墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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 廃工場のジメジメした暗い一室。

 生気がない善文が虚ろな目で入ってきた。

 

 

「・・・・・・。」

 善文が部屋の一点を見詰めて口を開けて、無意識によだれを流す。

 

 そこには天井から伸びたロープが首輪を作って、垂れ下がっていた。

 ご丁寧にちゃんと段も作ってあり、丁度子供がロープの首輪に頭を持っていけるように用意してある。高さは2m強、首輪に頭を入れて、段から足を離せば、文字通り首吊り自殺のようになる。

 

 

 

「・・・義文君・・・いよいよだね・・・。」

 虚ろな目でロープを見る善文の背後の闇から浮かび上がるように縄破螺が現れて、善文の肩を抱く。

 

 

 

「・・・・・・。」

 善文は縄破螺の腕からスルリと抜けて、用意された断頭台にゆっくりと進んでいく。

 

 〔ウエエエエエーーンッ、ウワアアアアアアッ、イヤアアアアアッ・・・。〕

 縄破螺の世界を彩る子供達の慟哭が善文を歓迎するというよりも拒むように響く。

 

「ンンンンンンンンンッ。」

 縄破螺はその美しいメロディに股間がいきり立つのを抑えられない。

 

 血走る縄破螺の目が恍惚と光り、目から涙が、口からよだれが一筋たれる。

 

「・・・さぁ、聞かせてくれ・・・お前の慟哭をぉぉぉぉぉっ・・・。」

 右手で股間を握り、左手で善文の首を絞めるように伸ばす縄破螺。

 

 

 

「縄破螺ッ!!!!」

 

 

 

 善文が縄破螺に導かれて、断頭台の一段目に足をかけたその時、廃工場の一室に善朗達が姿を現した。もちろん、善朗の後ろには乃華と冥、そして、とこさんがいる。

 

「善文君ッ!」

 とこさんが善文の姿を発見すると、脱兎の如く駆け出す。

 

 

「邪魔するなっ!」

「お前がなっ!」

 善文を止めようと駆け出したとこさんの姿に縄破螺は激怒して右手からロープを繰り出す。

 その行動を先読みしていた善朗が大前を下段から繰り出し、ロープを跳ね上げるように斬る。

 

 

 〔パアアアアアアアンッ!〕

 物凄い破裂音が部屋に響く。

 

 大前に斬られたロープは斬られずに、弾かれるように宙をうねる。

 

「・・・・・・ガキが・・・言ったはずだぞ・・・邪魔をするなと・・・。」

 突き出した右手をそのままに仁王立ちして縄破螺が善朗を怨む。

 

「・・・俺も言った筈だ・・・善文は俺が守るってッ!」

 善朗は大前を中段に構えて、剣先を縄破螺の喉元に定める。

 

「善文君ッ!」

「・・・・・・。」

 とこさんは善文をしっかり抱きかかえて離さない。

 善文は虚ろな目のまま、ずっとロープを見ている。

 

「善文君ッ!」

 善朗とにらみ合う縄破螺を迂回して、冥と乃華も善文の元に駆けつける。

 

「エイッ!」〔ジャラジャラジャラッ、パンッ!〕

 冥の掛け声と共に数珠が善文を巻き上げ、冥が柏手を打つと糸が切れたように善文が意識をなくした。どうやら、縄破螺の呪縛を絶ったようだった。

 

「・・・どいつもこいつも・・・もう少しで逝ける所を邪魔しやがって・・・。」

 縄破螺が辛みに満ちた顔でよだれをたらしながら善朗を怨み、妬みを言葉に乗せて、善朗に絡みつかせる。

 

 

 

「・・・すぅ~~~っ、ふぅ~~~っ・・・。」

 善朗は佐乃の所で精神の在り方を学び、強敵を前に、はやる気持ちを落ち着かせるように深呼吸をする。

 

 

 

 すると、先ほどまでジメジメしていた部屋が少し澄み切ったように感じた。

 

「・・・すごい・・・。」

 冥は善朗の変わりように素直に驚く。

 

(本当に、やっちゃったかも・・・。)

 乃華が予想していたよりも大きな魚を釣り上げたかのように固唾を飲む。

 

 

 

「・・・おもしれぃ・・・まずはお前を地面に這いつくばらせて・・・次に女共をお前の目の前で犯して、狂い殺してやる・・・メインディッシュは兄弟一緒に絞め殺しだ・・・。」

