墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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善朗と虎丞

「なんだっ、てめっ・・・。」

「なめんなっ・・・。」

「おんどりゃっ・・・。」

 〔スパンッ、スパパンッ〕

 

 

 善朗は佐乃道場の門の前で待ち構えていた組員達を、一陣の風が吹きぬけるように斬りながら進んでいく。さっきの戦いで、単に斬っただけで相手を消滅させる事がないと分かった善朗は俄然、切っ先が軽くなり、深夜のテレビショッピングで紹介されるトマトを滑らかに切っていく包丁のように、組員達をスパスパと斬って行く。

 

「こいつっ・・・。」

「やるやるゆうっ・・・。」

「あとがないんじゃっ・・・。」

「オドレらっ・・・。」

 〔スパパンッ、スヒュンッ、ズパンッ〕

 

 善朗の口角が少しあがる。

 善朗は目の前に見える虎丞組の組員達を全員片っ端から斬って行く。斬っても平気だと分かると、善朗にとって、それはゲームと変わらないように感じていた。一人残らず、経験値として倒していくモンスターのようで、善朗はその行為に没頭していく。

 

「善朗君ッ!」

「善朗さんッ!」

 門から中に入り、群衆の殴り合いを掻い潜りながら、的確に虎丞組だけを狙っていく善朗の姿に、佐乃道場の門下生達は満面の笑みで名を呼ぶ。しかし、当の善朗には届いていない。善朗は経験値を逃さないように味方を避けて、モンスターを倒していくだけだった。

 

 ますます、善朗の口角があがっていく。

 

(・・・・・・。)

 善朗の手の中で、大前が少し主の変化に違和感を覚え出す。

 

「くっ、くるなっ!」

「ひっ!」

「ばっ、ばけもっ」

 〔ズパンッ、スパッ、シュパパッ〕

 

 次々倒れていく仲間の姿に組員達は善朗に次第に恐怖していく。中には、完全に戦意を喪失しだす者まで現れ始めるが、善朗には全く関係ない。門下生をすり抜けて、的確に経験値をゲットしていく。門下生は助けてもらったので、善朗の行いに違和感を持たずに声援を送る。

 

「・・・ぐっ・・・はっ・・・。」

「・・・・・・。」

 本堂の前まで来た善朗が外にいる最後の組員を切り捨てる。

 

 霊体であるが故に、スタミナと言う概念はなく、善朗はあれだけ暴れまわっても息切れ一つ起こしていない。それよりも、善朗の中には圧倒的爽快感が溢れていた。生きてる時に、味わってきたゲームでの達成感が自分のその手で、敵を切り捨てる事で感じられると言う高揚感が善朗を別の次元へとつれていく。

 

(・・・主よ、大丈夫か?)

 大前が一仕事終えた善朗に声を掛ける。

 

「・・・大丈夫、まだいるんだろ?」

 善朗は本堂の扉の前で興奮を抑えられない。

 

 この扉の先に、ステージのボスがいる。

 今の善朗には分かる。

 本堂の中で、霊力が一際高いボスが待ち構えているのが。

 

 〔ガラガラガラガラッ・・・〕

 本堂の引き戸を善朗はゆっくりと開ける。

 

「なんじゃオドッ」

 〔スパンッ、スパパパンッ〕

 扉を開けるなり、雑魚敵が沸いてくるのを善朗は逃さない。

 ボス戦を前に出来るだけ多くの経験値を稼いでおきたいという衝動が善朗の感覚を更に研ぎ澄ませて行く。

 

(ノーダメノーダメ・・・。)

 善朗は慎重に雑魚敵を処理していきながら本堂に入っていく。

 

 

「オジキッ、大変だッ!」

「どうした?」

 本堂の中で、二十人強の組員達に佐乃達を囲ませて、佐乃の霊力を入念に削っていた虎丞の元に血相を変えた組員が一人、叫びながら近付く。その組員の余りの形相に虎丞も理由を聞かずにはいられない。

 

 

「ばけもんっ・・・ばけもんがいるっ。」

 血の気が完全に引いて、身体が震えている組員が後方を指差している。

 

「・・・落ち着け、何をいっ・・・て・・・。」

 虎丞は組員が指差す方向を見て、驚愕する。

 

