墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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VS縄破螺

「・・・すぅ~~~っ、フッ!」

 善朗は砂埃が立ち上る中、ムクリと立ち上がって深呼吸をして、再び縄破螺の方へと飛び出した。善朗の口角が無意識にまた少し上がる。

 

 

「・・・このくそがぁ~~~っ。」

 縄破螺は善朗に斬られた腹を押さえて立ち上がる。

 

 霊体は斬られたからと言ってそこで終わるわけではない。その個体がもっている霊力が即座に現状を回復させる。一見何のダメージも無いように思えるが、しっかり内包された霊力は攻撃に応じて消し飛び、霊力が全てなくなると、なんであろうが霊は消滅する。

 

「ああああああああああああああっ!」

 だからこそ縄破螺は叫ぶ。自分の攻撃をモロに食らっても再び変わらず、立ち向かってくる善朗に恐怖した自分のことを拒むように・・・。

 

 縄破螺は悪霊いろは番付、ろ組の化け物。その攻撃は低級霊なら、かすっただけで消し飛ぶほどだった。如何に善朗が防御をして往なしたところでダメージが全く無いわけではない。だが、現に善朗は変わらず向かってくる。これが霊体バトルの怖い所でもある。一体、相手がどれほどの霊力を内包しているかが分からない。どれだけ痛めつけても自分よりもはるかに凌ぐ霊力があれば、物量で負けてしまう。縄破螺の脳裏に敗北の二文字がその時、初めて、ちらついた。

 

 

 

「認めてっ・・・たまるかあああああああああああっ!」

 縄破螺は自分の射程に飛び込んできた善朗を睨みつけて、自分を奮い立たせる思いも込めて、さらに叫ぶ。

 

 

 

「ッ!」

 砂埃を吹き飛ばして、善朗が縄破螺を捉える。

 

 今度は右下段から振り上げ、左の足の付け根から入り、右肩へと抜けるように斬り上げる。

 

「クソガアアアアアアアアアアッ!」

「ッ?!」

 縄破螺は善朗の攻撃を受け入れる。ロープで斬撃を阻むもそれを突き抜けることも受け入れる。

 

 〔パアアアンッ、ズバーーンッ〕

 善朗の斬撃により残ったロープが消し飛ぶ。そのおかげで、弱まった斬撃だったが、予定通り縄破螺の身体を斬り裂いた。

 

「ヌオオオオオオオオオオオオッ!」

 縄破螺はカウンターで右拳を振り上げて、善朗の顔面目掛けて振り下ろした。

 

 〔バコオオオオンッ!〕

 物凄い衝撃音が部屋に鳴り響く。

 

 〔ドーーーーンッ!〕

 身体をねじった善朗はさらにねじって右肩でかろうじて縄破螺の右を防ぐ。

 しかし、余りにも強い攻撃に身体が持っていかれて、きりもみ状に回転させながら吹っ飛ばされて、後方の壁に飛ばされた。

 

「ふぅーーーっ、ふぅーーーっ・・・。」

 善朗は飛ばされた傍からスッと立ち上がり、息を荒げる。

 

「はぁ~~~っ・・・はぁ~~~~っ・・・。」

 縄破螺も少し乱れる息を整える。

 予想以上に善朗の攻撃が縄破螺の霊力を削っていた。

 

「すぅ~~~~~っ・・・ふっ!」

 善朗は乱れた息を整えると、大前を再び構えて縄破螺に突進する。

 

「・・・いいいいいいっ・・・かげんにぃ~~~・・・しろおおおおっ!」

 縄破螺は霊力でロープを再生させると、ロープをうねらせて、先行して善朗に向かわせる。

 

 〔パンッ、パンッ、パパンッ!〕

 善朗はロープを弾くのではなく、瞬間瞬間に力を込めて、今度はロープを消し飛ばして縄破螺に迫る。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ・・・・・・ナッ?!」

 向かってくる善朗に標準を定めて右手を握りこむ縄破螺だったが、突然目の前から姿を消した善朗に驚く。

 

