墓地々々でんな~異世界転生がしたかったけど、うまく逝けませんでした~   作:葛屋伍美

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落とし所

 スーツ姿の男の声が本堂に響き渡ると、数人のスーツを着た男女が本堂に入ってきて、一直線に虎丞の方に向かい、囲み出した。

「なんや、おのれらっ!」

 虎丞を囲み出した集団に賢太がガンをつける。

 

 

 

「・・・賢太、離れていろ・・・お前には関係ないことだ・・・。」

 虎丞はなにやら、分かっていたかのようにスーツの集団を受け入れた。

 

「・・・・・・。」

 佐乃達もその様子を黙ってみている。

 

 スーツの集団の一人が、一枚の紙を取り出して、虎丞の目の前に開いて、突き出した。

「・・・△○寺虎丞、貴方を霊界騒乱罪、及び、無差別滅消罪の罪状に付き、地獄送りとするッ!」

「ッ?!」

 虎丞の地獄送りと聞いて、賢太が度肝を抜かれる。

 

 賢太は納得行かずに怒鳴って、スーツの男性に飛びかかろうとした。

「なんでやっ!」

「やめないかっ!」

 飛びかかろうとした賢太をすかさず佐乃が羽交い絞めにする。

 

「・・・賢太・・・覚悟していた事だ・・・静かに見送ってくれ・・・。」

 虎丞は一切抵抗せずにスーツの集団の御縄を受け入れる。

 

「なんでやっ!なんでなんじゃっ、俺も虎丞組じゃッ、俺も連れてってくれやっ!」

 佐乃に羽交い絞めされながらも身体全体を使って暴れて、スーツの集団に噛み付く。

 

「・・・・・・。」

 スーツ姿の女性が虎丞を黙って見ると

「・・・あいつは自称特攻隊長の下っ端だ・・・関係ない・・・俺とカムラが二人で計画した事で間違いない・・・。」

 虎丞は女性の目を真っ直ぐ見て、淡々と罪を認めた。

 

「・・・オジキッ・・・なんでやぁ・・・。」

 虎丞の言葉に打ちのめされた賢太は暴れるのをやめて、がっくりとうな垂れる。

 

 

「賢太ッ!」

 うな垂れる賢太に虎丞が大きな声で名を呼ぶ。

 

 

「・・・・・・。」

 賢太は涙を一杯溜めながら、虎丞を見る。

 

「・・・下っ端のお前に組をくれてやる・・・好きにしろ・・・。」

 虎丞は最後にそういって微笑み、スーツの集団と一緒に本堂から姿を消した。

 

 

「オジキッ!」

「虎丞のだんなっ!」

 佐乃道場の外では、規制線が張られた外側から、最後まで虎丞組を去ろうとしなかった組員達が虎丞の姿を見て、泣いて叫んでいる。

 

「・・・お前達、迷惑を掛けたな・・・俺の事を思うなら、後は賢太に聞いてくれ・・・。」

 虎丞は自分の事を慕う組員達に最後の言葉を送る。

 

「・・・・・・。」

 規制線の内側で御縄になっているカムラが黙って、虎丞を待っていた。

 

「・・・カムラ・・・すまんな・・・。」

 虎丞はカムラの姿を視界に入れるとニッコリと笑って、謝った。

 

「約束通り、一緒に逝こうか?」

 カムラも清々しいまでの微笑で虎丞に返す。

 

 二人は並び立つと、スーツの集団と共にどこかに煙のように消えて行った。

 

 

 

 〔ダンッ、ダンッ、ダンッ〕

 賢太はぶつけ様のない怒りを右拳に乗せて、佐乃道場の本堂の床を殴っている。

「・・・・・・。」

 目からは涙が止まらない。何も出来なかった自分の不甲斐無さに完璧に打ちのめされていた。

 

 

 

「・・・あんた、泣いてるだけでいいのかい?」

 佐乃が四つんばいなって、床に八つ当たりしている賢太に向けて、言葉を吐きかける。

 

「・・・俺にどないせいっちゅうじゃっ・・・。」

 賢太は床を叩くのをやめて、グシャグシャの顔を佐乃に向けて睨む。

 

「・・・あんたの尊敬するオジキは最後にあんたになんて言ったんだ?」

 佐乃は賢太の視線にあわせるようにしゃがみ、尋ねる。

 

「・・・・・・。」

 賢太は佐乃の目を見て、虎丞の言葉を頭の中で繰り返す。

 

「わかったなら、そうすればいい・・・分かった上で、それを反故にするのもあんたの自由だよ・・・約束通り、縄張りをくれなんて、アタシは言わない・・・。」

 佐乃は立ち上がって、腕組みをしてそっぽを向く。

 

「・・・アネさん、なめるなや・・・この雅嶺賢太・・・オジキからもろうた盃は閻魔にもやらんっ!」

 賢太はゆっくりと立ち上がって、涙をゴシゴシとふき取り、真剣な目で佐乃を見る。

 

「・・・えっ?・・・」

 佐乃は賢太の目に引くよりも、自分を呼ぶ敬称にドン引きした。

(・・・あっ・・・アネさん?)

