墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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激流の出発点

「虎丞組をなめんじゃねぇーぞっ!」

 一人の上半身裸で腹巻をした男性が胴着を着た男性の胸倉を掴んでどなっている。

 

 

「・・・・・・。」

 胸倉を掴まれている男性はギロリと掴んでいる男性を見ているが、何か我慢しているようだった。

 

「どうしたっ!?殴って来いよっ!怖気づいたかっ!」

 近くで殴り倒した胴着の男性に罵声を浴びせている上下スウェットの男性がいる。

 

「・・・我々が何をしたって言うだっ!こんなことをして、何が変わるんだっ!」

 殴り倒された男性が後ろにいる胴着を着た女性と子供を守るように両手を広げながらスウェットの男性に大きな声で叫ぶ。

 

「お前らっ、大金が入ったにも関わらず、縄張り広げようとしてるらしいじゃねぇーかっ!なめてんじゃねぇーぞっ!」

 今度は金属バットを持った男性が胴着の男性に叫ぶ。

 

「・・・なっ、何を言ってるんですかっ・・・私たちはちゃんと決められたルールで除霊をして、お金を稼いでいるわっ!」

 全く身に覚えの無い言いがかりに懸命に立ち向かう胴着の女性。

 

「いたぞっ、あそこだっ!」

 揉めている集団を見つけて、走ってきたのは木刀やバットを持った別の集団だった。

 

「あそこだっ!」

 別の方向からは胴着を来た男女が駆けつけてくる。

 

「ブ飛ばすぞっ!」

「言いがかりだっ!」

「かかってこいやっ!!」

「絶対手を出すなっ!守れっ!」

 虎丞組の方は、血の気が多く、威勢が良いのが殴る蹴ると暴れるのに対し、佐乃道場の方は佐乃に日々きつく言われているのか、どんなに殴られようと蹴られようとも一切手を出さずに我慢していた。

 

 しかし、群衆となった暴れる虎丞組はお構い無しに佐乃道場の人間を襲っていく。

 霊界では生前どれほど強かろうが、生き様が強さに直結する。

 殴る蹴ると乱暴される佐乃道場の人間達だったが、心身ともに清く過ごす者達にとって、粗暴な連中の攻撃は痛みはあるものの、それほど重いダメージではなかった。ただ、女性や子供にとっては恐怖には違いが無いので、男性陣は必死に暴力から遠ざけようと無理をしていた。

 

 

「お前達ッ!いいかげんにしろっ!!!」

「ッ?!」

 虎丞組が暴れる路上に虎丞の大きな怒号が響き渡る。

 

 

「・・・・・・。」

 虎丞の一声で、ピタリと群衆の動きは止まり、その場にいた全員が虎丞に釘付けになる。

 

「何をしているんだっ、お前達っ!こんな事をしても、ここでは何の役にも立たないとあれ程言っているだろうがっ!!」

 虎丞はズシンズシンと地面を揺らしながら近付き、怒号を浴びせる。

 

「オジキッ!違うんだっ!本当にこいつらは縄張りを荒らしてたんだっ!」

 上半身裸の男が怒る虎丞にスマホの画面を見せながら近付く。

 

「・・・・・・ッ?!」

 虎丞は怒りを抑えて、男のスマホを見ると、そこには少し離れた所で除霊を行う見慣れた胴着の男が映っていた。

 

「おいっ!お前、そこで何してんだっ!」

「ッ?!」

 スマホの中で、虎丞組の男が胴着の男に声を荒げると、胴着の男は慌てて逃げていく。

 

「やろう~~っ、逃がすなっ!」

「・・・・・・。」

「うわっ、なんだっ?!」

 虎丞組が追いかけようとすると、胴着を着た女性が脇から現れたかと思うと、白い粉を撒き散らして逃げていく。虎丞組は煙幕で二人を見失う。

 

 その一部始終が虎丞の目に飛び込んでくる。

 

「・・・言いがかりですっ!我々は本当にちゃんとルールを守ってっ!」

「うるせーーっ!こっちには証拠があるんだよっ!」

 佐乃道場の人間が弁明しようとすると、それに怒りを抑えられない虎丞組の男が叫ぶ。

 

「・・・待てっ!」

「・・・・・・・。」

 暴れ出そうとする虎丞組を虎丞が一喝して止めると、また当たりは静まり返る。

 

「・・・この胴着の連中は確認したのか?」

 虎丞がスマホを持つ男に尋ねる。

 

「・・・いや、それは・・・でもっ。」

 スマホを見ながら少し焦り出す男。

 

「・・・確かに動画に映っているのは私共の胴着を着た者ですが・・・顔が分からないのでなんともいえないんです・・・ですが、我々は師匠に顔向けできない事は絶対にしませんっ!」

 佐乃道場側の男が虎丞の目を真っ直ぐ見てそう訴える。

 

「・・・・・・。」

 虎丞は胴着の男の真っ直ぐな目に嘘を言ってないとすぐに分かった。

 

(・・・佐乃と俺で、これほどまでに違うのか・・・確かに俺の元には血の気が多い連中が多いが、それでも気の良い奴らばかりだ・・・しかし、素直に認めなければなるまい・・・。)

 何よりも、いくら殴られ蹴られても、一切やり返さなかった佐乃道場の人間に心の中で感嘆していた。

 

「・・・確認が取れない以上、事をこれ以上荒げるわけにはいかん・・・お前達の気持ちも分かるが、俺がこれから佐乃とはなしてくっ・・・。」

「オジキイイイイイイイイイイイイイイイイッ!」

 虎丞がこの場を落ち着かせようとした時だった。

 遠くから泣き叫びながら走ってくる男がいた。

 

 

 

「・・・・・・。」

 虎丞とその場にいた全員が言葉を失った。

 

 

 

 別の場所で揉めていた虎丞組と佐乃道場。その中で、悲劇が起こってしまったのだった。

 ドスを持ち出したのは虎丞組だったが、仲間を守ろうとした佐乃道場の人間がドスを刺し返してしまったのだった。完全な正当防衛だったが、刺された男の魂はその場で消滅してしまった。駆けつけた区役所の人間に佐乃道場の男は連れて行かれ、辺りは騒然となった。

 

「・・・・・・。」

 虎丞は黙って、拳を握りこむ。

 荒立てたくなかった揉め事が、もう止まらない所まできていた。

 

 

 

 

 

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