 縄破螺は大またを開いて、身体を沈め、両手を肩より上に上げて、善朗をねぶるように見る。

 

 

 

「・・・・・・。」

 善朗は集中している。ただ、一心・・・縄破螺を斬る事だけを考える。

 

(いいぞ主・・・精神を研ぎ澄ませ・・・内なる力を引っ張り出すのだ・・・。)

 大前が良く集中できている善朗に感心する。

 

「はあああああああああああっ!」

「アアアアアアアアアアアアッ!」

 何か合図があったわけではないが、縄破螺も善朗も示し合わせたしたように同時に地面を蹴って、相手に向かって大声を出しながら向かっていく。

 

 〔ビュンッ、ビュビュッ、ビュシュンッ〕

 縄破螺が突き出した両手から一本ずつロープが蛇のようにうねりながら善朗を狙う。そして、それに続くように背後から2本、両足の膝の辺りから一本ずつ飛び出して、計6本の蛇が善朗に襲い掛かる。

 

「スゥ~~~~~ッ、フッ!」

 善朗は迫るロープを目で一通り確認して大きく息を吸い込み、息を止める。

 

 〔パンッ、パパパッ、パンッ、スパンッ!〕

 迫ってくるロープを順番に大前で斬って、弾き飛ばしていく善朗。

 

 〔ダッ!〕

 善朗はすぐさま次の行動に移る。ロープを全て弾くと大きく広がったロープの中心にいる縄破螺目掛けて、地面を蹴って間合いを詰めた。

 

「チッ。」

 ロープを全て弾いて自分に迫る善朗に舌打ちをして、縄破螺が地面を蹴って、右にそらそうとする。

 

 善朗は縄破螺のその行動を予期していたかのごとく、縄破螺を自分の間合いに入れると足を床に滑らせる。

 〔ザザザザザーーーッ・・・〕

 

 〔ボッ!〕

 自分から距離を取った縄破螺を確認して、善朗が構わず、大前を右上段から左手を滑らせて、左手一本で一文字に空間を斬った。

 

「ナッ?!」

 その善朗の行動に縄破螺の死線を潜り抜けた勘が電気を走らせる。

 

 〔バアアアンッ!〕

 縄破螺が慌てて戻したロープで自分を見えない斬撃から守ると、守りに入ったロープが消し飛んだ。

 

「・・・ナニッ?!」

 自分のロープが消し飛ぶなんて、これまで経験した事がない縄破螺はその光景に目を丸くする。

 

「・・・すぅ~~ッ。」

 目をギラつかせて、縄破螺だけを見る善朗が縄破螺の頭上に飛んで、最上段から大前を振り下ろそうと構える。善朗は無意識に頬を緩める。

 

「フッ!」

 善朗は息を一吐きして、呼吸を止めて、少し右上から左下へと大前を振るう。

 

「ヌッ!」

 縄破螺はロープが消し飛んだ事でロープをガードに使う事をためらって、身をよじって交わした。

 

 

 しかし、その行動が善朗の次のチャンスとなる。

 

 

「・・・・・・。」

 息を止めたままの善朗が地面に着地すると縄破螺をずっと追っていた目がさらにぎらつく。

 誰に教えてもらったわけでもなく、善朗は地面についた左手一本で持っていた大前を右手に持ち替えて、右に滑らせ、身体を一回転させる。180度回転した所で左手が追いついて、270度の時点で左手を発射台として固定。そこから右手一本で、無理に身をねじって交わして隙の出来た縄破螺の腹を一閃するように勢い良く空間を斬った。

 

 

「ナメルナアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 善朗の攻撃を交わしきれないと判断した縄破螺は斬られるぐらいならと残ったロープを善朗に向ける。

 

 

 〔ドオオオオオオオオオンッ!〕

 

 一連の動きを追っていた乃華達が気付くと両者がそれぞれ反対方向の壁に弾き飛ばされて、部屋に砂埃があがっていた。

 

「・・・なっ・・・なに・・・これ・・・。」

 余りの刹那の戦いに目が飛び出そうになる乃華。

 

 

「・・・善朗・・・君・・・。」

 冥は逆に凄まじい戦いを・・・人間では到底払えない、ろ組の悪霊と対等に戦っている善朗の姿に、何処か恐怖を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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