華の役職

「・・・・・・俺、なんてことを・・・。」

 善朗は空中から佐乃達の所に戻ると、放心状態で自分のした行いを悔いていた。

 

 

「・・・・・・。」

 黙って、ニヤニヤしているのは秦右衛門だった。

 

「・・・・・・。」

 佐乃は腕組みをしたまま、善朗を見ている。

 

「・・・・・・あのっ・・・。」

 乃華も久々の再会ではあるが、周囲の雰囲気に言葉が出ない。

 

「ええええっ、善朗君~?・・・善朗君って、霊が斬っても潰しても、ある程度はなんともないって知らないの?」

「えっ?!」

 伊予が雰囲気に飲まれることもなく、のん気な口調で確信をつく。

 その言葉に善朗がハッとする。

 

 

「いてててっ・・・秦兄ぃ・・・こりゃ、特上でも割が合わんぞ・・・。」

 金太が飛ばされた方向からお腹を押さえながらケロッとした姿で飛んで戻ってくる。

 

 

「金太さんッ!」

 金太の無事な姿を確認して善朗が笑顔で迎える。

 

「んっ・・・どうした善坊?・・・俺がくたばったとでも思ったか。」

 善朗の歓迎に頬をほころばせて金太が答える。

 

「・・・金太、もう少し遅く登場しても、おもしろかったのに・・・伊予ちゃん、ネタ晴らしは早いなぁ~~。」

 秦右衛門が悪戯好きの子供の顔をして笑う。

 

「えへへっ・・・ごめんなさい。」

 てへぺろ顔で伊予が謝る。

 

「・・・その気持ちを忘れないのはいいことだよ、善朗。」

 腕組みをして真剣な眼差しで善朗を見て、佐乃が言う。

 

「・・・あんたには力がある・・・これから人を斬るという事も少なからずあるだろう・・・その時に、覚悟を持って斬るのと、楽しんで自然と斬るのとでは、その刀身も、あんた自身の魂も違ってくる・・・そのことはしっかりと覚えておきな・・・。」

 佐乃は善朗の心にしっかりと刻むように丁寧にゆっくりと言葉をつづる。

 

「・・・・・・。」

 善朗は佐乃のその言葉の重みをしっかりかみ締めるように黙っている。

 

「・・・・・・。」

 乃華が善朗の顔を見ながらモジモジしている。

 どうやら、会話に入るタイミングを完全に見失ってしまっているようだ。

 

「・・・・・・あれっ?乃華さん?・・・えっ・・・なんかいつもと雰囲気違いますね・・・。」

 モジモジしている乃華を善朗がやっと見つけて声を掛ける。

 

 善朗の視線に入ってきた乃華は案内人の黒革のベストに白のタンクトップではなく、黒いスーツスカート姿だったのに善朗は素直に驚く。

 

「ああああああっ・・・おおおっ、おひさしぶりですね、善朗さん・・・。」

 少し照れながら乃華が頬をかく。

 

「・・・騒ぎが収まったけど、まだ何かするのかい?」

 ヤレヤレとした雰囲気で腕組みをしながら佐乃が乃華達に尋ねる。

 

「いえいえぇ、私達は騒音が収まれば、それでいいのでぇ~。」

 伊予がニヤニヤしながら善朗を品定めしつつ、佐乃に答える。

 

「善朗君、乃華さんは区役所の職員になったみたいだよ。」

 ニヤニヤしながら秦右衛門が乃華の変化を善朗に教えた。

 

「えっ?・・・案内人じゃなかったんですか?」

 秦右衛門の言葉に驚き、思った事を素直に口にする善朗。

 

「・・・案内人は魂を転生させることによって評価されるけど、区役所の職員・・・見た感じ、管理官は管轄の式霊の行いによって評価される部分が大きい・・・善朗、あんたは霊能者と契約したんだろ?・・・管理官と関わる事が多くなるんだから、知り合いだとしても、ちゃんと挨拶しておきな・・・。」

 佐乃はそう言いながら、その場から離れつつ善朗達に手を振り、善朗にそれとなく乃華の事を教える。

 

「・・・あぁっ・・・そうだったんですね・・・乃華さんが管理官・・・管理官って言うのは良く分からないんですけど・・・乃華さんなら俺も安心です。」

 まだ良く分かっていない善朗が微笑みながら頭をかき、乃華にお辞儀をする。

 

「・・・あぁっ・・・うぅっ・・・そっ、そうですね・・・これからは管理官として、善文君の件も対応できるので・・・。」

「えっ、本当ですか?!・・・ありがとうございますっ!」

 乃華が照れつつ目線を外すと、善朗が善文のためと聞いて、思わず乃華の手を両手で握り感謝した。

 

「・・・あぁっ・・・いえっ・・・そのっ・・・乗りかかった船ですから・・・。」

 しっかりと善朗と握手をしながら目線を泳がせる乃華。

 

「いや~~~・・・これは心強いね善朗君~~・・・。」

 秦右衛門がニヤニヤしながら善朗の肩を抱く。

 

「これから長い付き合いになりそうですねぇ~~。」

 伊予がニヤニヤしながら後ろで手を組み、ウキウキしている。

 

「・・・秦兄ィ・・・それより、俺、腹減ったぞ・・・。」

 金太が別の意味で、お腹を擦りつつ秦右衛門に約束を催促した。

 

「・・・わかったわかった・・・仕方ない・・・善朗君、今日はこれまでにしよう・・・今日の戦い方を忘れなければ、きっと明日からの修行もうまくこなせるはずだ・・・じゃぁね・・・。」

 金太に促されると秦右衛門は善朗から離れて、金太の肩を抱いて、一緒に道場から帰っていった。

 

「・・・ありがとうございましたっ!」

 善朗は去っていく二人に深々と頭を下げてお礼をいった。

 

「・・・おっ・・・オホンッ・・・善朗さん、縄破螺の事は、区役所の資料などから色々調べています・・・弟さんを守るためにも出来るだけ協力しますので・・・その・・・お稽古頑張って下さい・・・。」

 気を引き締めて、乃華が善朗にそう告げ、最後にカバンの中からそっとおまもりを取り出し、善朗に向けて差し出した。

 

「・・・あっ・・・ありがとうございます・・・。」

 善朗は乃華から差し出されたおまもりを大事に受け取る。

 

 

「・・・家内安全って・・・どんなご利益があるんだい?」

 大前が乃華から渡されたおまもりを善朗の脇から覗き込んで言葉を零す。

 

「・・・くっ・・・。」

 大前の言葉に沸騰して、頭が爆発しそうになる乃華。

 

「・・・いえっ・・・ありがとうございます・・・大事にします・・・。」

 大前の言葉にもめげず、善朗は微笑んでおまもりを見る。

 

「・・・そっ・・・それでは、私はこれでっ。」

 乃華は恥ずかしさの余り逃げ出すようにその場を離れていく。

 

「乃華ちゃん・・・今度は悪霊退散とか厄除とかにしようねぇ~。」

「ううぅぅぅっ、うるさいっ!」

 伊予がスキップをしつつ、乃華の顔を覗きこんで茶化す。

 伊予の意地悪に顔を真っ赤にしながら乃華が早歩きで去っていく。

 

 

「・・・・・・。」

 善朗は乃華達の後姿を見て、黙って微笑む。

 

 

 今回の闘いで善朗の中で、縄破螺への望みが出てきた。

 不穏な空気はまだまだ立ち込めてはいるが、周囲の人々の助けと支えで、善朗はどんな絶壁でも登っていこうと決意する。

 

 

 

 

 

 

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