 虎丞の視界に入ってきたのは、仲間達を一刀の元、鮮やかに切り捨てていく一人の少年の姿だった。その剣先は少年の年齢からは考えられないほど洗礼された無駄のない動き。部下達とは、圧倒的に力の差のある事は一目瞭然で、敵うはずがないと、その一瞬で分かった。

 

 善朗の動きに見惚れていると、善朗の存在がどんどん近付いてくる。

「オジキッ!」

「・・・・・・。」

 緊急を報せに来た組員が虎丞を護るように立ちはだかるが、善朗の一刀は無慈悲にその組員を斬り捨てていく。そして、ついにその凶刃が虎丞に迫る。善朗の黒い影の中で二つの閃光がギラリと走った。

 

 

 〔ガキンッ!〕

 

 

 虎丞は迫る一刀に我に返って、霊力を込めた右腕で防いで、そのまま右側へと弾く。善朗は虎丞の力に抵抗する事無く、防がれて飛ばされると、そのまま身を任せて、颯爽と着地をして、虎丞に狙いを定めた。

 

「・・・・・・。」

 善朗の一刀に本堂内の全ての動きが止まる。

 

 今まで、完全に圧されていた佐乃道場側だったが、虎丞組の総大将が今まさに、背後から一刀を浴びせられた形に双方が度肝を抜かれた。

 

「・・・善朗・・・あんた・・・。」

 自分達を攻め立てていた虎丞組の攻撃が止むと、佐乃が自然と虎丞の方を見る。すると、そこに虎丞と睨み合う善朗の姿が視界に入り、佐乃は驚いた。

 

「・・・まさか、これほどとは・・・。」

 佐乃の横で、総大将の背中を護っていた十郎汰が善朗の姿に一緒に驚き、言葉を漏らす。

 

 

 

「・・・私の名は虎丞・・・少年・・・名を聞こうか?」

 最大の敵は佐乃ではないと悟った虎丞が臨戦態勢を取り、名乗りを上げる。

 

 

 

「・・・善湖善朗・・・。」

 善朗が中段に刀を構えて、ジッと虎丞の動きを見ながら答えた。

 

「・・・お前が、あのろ組の・・・。」

 名を聞いて、更に身を引き締める虎丞。

 

「オジキッ!」

 佐乃達を囲んでいた組員達が異変に気付いて虎丞の周りを固めようと集まる。

 

「・・・お前達は下がっていろ・・・。」

「えっ?!」

 虎丞を護ろうと善朗との間に陣取ろうとした組員に虎丞が声を掛ける。

 その指示に組員達は戸惑いを隠せない。

 

 

 

「・・・こりゃ、いったい・・・。」

 佐乃道場に続く道に姿を現した菊の助はその有様に目を奪われる。

 

 

 

「・・・全員、気を失ってますね・・・。」

 秦右衛門が倒れている組員の様子を見て、菊の助に教えた。

 

「・・・殿っ、門のところにっ。」

 吾朗が佐乃道場の門の所で立っている乃華達を見つけて、菊の助に指差して、知らせる。

 

 

「嬢ちゃんッ!」

「・・・あっ・・・菊の助さん・・・。」

 菊の助が乃華達の所にかけて、乃華に声をかけるが、乃華はどこか気が抜けた返事を返すだけだった。

 

 

「・・・乃華ちゃん、さっきからずっと、この感じで・・・。」

 乃華の隣で、途方にくれている伊予。

 

「・・・何があったんだい?」

 秦右衛門がいつになく優しい表情でゆっくりと乃華に尋ねる。

 

「・・・善朗さんが・・・すごいんです・・・風みたいに・・・。」

「・・・・・・。」

 乃華が聞かれたことを素直にそのまま表現して伝える。その余りにも抽象的な表現にいぶかしげな表情でお互いを見る菊の助と秦右衛門。菊の助は門のところから佐乃道場の中の様子を見ると、そこには虎丞組の組員が一人残らず倒れている風景が目に入る。

 

 

(・・・善朗、お前・・・。)

 なぜか、その光景を見て、どこか胸騒ぎがして不安になる菊の助だった。

 

 

 

 

 

 

 

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