 

「アネさん・・・この雅嶺賢太!虎丞のオジキの命によって、虎丞組をまとめあげて、下につきますんで・・・よろしゅうおねがいしますっ!」

 賢太はガニマタで上体を沈めて、そう言いながら佐乃に向かって、頭を深々と下げた。

 

「・・・おっ・・おぅ・・・。」

 賢太の姿勢になれずに引くしかない佐乃。

 

「賢太・・・アタシの下につくなら、アネさんはやめとくれ・・・師匠か、先生にしてくれっ・・・。」

 佐乃が顔を少し赤くして、腕組みをしながら注文した。

 

「師匠ッ!了解しましたっ!」

 賢太はガバッと佐乃に顔を近づけるとキラキラと目を輝かせながら同意した。

 

「・・・たっ・・・頼んだよ・・・。」

 佐乃は賢太から少し距離をとって、念を押す。

 

 

 

 佐乃と賢太の師弟関係をニヤニヤしてみていた菊の助が

「どうやら、丸く収まったみてぇだなっ。」

 閉じた扇子で肩を叩きながらそう言う。

 

「一時はどうなるかと思いましたが、よかったですなっ。」

 秦右衛門が菊の助の隣で、着物の中で腕組みをしながら右腕でアゴを触りつつ、続く。

 

「貴方達二人とも、何のん気にしてるんですかっ?」

 ほのぼのと佐乃達を見ている二人に乃華がほったらかしの善朗を不憫に思い、突っ込む。

 

「・・・主よ、まだまだですなぁ~・・・。」

 大前は大の字に伸びている善朗の頬をしゃがみ込んで、頬杖をつきながらツンツン突く。

 

「あははははっ・・・。」

 善朗は動けない自分の現状に苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 その後、賢太は虎丞組をまとめるべく寺に帰ったのだったが、

「・・・頭・・・どうします?」

 組員の一人が賢太を頭と呼び、不安そうに見ている。

 

 寺に戻ってくると、そこにはササツキ組の組員もおり、とても虎丞組が納めるような状況ではなくなっていた。虎丞組だった組員の大半がササツキ組に自主的に移籍してしまい、賢太の元に来たのは少数派となっていた。

 

「ここは昔のよしみだ・・・隅っこの方で虎丞組をしてもいいぜ?」

 ササツキ組に移った元虎丞組の組員達が、賢太達をののしる。

 

「・・・・・・。」

 賢太は目を閉じて黙っている。

 

「自称特攻隊長さんが、ごくろうなこって・・・。」

 組員の中には、賢太の貢献度に合わないと、虎丞からの引継ぎに納得いかない者も多かった。

 

「・・・・・・。」

 賢太はいきなり立ち上がって、周囲を睨む。

「・・・なっ、なんだよっ。」

 納得いっていない元組員たちではあったが、怒らせれば自分達では敵わない事も知っており、虚勢を張って、集団で徒党を組む。

 

「こないな場所くれてやるわ・・・ついてきたいもんだけついてこいや・・・。」

 賢太はそう言って、寺から出て行く。

 

「・・・・・・。」

 残された組員達は互いの顔を見るしかなった。

 

 その後、さらにササツキ組に流れる者が増えて、等々賢太の元に残ったのは、無縁仏の下っ端組員しかいなかった。無縁仏は他の組員にはお荷物とされて、肩身が狭く、移るに移れなかったというのが正解かもしれない。

 

 

「・・・よし、わかった・・・これぐらいなら、こっちでも面倒見れるよ。」

 佐乃の屋敷の一室で、佐乃が腕組みをして正座をしながら、賢太達に微笑む。

 

「あねさっ・・・師匠、ホンマ助かります・・・不甲斐無くて申し訳ない・・・。」

 賢太は素直に佐乃に頭を下げ、不甲斐無い事を謝った。

 

「・・・あんたのせいじゃないよ・・・ササツキの手の速さは予想以上だったって事さ・・・。」

 佐乃が仕方がないと賢太を励ます。

 

「俺もしっかり、稼ぎますんで・・・。」

 賢太はそういって、土下座をする。

 

「本当は遠慮したい所なんだけどね・・・うちも余裕はないから・・・しっかり頼むよ。」

 佐乃が苦笑いしながら、正直に賢太と向き合う。

 

 

 

 薄暗い部屋の一室。

「ボス・・・予想以上にこちら側についた人間が多く・・・収益も期待できるかと・・・。」

 スーツを着崩した一人の男が、差し出されたグラスに酒を入れながら、椅子に座っているボスに報告をする。

 

「・・・俺の稼ぎが減るのと、動けなくなるのは痛いが・・・折込済みだ・・・お前達の今後の働きに期待してるぞ・・・。」

 ササツキは注がれた酒を飲みながら、テーブルを囲んで座る面々にニヤケながらそう指示した。

 

「・・・へいっ。」

 幹部と思われる面々は軽い会釈をしながらササツキに答える。

 

 ササツキは全てが自分の手の上で動く状況に微笑みながら

(・・・これで、次の段階に進めるな・・・後は、菊の助と佐乃か・・・お前らも所詮は俺の敵じゃない・・・今に見ていろ・・・。)

 と、思考を巡らして、ニヤニヤが止まらず、グラスの酒をあっという間に飲み干し、次を要求した。部下はグラスを差し出されるとすかさず近付き、酒をついでスッと後ろに下がる。

 

 

「・・・善朗君・・・君はどうしようかな?」

 ササツキはそう言いながら善朗の写真の顔を、爪を立てた指でトントンと叩く。

 

 

 

 

 

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