「・・・・・・。」

 善朗は瞬時にスピードを上げて、素早く縄破螺の左の死角に滑り込んで、背後を取った。

 

 

「ああああああああああああああああっ!」

 背筋を凍りつかせる殺気を感じて、背後に回りこんだ善朗の存在目掛けて無我夢中で裏拳を放つ体勢を取り、縄破螺が悲鳴に近い叫び声をあげる。

 

 

 〔ズバアアアアアンッ!〕

 善朗の一閃が三度縄破螺を切り裂く。

 

 しかし、それだけでは終わらせない縄破螺が意地に近い形で、力を込めた右拳を裏拳にして善朗に叩き込む。

 

 〔バゴオオオオオンッ!・・・ズザザザザザーーーッ〕

 善朗はクリティカルヒットを免れるが凄まじい攻撃に身体を持っていかれて、床を滑らされる。

 

「ぐうううううううううっ・・・。」

 縄破螺はゴッソリ持っていかれた霊力の脱力感に歯を食いしばりながら耐える。

 

「・・・ぐうぅぅ・・・。」

 善朗もさすがのダメージと慣れない戦闘で予想以上に霊力も削られていた。

 その事が、大きなダメージの蓄積となり、善朗の目がかすみ出す。

 

「・・・ふひひっ・・・やるじゃねぇか・・・だが、もう終わりのようだな・・・。」

 ギリギリだった。縄破螺もいよいよ追い詰められたと思われたが、ガス欠は向こうが先だった事にニチャリと顔を歪める。

 

 

「はああああああああああっ!」

 弱った縄破螺の隙を突いて、冥が飛び掛る。

 

 

 〔パンッ!・・・ドッ、ズザザザザザザッ〕

「アグっ?!」

 縄破螺は冥を見ずに再び、再生させたロープで冥を軽く弾き飛ばしただけだった。

 冥はモロにロープの攻撃を食らい、弾き飛ばされて床に叩きつけられて、数m滑らされる。

 

「・・・うぅぅぅ・・・。」

 冥は縄破螺の攻撃のダメージでとても立てない。

 

(・・・善朗君・・・こんな相手と打ち合ってたの・・・。)

 余りにも違う圧倒的な力の差の縄破螺を物差しに善朗の強さを身にしみて感じる冥。

 

「ハーーーーッハッハッハッハッ・・・さぁさぁ、これからいよいよショータイムだぜッ!」

 縄破螺は両手を大きく広げて、天を仰ぎ、大笑いして善朗達を見下ろす。

 

 

 

「善文君ッ!」

 

 

 

 笑う縄破螺を他所に、一人の少女が部屋に入ってくる。

 

「・・・お前・・・メスガキ・・・。」

 縄破螺はその少女の姿に今日一番の怒りに顔をゆがませた。

 

「・・・美々子ッ?!」

 突然部屋に入ってきた少女の姿に驚いて名前を呼ぶ冥。

 

 そう、縄破螺の邪魔をして、善文を学校で守っていたのは美々子だった。

 

 

「・・・善文君は渡さないッ!」

 美々子はほっぺたを膨らませて、縄破螺を睨みつけて怒鳴った。

 

 

「・・・・・・お前の存在も忌々しかったんだ・・・ちょうどいいところに来てくれたな・・・。」

 縄破螺はひとまず目標を美々子に定めて、グチョリグチョリと歩を進める。

 

「・・・うっ・・・。」

 縄破螺の放つ殺気に小学生がおびえないわけは無かった。

 勇気を振り絞って、ここまで来た美々子だったが、縄破螺の直に浴びせてくる殺気にたじろぐ。

 

 

「・・・美々子・・・ちゃん・・・。」

 善朗はかすむ目と意識を必死に繋ぎ止めようとするが、視界が闇に支配されようとしていた。そして、視界が真っ暗になったその時に聞き覚えのある女性の声が部屋に響き渡る。

 

 

 

「・・・弱い者いじめは感心しないね・・・しかも、相手は子供じゃないかい?」

「・・・しっ・・・しょう・・・?」

 薄れ往く意識の中で、尊敬する師の声が善朗の頭の中に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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